スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

電子ペーパー「QUADERNO」を買って使って約2週間、その使い心地は?

QUADERNO Gen.2のA5サイズを買いまして~

富士通「QUADERNO(クアデルノ) Gen.2」のA5サイズ(FMVDP51)を机上で使っている様子。

 最新の電子ペーパーこと富士通「QUADERNO(クアデルノ) Gen.2」。試用してみたら非常にイイ感じで使えて、デジタルペンによる手書きも実用的であった。というわけで、試用直後にサクッと購入。A4サイズ (FMVDP41)とA5サイズ(FMVDP51)の2モデルがあるが、携帯性をやや重視してA5サイズを購入した。

富士通「QUADERNO Gen.2」は、PDFの表示および専用ペンによる手書きPDFへの書き込みを行える電子ペーパー。左がA4サイズ (FMVDP41)で右がA5サイズ(FMVDP51)。富士通WEB MARTでの直販価格は、A4サイズが6万9800円、A5サイズが4万9800円。

 買った目的はいくつかあって、PDFの製品説明書などの閲覧がまずひとつ。軽くて手軽に扱えるQUADERNOなら、PCやスマートデバイスがない環境でも説明書を閲覧できて便利かな、と。

 それから、紙のカレンダーと日報的記録を、QUADERNOでまとめて行えないかな?、と。理由は後述するが、紙でのスケジュール確認や日記的メモ書きをよく行うが、同じことをQUADERNOでできたらナニカと効率がいいかもしれないと考えた。

 あと、ちょっとしたメモ書きをQUADERNOで全部やってみたら? 付箋とかメモ帳を使う一時的なメモ書きを全てQUADERNOで行えば、使う紙類が減るし記録も残るし、好都合かもしれない、と思ったのだった。

 QUADERNOを購入後、上記のようなことをやってきたわけだが、さぁその結果どうだったのか? 以降、ざっくばらんなところを書いてゆきたいッ!!!

PDFで説明書を閲覧するに快適なQUADERNO

 まずはQUADERNOによるPDF閲覧。PDFビューワとしてクッキリ&ハッキリ表示でき、ドキュメントが読みやすいということは、以前のレビューで書いたとおりで、たぶんPDF説明書ビューワとして優れた使い心地だと予想できたQUADERNOである。でも実際はどうなのか?

QUADERNOには現時点で必要と思われるPDF説明書を入れている。

 とりあえず実践してみたのは、去年から仕事に使い始めたミラーレスカメラのキヤノン「EOS R5」の機能把握のための説明書読破。EOS R5の詳細ガイドって900ページ以上あるんスよ。QUADERNOに表示したPDF説明書を読みつつ、カメラの機能を試して理解を深めていく。撮影場所をちょいちょい変えたりしつつカメラ機能を試すわけだが、QUADERNOは紙の説明書より大きく表示させられるし、軽いので場所を変えつつの利用も容易だ。

PDF説明書でカメラ機能を確認しつつ、実際にその機能を使ってカメラへの理解を深める。場所を移動してのカメラ機能使用も、QUADERNOの携帯性なら容易、と考えた。

 しかし実際そうしてみると、率直なところ、予想したように好都合でも快適でもなかったQUADERNO。ナゼ?

 それは、900ページくらいあるドキュメントだと、QUADERNOでは目的のページにパッと飛ぶような読み方はしづらいからだ。PDF内のリンクをタップすれば関連ページにすぐ飛べたり、飛ぶ前のページに戻るのは容易ではある。が、サッと目次に戻って目的のページを探してそのページに飛んだりする操作は、(EOS R5の詳細ガイドは目次だけで7ページもあることもあって)表示切り替えが速いってほどでもないQUADERNOだと鬱憤がたまる。こういう使い方は、やはりPCの方が快適。

 ただ、そこまでページ数が多くないPDF説明書だと話は変わってくる。例えばシンプルな機能の家電製品。「温水便座の細かな機能ってどうだっけかな?」「除湿機の機能設定はどうやるんだっけ?」といったことを、QUADERNO上のPDF説明書をそれら家電の近くで調べるには実用的。

QUADERNOで温水便座の細かな使い方を調べ中の図。あっ便座ズラして掃除するのって、こうやるんだね?、みたいな。
除湿機の自動電源オフ機能はどうやってオフにするんだっけ? なるほど、このボタンを長押しか。

