スタパ齋藤のApple野郎

Apple Arcadeのジグソーパズルに感動し涙する

Apple Oneでいちばん使わないのがApple Arcadeだったが……

 Apple Oneを利用している。Appleの4つのサブスクリプションサービスをセットにしたプランで、Apple Music、Apple TV+、Apple Arcade、iCloud+を個別に契約するより安価で利用できるというものだ。

 個人プランとファミリープランがあり、契約者のみ使える個人プランが月額1200円、契約者を含めて合計6人まで使えるファミリープランが月額1980円。俺の場合はApple Musicと有料のストレージサービスであるiCloud+を使っていたが、Apple TV+も使いたくなったのでApple Oneに契約したという感じ。ファミリープランを契約している。

 4つのサービスのうち、毎日使っているのはApple MusicとiCloud+。やや頻繁に使っているのがApple TV+。そして全然使ってなかったのがApple Arcadeだ。

 Apple Arcadeについては、一度スケートボードのゲームをプレイしてみて「なかなか愉快」と思い、ほかのゲームもプレイしてみて「けっこう愉快」と思ったり。しかしゲームはもっぱらPS5でプレイする(しかも頻度が低い)ので、Apple Arcadeは全然使わなくなった。

 そんなとき、iPhoneのポップアップだったかなんかで、Apple Arcadeからのレコメンドがあった。ジグソーパズルの「Illustrated(イラスト)」をオススメされた。

 えージグソーパズルぅー? 好きじゃないんですけどアレ。とは思ったが、課金されるわけでもないし、レコメンドされると試したくなる性分なので、とりあえずプレイ。

 結果、ヒッジョーにハマり、プラスアルファの効能も得られた。さらには感動の涙を流すに至っちゃった俺なのであり、ナニそれ大丈夫キミって感じだが、どういう体験だったのかご紹介したい。

絵画を堪能しつつ解くジグソーパズル

 まず「Illustrated(イラスト)」がどんなゲームなのかを。

 わりとフツーのジグソーパズルだが、ベースのグラフィックは絵画やイラスト。ゴッホから現代の水彩画やガッシュ画、Procreateによるデジタル絵画、ファンタジックな子供向けイラストなどまで様々なグラフィックが用意されていて、それをジグソーパズルとして遊べる。

 ひとりの作家ごとに同一テーマで数枚から10枚以上のグラフィックが用意されている。それぞれの絵にはストーリーや詩のようなテキストが添えられている。このグラフィックはイギリス人イラストレーターChris Dunnによるもの。Kenneth Grahameの「The wind in the willows」(たのしい川べ)の世界を描いている。

 難易度は簡単から超ムズまで調節可能。設定で難易度を調節できるほか、パズルの進行を手助けするヘルプ機能もある。それらを説明しつつ、このゲームの特徴をスクリーンショットで見ていこう。

設定で難易度を調節できる。たとえば画面右に表示されるピースをランダムに並べるか、それともグラフィックの四辺端にくるものから並べるかを選べる。ジグソーパズルはグラフィック外側から並べていくのが定石だが、それをしやすくし、難易度を下げられるというわけだ。
背景をうっすらと表示したり、あるいはそのグラフィックのストーリーをテキスト表示させて難易度を下げることができる。
これは難易度最上の設定。右側のピースはどの設定でもこのくらいの個数しか表示されないが、表示個数が少ないのでリアルのジグソーパズルより手間がかかり難易度が高い。なお、右に並ぶピースの向きは正しいので回転させるなどの手間はない。また、グラフィック上にピースを置くとき、その位置が正しい場合はピースが吸着されるように自動的にはまって動かせなくなる。
背景レイヤーを表示させる設定がこれ。グラフィックがうっすらと表示され、どこにピースを置くべきかの目星がつき、難易度が中くらいに下がる。
右上のツールを開くと、中央にU字磁石アイコンが4つある。これはヘルプ機能で、左から「グラフィック外周のピースを自動配置」「グラフィック中央のピースを自動配置」「5個のピースを自動配置」「1個のピースを自動配置」といった機能。労せずピースが並ぶ。ただし使用回数に制限がある。
ゲーム開始直後は、ピースには色が現れない。背景レイヤーはずっとグレースケール表示のままだ。画面中央部分が白飛びしていることもあり、画面周囲からピースを埋めていくことになりがち。
ある程度ピースを置いていくと、右側に並んだピースにもグラフィック上のピースにも徐々に色がついていく。
これは背景レイヤーに加え、ストーリーテキストも表示した様子。ストーリーのテキストが背景レイヤーにもピースにも表示され、これを手掛かりにしてゲームを進められる。最も難易度が低い設定だ。
ゲームを進めると置いたピースも右側のピースも色がしっかりと出てきて、手掛かりが多くなる。ピースが埋まるスピードもどんどん高まる。
あと1個♪
完成!
ストーリーを表示させた様子。絵に込められたテーマが語られる。
バッジ獲得的な要素もある。
ゲームにハマってプレイしていたら、1位になった! てかプレーヤー少ないんスね。でもまあ順位を競って楽しめるゲームってわけでもないのであった。

