“使い方で選べる”ラインアップ、ドコモ2012年夏モデル
5月16日、NTTドコモは2012年夏モデルとして、19機種を発表した。昨年11月の2011冬~2012春モデルに続き、Xi対応スマートフォンを11機種と充実させる一方、今年4月から放送開始の「NOTTV」に対応したモデル5機種をラインアップに加え、さらにAndroidプラットフォームは基本的に最新のAndroid 4.0に統一するなど、いよいよ本格的に多くの人がスマートフォンに移行できる体制を整えている。
発表会の詳細については、本誌のレポート記事を参考にしていただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方やタッチ&トライで試用した端末の印象などを踏まえて、解説しよう。
■これからのスマートフォン選び
2010年度に252万台、2011年度に882万台と、着実に年間販売台数を伸ばしてきたNTTドコモのスマートフォン。今年度は2011年度の約1.5倍に相当する1300万台を販売する計画だと言う。これを強気と見るか、手堅いと見るかは難しいところだが、今から2年前の2010年度と言えば、4月1日にXperia SO-01Bの販売が開始され、5月18日に行なわれたNTTドコモの2010年夏モデル発表会において、山田隆持代表取締役社長がサプライズとして、ポケットからサムスン製「GALAXY S」を取り出し、同年中にNTTドコモからリリースすることを明らかにしたときだ。あれからわずか2年しか経っていないが、国内市場はすっかりスマートフォン一色に様変わりしてしまい、店頭での売れ行きも大半がスマートフォンという状況になりつつある。筆者の周囲でもそれほどデジタルが大好きというわけでもない人たちがスマートフォンに興味を持ち始め、いろいろと質問をしてくるようなシチュエーションが増えてきた印象だ。
ただ、これからも順調にスマートフォンが国内市場で普及していくかどうかは、まだ読めないという指摘も耳にする。たとえば、あるメーカー関係者は「これまでスマートフォンを購入してくれた1000万のユーザーより、次の1000万ユーザーの方がもっと大変だ」と話していた。これまでスマートフォンを購入したユーザーは情報感度やITリテラシーが高い人が多いため、機能やサービス、しくみなどについての説明も比較的、容易に理解してもらえたが、これからスマートフォンを購入する人たちに対しては、今まで以上に丁寧な説明、わかりやすいガイド、使いやすいユーザーインターフェイスが必要になるというわけだ。
また、スマートフォンやタブレットで広く採用されているAndroidは、プラットフォームそのものが急速に発展途上中であるため、プラットフォームとハードウェア、アプリなどのバランスが不十分なモデルもあり、どうしても製品ごとに使い勝手やタッチパネルのレスポンスなどに差が感じられるような状況だった。これに加え、スマートフォンをどういう基準で選べばいいのかが今ひとつ見えていなかったため、スペックばかりが注目されるようになってしまい、ユーザーインターフェイスやアプリ、使い勝手などの部分がやや置き去りにされていた感もあった。
今回、NTTドコモは2012年夏モデルの発表において、「『スペック』で選ぶスマートフォンから『使い方』で選ぶスマートフォンへ」というコピーを掲げ、スマートフォンの選び方を変えようと提案している。具体的には通信速度やCPU、メモリ、HD(解像度)、画素数などの数値的なもので選ぶのではなく、「ネットを楽しみたい」「簡単に使いこなしたい」「動画を楽しみたい」「好みのサイズを選びたい」「NOTTVを見たい」という使い方で選んで欲しいという提案だ。それぞれの使い方が実際のユーザーのニーズにマッチしているのかという部分については、少し疑問が残る部分もあるが、少なくとも画面サイズやCPUといったスペック競争に終始せず、ユーザーの利用シーンを考えたラインアップを揃える方向性を打ち出したのは、評価できることだろう。
■“iモード”がないラインアップ
今回の夏モデルで、もうひとつ注目すべき点は、NTTドコモの各商戦期のラインアップ発表において、iモードのサービス開始以来、はじめて対応する新機種がないということだろう。
1999年のサービス開始以来、NTTドコモの主力サービスとして、常に端末ラインアップの中心にはiモード端末が存在していたが、今回はスマートフォン及びタブレットが17機種、モバイルWi-Fiルーターが1機種、キッズケータイが1機種という構成で、iモード端末の新機種は発表されなかった。発表会の質疑応答でもiモード端末の新機種がない理由が質問されたが、これまでのように、NTTドコモとしては商戦期ごとにiモード端末の新機種を投入するのではなく、1年に1回程度で十分という考えのようだ。ちなみに、NTTドコモは昨年11月の冬春モデルでは、フィーチャーフォンを8機種、発表しており、次のシーズンまで当面はこれらのモデルが継続販売される。
