本日の一品

1500円のBASICパソコン「Ichigojam」を組み立てようとしてみたら

 IchigoJamは小さなコンピュータ。お値段はキット版が1500円、完成品が2000円。できることは、黒い画面に白い文字でBASICを打ち込んで実行するだけ。インターネットにはつながらないし、パワーも無い。だけれども、この単純さは、一番初めに子供に与えて、プログラミングに触れてもらうにはうってつけのおもちゃである。BASIC世代の筆者も熱いものを感じて購入してみた。

手作り感あふれるパッケージ
パーツはこれだけ

 ハンダづけキットは、簡素な袋に入って到着。手作り感漂うパッケージで、なんだかパソコン通信草創期に、フロッピーディスクに入った手作りの占いソフトを通販で買ったときのようなぶっきらぼうさが懐かしい。

 ぶっきらぼうといえば、説明書もかなりぶっきらぼう。説明書に書かれた順番で、パーツを基板にはんだづけするのだけれども、文字ベースなので初心者には少々キビシイ。ハンダづけは中学時代の「技術」の授業以来だけれども、なんとかなるだろうか。

ここまでは順調でした

 途中までは順調にハンダをつけていったのだけれども、ICチップのゲジゲジ足を基板に付けだしたあたりから、だんだんよくわからなくなってきた。というか、ハンダがキレイにつかない。ちょっとだけ基板にハンダをつけたいのに、どばっとあふれてしまう。間違ってつけた部品が外れない……! 苦闘すること1時間半。どう考えてもおかしいハンダづけになってしまって、ギブアップ。く、悔しい……!!

不器用すぎる……

 「はんだ 失敗」の検索ワードでググったところ、「はんだ吸いとり線」というものがあるらしい。そういえばハンダごても100円ショップで買った物だし、ハンダ用の台すら我が家にはない。まずは道具から! と思い立って、IchigoJam2号機と、ハンダの台(709円)と、ハンダ吸いとり線(189円)とニッパー(108円)を購入した。

新たに仲間入りした道具類。しめて1006円

 道具も揃ったところで、2週間後に再チャレンジを図る。

 抵抗をつけて、マイコンをつけて……さすがに2回目になると、パーツを取り付ける順番もわかってきた。ハンダ台があるおかげで、ハンダごてがテーブルから転げ落ちる心配もしなくていい。ハンダごてにハンダがつきすぎたら台座についたスポンジでふき取ることもできるぞ、ハンダをつけすぎたら吸いとり線が登場だ! そして1時間程度で完成。

 ところがいざ自宅のテレビに接続をしようとすると、今度は黄色いビデオ入出力端子に対応しているケーブルが手元にない。これまた家電屋さんで購入。1000円なり。

心強い味方です

 もろもろ接続を完了し、いざ電源を入れる。が、テレビは黒い画面のまま、なんの反応も無い。何回か電源の入れるも、うんともすんとも返事が無い。電子工作経験者の知人に話を聞いたところ、安いハンダごては温度が高くて、部品が熱で壊れてしまう可能性が高いとのこと。初心者はもっと温度調節が効くようなのにしたほうがいい、というアドバイスをもらう。そ、そうだったのか……。引き下がるわけにはいかないと、3台目のIchigoJamと、白光の「ダイヤル式温度制御はんだこて FX600」(3686円)を購入してしまった。1500円パソコンのはずだったのに、1万5000円パソコンになりそうだ。

 しかし同じキットを3回も組み立てていると、さすがにどこに何を、どの順番でハンダづけすればいいのかよくわかるようになってくる。今度は45分ほどで、さささっと組みあがった。前のものの5倍の値段もするハンダごては、さすがに使いやすい。100円ショップのハンダごての場合、あっというまにハンダがどろどろに溶けて、ハンダが大量に銅線について困ってしまってしまうのに対し、新しいハンダごては、少しゆっくりハンダが溶ける(ような気がする)ので、素人の私でも落ち着いてハンダがつけられる。

見よ、3回目にしてこのハンダづけの美しさ

 そしてテレビに接続し、もうこれが最後とスイッチを入れたところ……何もおきないのである。正確には、画面が一瞬光ったのだが、その後ウンともスンとも言わない。一体何が悪いんだろう。

 しかし、用意周到な私は、実は完成品も1台購入をしていたのだった。2000円。ますます1500円パソコンから遠ざかってはしまうが、折角ここまでやったのだから動くところが見たい。ずるをしている気分にはなりつつも、完成品のIchigoJamとテレビ、キーボードを接続し、電源を入れてみた。すると……黒い画面に白い文字が表示される。自宅のプラズマテレビの画面に大きな文字でテキストが描画されるのはなんだかシュール。

 簡単なプログラムを入力すると、さくさく動く。BASICらしく、行番号を入力したり、「RUN」と入力したら実行されたり、というのが懐かしい。これは、子どもだったら面白く遊べるのではないか。

動いた!
LEDをチカチカさせるためのコード

 しかしキットで作ったものが結局動かなかったので、これでは子供と一緒に作って遊んでみるというのは無理かもなぁ……と自信を喪失しつつ、それでもせっかくなので購入した(そして挫折した)3台と、完成品の1台で記念撮影を行った。

左上:初号機、左下:2号機、右上:3号機、右下:完成品

 と、ここで賢明な読者の方も気づいたかもしれないが、私も撮った写真を見てはじめて気が付いた。3号機のICが上下逆なのだ。もしかしてこれを反対にしたら……早速接続して電源を投入すると……う、う、動いた!!

 自分のアホさ加減に茫然としながら、自分の組み立てたIchigoJamでBASICのプログラムを書いてみる。自分で組み立てたパソコンの上で自分が書いたプログラムが走るのは、どんなに簡単なものであれ、味わい深い。それが苦労の上にやっとたどり着いたものならなおさらだ。コードのサンプルはIchigoJamのWEBサイトにさまざまなものが掲載されている。

 プログラムに興味がある子どもにも、昔コンピューターに憧れる子どもだった大人にも、ぜひ触ってもらいたい一品だ。

製品名販売元購入価格
こどもパソコンIchigoJam プリント基板キット版jig.jp1500円
こどもパソコンIchigoJam プリント基板完成版jig.jp2000円

カノウキヨコ