本日の一品

Sigfox用の「AlterLock」で自転車をスマートに見守ってもらう

 思い出の詰まった大事な存在である自転車が盗まれると、家計だけでなく精神面でも大打撃を被る。筆者も約10年前にクロスバイクを盗まれた経験があるが、今でもふとした瞬間にそのことを思い出し、悲しい気持ちになる。犯人マジで許さないのである。

 盗難対策の基本は、ワイヤーやケーブル、U字などのロック類で守ることだが、より強固なセキュリティを構築すべく、Bluetoothトラッカー、GPSトラッカーといったアイテムも使いたいと思っていた。ただ、Bluetoothトラッカーはユーザーが増えないと追跡が困難な仕様だし、GPSトラッカーはずんぐりしていたり高価だったりするので導入しづらい。そういった不満を解消したアイテムが「AlterLock」だ。

AlterLock本体。単体だけ見ても、なにに使うのか想像しづらい不思議なフォルム
自転車に取り付けるとこんな感じ。充電用端子は、自転車関連製品では根強く採用されているmicroUSB。IP66に対応した防水防塵仕様だが、キャップを別途購入して取り付けたほうがより安心できるだろう

 AlterLockは、GPSトラッカーの一種といえる製品。本体価格は8900円、サービス利用料は月額390円(年契約なら3900円)だ。1万円を超えるGPSトラッカーが多いなか、この価格は頑張っている。低価格を実現できた要因の一つは、通信規格にSigfoxを採用しているからだろう。

実測54gで、付属のボルトを含めると61g。なお、付属のボルト自体は一般的なもので、盗難対策の機能は備えていない(後述するが、盗難対策用ボルトに交換してもらうことも可能)

 Sigfoxは消費電力が低く、長距離伝送を可能とするIoTネットワークで、2020年3月には全国をカバーする予定だとしている。また、安価であることも特徴としており、日本のSigfoxのネットワークを整備している京セラコミュニケーションシステムによると、最安プランでは1回線あたり年間100円から利用できる。AlterLockがどんなプランを使用しているのかは不明だが、安く運用できそうではある。なお、AlterLockのWebサイトからSigfoxのサービスエリアを確認できる。

 話がそれたので本筋に戻す。AlterLockは、自転車のボトルケージの取り付け台座にボルトで留める。もちろん、本製品と同時にボトルケージも取り付け可能だ。ただし、電波強度の問題があるらしく、ダウンチューブ側ではなく、シートチューブ側に取り付けることをメーカーは推奨している。

 本製品の厚みは8mmと薄めで、シートチューブにボトルケージを取り付けても、ダウンチューブ側のボトルケージと干渉する自転車は少ないだろう。なお、原稿執筆時点では提供されていないサービスだが、今後は盗難防止用の特殊なボルトの付け外し作業を自転車ショップで行ってもらえるようになるという。サービスが提供されたら、頼みに行こうと思っている。そのほか、取り付け時の細かい注意点は製品サイトに掲載されているので、購入前に合わせて確認しておこう。

チェーンリングのある側から見ると本製品が目立たないようなフォルムをしているが、チェーンリングのない側から見ると出っ張りが結構目立つ

 なお、筆者の自転車の場合はがっつり干渉する。というのも、筆者の自転車は本体サイズが小さく、いわゆる前三角のスペースが狭い仕様だ。なので、本製品を付けていなくても、もともとボトルを2本差そうとすると干渉する(工夫すればなんとかなりそうだが、面倒なので諦めている。また、シートチューブにボトルケージを付けているのは検証のためで、普段は付けていない)。

 後は、Android/iOS対応のAlterLock専用アプリからサービスへの申し込みや、自転車の写真やメーカー、モデル、車体番号などの情報などを登録し、本製品とBluetooth接続すれば準備完了だ。

写真の登録は必須。自転車の最新の状態がわかるようにするためにも、登録するその場で撮るのが良いかも
メニュー内の「使い方」から読めるセットアップガイドが親切でわかりやすい

