スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

シチズンの「充電不要のスマートウォッチ」を使ってみた!

「エコ・ドライブ Bluetooth」

シチズンの「充電不要のスマートウォッチ」を使ってみた!

 2016年12月9日に世界数量限定3000本の発売が予定されている、シチズンの「エコ・ドライブ Bluetooth」(公式ページニュース記事)。アナログ表示のスマートウォッチです。光発電(エコ・ドライブ)=ユーザーによる充電不要という点でも注目の的となっていますが、発売前に実機を試用する機会を得ましたので少々レポートを。

シチズンの「エコ・ドライブ Bluetooth (型番:BZ1025-02E)」。専用アプリによりスマートフォンなどと連係動作するスマートウォッチです。時刻などの表示は本格的なアナログタイプ。周囲の光により発電する「光発電エコ・ドライブ」搭載なので、電源に接続しての充電は不要です。メーカー価格は8万円(税別)、実質5万円台で予約受付をしているショップもあるようです。

 パッと見、彫りの深い文字盤を持つ高級クロノグラフ腕時計って感じですが、ていうかそうなんですけど、それに加えてBluetooth対応の歴としたスマートウォッチです。詳しくは後述しますが、スマートフォン側で専用アプリ(Android版およびiOS版)を使うと、腕時計にスマートフォンからの通知を送れます。メールが来たりSNSにメッセージが届いたりすると、腕時計がブルッと震えて、秒針が特定の位置を示すような通知機能です。スマートフォンから腕時計の機能の設定を行うこともできます。

 腕時計としての主な仕様は、ケース径48.0mm、ケース厚15.5mm(設計値)、質量130.8g(付属バンドを含む実測値)、月差±15秒、10気圧防水。ケースはステンレス製で、バンドはウレタン製。文字盤を覆うガラスは無反射コーティングのサファイアガラスです。

 前述のとおり、周囲の光により発電・蓄電して動作します。満充電後に一度も充電せず(光に当てず)に置いた場合、時計が止まるまでの時間は、スマートフォン連携機能使用時で約9カ月、スマートフォン不使用時で約1年6カ月です。

 ワタクシごとですが、従来機種(日本未発売)にあたる「PROXIMITY (型番:AT7035-01E)」(関連記事)を使っています。従来機種ユーザーのその視点からすると、この新機種は「アプリの進化もあってググッと使いやすくなった」という印象。いいな~新機種、みたいな。ともあれ以降、新モデル「エコ・ドライブ Bluetooth」の機能や使用感について書いてみたいと思います。

そのスマートウォッチ、ナニがデキるの?

 この「エコ・ドライブ Bluetooth (BZ1025-02E)」、単に腕時計としてもかなりイイ感じの作り・機能なんですけど、そのあたりはとりあえず割愛して、スマートウォッチとして何ができるのか? について、まずはザッとご説明を。

 スマートフォンと連係させて「スマートウォッチ」として機能させるためには、スマートフォンに専用アプリ「エコ・ドライブ Bluetooth」をインストールし、腕時計とスマートフォンをBluetooth接続します。アプリは、Android版がコチラ、iOS版はコチラにあります。

「エコ・ドライブ Bluetooth」アプリの表示例(iOS版)。トップ画面(左)では、腕時計の現在の発電量を抽象的なグラフィックの大きさと色で示します。中央はローカルタイムを設定している様子、右は腕時計に送る通知を選択している様子です。
アプリ内には取り扱い説明書一式も含まれています。項目によっては動画による説明を見ることも可能です。アプリをインストール→アプリ内で説明書を読む→そのままスマートウォッチとしてのセットアップまで行えます。

 で、アプリのインストール+腕時計初期設定後に「スマートウォッチとしてできること」ですが、「スマートフォンへの着信などの通知」「腕時計の時刻修正やローカルタイムの設定」「腕時計のアラーム設定」「腕時計の発電量可視化」「スマートフォンを探す」といったあたりです。スマートフォン側にアプリを追加すると「できることがさらに増える」といったことは、現在のところありません。

