本日の一品

バウンス撮影にも対応したストロボディフューザー

ハクバ「クリップオンストロボディフューザー 2WAY」

 カメラや写真撮影というのは、突き詰めていくと光との戦い、光をいかに制御するか、という部分にたどり着くのではないだろうか。自然光の偶然性を楽しんだりすることも含めて、二度と訪れないその瞬間の光の具合を切り取り、収めるというのは、写真を趣味にしてから今まで、楽しみであり続けている。

 一方で、たえず同じ具合(露出)で撮影したいと感じるときもある。筆者の仕事のひとつであるモバイル関連製品を撮影するような場面では、訪れた場所の環境に左右されずに適切な露出の写真を撮影したいと感じる。趣味の世界でも、同じ分野のモノをずっと撮り続けていると、撮影環境を安定させたいと考えるようになる。

 訪問先の“光の環境”は未知なのに、同じ設定で綺麗な写真を撮影したい。そんな場合には外付けのクリップオンストロボを使うのが定番。最近はカメラのセンサーの高感度特性も向上しているので、昔と比べればストロボの出番は少ないかもしれないが、光のまわり方など、光をコントロールできるという意味では、ストロボの存在は大きな意味がある。

 そんなストロボだが、積極的に使うようになると、ストロボ独特の絵を脱却しようとして、いろいろな手法を試しだすのである(笑)。天井にストロボの照射面を向け、天井に反射した光で撮る「バウンス撮影」ができるストロボの場合は、それを積極的に活用すれば、上方から降り注ぐ自然光のような塩梅で撮影ができる。

 しかし、天井がつや消しの黒で塗られている部屋、すごく乱反射するシャンデリアが飾られている部屋、あるいはビッグサイトや幕張メッセなどのように、非常に天井が高い場面では、バウンス撮影の効果は期待できない。

 今回紹介するハクバの「クリップオンストロボディフューザー 2WAY」(Mサイズ)は、そうしたストロボの光の傾向や雰囲気を変えるアイテムだ。ディフューザーというのは光の拡散板で、この板を通すことで直線的な光線がやわらぎ、ソフトな光になる。すこしオーバーな表現だが、晴天(の直射日光)と雲天の違いといったことろだろうか。

 クリップオンストロボ(外付けのストロボ)によっては、ディフューザーが付属していることもあるが、ディフューザーの効果は照射面から離れているほど高い。今回紹介するアイテムのように距離をあけてディフューズ板を設置できることで、大きな効果が期待できるのだ。留意しなければいけないのは、ディフューズ板を通すことで光の強さが弱まるという点。ある程度ガイドナンバー(光量)の高いストロボが必要になる。

 実際に撮影してみると、ストロボを直接照射したような光のまわり方を得つつ、ストロボによって発生する影の輪郭が格段に柔らかくなり、直接照射した場合と比べてグッと柔らかい印象になる。

 そして、製品名に2WAYとあるように、ストロボをバウンス撮影する要領で上に向けた上で、さらにディフューズ板を起こすと、バウンス撮影の効果も得られるのである。白い天井ほどの効果は得られないが、そもそも天井が無い、あるいは遠い場面では重宝する。とくに被写体に近づいて撮影する場面や、小さなモノを撮影する場面では、跳ね上げたディフューズ板による擬似的な天井の効果が得られやすいと感じた。

 こちらも実際に撮影してみると、近接撮影では十分なバウンス撮影の効果が得られた。

 さらにこの製品はストロボに取り付ける際の角度を90度変えることが可能。カメラを縦位置で構えた際のバウンス撮影も可能だ。

 ストロボへの取付部はすべり止めの板とゴムベルトを組み合わせたもの。同種の製品でよくあるように、ストロボ側にベルクロを接着しておく必要はない。

 収納ケースまで付き、価格も比較的手頃。ディフューザーとバウンサーという2つの用途をバランスよく両立した製品だ。気になるポイントがあるとすれば、この製品に限ったことではないが、ストロボのあたりが縦に長くなり、「なんかスゴイの付けたヤツがきたぞ」という目で見られることだろうか。そうした少しの恥ずかしさは、得られる写真の綺麗さに満足し帳消しにしたいところだ。

ディフューズ板を起こせばバウンス撮影も可能
角度を90度変えて取り付けることもできる
本体と一体化したゴムベルトで取り付ける
折り畳めば薄型に収納可能。ケース付き
何も付けないストロボの直接光
照射面の角度はそのままでディフューズ板を使用。影の輪郭が柔らかくなり、手前部分までまんべんなく光がまわっている
ディフューズ板を起こしたバウンス撮影。影の輪郭は少しハッキリしたものになるが、光源が上方なので見え方は自然になる
製品名製造元購入価格
クリップオンストロボディフューザー 2WAY Mサイズハクバ写真産業2350円

太田 亮三