本日の一品
音楽の素人がiPadケース型のMIDIキーボード「C.24」でピアノ演奏に挑戦
(2015/6/30 06:00)
人間誰しも「若い頃にやっておけばよかった」なんて思うことが1つや2つはあるだろう。筆者の場合、それは音楽だった。思い返せば中学時代はバンドブームのまっただ中。同級生が次々にギターを買ってバンド活動を始めるのを横目に、「大して弾けもしないのに……」と強がっていたものの、心の中では楽器を弾きこなす姿にあこがれていた。
そんな中二病にも近い思いは、社会人になっても引きずっている。いつか楽器を弾きこなせるようになってみたいとは思いつつ、今さら音楽教室に通うのも……、と半ばあきらめていた筆者の前に颯爽と現れたのが、MiseluのMIDIキーボード「C.24」だ。
iPadに装着するとピアノのキーボードになり、持ち運び時はiPadケースにもなるという奇抜なデザインに、筆者の心は大きく揺れ動いた。実際にできることは普通のMIDIキーボードと大差ないのかもしれない。しかし、iPadの周辺機器という存在とその外観が、遠い存在だった音楽との距離を一気に縮めてくれたのだ。C.24ならひょっとして、今まで距離を置いていた楽器演奏にも近づけるかもしれない、そんな思いで使い始めた。
C.24は「MIDI over BLE」と呼ばれる、BluetoothベースのMIDIに対応したキーボード。同様にMIDI over BLEに対応したアプリをiPadにインストールし、C.24とペアリングすると、C.24の鍵盤で演奏した音がiPadから流れる、という仕組みだ。
鍵盤は24鍵で、「ド」から始まる2オクターブまでの演奏が可能。本体上部のボタンを押すと、鍵盤がせり上がると同時に電源が入り、iPadとペアリングして演奏が可能になる。また、本体の溝にはiPadを立てかけることができ、iPadの画面を見ながら演奏することが可能だ。
見た目はおもちゃっぽいが、実際に触って見ると押し心地はしっかりしている。前述の通り筆者はピアノ経験がないので、実際にピアノが弾ける人からするとまったく違うのかもしれないが、素人目にはほぼピアノの感覚だ。
ただ、鍵盤の幅が多少狭く、思った鍵盤を叩けないかもしれないが、これはある程度慣れでカバーできるだろう。VAIO C1やVAIO type Pといった超小型のノートパソコンを使っていた筆者にとって、このくらいの鍵盤幅は十分な広さだ。
iPadアプリは「Miselu KEY」という無料アプリが公開されているほか、「GarageBand」「FingerPiano Plus」「KORG Module」「KORG Gadget」といった他社のアプリもMIDI over BLEで接続可能。まずは無料のMiselu KEYで本体を接続してみた。
設定は非常に簡単で、App StoreからMiselu KEYをインストールして起動すると自動的にC.24を検出して接続が完了する。C.24の電源ランプが青色から緑色に変化していれば、きちんと接続している証拠だ。
試しにC.24のキーを叩いてみると、iPadのスピーカーからちゃんと音が出る。Bluetoothキーボードで文字を入力するのとやっていることは変わらず、文字が音になっただけのはずなのに、実際にキーボードを叩いて音が出るのはまた違った体験だ。音楽の経験がない筆者でも、鍵盤を叩くと音が鳴るという単純な動作がとても楽しい。
面白いのが、キーボードを叩く強さでも音の大きさが変わるということ。仕組みとしてはそれぞれの鍵の下に光センサーが搭載されており、キーの押した距離や速度から強弱を判定しているとのことだが、技術はさておき実際のさわり心地はピアノそのもの。鍵盤の飛び出すギミックも含め、iPadの周辺機器がピアノそのもののように変身するさまは非常に感心させられる。
音がiPadから出るのもメリットの1つ。イヤフォンをiPadに接続すれば周囲への騒音を気にすることなく弾くことができる。集合住宅だとついつい近隣が気になってあまり大きな音を出せないが、iPadとC.24ならそんな心配もない。