 さて、まず「スマートフォンへの着信などの通知」。スマートフォンへ新着のメールやメッセージが届いたら、それを腕時計に通知するという機能です。

 着信通知のオン・オフはアプリ上で設定しますが、iOS版アプリでは、電話/FaceTime/メッセージ/メール/Gmail/カレンダー/リマインダー/twitter/Facebook/Messenger(Facebook)/Hangout/Instagram/Likedln/Skype/Snapchat/Uber/Viber/WeChat/Webio/WhatsAppへの着信・新着を腕時計に通知できます。

 また、アプリやサービスによっては、特定のユーザーからの着信・新着のみを腕時計に通知するという設定も可能です。そのあたり詳しくは、実際にアプリをダウンロードしてチェックしてみてください。

 なお、通知は、腕時計の「音」「振動」「針の動き」で行われます。たとえばメールが来たら腕時計が「ピッ」と鳴りつつブブッと振動し、秒針が独自に動いて10時の位置にある「INFO」や、11時の位置にある「CALL」を指して止まります。「音」は鳴らさないなどの設定にもできます。

腕時計上での通知は、ピッという音(1度もしくは2度)、ブブッという感じの振動、それから秒針が指す位置で示されます。通知内容により、秒針は8時、9時、10時、11時の位置を指します。メールやSNSに新着があると、右写真のように秒針が10時(INFO)の位置を示します。
通知設定は「Notification」メニューから。メッセージの種類によっては、選んだ発信元ユーザーから着信・新着があった場合のみ、腕時計に通知することもできます。通知音の有無なども設定可能です。

 ほかのスマートウォッチの場合、通知とともに「どのアプリへの新着なのか」や「メッセージの一部」なども表示されたりするわけですが、この腕時計の場合はそこまで細かくはわかりません。もっと言えば「スマートフォンになにか着信があったらしい」くらいがわかる、というイメージです。

 それからアプリでできる「腕時計の時刻修正やローカルタイムの設定」や「腕時計のアラーム設定」。スマートフォンと接続すれば、スマートフォンを基準とした時刻が腕時計に自動設定されます。腕時計上では「現在時刻(ホームタイム)」と「ローカルタイム」を表示できますが、どの国の時刻をローカルタイムとして設定するかもアプリ上で設定できます。また、アラームの設定もアプリから行えます。

 さらに、腕時計の2つのボタンを同時に長押しすることで「スマートフォンを探す」ことができます。スマートフォン側の状態にもよりますが、腕時計のボタンを押すことでスマートフォンが音や振動を出してその位置を知らせます。それと、この腕時計、光発電をしているわけですが、その「発電の履歴」も見ることもできます。

左はローカルタイムを設定している様子。目的地をタップするだけで設定できます。中央と右はアラーム設定の様子。設定しやすく、腕時計のアラーム機能を多用する人には便利と思われます。
腕時計の2つのボタンを同時に長押しすると、スマートフォンが振動や音を発し、その「ありか」がわかりやすくなります(画像左)。腕時計にどの程度光が当たって発電したのかを、「日」「週」「月」の履歴として表示することもできます。

 腕時計とスマートフォンをBluetooth接続してできるのは、だいたい以上のことです。現在販売されているような、スマートウォッチ全般から見ると、できることはかなり限られているという印象になるかもしれません。

実際に使ってみて、どうなの?

 この「エコ・ドライブ Bluetooth」を数日使ってみましたが、結論から言えば「やはり充電不要というのはナイス!」というのが大きいです。光の当たらない引き出しの中に長時間(というか長期間)保管するなどしなければ、まあまずバッテリー切れは起きないと思います。

 余談ですが、前述の従来機種「PROXIMITY」は、腕に装着しているとき以外、直射日光が届かない室内で透明ケース内に入れて保管していました。「PROXIMITY」は購入後2年半ほど経過していますが、バッテリー切れは皆無。「月に一度くらいは日光浴」させたほうがいいらしいのですが、テキトーに扱っても(しまい込んだりしなければ)大丈夫っぽいです。その「PROXIMITY」より発電や節電の効率が高まっているこの「エコ・ドライブ Bluetooth」も、同様に「充電のコトとかは基本的に一切気にしなくてOKなスマートウォッチ」なんだと思います。

