本日の一品

電気の要らない「7セグメント数字定規」のデジタル感がたまらない

 いやはや、またしても「電気を使わない」ガジェットを、あろうことかTemuで見つけてポチってしまった。届いたのは、3Dプリンターで出力されたと思しき、無骨なプラスチックの板。そう、デジタル表示の定番「7セグメント」をなぞるための定規だ。

 手にするまでは「まあ、ジョークグッズの類だろうな」と高をくくっていたのだが、いざペンを走らせてみると、これが思いのほか楽しい。

 指先に伝わるプラスチックの適度な抵抗感。紙の上にカチッとしたデジタル数字が浮かび上がる快感。

 かつてコンピューター屋の端くれだった筆者の脳裏には、胸ポケットに常備していた「IBMフローチャート・テンプレート」のあの懐かしい感触が、鮮烈に蘇ってきたのである。

 さて、この「7セグメント」というやつ、その歴史を紐解くと意外なほどに古く、そして深い。

 1903年、カール・キンスリーという人物が電報を高速で送るために「文字をパーツに分解して送る」というアイデアを思いついたのが全ての始まりだ。今から120年以上も前、ライト兄弟が空を飛んだ年に、すでに「デジタル数字」の設計図は描かれていたというわけだ。

 その後、1970年代に電卓が爆発的に普及したことで、この「8」の字型のパーツ構成は、私たちの生活の隅々まで埋め尽くすことになった。

 かつてアポロ宇宙船の計器パネルを飾り、カシオミニの液晶で子供たちを熱狂させたあの様式美が、今、3Dプリントという令和の技術で「物理的な定規」になった。このギャップがたまらない。

 使い方はいたってシンプル。型に沿ってペンでなぞるだけだ。しかし、この「なぞる」という行為が、デジタルに慣れきったオジサンの脳を心地よく刺激する。

 まずは細いペンでフレームだけを追いかけ、構造の美しさを愛でる。次に、お気に入りのマーカーで特定のセグメントだけをグイッと塗りつぶし、無機質な数字を浮かび上がらせる。

 この定規、単なる文房具として使うだけではもったいない。その「穴」を利用した拡張性こそが真骨頂だ。例えば、不要なセグメントをマスキングテープで塞げば、即席のステンシル版に早変わり。描いた紙上のセグメントをカッターで切っても良いだろう。

 ガレージの棚や使い古したツールボックスに、スプレー一発で軍用機器のようなナンバリングを施せる。これだけで、そこらの安物が一気に「プロの道具」に見えてくるから不思議なものだ。

 さらに遊び心を出すなら、カフェタイムに持ち込むのもいい。カフェラテの上にこの定規を掲げ、ココアパウダーをパラパラと振りかければ、朝のコーヒーにその日の日付や目標歩数が浮かび上がる。3Dプリントゆえの「チープな気楽さ」があるからこそ、水洗いも気にせず、ラフに使い倒せるのが実にいい。

 「デジタルは便利だが味気ない」なんて贅沢な悩みは、この定規があれば解決だ。効率を求めるはずのデジタルフォントを、あえて手間暇かけてアナログで描く。この逆説的な遊びは、テクノロジーの進化を見守ってきた我々世代にこそ許された、知的な嗜みだと思うのだ。

 この「7セグメント定規」、分類上は文具なのだろうが、使ってみて感じたのは、これは「情報を自らの手で刻印するデバイス」だということだ。昨今の3Dプリント技術の普及は、かつて大量生産が前提だったテンプレートの世界を、個人の趣味の領域へと見事に引き戻してくれた。

 今後、このジャンルがどう転ぶかはわからないが、アルファベットを表現できる14セグメント版や、かつての電光掲示板のようなドットマトリクス版など、「アナログで描くデジタル」のバリエーションが増えていくのを期待せずにはいられない。

 効率一点張りの現代において、あえて手動で数字を刻む贅沢。このプラスチックの板が教えてくれるのは、数字という無機質な情報に「体温」を吹き込む楽しさなのかもしれない。

 さあ、次は何をデジタル化してやろうか。そういえば時間&分の分割コロンも描ける改良モデルも発売になったらしい。

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