スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

置くだけスキャンが超便利! CZURの超高速 非破壊型オーバーヘッドスキャナー「ET24 Pro」

 電子書籍がアタリマエになった昨今、「昔は“自炊”つって紙の本をバラしてスキャンして電子化してたっけなー」と懐かしく思う俺。当時は紙書類撲滅とかいって「近未来には紙の本や書類はすべて電子化されるんだろうなー」などと考えていた。

 のだがしかし! 紙の本も紙書類もありまくりで発生しまくり! まあ電子的なものも増え、紙の本は文化でもあるのでそれはそれとして、しかしまあいまだに俺の机上には紙の書類とかが乗っかっていて、なーんかこうモヤっているのであった。

 それと現実的な話、紙書類はやっぱり結局自力で電子化したほうが便利。なくさないし、すぐ見つけられるし、場所も取らない。ということで、発生した紙書類はスマートフォンで電子化している。

 のだがしかし! 枚数やページ数が多いと、スマートフォンでの手動電子化は面倒である。

 のだがしかし! 面倒だから後回し〜とかやってると、机上に紙書類が散らかるのである。

 こーゆー状況どうにかなんないかなー。やっぱりドキュメントスキャナーを使うのがいいのかなー。でもあれ数枚の紙書類をスキャンするとかだとちょっと違うっていうか、断裁した紙の本200ページのスキャンとかに好都合にできてるんだよなー。

 と、モヤり続けていたら、CZUR(シーザー)の「ET24 Pro」という「超高速 非破壊型オーバーヘッドスキャナー」を知った。そして「1秒でスキャン」「紙書類を置くだけで自動スキャン」「オートトリミング」など強いウリに脳味噌を揺さぶられて即座に買……えーこれクラウドファンディングなのぉ〜(クラウドファンディングあまり好きじゃない派)と思いながらもポチッとな。

CZUR(シーザー)「ET24 Pro」はこんなハードウェア。画像は左右から見た図で2台セットではない。
上部にカメラがあり、下に置いた紙書類をスキャンする。厚みのある本などにも対応する。1秒スキャンのほか、なんかスゴそーな機能性能を備えているらしい! クラウドファンディング(Makuake)での入手価格は6万7100円だった。

 いわゆる「書画カメラ」の高性能バージョンって感じですな。実機が届いて使ってみたら、なかなか便利だったので、今回はCZUR「ET24 Pro」をレビューしてゆきたいッ!!!

ET24 Pro、どんなふうに使うのか?

 ET24 Proは前述のとおり「オーバーヘッドスキャナー」。本体上部手前にあるカメラが、真下に置かれたドキュメントなどをスキャン(実質的には撮影)する。最大A3サイズのスキャンに対応し、両面結合機能を使えば二つ折りにしたA2サイズ書類のスキャンも可能。

ET24 Proはこんなふうにセットして使う。黒いマットは付属品。このテーブルのサイズは60×60cmあり、この程度以上の広さがあれば設置できる。スキャンには専用のアプリ(Windows/macOS/Linuxに対応)を使う。スキャンは本体のスキャンボタンのほか、付属のフットスイッチやスキャンスイッチ、アプリ上のスキャンボタンで開始できる。写真のように置かれた紙書類のみ抽出してスキャンし、書類が斜めに置かれた場合でも傾きが自動補正される。1回のスキャンにかかる時間は1秒程度。
付属のスキャンスイッチは手で押すためのもの。サイズは6.5×4cmくらい。
付属のフットスイッチは足で押すためのもの。直径7×高さ3cmくらい。両手で作業をしつつ足のスイッチでスキャンできるというわけだ。なお、これら2つのスイッチは、本体にどちらかひとつだけしか接続できない。
これは指サックと呼ばれる「本の両端押さえツール」。これで本の左右端を押さえてスキャンした場合、本に指サックが写り込まない。
専用の「CZUR Scanner」アプリの表示例。シンプルなUIで直感的に扱える。

 厚みのある本のスキャンもでき、湾曲補正機能により本の表面の歪みも自動補正してくれる。開いた状態の高さが10cm程度ある本を試してみたが、フォーカスがかなり深いようで、本表面の文字がボケることはなかった。厚い本を断裁せずスキャン可能(非破壊型)なのがウリだが、立体物を上から撮影するのにも便利。

EOS R5をスキャンしてみよう。このカメラの高さは97.5mm。
こんな画像が得られた。もしかしたら15cmくらいの高さがある被写体でもイケるかもしれないが、基本はドキュメントスキャンなのでそのあたりはまだ深掘りしていない。
付属のスイッチ類もスキャンしてみた。画質はまあまあ。でも写真的な画質ではない。

