法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
米国でモバイルビジネスを紡ぐKDDI
(2013/8/1 12:55)
スマートフォン、タブレット、ケータイ、PCなど、私たちの身のまわりにはさまざまなモバイルツールが存在し、それらを活かしたモバイルビジネスが広く展開されている。こうしたモバイルビジネスの発信地として、世界中に影響を与え続けているのが米国であり、その中心とも言えるのがシリコンバレーだ。KDDIはこの地において、数年前からモバイルビジネスの新しいトレンドやビジネスを開拓し、国内に展開する取り組みを行なっている。今回はその取り組みと、そこから明らかになるモバイルビジネスの日米での違いなどについて、見てみよう。
モバイルビジネスを変えたスマートフォン
この数年、国内の携帯電話市場は大きく変貌した。わずか5年ほど前、国内では各社から高機能なケータイが次々と発売され、各携帯電話事業者による多彩なサービスが提供されていた。世界市場と比べ、突出した進化を遂げた国内の携帯電話市場は「ガラパゴス」とも評されたが、その後のスマートフォンで展開されてきたプラットフォームやメーカーによる垂直統合型モバイルビジネスの展開を見て、日本のケータイビジネスの文化が影響を与えたと指摘する人も多い。
こうした日本の「ケータイ」に対し、現在、世界のモバイルビジネスをリードしているのが米国であり、その中心に位置付けられるのがシリコンバレーだ。米国市場は元々、国土が広く、地域ごとに通信事業者が違っていたことなどもあり、ケータイの進化はどちらかと言えば、遅かったと言われる。日本がケータイの全盛期を迎えていた頃、米国ではBlackBerryシリーズが圧倒的な人気を持っていたものの、一般消費者が使う端末は音声通話を主としたものが多く、日本のような高機能ケータイはほとんど普及していなかった。
そこに登場してきたアップルのiPhoneとグーグルのAndroidという2つのプラットフォームは、それまでビジネス向けとされていたスマートフォンの市場を一般消費者向けに一気に拡大することに成功し、モバイルを中心としたビジネスの流れを大きく変えることになった。その影響はモバイルビジネスだけでなく、PC業界やインターネットビジネス、通信事業者などを巻き込み、さまざまな業界のパワーバランスをも変えてしまった。たとえば、パーソナルなデジタルツールの主役はパソコンからスマートフォンやタブレットに移り、プラットフォームの主役もWindowsで市場を牽引してきたマイクロソフトではなく、グーグルやFacebookといったインターネットを中心にした企業が取って代わることになった。人と人をつなぐコミュニケーションも電話やメールといった1対1を軸にしたものに代わり、TwitterやFacebook、LINEといった多くの人ともコミュニケーションが取りやすい手段に置き換えられつつある。
また、国内市場においてもこの2年ほどの間で、順調にスマートフォンの普及が進んだが、その一方で、最近は国内の端末メーカーの不振を嘆くニュースが報じられることも多い。特に、グローバル市場での存在感の無さは深刻と指摘されているが、そういった状況は端末ビジネスに限ったことではなく、サービスやアプリ、ソフトウェアなど、他のジャンルにおいても日本企業はグローバル市場でなかなか力を発揮できず、苦戦を強いられているというのが実状だろう。
シリコンバレーに目を向けるKDDI
では、国内市場は今後、グローバル市場に後れを取ったままで、何も関係性を持たなくてもいいのかと言えば、そうではない。やはり、グローバル市場で生まれる技術やトレンドをいち早くキャッチし、それを国内市場にもつなげていく必要がある。ユーザーとしても国内向けサービスがグローバル市場にあまりにもかけ離れてしまった状態では、スマートフォンをはじめ、インターネットで提供されるさまざまなサービスを十分に楽しめなくなってしまうからだ。
そんな中、KDDIはシリコンバレーを中心としたエリアで、積極的に新しいモバイルビジネスの開拓やトレンドのキャッチアップに取り組んでいる。すでに、本誌では「KDDIアメリカに聞く『KDDI Open Innnovation Fund』の役割」、「シリコンバレーの最新動向を日本に伝えるKDDI研究所」という2つのインタビュー記事が掲載されたが、これらの取材を通して見えてきたのは、KDDIの積極的かつ柔軟性のある姿勢と日米のビジネススタイルの違いだ。