iモード端末の新機種がないことの是非については、何とも評価しにくいが、地域による差はあるものの、保守的なユーザーが多いと言われるNTTドコモの顧客層でも半数以上がスマートフォンを購入しているという実状を考えると、しかたがないとも言える。とは言え、一気に新機種をゼロにしてしまうことは、スマートフォンを欲していないユーザーに対して、無用の不安を与えてしまうことになり兼ねない。
たとえば、昨年の冬春モデルを継続販売するにしてもカラーバリエーションを追加したり、外装をリニューアルするなどの方法で、選択肢を残しておいても良かったのではないだろうか。auが夏モデルの9機種中、3機種のフィーチャーフォンをラインアップした姿勢と対照的だ。
■スマートフォンを中心に19機種をラインアップ
NTTドコモの2012年夏モデルは、スマートフォン及びタブレット17機種を中心に、19機種がラインアップされている。NTTドコモでは、昨年11月の冬春モデル発表時、それまでのラインアップで利用してきた4つのシリーズの区分を見直し、スマートフォンについて、ハイスペックモデルやグローバルモデルが中心の「NEXTシリーズ」、カジュアルなモデルをはじめ、デザインや個性を重視したモデルがラインアップされる「withシリーズ」に区分し、ラインアップを再構成していた。
今回の2012夏モデルでは、NEXTシリーズ8機種、withシリーズ7機種、タブレットとらくらくホンシリーズを1機種ずつが発表され、主力の2つのシリーズはほぼ同数でバランスが取られている。ただ、販売店などで聞いてみると、NEXTシリーズとwithシリーズの区分は今ひとつユーザーにわかりにくく、前述のように、はじめてスマートフォンを購入するユーザーが明確な選択基準を持っていないため、どうしてもスペック重視で選んでしまう傾向に結びついているという。
形状やスペック面で見てみると、ボディ形状は全機種が一般的なスレート(板状)タイプを採用しており、従来モデルのようなテンキー付きやQWERTYキー付きのモデルはラインアップにない。QWERTYキー付きについては、国内市場の状況を考えると、必須ではないのかもしれないが、フィーチャーフォンから移行するユーザーが一段と増える状況を考えると、テンキー付きのモデルを1機種もラインアップしないというのは、少し気になるところだ。テンキー付きのモデルの選択肢は、昨年の冬春モデルのAQUOS PHONE slider SH-02Dのみに限られることになる。
ディスプレイサイズについては、夏モデルで提案された「使い方」(選び方)に「好みのサイズを選びたい」という項目があることからもわかるように、豊富なバリエーションを揃えている。3インチ台のモデルが4機種、4インチ台が10機種、5インチ台が2機種、10.1インチが1機種という構成だが、4インチ台も細かく見てみると、4.0インチが2機種、4.3インチが2機種、4.5インチが1機種、4.6インチが3機種、4.6インチが3機種、4.7インチと4.8インチが1機種ずつと、全体的に大画面化が進んでいる。
ディスプレイサイズはボディ幅に影響するため、大画面化を敬遠する声もあるが、タッチパネルでの操作性を考慮すると、ある程度のサイズがあった方が操作しやすく、視認性も優れているため、はじめてスマートフォンを購入するユーザーが多い現状を考えれば、自然な流れだろう。逆に、ディスプレイサイズが小さいモデルは、デザインや機能などに明確な個性がない限り、あまり選ばれないことになってしまうかもしれない。ボディ幅についても4インチ台のディスプレイを搭載したモデルの大半が60mm台半ば以下に抑えられているうえ、背面の形状などをうまくラウンドさせることにより、幅の広さを感じさせないデザインに仕上げている。
折りたたみデザインのフィーチャーフォンより幅広になることは間違いないが、各社とも日本人の手に合ったサイズと持ちやすい形状がある程度、導き出せてきたような印象だ。また、春モデルのGALAXY Note SC-05Dに続き、5インチクラスのモデルが2機種追加されたが、これも視認性や操作性の面から新しいカテゴリとして定着するかが注目される。筆者の周りでもGALAXY Noteをメイン端末として利用している人がいるが、通話の利用頻度があまり高くない現状を考えると、5インチクラスは意外に有効という印象だ。
ディスプレイの解像度別では、480×800ドットのワイドVGAが4機種、480×854ドットのフルワイドVGAが1機種、540×960ドットのQHDが2機種、1280×768ドットのXGAが1機種、1280×800ドットのワイドXGAが1機種、1280×720ドットのHDが8機種となっており、スマートフォンについてはHD表示が主流になりつつある。
