凝ったラベルをPCから作れるピータッチ9700PC

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


凝ったラベルをPCから作れるピータッチ9700PC

 ブラザーのラベルプリンタ、ピータッチ9700PCを購入した。スタパブログにも書いたが、壊れちゃったピータッチ9500PCからの買い換えである。……余談だが、ピータッチ9500PCは壊れていなかった!! まさかのUSBケーブル断線!! ビックリ&ガックリ&カッフン!! みたいな。

ブラザーのラベルプリンタ、ピータッチ(P-Touch)9700PC。パソコンにUSB接続して使うラベルライターだ。2万6501円で購入した

 ピータッチ9700PC(以下、9700PC)は、パソコンと接続してラベルを印刷するためのプリンタ。基本的にはパソコンと組み合わせて使うもので、いわゆるラベルライターとは異なるんですな。なお、パソコンとの接続はUSBもしくはRS232Cで、対応テープはTZテープおよびHGテープとなる。また、ラベル編集/印刷には付属の専用エディターソフトウェアP-touch Editorを使う。

使えるテープはHGテープ(幅6~36mm)とTZテープ(幅3.5~36mm)。どちらもブラザーのラベルプリンタ/ライター専用テープですなテープはカートリッジ式で、本体上部からセットするパソコンとの接続はUSBかRS232C
PC上でP-touch Editorソフトウェアを使ってラベルをデザイン/プリントするこれもP-touch Editor。2種類のインターフェースを持つが、どちらも同一のソフトの表示だプリント例。もちろんプラスチックシールとして貼れるラベルが作れるのだ
何用のACアダプタなのかをラベルで明示した例二次電池(充電可能な電池)の使用開始日時などを貼っておくのも便利液体をボトルに小分けしたときなど、内容物をラベルで示したりも

 てな感じで、オリジナルのシール・ラベルを作って整理整頓したり楽しんだりするわけですな。当然、ラベルなどに手書きするよりもキレイだし、視認性も高い。いちいちラベルを印刷する……ってのは確かにプチ面倒なんだが、その後の利便を一度体験しちゃうとラベルを作らずにはいられない、的な。

 さておき、以降、9700PCの使用感などについて書いてみたい。

なぜピータッチ9700PCを選んだか?

 PCにつながるラベルプリンタは多々ある。カシオのネームランドシリーズBiz系とか、あるいはKING JIMのテプラシリーズSR3xxx系SR9xx/SR5xx系などだ。拙者もいくつか使っているが、やっぱり結局、PC上でラベル内容を入力/編集してプリントできるのは自由度が高いし操作もラクだし何かと便利だ。

 そんななか、拙者が9700PCを決め打ちで購入するのにはチョイと理由がある。

 ひとつは、ブラザーのラベルライター/ラベルプリンタ用の標準的なテープがラミネートタイプだから。ラベルは、テープのベースの上に熱転写で印刷されているが、その上を透明な保護膜で覆うのがラミネートテープ。このタイプは耐久性に優れていて、わりと長期間使っても見栄えが汚くなりにくい。タフなんですな。

 もうひとつは、9700PCがハーフカット対応だから。ラベル印刷時、台紙からシールラベル部分を剥がしやすいように、ラベル面のみを分割してくれる機能である。

ハーフカット機能を使うと、プリントされたシールラベル部分のみが分割される。台紙までは分割されないので、非常に剥がしやすいのだプリンタドライバ上でハーフカット関連の設定を細かく行えるTZテープやHGテープは、シールラベルの台紙部分がラベル送り方向に分割されていたりする。ので、ハーフカット機能を使わなくても剥がしやすい

 上の写真のように、台紙までは切らないけど、シールラベル部分は切断してくれるのがハーフカット機能。この機能があると「あーもーラベル剥がしにくいなぁ……あう!! 台紙から剥がすの失敗してラベル端がシワに!!」的なフラストレーションがない。

 ただ、ブラザーのTZテープやHGテープは(全部かどうか知らないが)台紙部分が2分割されていて、そもそもシールラベル部分を剥がしやすい。ので、ハーフカット機能が必ずしも必要!! ってわけではない。んだが、やっぱ何かと便利な機能なので、この機能を持つ製品を選んでしまう拙者だと言えよう。