 準備が整うと、AlterLockとスマートフォンは常時Bluetooth接続するようになり、接続が切れる、つまりユーザーが自転車からある程度離れることでオートガード機能が作動(再接続するとオートガードが解除される)。加速度センサーによる振動検知機能が反応すればアラームが鳴り、盗難抑止に役立ってくれる。

 また、スマートフォンに通知が送られるうえ、GPSで測位した情報も確認可能。GPSの立ち上げに時間がかかったり、駐輪した場所が屋内だったりすると測位できないこともあるが、その後も振動を検知するたびに測位し直してくれるので、本製品のバッテリーの続く限り位置情報はわかるようになる(バッテリー残量が十分なら2週間~1カ月程度は使えるとのこと)。警察に知らせるとき、SNSで目撃情報を募りたいときなどに役立てよう。

振動を検知したときの通知画面
そんなに試していないが、初報では位置情報が取れないことが多かった。初報では必然的に最後に置いた場所を指すはずなので、重要性は低めだと思う

 振動検知感度、Bluetoothの電波強度などは調整可能。振動検知の感度を「高」に設定するとちょっとした揺れでも反応してしまい、「低」でも反応するけどなんとなく不安という理由で、筆者は「中」に設定している。

 また、振動を検知したときのアラーム音は約80デシベルだという。実際にアラーム音を鳴らしてみたが、本体が薄いためか、少々うるさい程度で、あまり大きな音には感じなかった。いきなり鳴ったら誰もが一瞬びっくりする音量だとは思うが、すぐ鳴り終わってしまったら防犯効果は薄いだろう。音量は調整できないので、アラームの鳴動時間を延ばして対応しておきたい。

 なお、Bluetoothの電波強度に関しては、強度を弱くしておきたいのだが、最弱の設定でも障害物がなければ5~6mくらいは接続が切れず、接続も不安定になるような気がしているため、オートガード機能を使っていない。なので、手動でガード機能のオン・オフを切り替えるように設定している。Bluetoothの電波強度に関しては、使っているスマートフォンの機種や場所も影響すると思うので、オートガード機能を使う場合は、よく停める場所で実際に試して設定を探るのが良さそう。その際は、アラームが鳴動しないように設定しておくと周りに迷惑をかけずに済む。

設定画面。Bluetoothの電波強度はアップデートで細かく調整できるようになった
メイン画面に表示されるカギのアイコンをタップするとガード機能のオン・オフを切り換えられる

 AlterLockの機能には結構満足しているが、欲を言えば自転車が盗まれた後のユーザーの行動について、もう少しサポートしてくれるとうれしい。たとえば現状では、本製品が振動を検知した後、各種SNSで情報を拡散しやすいように定型文と位置情報を用意し、Twitter・Facebook・Instagramの公式アプリのショートカットアイコンも載せてくれてはいる。だが、共有機能がないので、サードパーティのアプリやWebブラウザでSNSを利用している人にとっては手間がかかってしまう。各種アプリを起動しても、自転車の特徴や画像についてはその場で入力や添付が必要になるのもネック。盗難直後は冷静な対応がしづらいはずなので、定型文はいつでも編集可能な状態にし、必要な情報をあらかじめ盛り込んでおけるようにしてほしい。

 SNSへの情報発信よりも先に、本当に盗難されたかどうかの確認(駐輪場所によっては撤去された可能性もある)、盗難届の提出、盗難補償の付いた保険に契約しているのなら保険会社に連絡する、といったことのほうが優先すべき行動だと思うので、こういった行動をサポートする機能もあればいいな、とは思う。こういったところは、アップデートに期待したい。

振動検知後に表示できる画面。SNSの発信をしやすくするよう、定型文が用意されている
各種SNSのアイコンが設置されているが、ただの公式アプリのショートカットで、該当アプリをインストールしていないと動かない

 AlterLockはセキュリティをちょっぴり強くして、安心感をもたらすガジェットだ。以前はカギをかけていてもコンビニでの短時間の買い物をしているときでさえ、自転車が盗まれないか気になってそわそわしてしまっていたが、本製品を導入してからはちょっと落ち着いた気持ちになった。今のところ本製品を頼るシーンに遭遇していないが、今後もそうならないよう願うばかり。こうした、軽くて盗難対策ができるアイテムは、今後も増えてほしい。

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