 ワタクシ、「Apple Watch Series 2」も使っていますが、これは電池の保ちがよくなったとは言え、よくて3日が限度。まあスマートフォンに近い情報端末として考えれば、充電も一種のクセになって、さほど苦労ってわけではないんですが、少々面倒だったり、出張時などは充電用ケーブルを携帯する必要があったりします(Apple Watch用充電ケーブルはミョーに邪魔)。

 電池切れの心配ナシの「エコ・ドライブ Bluetooth」ですが、通知における情報量はかなり限定的です。前述のとおり、腕時計の「音」「振動」「針の動き」で通知されるだけで、通知内容は「新着メールなのかSNSメッセージなのかもわからない」というレベル。その情報量だけ考えると、Apple WatchとかAndroid WearとかPebbleとかはイイよねと思います。Pebbleあたりは電池の保ちと通知情報量のバランスがイイですネ。

 しかし、それでも「エコ・ドライブ Bluetooth」は実用的だと感じます。ワタクシ的には、「あっスマートフォンに何か届いた」と即時わかれば十分。「たぶんあの件のメールか電話だろう」「もうすぐ打合せだっけかな?」など、心当たりが浮かび上がります。「この通知……何?」と、心あたりがない場合でもスマートフォンを見れば済みますので、まあ「エコ・ドライブ Bluetooth」の通知情報量でも十分ツカエルと感じているわけです。

 より多い情報量で通知してくれれば、さらに便利ではあると思います。たとえば通知パターンを設定できて、「メールなら秒針が6時の位置に来て音が3度鳴る」など、カスタマイズで「ユーザーが何の通知か判断できるパターンを作れる」とか。これなら「その通知がどのアプリから来たのか」くらいまでわかりそうです。まあでも、こうやって複雑になっていくと同時に、実用性とは乖離していきそうな気もしますが。

 もうひとつ、腕時計として満足感が高いのもイイ感じ。スマートフォンからの通知で「音」「振動」「針の動き」があるだけで、ほかは全部アナログ・クロノグラフ。外見がちょっとオモチャっぽいとか、文字盤がタイミング悪く光ったりとか、ムダに目立ったりとか、そういう「スマートウォッチには若干アリガチな場違い感」が皆無。ちょっと古い考え方なのかもしれませんが、「長い歴史と受け継がれた技術を内包した腕時計という道具を愛でつつ操作できる」のが嬉しかったりします。

ゲンブツはかなり重厚感のあるアナログ文字盤の腕時計です。作りも超キレイ。シチズンは部品ひとつから自社生産できるスーパー本格派時計メーカーなので、こういう作りの良さや高級感はサスガ。カラーやバンドのバリエーションも増やして欲しい感じです。

 あと、腕時計としてですが、視認性は良好で、やや厚め重めながらも装着感もイイです。まあそのあたりは「腕に常時装着しつつ目で見る道具」なので、実機に触れていただきたいところですが、操作感はシンプルでわかりやすいと感じます。動作モードは必要性が高そうな4種類(現在時刻/ローカルタイム/アラーム/クロノグラフ)で、竜頭の操作で切り換えられます。電池残量や曜日、アラームのオンオフ、スマートフォンとの接続状態も、下側のボタンを押すことで、文字盤の右上にあるインダイアルの「機能針」が示します。どれもすぐ覚えられ、スムーズに操作できるあたり、やはり老舗&世界的時計メーカーならではの洗練を感じさせます。

 といった感じの「エコ・ドライブ Bluetooth」ですが、まあ結局は、使う人次第だし好み次第かも。高機能過ぎないスマートウォッチとして実用的だと思いますし、腕時計としては完成……というより成熟のレベル。スマートウォッチに求める要素や使用感、デザインや質感などで、「エコ・ドライブ Bluetooth」に対する判断が分かれるように思います。

 思うに、軸足を腕時計に置きつつ、スマートフォンからの通知も少し腕時計で受けたいという人に向く「エコ・ドライブ Bluetooth」かも、です。スマートフォンを取り出さなくてもある程度のことをこなしたいのなら、このスマートウォッチはマッチしないような気がします。ともあれ、そのスタンスはわりと唯一無二と思われるスマートウォッチですので、ぜひ実機に触れてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。