 QUADERNOは軽いし片手で余裕で持てるし表示が広く大きくて見やすいので、製品の近くで操作法などを閲覧するのは快適。いや、紙の説明書でも同様に閲覧できるが、紙の説明書の場合は必要なときに限って「あれぇ? 説明書ってどこにしまったのかなぁ?」なんてコトになりがち。

 ともあれページ数が多くないPDF説明書を閲覧するには、QUADERNOはとても実用的。ほかにも、腕時計のPDF説明書をQUADERNOで開きつつ時計の機能設定を行ったり、専門機関から配布されている難しい技術書をQUADERNOでじっくり読んだものの挫折したり、いろいろ役立つのであった。

 意外なところでは、市町村のゴミ分別PDFパンフレットを入れておいて「このゴミはどの日に回収?」といったことをチェックしたり、電車やバスのPDF時刻表を入れて閲覧するのに役立っている。電車やバスの路線図を入れて閲覧してニヤニヤしたりするのも楽しい。

ゴミ分別PDFパンフレットを閲覧中。頻繁に参照するようなPDFドキュメントは全部QUADERNOに。身近な書類を保管・閲覧するデバイスとして便利なのであった。
趣味の路線図眺め。巨大で高精細なPDF路線図でも(最初に開くのに数秒?十数秒かかるが)拡大や拡大後のスクロールはまずまず快適。早くこの路線図を見て旅行できるようになりますように!

 なお、QUADERNOは透明のビニール袋に入れてのタッチ操作もできる。ビニール袋により操作感が若干変わるが、PCやスマートデバイスを持ち込みたくない汚れ・粉塵の多い場所でも活用できると思う。ビニール袋に入れたQUADERNOをデジタルペンで操作することもできるが、ペンの汚れ防止は一工夫が必要(ペン先までラップなどで覆うと正しく手書きできなかったりする)。

紙のカレンダーと日報をQUADERNOでまとめる

 俺の場合、スマートフォンやPCなどで共有できるクラウドのカレンダーを使ってスケジュールなどを管理している。デジタルなスケジュール管理は1995年頃からローカル保存の形で始めたが、今見たらそれらのデータがクラウド上に全部上がっていた。っていうか以前に俺が上げたのであった。我ながらマメである。

 同時に、クラウド上の同様のデータを、紙のカレンダーの上にも書き込んでいる。パッと見で予定を一望できるからだ。スマートフォン上にもスケジュールがあるので、スマートフォンをパッと見て予定を確認することもできる。

クラウドのカレンダー(スケジュールデータ)はGoogleカレンダーを使っている。
Googleカレンダーと同時に紙のカレンダーにもスケジュールを書き込んで使用中。Googleカレンダーには詳しいスケジュールデータを書き込んでいるが、紙のカレンダーには「何時に何があるか」程度を書き込んでいる。

 都度のスケジュール把握は紙のカレンダーのほうが実用的だと感じる。なにしろ、何ら操作することなく、視線をカレンダーに向ければ予定確認完了だからだ。予定の書き込みも、単純に数文字~十数文字を書けばOK。さっすが便利。というわけで、情報の書き込みは二度手間にはなるが、紙のカレンダーも愛用しているのであった。

 それとは別に、紙の手帳に日報的なものを記入している。日記みたいなモンですな。シャープペンシルで記入。

日報的なものを記入している手帳。
日報の中身は、したことを記録してみたり、記憶に残ったことを落書きしてみたり。メモと落書きによる日記……的な?

 こういう日報、後から見返すとちょっと楽しい。「あのときはこんなだったなあ」とか「こんなことしてたのか」とか、過去の自分の意外性を発見できたりする。紙のカレンダーも同様。なので、どちらも保存しているのだ。

 で、こういう紙にメモなどしている事柄を、QUADERNOにメモしたらグッと効率的になるのでは、と考えた。最初からデジタルデータなので、管理もきっとラク。またカレンダーと日報が別々なのもアレだし、できればQUADERNO上で統合できればいいかも、とも思った。