 本体の作りや操作感、接続性もシンプルだ。これも写真で見ていこう。

本体上部にはカラーディスプレイがあり、置いた書類がスキャン範囲内に収まっているかどうか確認できる。いちいちPCの画面を見ないで済むので、スムーズにスキャン作業を行える。
カメラがあるヘッド部下側。10個のLEDランプがスキャンする原稿を照らす。奥の支柱部分にある3つの丸いものはレーザーライト。原稿の厚みなどをチェックしているようだ。
支柱中央付近にあるのは着脱式サイドライト。ヘッド部のライトだと表面が反射してしまうような原稿を照らすのに使う。サイドライトとヘッド部のライトを同時に使うこともできる。
操作ボタンは台座部分に集められている。ヘッド部のライトのオンオフや光量調整、スキャンボタンが並ぶ。
ケーブル類の接続ポートは背面に集められている。電源は付属のACアダプター。

 単純明快でわかりやすいハードウェアだ。アプリは若干のクセが感じられたものの、これもわかりやすく作られているので、すぐに慣れることができた。

置くだけスキャンが超便利! 小さい書類は画質がイマイチなことも

 実際に使って「これは便利!」と感じたのは、「手めくりで自動スキャン」という機能。本のページをめくるたびに自動スキャンしてくれる機能だ。

 俺の場合、この機能を本のスキャンには使っていない。だが、スキャナーの下の黒いマットに書類を置くだけでもスキャンしてくれるので、「置くだけスキャン」的な機能として多用している。

 具体的な動作としては、マットの上に紙書類を置くと、ET24 Proが書類を認識してスキャン。マット上の書類を取り除き、新しい書類を置くと、また認識・スキャンとなる。前述のように書類が斜めであっても自動的に傾きを補正してくれるので、わりと無造作に書類を置いても大丈夫。書類を置いて、除去して別の書類を置いて……を繰り返していくだけでどんどんスキャンが進むのだ。スキャンは約1秒とホントに高速なのもあり、痛快なほど紙書類の撲滅が捗る!

「手めくりで自動スキャン」設定をオンにし、スキャナーの下に書類をポンと置く。
するとスキャナーが書類を自動認識して自動スキャン。置いたら即スキャンというイメージだ。
書類を置いて、取って、置いて、取って、と繰り返せばどんどんスキャンできる!
ただし、書類を置いてそのまま手を添えていると、手も書類と見なしてスキャンしてしまうことがある。でも、手をどかせば、書類を認識してスキャンするので、大きな問題にはならない。あとで手入りのスキャン画像を削除すればいいだけだ。

 初めてこの機能を使ったとき「なにこの便利さ〜!」と声が出た。スキャンボタンとか押す手間さえ不要。不定形の書類を次々スキャンできて超便利!

 まあ枚数が多いと「書類を置いて、取って」の回数が増えるのでそこそこ疲れるが。また、同じサイズの書類を連続スキャンするなら、紙送りが速いドキュメントスキャナーのほうが便利でもある。しかしET24 Proの「置くだけスキャン」的な機能は、書類サイズも書類の置き方も問わない。「原稿を雑に置いてもET24 Proがどうにかしてくれる」というラクさ気軽さが非常にイイのである。

 なお、ET24 Proのスキャン画質だが、まずまずフツーといったところ。カメラの画素数は2400万画素(24MP)で、初期設定では解像度は5696×4272ピクセル/320DPIとなっている。「高画素のミラーレスカメラで書類を撮影した感じかな?」と思ったが、ドキュメントスキャンのためにかなり画像を加工しているようで、写真的な画質ではなく、微妙に荒れているけどほとんどの文字は視認できる、といった印象のスキャン結果となることが多い。

スキャン結果はスキャンアプリ上ですぐ確認できる。これは横170×縦250mmの書類をアプリの初期設定でスキャンしたもの。
拡大するとこんな感じ。主な文字の視認性は高いが、色が薄く小さい文字の視認性は低い。

 そんなスキャンイメージなので、一般的な書類をスキャンして「主な文字が読めればいい」のなら実用的。しかし「書類のなかにある写真やイラストもキレイに」という場合はスキャン設定をしっかり調節する必要がある。

 また設定を追い込んでも「んー写真類をキレイにスキャンするのは無理かな」というケースが少なくない。鉛筆手書きとかクレヨン描画とかの「手書き・手描きのニュアンス」をキレイに残すことは……俺的にはET24 Proだと無理、と思う。

 それから、ET24 Proには「マルチターゲットページング」という機能がある。複数の書類を個別に認識し、一度にスキャンし、書類毎にスキャン画像が保存されるという機能だ。たとえば複数枚のレシートや名刺を置いてスキャンすると、名刺やレシートが個別のスキャン画像として保存される。

スキャナーの下にレシートを並べて置く。斜めになっていてもOK。
スキャンするとそれぞれのレシートが個別のスキャン画像として保存される。
レシートくらいのサイズでも、印字が極端に薄いとかでなければ、内容をしっかり視認できる。
ただし、ときどき個別の書類と認識してくれないことがある。結果、こんなふうなスキャン画像になる。書類の並べ方によって起き、1枚の書類のみこういう集合スキャンになったりするので、後からの確認が面倒。前述の「手めくりで自動スキャン」で1枚ずつ自動認識・自動スキャンさせたほうがいいかもしれない。
名刺もまとめてスキャン。
しっかり個別の名刺スキャン画像となった。ただし名刺の場合でもやはり、一部の名刺のみ個別のものと認識しないことがある。やはり「手めくりで自動スキャン」で1枚ずつ自動認識・自動スキャンさせたほうがいいかも。