スペック面でもうひとつ気になるのはCPU(チップセット)だが、これはauの発表会レポートでも説明したように、今夏のモデルはベースバンドチップセットの米クアルコム製「Snapdragon」の第四世代となる「S4」の供給が厳しいことがラインアップや発売時期に影響を与えている。具体的にはXiのLTE方式をサポートした「MSM8960」の供給が不足しており、これを採用したモデルの生産に影響が出ると言われている。海外メーカーは元々、チップセットの発注量が多く、多少なりとも調達しやすい状況にあるが、国内メーカーはチップセットが十分に確保できず、カラーバリエーションやモデル数を減らさざるを得ない状況にある。海外メーカーも日本向けモデルを優先して生産できるわけではないため、発売日の調整などが必要になっているという。
Snapdragon以外のCPUでは、「ELUGA V P-06D」がTexas Instruments製の「OMAP4460」、「ARROWS X F-10D」がパソコンのGPUなどでおなじみのNVIDIA製クアッドコアプロセッサ「Tegra3」を搭載する。OMAPシリーズは昨年11月発表の冬春モデルでも搭載されていたが、今回は1機種のみになってしまった。Tegra3については初のクアッドコアであり、高いパフォーマンスが得られることは理解できるが、パソコンのGPUなどと違い、スマートフォンは電力消費と熱対策が重要であるため、どこまでクアッドコアの必要性があるのかは少し疑問が残る。
バッテリー容量については、ハイスペックなモデルが並ぶNEXTシリーズが1700mAh以上、コンパクトなモデルが多いwithシリーズは1500mAh前後となっている。プラットフォームがAndroid 4.0に統一され、プラットフォームレベルでの省電力もある程度、効果が期待できるが、昨年末のシャープ製端末に搭載された「エコ技」のように、各メーカーが独自に搭載する省電力機能も充実してきており、1年前に比べれば、連続利用時間はかなり改善されると見ていいだろう。特に、Xi端末については、昨年の冬春モデルのXi対応スマートフォンで採用されていた「APQ8060」が45nmプロセスで生産されていたのに対し、夏モデルに搭載されている「MSM8960」は28nmプロセスで生産されており、全体的な省電力が期待される。
最後に、機種に依存する話題でもあるため、らくらくパケ・ホーダイについて、少し触れておきたい。今回の夏モデルではらくらくホンのコンセプトを継承する「らくらくスマートフォン F-12D」が発表されたが、「らくらくパケ・ホーダイ」という月額2980円のパケット定額サービスが提供されることも発表された。FOMAのパケ・ホーダイ フラットの月額5460円の約55%という割安な料金設定だが、当月のデータ量が500MBを超えると、送受信時の通信速度が128kbpsに制限される仕様となっている。らくらくスマートフォンではGoogleアカウントが設定できないなど、他のスマートフォンと少し仕様が異なることも関係しているが、通信速度を制限することによって、月額固定料金が割安になるパケット定額サービスは、らくらくスマートフォンに限定せずに、他機種でも選択できるようにして欲しいところだ。
■充実のスマートフォンのラインアップ
さて、ここからは発表会後に行なわれたタッチ&トライコーナーで試用した実機の印象や各モデルの気になるポイントなどについて、紹介しよう。今回も19機種とモデル数が多いため、すべての機種を十分に試すことができなかったことをお断りしておく。また、いずれも開発中のモデルであるため、発売される製品とは差異があるかもしれない点をご理解いただきたい。また、各機種の詳しい仕様などについては、本誌のレポート記事を参照して欲しい。
【NEXTシリーズ】
■GALAXY S III SC-06D(サムスン)
5月3日に英国で発表されたばかりのGALAXYシリーズの最新フラッグシップモデル。グローバル向けモデルでは、CPUにクアッドコアの「Exynos 4 Quad」が採用されているのに対し、NTTドコモ向けはLTEの対応周波数などの関係もあり、韓国版に近い仕様で開発され、CPUは「MSM8960」が採用されている。ディスプレイサイズはGALAXY NEXUSの4.7インチを上回る4.8インチのHD Super AMOLEDを搭載するが、ボディは背面や周囲のカーブがうまく手にフィットするように仕上げられており、非常に持ちやすく、操作もしやすい。従来のGALAXYシリーズと少しテイストが違うのは、使う人の感性に訴えかけることを目指したユーザーインターフェイスだ。端末を耳元に運ぶと発信できるなど、センサーを利用した機能が数多く搭載されており、短い時間でもデモを聞きながら試していて、使うことが楽しくなる印象だ。個人的に面白いと感じたのがインカメラを利用したスマートステイで、端末に設定された画面オフの時間近くになると、インカメラでユーザーの目の動きを確認し、確認できなければ、そのまま画面がオフになり、確認できれば、画面は暗くならずに使い続けられる。三種の神器がまったく搭載されなかった「GALAXY S II LTE SC-03D」に対し、今回はおサイフケータイとワンセグも搭載しており、かなり幅広いユーザーに支持されることになりそうだ。