 結果、ラミネートテープが使えるってコトでブラザーのピータッチシリーズとなり、ハーフカット機能を求めるとRL-700S、ピータッチ9800PCN、ピータッチ9700PCの3機種が該当。RFIDラベル作成もネットワーク接続も不要なので、9700PCを購入したというわけだ。

シンプルな本体、高速印刷に向くHGテープ

 さて、まずはハードウェア的な使用感。9700PC本体は幅116×奥行き192.7×高さ140mm/質量1.57kgの四角い箱ですな。無彩色のシンプルなボディだが、どこにでもチョイと置けるのが好感触。ムダに中途半端なデザインが施されていないところもナイス。上面はほぼフラットなので、本体上にモノを置けたりもする。

本体前面。電源ボタンとテープカットボタンとSTATUSインジケータのみが並ぶ本体背面には主電源スイッチ、ACアダプタジャック、RS232Cポート、USBポートが並ぶ電源はACアダプタ。さほど大きくないACアダプタだが、フツーに邪魔である

 残念なのは、ACアダプタで使うという点。ACをアダプトする回路を本体に内蔵してくれたらもっとシンプルになるのに、と思った。でも恐らくたぶん、ブラザーって同じ製品をワールドワイドで売ってるメーカーなので、電源はACアダプタとして本体を分けるのが(作る側にとって)最適ってコトなんでしょうな。

 あとこのラベルプリンタ、HGテープという高品位なテープを使うと、高速印刷や高解像度印刷ができる。9700PCの基本的な印字解像度は360dpi×360dpiだが、HGテープ使用時のみ、解像度を360dpi×720dpi(高解像度印刷)や360dpi×180dpi(高速印刷)にすることができる。テープ送り方向の解像度を変更できるようになるんですな。

 ちなみにHGテープ使用時の印字スピードは、高解像度印刷時(360dpi×720dpi)が最大20mm/s、標準印刷時(360dpi×360dpi)が最大52mm/s、高速印刷時(360dpi×180dpi)が最大80mm/s。標準テープであるTZテープ使用時は、標準解像度(360dpi×360dpi)のみ選べて、印刷速度は最大20mm/sとなる。

 なんか細かい機能って感じだが、ポイントは、HGテープを使えばより精細な印刷(テープ送り方向のみ)が可能になること。それから、HGテープを使うだけでTZテープ使用時と同等かそれ以上の高速印刷ができるということだ。ともあれ、実際に各モードで印刷してみた。

HGテープを使った場合、このように印刷時の解像度(印刷速度)を選べる具体的な解像度はこのとおりどのラベルも左から、高速印刷(360dpi×180dpi)、標準印刷(360dpi×360dpi)、高解像度印刷(360dpi×720dpi)

 写真では、なんかこー、最も解像度の低い高速印刷(360dpi×180dpi)での出力結果が良好に見えがちだ。が、実際に目を凝らして見ると、当然だが、解像度が高いほうがきめ細かくプリントされている。高解像度印刷(360dpi×720dpi)が最もキレイという印象になるが、しかし、ぶっちゃけた話、高速印刷(360dpi×180dpi)や標準印刷(360dpi×360dpi)で十分って気がする。

 てのは、高解像度印刷にした場合、ある程度元画像(写真など)の濃度とかを調整するなりしないと「精細だけど明るすぎる/暗すぎる/コントラストがイマイチ」的なビミョーさが出てしまうことが多いからだ。一方、高速印刷や標準印刷だとナゼかそういう違和感が出るケースが少ない。

 曲線やモノクロの線画などの比較的に単調なグラフィックの場合、高解像度印刷でプリントしたほうが滑らかになる。んだが、パッと見にはそ~んなに変わらないという印象。標準印刷と高解像度印刷の違いは、まあモトの画像にもよるが、ルーペで見比べないとわからないケースもあるほど小さなものだと感じられる場合が多い。

 それから、TZテープ使用時は最大20mm/sの印刷速度になるが、HGテープ使用時だと高速印刷で最大80mm/s、標準印刷でも最大52mm/s。画質が同等となる標準印刷だけ考えても倍以上の印刷速度になる。

 てなあたりを総合的に見たり使ったりすると、拙者の場合はなんかやっぱ、HGテープ使うメリットは高速印刷かも!? てな気になる。だって結局、モノクロだし、主に文字をプリントするわけだし、高速印刷でも文字は十分キレイにプリントされるし。