まず、KDDIは2012年2月からベンチャー企業に出資し、協業を実現するためのファンドとして、「KDDI Open Innovation Fund」を設立し、運用をスタートさせているが、これに先駆ける形で、米国での情報収集やベンチャー企業への出資を検討するため、2011年6月に米・サンフランシスコにオフィスを開設している。ちなみに、KDDIは2011年5月に国内でAndroidを中心としたプロダクトやアプリケーションにおいて、グローバルで通用するサービス開発を支援する「KDDI∞ Labo(ムゲンラボ)」をスタートさせているが、ベンチャー企業の育成や起業をサポートしようという姿勢は、この頃からスタートしたものだ。
そして、KDDI Open Innovation Fundが設立されてから、すでに約1年半が経過しているが、現時点ではすでに15社(内2社は海外企業)に出資を実現している。具体的には、子ども向けタブレットを手掛ける米Hufu、タクシー配車アプリの英Hailoに出資し、いずれも国内向けに本格的な展開を狙っている。
これらのKDDI Open Innnovation Fundによる出資は、必ずしもキャピタルゲイン(投資価値の向上によって得られる利益)だけを狙ったものではなく、ひとつの事業として、きちんと収益を上げることを目指している。KDDIアメリカのシニアマネージャー 豊川栄二氏によれば、米国のベンチャーキャピタルをはじめ、一般的なファンドは出資先の企業価値をいかに高めていくかが重要とされているが、KDDIという通信事業者がやっている以上、きちんと事業としての成功を描けることを重要視しているという。
ただ、その一方で、米国のベンチャーキャピタルに比べ、事業化計画などを検討する関係上、出資までに少し時間がかかってしまうジレンマもあり、できるだけスピーディーに出資ができるように、社内的な調整にも取り組んでいるという。特に、シリコンバレーの場合、起業から事業化までのスピードが早く、出資決定までに何カ月もかかっているようでは他の出資者が先を越されてしまう可能性が高い。後述するKDDI研究所のインタビューでも触れられた「意思決定の速さ」が重要なカギを握ってくるわけだ。
また、KDDIとしての難しさもある。我々、日本に住む人々にとっては、KDDIはその前身となるKDD、DDI、IDOの三社をよく知っており、なかでもKDDが国際電話事業を展開していたことから、海外でも知られているのだろうと勝手に解釈してしまっているフシがあるが、シリコンバレーにおいては、必ずしもKDDIの知名度が高いわけではなく、まず、KDDIを知ってもらい、人脈の構築から取り組んできたそうだ。ベンチャー企業への出資は、出資前の最新情報にいかに早くアクセスできるかが大切であり、そこに必要なのは人と人をつなぐネットワークになるわけだが、お互いに信頼関係がなければ、そういった最新情報のやり取りも難しい。IT業界のビジネスというと、技術的な優位性や先進性、独創性などが語られることが多いが、最終的には「ビジネスは人」であり、出資も「人」が重要なカギを握るようだ。
KDDIとしては知名度向上と人脈作りのため、ベンチャーキャピタルやベンチャー企業などを招いたパーティも催しているという。過去2回のパーティでは、田中孝司 代表取締役社長や高橋誠 代表取締役執行役員専務が参加し、近く3回目のパーティも開催する予定だそうだ。パーティというと、何となく華やかな席のように聞こえてしまいそうだが、海外ではこうしたパーティを通じて、企業や投資家、関係者などが交流を深め、新しいビジネスを生み出している背景もあり、KDDIとしても積極的に取り組んでいるのだという。
国内で展開するauスマートパスの会員数が500万を突破したことを米国のメディアを通じて伝えることで、このビジネスモデルに興味を持ち、auスマートパスへの参加を打診する企業も出てきているという。米国の市場規模から考えると、500万という数字はそれほど大きなものではないように見えるが、やはり、スマートフォン時代にこれまでまとまった形で、なおかつ一定の収入が見込める形で提供されるプラットフォームは、十分魅力的に見えるようだ。