 スキャンアプリ上には各国語対応のOCR機能もあり、書類の文字をテキストデータ化することができる。のだが、日本語に感してはけっこー怪しい。俺的結論を言えば「旧世代の日本語OCR」という印象で、実用性は低いと思う。

スキャンした名刺に日本語OCRをかけると……正しいのは「ケータイ」「関口 聖」「株式会社インプレス」「東京都千代田区神田神保」「神保町三井ビルディング」「リリース送付先」だけだった。ほかはけっこーメチャクチャに誤認識。実用性はほとんどないと思う。ちなみにmacOSのテキスト認識機能でこの画像をOCRさせたら「すべての文字を正しくテキスト化」できた。
前出の英語の書類もOCRしてみた。日本語OCRよりはマシで、タイトルの「CZUR Software Download Instruction」と3行目の「3. Select the model for your device」と4行目の「4. Move your mouse to the red square to select Windows or Mac, then click Download Button for your area, (For example, to download Shine Pro as below)」は正しく認識された。ただ、途中の行がなかったり、誤認識も多かったりで、やはり実用性は低い。

 てな感じでこのアプリのOCRには期待しないほうがいい。てか、OCRアプリはほかにイイのが多々あるので、そういうアプリを利用するのが賢明ですな。

 なお、CZUE ETシリーズスキャナーは、スマートフォンからでもスキャン操作を行える、と公式説明書に書いてあった。ただ、そのための準備手順でスキャナー底面にあるQRコードをアプリから読み取らないといけないのだが、俺のET24 Proの底面にはバーコードしか貼付されていないのでアプリを利用できなかった。残念&微妙。

手元の書類やモノを撮る、リアルタイムで映し出してのプレゼンテーションも可能

 ET24 Proには、これまで見てきたスキャナーモードのほかに、ビジュアルプレゼンモードがある。これはスキャナー下に置いた書類やモノを動画や静止画として保存し、それらをプレゼンテーション素材として使えるといったモードだ。

アプリでビジュアルプレゼンモードを使っている様子。ET24 Proが映しているものを静止画や動画に保存して利用できる。公式説明書には「WEB会議ツールでビジュアルプレゼン画面を共有する場合は、上記画面を開いた状態で WEB 会議ツールの 画面共有で「デスクトップ」を選択してください」と説明があった。
映している映像をフリーズさせ静止画の状態にし、線などを入れることもできる。動画として保存する場合もリアルタイムで線を引いたりマウス操作のレーザーポインターが使える。また、スキャナー側にマイクが内蔵されているので、声で説明しながらの動画撮影も可能。
このように拡大(デジタルズーム)しつつ上下左右にスクロールして任意の位置を表示することもできる。UIはシンプルなので、画像を拡大して「この緑の四角で囲んだエリアに……」などと声で説明しつつのプレゼンテーション動画を撮影できるだろう。

 それからET24 ProにはHDMI出力があり、プロジェクターやモニターと接続して、スキャナーが捉えた映像をリアルタイムで映し出すこともできる。ただしこの場合はPCとUSB接続できない。

 ET24 Proは机上や手元など、ET24 Pro直下の映像を捉えられるビデオカメラとしても利用できるというわけだ。実際にそうしてみると、ET24 Pro上に照明があり、光沢があるものは着脱式サイドライトで照らせばいいし、被写体の影も出にくい。フルHDビデオカメラなどと比べると画質的には劣るが、プレゼンテーション系での使用なら十分な画質があるとも感じられる。遅延もほとんど感じられない。

 てな感じのCZUR ET24 Pro。俺的に危惧していたのは、L字型の本体が分解できないので、不使用時に邪魔になりそう……というコトだったが、実際に使ってみるとそうでもなかった。

 机上に出しっぱなしにしても案外場所を取らないのだ。というのは台座部のフットプリントがケーブル突出分まで含めて20×20cmと狭め。メーカーは「デスクライトとしても使えますヨ!」的にアピールしていたが、「こんなゴツいデスクライト使わないよなー」と思っていたことについても、手元を非常に明るく影も少なく照らすので「あっ案外デスクライトとしてイイかも!」と思ったりした。

 あとは価格かもしれない。Amazon公式ストアでの参考価格は9万4500円。非常に汎用的に使えるスキャナーであり自動処理関連機能も充実していて、手元の映像を撮るためのカメラとしても使えて、どの機能性も実用的。これら機能をすべて使うならこの参考価格には頷ける。のだが、手軽にスキャンするだけという目的で買うにはこの参考価格は手軽じゃない感じですな。

 そのあたりをどう判断するか。でもハマる人にはハマる機能性と便利さがあるので、興味があればジックリとチェックしてみてほしい。

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スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。