 そこでQUADERNOで使えるテンプレートを物色。富士通が配布しているもので、ちょうど良さそうなものを見つけた。

富士通が配布しているQUADERNOでも便利に使えるPDFスケジュール・テンプレート。1年間分がまとまっていて、日ごとや週ごとのページもある。月曜始まりというのもナイス。各ページはリンクされており、素早くページ間を移動できるようになっている。

 テンプレートをQUADERNOにコピーすれば、そのままスケジュール手帳的に使えるようになっている。月ごと・日ごと・週ごとのページはリンクされているが、それぞれ別のページなので、日ごとのページに書き込むと、その内容が月ごとのページに反映されたりはしない。だが俺の用途なら、適当に組み合わせて使えばこれまでの紙のカレンダーと日報を統合してPDF化できそうだ。

 さっそく試してみたが、間もなく「これムリ無理むり?」って感じで玉砕した。理由は2つあった。
 ひとつは、QUADERNOがモノクロ表示であること。カレンダーに予定を書き込めば、まあパッと見で予定を確認できるにはできるが、書き込みがイマイチ目立たないし、曜日や休日も一瞬わかりにくい。紙のカレンダーは休日は赤印刷だし、書き込みも赤色で目立つように行っている。ので、ひと目でスケジュールがよくわかる。しかしそのわかりやすさが、QUADERNOにはナイのであった。そうか、色という情報は重要なのか。

机上のこんな位置にQUADERNOを置いた。オートスリープはオフで、夜になって机から離れるときに手動でスリープに。そんな使い方で半月くらいは余裕でバッテリーが保っている。
QUADERNOにカレンダーを表示。そこに予定を書き込んで使った。視認性自体は良いが、色がないのでどの日が祝日なのかなど、ちょっと戸惑う。カラー印刷の紙のカレンダーに色付きのペンで書き込むことって、情報量が豊かだったんスね?。

 もうひとつは、QUADERNOは筆圧非対応である点。俺の場合、紙の手帳への描画っていうか落書きをシャープペンシルで行っていて、線の太さや黒の濃淡をそれなりにスムーズに描けた。しかしQUADERNOだと(変更操作しない限り)線の太さが一定で、黒色の濃淡も(切り替えないと)表現できない。一筆で異なる太さや濃さの線はかけないのであった。文字についても同様で、強く濃く描いたり、小さく薄く書いたりすることが(切り替え操作などする必要が生じるので)行いにくい。

 結局、「チガーウ、コレジャナーイ」的な違和感があり、QUADERNOでの日報記入もやめてしまった。カレンダー利用も日報記入も、俺の場合はQUADERNOは紙媒体の代用とはならなかった。

 でも、色と筆圧以外については、十分スムーズに使えた。ので、たぶん、QUADERNOが筆圧およびカラー表示対応になったら、いよいよ紙のカレンダーや手帳を使わなくなるような気がする。

QUADERNOをメモ帳や付箋替わりに

 そのほか「QUADERNOはこういう使い方にはあまり向かないかもな?」と思っていたことがある。ちょっとしたメモ書きだ。そういうのは、ペンとメモ帳をサッと出してズギャッとメモれば済む。わざわざQUADERNOを出して、新規ページを作成して、そこにメモ書きするのは、手間が増えて遠回りになりそう……と考えていた。

付箋紙はディスペンサーから抜くタイプを使用中。と言っても、週に数枚使う程度。PCを起動しているときはPC上にメモ書きしてしまうことが多いからだ。
こちらはメモ帳。ポケットサイズで、たま?にコレに各種寸法などをメモし、そのサイズに合う部品などを買いに出かけたりする。

 しかし、メモ書きしたメモ帳や付箋紙、用が済んだら捨てちゃうのも何だかモヤモヤする。「そろそろあの大きめ付箋紙なくなるから買い足さなきゃ」「予備のメモ帳も買っておこう」とか思うと、さらにモヤモヤする。そこで、ダメモトって感じで、そういう細々したメモ書きをQUADERNOでやってみた。

A5サイズのQUADERNOの画面サイズは、短辺約15.5×長辺約21cm。ポケットサイズのメモ帳や一般的な付箋紙よりずっと広いので、大胆に書いていける。大きめに書いた字は視認性がいいですな。書くのも容易だし。
書いたメモ(ノート機能使用)は、QUADERNO画面上に9枚ずつのサムネイルで表示される。なにをメモしたのか、サムネイルからだいたいわかる。