ただ、こうして見つかった米国発のサービスやアプリがそのまま、日本に持ち込めるというわけでもないようだ。KDDIアメリカとしては、「エンターテインメント」「ツール」「ゲーム」「ヘルスケア」「知育」という5つのジャンルを注力する領域としているが、たとえば、ゲームなどはPCゲームの世界などを見てもわかるように、日本と米国ではグラフィックをはじめ、明らかにテイストや方向性が異なっており、日本に持ち込むには日本向けのアレンジが必要になるという。そういった意味において、米国のベンチャー企業が直接、日本市場にチャレンジするのではなく、日本の市場を知るKDDIが関わっていることが重要なポイントになってくるのだろう。
逆に、エンターテインメントのジャンルでは、米国でビデオディスカバリーサービス(見たい映像コンテンツを探してくれるサービス)が充実しており、こういったものをauのビデオパスやJ:COMのビデオサービスなどに応用することで、新しい魅力を生み出せるかもしれない、と考えているそうだ。確かに、国内でも各携帯電話事業者が提供するビデオサービスをはじめ、プラットフォームを提供するアップル(iTunes)やグーグルが提供するビデオサービス、Huluに代表されるインターネットで提供されるビデオサービスが増えてきており、これらを効率良く視聴できるサービスができるのであれば、ユーザーとしても期待したいところだ。
KDDI Open Innnovation Fundによる出資は、まだ始まって約2年に過ぎないが、着実に知名度を上げつつあり、その成果も見え始めているようだ。今後、うまく出資が事業に結び付いていけば、auスマートパスなどを通じて、米国発の新しいサービスやアプリが登場し、国内市場においてもスマートフォンの新しい利用スタイルを生み出すことになるかもしれない。
シリコンバレーで起業を追うKDDI研究所
日本と海外のビジネスを比較するうえで、日本はベンチャー企業が育ちにくいと言われることがある。グーグルをはじめ、映画「ソーシャルネットワーク」でも扱われたFacebookの例を挙げるまでもないが、米国では個人や数人のグループが起業し、そこに投資家が出資をして、ひとつの企業として育っていくというストーリーを頻繁に見聞きする。もちろん、国内でもいくつものベンチャー企業が成功を収めているが、グーグルやFacebookのようなグローバル企業への成功事例は非常に少なく、比較的、ベンチャー企業が多いと言われるモバイルビジネスにおいてもサクセスストーリーが語られるほどの例は多くない。では、米国ではどんな形で、新しいモバイルビジネスの芽が生まれてきているのだろうか。
サンフランシスコからクルマで約1時間ほど移動したシリコンバレーに、「プラグアンドプレイ テックセンター」という名のインキュベーションセンターがあり、KDDI研究所がオフィスを構えている。ユーザーには「インキュベーションセンター」という言葉があまり馴染みがないが、簡単に言ってしまえば、「Startup」と呼ばれる起業したばかり事業者を対象に、設備や資金、経営のノウハウなどの面でサポートする施設のことだ。このプラグアンドプレイ テックセンターはシリコンバレーのインキュベーションセンターの老舗的な存在として知られ、インターネットの決済サービスとして、米国を中心に普及している「PayPal」など、いくつものベンチャー企業がここから巣立っている。
KDDI研究所はここにオフィスを構え、シリコンバレーで毎日のように開催されるカンファレンスや交流会などに参加し、そこで出会った人や企業とコンタクトを取りながら、新しいモバイルビジネスを開拓し、日本に紹介する役割を担っているという。同様の取り組みは前述のように、KDDIアメリカのサンフランシスコのオフィスでも取り組んでいるが、サンフランシスコのオフィスの取り組みが事業化を狙った短いスパンの開拓であるのに対し、KDDI研究所は将来的なことを見据えた比較的長めのスパンのビジネスを念頭に、新しいビジネスを開拓しているという。同時に、KDDIアメリカンのサンフランシスコでピックアップされた技術をKDDI研究所で評価するような取り組みを行なっている。