 また、もっと言えば、個人使用でHGテープを購入する必要性って、なんかあまり高くないかも。てかフツー買わないかもHGテープ。TZテープより高価でありかつバリエーションも少なく扱っているショップも少なく、買っても(拙者の場合は)「印刷がちょっと速くなったニャ♪」程度の喜びなので、ん~、フツーにTZテープでイイっす、と。

印刷アプリの使用感

 9700PCはパソコン上で作ったラベルをプリントするためのラベルプリンタ。一般的なプリンタとして機能するので、各種アプリからラベル印刷を行えるが、通常は9700PC専用のソフトを使うことになる。そのソフトがP-touch Editor。ラベル面編集のための専用エディターソフトですな。

P-touch Editor(Ver.5.0)の表示例。2種類のインターフェース(レイアウト)を持ち、こちらはパッと見にわかりやすいタイプこちらは各種機能へ自由自在&手早くアクセスできるタイプ。表示タイプは画面左下のボタンで切り替えられる画面キャプチャやファイル/テキストなどのドラッグ&ドロップなどを手軽に行えるSnapモードもある。ウェブサイトで見つけたイカシたアイコンを即座にラベル化、みたいなコトも容易だ

 ブラザーのラベルプリンタとかって、ずいぶん早い時期からパソコンからのラベル印刷ができた。つまりラベル作成ソフトが昔からあった。確かWindows95の頃からだと記憶している。

 ともかく、そういう時代から脈々と続くブラザーのラベル面編集ソフト、最新版はどんな感じかと言うと……P-touch Editorの詳細についてはココにあるが、ナンでもコイって感じのソフトですな。初心者が使うにはちょっと多機能過ぎ&複雑という印象が残るが、ある程度凝ったラベル印刷をしたいと考えるユーザーにとって強力なツールになるし、業務用としても十分機能してくれそうだ。

ウィザードのような感じで新規ラベルを作り始められる用途が決まっていれば各種ひな形からラベル製作を開始できるこれは店舗用ラベルのひな形
もちろん、ひな形を使わず、フォントや飾り枠などを全て自分で決めていくこともできるソフトはわりあい感覚的に使っていける。ワープロソフトなどを使ったことがあれば、きっとヘルプを読まなくてもラベルを作れちゃうと思われるクリップアート類も多量に含まれている
シンプルだが使えるシンボル類も多々イラストも豊富。ただ、イラストに関してはテイストが古風!?顔のパーツを選んで似顔絵を作れるモンタージュ機能もある

 9700PC用のソフトとしてはこのP-touch Editorがフィーチャーされているが、ピータッチ9500PC用として存在するP-touch Quick Editorを9700PCで使うこともできた。

簡易ラベル作成ソフトのP-touch Quick Editor。テキストのみのラベルをちょっと作る、てなときに非常に便利なのだ枠の付加や縦書きもOK。文字のラベルを作るにおいて必要最小限+αの機能を持つピータッチ9500PCなど用のソフトだが、9700PCからでも使用できた

 前述のP-touch Editorは非常に強力なソフトで、9700PCの実力をビシッと発揮させるにはバッチリ。だが、ちょこっと使うには若干煩雑な使用感だ。一方、このP-touch Quick Editorは複雑なコトはできないものの、非常に手軽に利用できる。文字オンリーの簡素なラベルを作るだけなら、その手軽さからP-touch Quick Editorのほうが秀逸だと感じることもある。

 てな感じの9700PC。……ただ、単体では使えない製品(業務用途を視野に入れれば単体でも使える)ってコトで、なんか汎用性がナイんじゃないか? というイメージがある。また、正直なところ、9700PCで使えるTZテープは少々高価。HGテープだとさらに高価。なので、誰にでもオススメとは到底言えないっつーか言うつもりはない。

 んだが、ちょっと凝ったラベルをシッカリと作りたいヤツである拙者にとっては最高度の高い1台となっている。パソコン上で、使いやすいアプリを使って、自由なフォントやグラフィックやレイアウトで、自在にオリジナルラベルを作れる。また、前述のようにラミネートテープに出力できるし、ハーフカット処理などはマジで快適。てコトで、ラベル作りに一定以上の執念を燃やしたりクオリティを求めたりする人には、9700PC、かなりオススメ。マジでオススメ。

2010/3/29 06:00