なお、前述の通りC.24は24鍵で、基本的には2オクターブしか出せないのだが、本体左側のセンサーの前を指でサッと横切ることでキーを変更する機能が搭載されている。かなりトリッキーではあるが、このキー操作を身につけると24鍵だけでも2オクターブ以上の音楽を演奏することができる。また、C.24を複数台用意すれば、物理的に48鍵、72鍵と増やすことも可能だ。
本体右側にも同様のセンサーは搭載されており、ピアノのサステインペダルの役目を果たす……らしいのだが、ピアノの演奏がよくわからない筆者にはまだ使いこなせない機能だ。もう少しC.24の操作に慣れて一人前の演奏ができるようになったら使ってみたい。
Miselu KEYでも十分ピアノとして使えるのだが、無料ということもあって機能は非常にシンプル。C.24がどんなことができるのか気になり、他のアプリもいくつか試してみた。
まずは基本無料ということで「FingerPiano Plus」アプリをインストール。このアプリは、画面上の鍵盤を使ってiPad単体でも演奏できるが、C.24を接続して演奏することも可能だ。また、有料で楽譜を購入すると、画面上部から現れるゲージの通りに鍵盤を叩くことで演奏できるリズムゲームのような機能も持っている。
音楽の経験がほとんどない筆者にとって、有料ながらも楽譜を見て学べるというのは非常に魅力的。また、演奏も両手や右手のみ、左手のみと選べるので、まずは片手からじっくり練習して最後に両手で弾く、ということもできる。
ただし、2オクターブ以上の楽曲だと、前述の通りキーを変更する操作が必要なため、片手ならともかく両手での操作は非常に難しい。また、白鍵盤と黒鍵盤の違いは画面上に表示されるのだが、どの指で押せばいいかがわからないため、我流で適当に押してしまっている。設定で用意されているのかもしれないが、初心者としてはどの指でどの鍵盤を押せばいいかも学びたいところだ。
また、Bluetoothのペアリングがうまくいっていないのか、FingerPiano PlusとC.24を接続すると、音は鳴るもののアプリと連動しないことがある。何回か試してみた結果、始めにまずMiselu KEYを立ち上げてからFingerPiano Plusを立ち上げるとうまくいくようだ。
いくつか楽曲をチェックした中で、クラシックの「Amazing Grace」の右手は黒鍵盤だけで演奏でき、オクターブの範囲も狭かったので実際に練習してみた。最初はおぼつかなかったものの、何度も練習しているうちに、右手だけならなんとか音楽らしく演奏することに成功。リズムゲームのような感覚で練習できるのがゲーム世代として非常にわかりやすく面白い。しかし、両手にするとキーの幅が広すぎてとても1台のC.24では演奏しきれず、ひとまずは右手のみの単音で弾けることに満足することにした。
それなりに音楽が弾けたところで調子に乗って、アップルのアプリ「GarageBand」も試してみた。非常に多機能で正直使いこなせていないのだが、画面に表示されるピアノの絵をタッチしてピアノの音を変更できるのが面白い。GarageBandでは画面の鍵盤を2段で表示することもできるので、C.24の鍵盤でどうしても足りない部分だけiPad画面に頼る、という使い分けも可能だ。
また、画面上部にメトロノーム機能も用意されており、メトロノームのタイミングにあわせてピアノを練習することもできる。FingerPiano Plusでがんばって楽曲を覚えてGarageBandで弾きこなしてみたいというのが今のところの目標だ。
実際に触ってみると思った以上に楽しく、今まで遠かった楽器の世界が少し身近に思えてきた。欲を言うならやはり2オクターブでは演奏に限界があり、2オクターブ以上の演奏ができるようになったとしても、それはC.24専用の演奏方法になってしまう。ここは思い切ってC.24をもう1台購入すべきか、本気で悩んでいる。
製品名 | 販売元 | 購入価格 |
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Miselu C.24 KEYBOARD | ソフトバンクC&S | 2万4800円 |