長めのスパンのビジネスを念頭に置いているとは言うものの、すでに「Localmind」というアプリは共同で開発を進めることができ、auスマートパスのラインアップに加えることができたという。KDDI研究所 Technology Development Managerの森田恵美氏によると、この「Localmind」は位置情報をベースにしたソーシャルネットワークサービスで、店舗などの混雑状況をその場所にいるユーザーから投稿された情報を基に、共有するサービスだという。オリジナルのアプリにはなかった写真のアップロード機能や日本語化などの開発をサポートすることで、auスマートパスに入ることになったそうだ。
KDDI研究所としては、現在、主に「ビッグデータ」「UI(ユーザーインターフェイス)/UX(ユーザーエクスペリエンス)」「モバイルヘルス」「Education Technology(教育)」という4つのジャンルに注目しながら、シリコンバレーで活動しているという。すべてにおいて、投資を前提にした協業を目指しているのではなく、それぞれの担当がこれまでの仕事で経験してきた強みを活かしながら、情報を集めているそうだ。
一方、KDDIは通信事業者であるため、米国のVerizonやAT&Tなどと同じように、古いタイプの会社と見られてしまい、なかなかStartupに受け入れられないようなケースもあるという。しかし、KDDIの持つ技術を使ってもらったり、3GPPでの無線技術の標準化などの動向を伝えたりすることで、少しずつKDDIという起業が理解され、さまざまな話ができるようになっていくそうだ。
ところで、我々ユーザーとしては、日本市場がどう見られているのかも気になるところだ。特に、日本市場とグローバル市場のニーズが離れていて、グローバル向けに提供されているサービスが日本で利用できないといったことが起こりやすいからだ。この点について、KDDI研究所 シニアマネージャーの土生由希子氏は、「日本市場は参入障壁が高い」と見られているという。その理由のひとつとして、「何か物事を決めるために通過しなければならない階層構造があり、最終的な意思決定に時間がかかる」ことを挙げている。特に、起業したばかりのベンチャー企業は数カ月分の資金しか持ち合わせていないため、意思決定を待っている間に、資金が底をついてしまうことも考えられる。極端なことを言えば、日本市場にある程度の規模があり、魅力的だったとしても意思決定に時間がかかったり、参入に手間がかかるようであれば、その間にブラジルなど、他国の市場を目指した方がいいのではないかと判断されてしまうわけだ。もちろん、KDDI自身もこの点を十分に認識しており、日本側の対応も含め、迅速な対応と意思決定を心がけているという。
しかし、その一方で日本市場はユーザーのリテラシーが高く、企業間の取引も非常に紳士的に行なわれていることはしっかりと認識されているそうだ。突然、契約を反故にされるようなこともないため、参入障壁は高いが、入ってしまえば、安心して付き合える市場と認知されている。同時に、KDDIアメリカのインタビューでも触れられていたように、auスマートパスの500万という会員のボリュームは、ひとつの受け皿として、Startup各社にも魅力的に映っており、世界に先駆けて、こうしたプラットフォームを構築したことで、海外の通信事業者からも問い合わせを受けたり、注目されているという。そういう意味からもKDDIとして、今後も積極的にauスマートパスというプラットフォームを活用していかなければならないと考えているそうだ。
モバイルビジネスに限ったことではないが、日本と米国でのビジネススタイルの違いも痛感しているという。たとえば、シリコンバレーをはじめとした米国のビジネスは、徹底的にユーザーオリエンテッドであり、ユーザーのベネフィットが最優先で考えられている。なかでもベンチャー企業とのビジネスでは、通信事業者などの各企業がどう儲けるかといったことは後回しで、極端なことを言えば、あとからビジネスモデルを付けていくといったスタイルも一般的だという。これに対し、日本は事業計画を立てるところから始まり、すぐにいくら儲かるのかといった質問が飛び交うことになる。これではベンチャービジネスも起ち上がらないし、育たないというわけだ。