 QUADERNOは付箋紙やメモ帳の代わりには向かないのでは? とか思ったのは、付箋紙などの紙類のように、ぱっぱっと次の新しい用紙に書いていけないような印象があったから。QUADERNOで新しいページを表示するには、画面上部のボタンを押して「ノートを作成する」をタップする必要がある(初期設定ではさらにノートのタイプ(テンプレート)を選ぶステップも必要)。

 だが実際にQUADERNOをメモ帳にせんと前向きに使っていくと、新規ページを出すのはスムーズ。画面上部のボタンを押してすぐ下に表示される「ノートを作成する」をタップするだけだ(特定のノートタイプを設定した場合)。

 たとえば「電話中にメモを取る必要が出た」という場合でも、QUADERNOのボタンを押してタップ操作をすれば、0.5秒くらいのタイムラグがあって、メモが書けるようになる。通話相手に「あっ今メモ出しますんで……」と言う間に準備できる程度の操作時間なので、実用上全く問題ない。

 また、取ったメモ(ノート)は、QUADERNO画面上で9枚のサムネイルとして表示される。サムネイルからメモ内容を読み取ることも(書いた文字が小さすぎなければ)可能なので、9枚のメモ書き済み付箋紙を同時に閲覧できる感じで利用できる。流出するとマズいメモの場合は消去できるし、残したいメモはPCやスマートデバイスへと容易に転送可能なのも、QUADERNOでメモ書きすることのメリットかもしれない。

 というわけで、俺的カレンダー&日報の代わりにはなりづらかったものの、メモ用途でのQUADERNO利用は意外なほど実用的。PDF説明書などのビューワとしても(ページ数が多くなければ)十分快適に使えるので、今後も身近な文具として書いたり描いたり読んだりしてゆきたいッ!!! と思った次第だ。

(オマケ)ワコム対応手持ちデジタルペンが全部使えた!!!

 そー言えば……。俺の場合、これまで「ワコムデジタイザ」を搭載したタブレットやPCやスマートフォンをけっこう多数使ってきた。ので、ワコムデジタイザ対応のデジタルペンも多数持っているのであった。

 そしてQUADERNO Gen.2に採用されているのも、このワコムデジタイザ。ほかのワコムデジタイザ採用製品用の手持ちデジタルペンは、QUADERNOで使えるのか?

手持ちのワコムデジタイザ搭載製品付属のデジタルペン。ワコムデジタイザには一応使えると思うが、画面とペンの相性がある場合が……確かあったように記憶している。ともあれ、これらをQUADERNO Gen.2で使ってみることに。

 どのデジタルペンがQUADERNOに使えるのかな?? と試し始めて数分、なんと手持ちのデジタルペン全てがQUADERNOで使えたのであった。全然問題ナシに。消しゴム機能とかも使えて。なお、手持ちのデジタルペンの中には、ペン先が少し柔らかいものがあったりして、そのペンでQUADERNOに書くと、これまた独特の書き心地を楽しめたりするのであった。

手持ちのデジタルペン全てがQUADERNOに使えちゃった?♪

 QUADERNO Gen.2は、WindowsマシンともMacとも各種スマートデバイスとも相性が良い電子ペーパーだ。そして幅広いワコムデジタイザ対応デジタルペンが使えた(メーカーは保証してくれないと思うが)。

 なので、たとえばGalaxy Noteユーザーをはじめとするワコムデジタイザ対応デバイスを使っているユーザーの場合は、「これまでのデジタルペンをそのまま使えて母艦とも容易に連携する電子ペーパー」ということで、QUADERNO Gen.2にちょっとした魅力を感じるのではなかろうか。

 アレっすよね、Microsoft Surfaceとかも確か……。ともあれ、メーカー保証はないものの、試しに手持ちのデジタルペンをQUADERNO Gen.2で試すために、実機に触れてみると楽しいかもしれない。

 いや~しかし手持ちのワコムデジタイザ向けデジタルペンが全部、全然問題なくQUADERNOで使えちゃうとは。死蔵していたデジタルペンがQUADERNOにより蘇り、なんか嬉しい気分の俺なのであった。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。