 こんなようなゲームである。ピースがハマるのに合わせてアンビエントサウンドが流れたりしつつ、完成形に近づく絵画やイラストレーションを楽しめる、なかなか心穏やかに遊べるジグソーパズルだ。

色と形に対する感受性が高まり、知らぬ間に絵を堪能している

 このゲームを始めて10個から20個のジグソーパズルを解いたころ、あることに気づいた。それは「こんなに絵を注視したのは初めてかも」ということだ。

 いや、そもそも、しっかり絵を見ないと解けないんですな、このゲーム。「この色は、この部分で使われているような……」とか「この鋭い線はココにつながっているような……」といった洞察を働かせつつ、ピース上の色や形、完成しつつあるグラフィックにある色や形をジックリと観察する。まあ普通のジグソーパズルと同様である。

 そうしていくうちに、背景が全然わからないエリアでも、「グラフィック上の青のグラデーションはこの方向で濃くなっているハズだから、この濃い青のピースは、ココらへんにハマるハズ!」といった読みができるようになり、そこに置いたらビシッとピースがハマったりして痛快なのである。緊張が解け心がほぐれる瞬間であり、つまりカタルシスなのであり、このゲームの快感要素のひとつだと思う。

 その快感を得るべく、さらにグラフィックやピースの色と形に対する観察が強まる。そうして絵のディテイルや全体をくまなく凝視するようになっていく。

 同時に俺の場合、最近はちょっとだけ水彩画に手を出していて、とくにこのゲームの水彩画グラフィックについてはスゲく凝視する。多くは「すごいテクニックだ!」「なんとまあ美しい表現」みたいに眺めて楽しんでいるわけですな。

 また、水彩画独特の筆運びや技法について少し知識があるので「この滲ませ方は空のグラデーションだろう」とか「背景が水彩で手前はガッシュかも」とか「森で木と草だらけだけどパース的にはこのピースの葉は近い位置だな」とか「空気遠近法っぽいしこの薄いのが上のほうかも」とか「色彩遠近法的にはこのピースは手前で下のほうかな」などと、あの手この手でピースやグラフィックに対する凝視のしかたが変わったりする。で、予想通りにピースがハマるとまたもやカタルシス♪

 でまあ毎日そんな観察をしつつこのゲームをプレイしているので、最近では見上げる夕景も水彩画みたいに見えているがさておき、なんだかゲーム上の絵から描き手の心が伝わってくるような気がしている。いやたぶん伝わっていて、絵のタイトルを見て「どういうことだろう?」と思っても、絵の全体像が見えるにつれて、心動かされるようなことが多くなった。そして絵の表現と俺の心の波長が同調したりすると、不意に涙が流れ出たりする。

 きっと知らない間に絵を堪能しているのだと思う。そして絵が持つ力を受け取っているのだろう。

 いやーしかし絵ってすごいっスね。このゲームで毎日眼福。そして毎日心が癒されるような気がしている俺なのであった。

 ちなみに記事中のスクリーンショットはMacのもの。Dell「U4021QW」(約40インチ曲面ディスプレイ/解像度5120×2160ドット)のスクリーンショットなので、横に長めなのであった。

 なお、このゲームはApple Arcade専用だと思われるが、Mac版以外にもiOS版やiPadOS版やApple TV版もある。iOSだとさすがに画面が小さいのでは? と思ってプレイしてみたが、拡大縮小の一手間があったりするものの、なかなか遊びやすいUIであった。

iOS版「Illustrated(イラスト)」をiPhone 14 Pro Maxでプレイしている様子。縦表示でも横表示でもプレイ可能。ピースを動かす指でピースが隠れないなど、操作性は意外と良い。ピンチイン・アウトでグラフィックを拡大・縮小することができるので、絵のディテイルを観察してピースをはめることができる。

 ちなみにこのゲーム、Macで遊んで中断し、その続きをiPadでプレイ、みたいなことはできないっぽい。完成したパズルは「完成済み」としてほかの端末でも認識されるっぽいが、ゲーム中の状態は同期されないっぽい。

 ともあれ美しい絵をたくさん見られるジグソーパズル「Illustrated(イラスト)」。Apple Arcadeを使っているならお試しあれ。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。