さらに、日米間でのビジネスのやり取りについてもその難しさがあるという。たとえば、日本と米国西海岸では16~17時間の時差があるため、お互いのビジネスタイムで重ねる部分を考えると、実質的に使える時間は1日あたり数時間しかない。そのため、前述の意思決定の時間も日本国内で展開しているとき以上に短くなってしまうわけだ。同時に、シリコンバレーで得られた情報を日本に流したり、日本の情報をシリコンバレーで伝えるだけでなく、相互に情報も人も行き来することで、密に関わっていかなければ、なかなかビジネスとして連携していくと、協業していくことは難しいのだという。
そういった意味でも日本のKDDIという企業がシリコンバレーのインキュベーションセンターにオフィスを構え、米国のベンチャー企業に積極的に関わりを持ち、相互にやり取りできる体制を作りつつあることは、今後の展開を考える意味でも非常に重要だ。シリコンバレー発の新しいサービスやビジネスがKDDIを通じて、日本に進出するだけでなく、KDDIやauと関わりの深い日本のベンチャー企業がここを通じて、米国に展開できる日が来ることを期待したい。
KDDIが紡ぐ日米のモバイルビジネス
冒頭でも触れたように、ここ数年の急速なスマートフォンの普及はモバイルビジネスの在り方を大きく変えることになった。新聞などの一般メディアでは、日本企業の存在感の無さ、なかでも端末メーカーのグローバル市場での不振が強調されているが、冒頭でも触れたように、サービスやプラットフォームも含め、モバイルビジネスとその周囲にある業界も巻き込みながら、大きな地殻変動が起きているというのが実状だ。
こうした状況において、KDDIはいち早くシリコンバレーに拠点を開き、日米のモバイルを中心としたビジネスを多岐に渡って、連携させ、相互にやり取りできる環境を作ろうとしている。ユーザーに見える形での成果は、まだ限られているが、今後、auスマートパスなどを通じて、さまざまなサービスやプラットフォームが国内市場に登場してくることが期待できそうだ。
モバイルビジネスの市場がグローバル市場で展開される状況において、日本の携帯電話事業者やメーカー、サービスプロバイダー、ソフトウェアベンダーなどがどのように関わっていくのかという点においてもこのKDDIの取り組みは注目できるケースと言えそうだ。今回はKDDIについて触れたが、NTTドコモも今年1月、2013 International CESが催された際、開発者向けイベントを開催するなど、米国での取り組みを行なっている。その一方で、ソフトバンクのように、通信事業者として、米国に乗り込むような取り組み方もある。
ただ、日本のモバイルビジネスの市場が米国、シリコンバレーとの関わりを深めていくために、日本の企業やユーザーも少しずつ意識を変えなければいけない時期に来ているという見方もできる。たとえば、これは今回の取材のみで得られた印象ではないが、よく日本は『看板社会』だと言われることが多い。つまり、所属や肩書きといった看板を重視するばかりで、個人を評価することができていない社会になっているという見方だ。しかし、KDDIアメリカやKDDI研究所の方からシリコンバレーでの動向をうかがっていると、米国は「人を見て、投資する」という方向性があるという。闇雲に「○○さんだから、投資する」という話でもないが、やはり、人を評価する風土があることは、日米のビジネスの違いを語る上でのどうしても避けられない話であり、今後、日本のベンチャー企業が拡がっていく上でも意識を変えなければならないところかもしれない。
モバイルビジネスのサービスにおいて、プライバシーの扱いに対する意識が日米の間には大きな差があるという。米国でプライバシーの意識がないというわけではないが、政府が国民の通信記録を盗み見るようなケースには怒るのに対し、企業などが提供するサービスで個人に関わる情報を得ていることについては、「サービスを利用するうえで、ある程度はしかたがない」と考えているユーザーも多いそうだ。逆に、日本はプライバシーについて、非常にセンシティブな市場だと言われており、それがさまざまなサービスの展開を難しくしている側面もあるという。プライバシーの問題は簡単に片付けられることではないが、日本のユーザーも少し意識を変えなければいけない時期に来ているのかもしれない。
今後、スマートフォンやタブレットを軸にしたモバイルビジネスはさらに発展、拡大していくことが予想されるが、今回取り上げたKDDIのように、通信事業者がしっかりと取り組んでいくことで、我々ユーザーにとって、より便利で楽しく、使いやすい、ワクワクする体験が提供されることを期待したい。