■AQUOS PHONE ZETA SH-09D(シャープ)
4.7インチのHD表示が可能なSuper CG Silicon液晶を搭載したシャープ初のXi対応スマートフォン。Super CG Silicon液晶は液晶パネルの透過率を向上させることにより、バックライトの発光を抑え、消費電力を抑えることが可能。画面サイズは今回発表されたモデルの中でも最大クラスになるが、狭額縁を採用することで、ボディ幅は67mmに抑えられており、ラウンドさせた背面パネルによって、あまり大きさを感じさせない仕上がりとなっている。ホームアプリはdocomo Palette UIに加え、今夏のシャープ製スマートフォンの共通仕様となっている「Feel UX」が用意されている。すでにAndroidスマートフォンに慣れたユーザーにはちょっと戸惑うが、ロック画面を解除すると、すぐにアプリ一覧画面が表示されるなど、はじめてのユーザーにはわかりやすいユーザーインターフェイスとなっている。タッチパネルのレスポンスとなめらかさは、今回試用した中でもGALAXY S IIIと並び、もっとも反応がよく、快適に使うことができた。おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信に加え、防水、おくだけ充電などにも対応しており、機能的にも申し分のない一台と言えそうだ。
■Xperia GX SO-04D(ソニーモバイル)
5月にグローバル向けに発表された「Xperia GX」の日本向けモデル。ソニー・エリクソンからソニーモバイルに移行し、本体のロゴ表記も「SONY」に改められている。Xperiaとしては初のXi対応スマートフォンで、「Xperia arc SO-01C」の流れをくむアーク状の背面が印象的なデザインだ。背面パネルはマットな素材で仕上げられており、手に持ったときの独特の触感が心地良い。他機種同様、Android 4.0を搭載しているが、Android 2.3までのXperiaシリーズのユーザーインターフェイスのテイストがうまく受け継がれており、他機種ほど、Android 4.0独特のクセが感じられない。従来のXperiaシリーズではステータスバーから表示する通知パネルに何もアイコンを表示していなかったが、今回からWi-Fiやマナーモードを切り替えられるなど、デザインが変更されている。withシリーズのXperia SX SO-05Dがコンパクトでエントリーユーザーをターゲットにしているのに対し、Xperia GXはハイスペックを追求する一方、三種の神器はおサイフケータイのみをサポートし、ある程度、リテラシーや自分なりの使い方がわかっているユーザーに適したモデルと言えそうだ。
■ARROWS X F-10D(富士通)
昨年11月発表の冬春モデルで、もっとも人気の高かった「ARROWS X LTE F-05D」の後継モデル。ボディデザインは従来から変更され、背面は曲面による仕上げが強調され、上面と底面も少しカーブが付けられているが、ボディの厚みはNEXTシリーズでもっとも分厚い11.8mmだ。NVIDIA製のクアッドコアプロセッサ「Tegra3」を搭載し、ゲームアプリなども12コアのグラフィックエンジンを活かし、快適に動作する。ただ、今回試用した端末はまだ開発中ということもあり、動作はやや不安定で、しばらく使っていると、背面側が暖かくなり、充電もできなくなるといった現象が見られた。製品版では改善されることを期待したいが、従来モデルが発熱や不具合を数多く指摘されていたことを考慮すると、購入時には製品版でじっくりと動作状態を確認したうえで、判断することをおすすめしたい。逆に、ホームアプリを含めた富士通独自のアプリやソフトウェアは便利なものが多く、指紋センサーを活かしたセキュリティ設定なども充実している。
■REGZA Phone T-02D(富士通)
昨年の冬春モデル「REGZA Phone T-01D」の後継モデル。基本的なデザインのテイストは継承されており、背面には従来同様、指紋センサーを搭載しているが、Xiに対応したこともあり、CPUが「OMAP4430」から「MSM8960」になって、ディスプレイもHD表示が可能なTFTカラー液晶からQHD表示が可能なNEW AMOLED plus(有機EL)に変更され、バッテリーも1800mAhに大容量化されるなど、ハードウェア的にはまったくの別仕様となっている。どちらかと言えば、同じ富士通東芝モバイルで開発された「ARROWS X LTE F-05D」をベースに、NOTTVに対応したような印象に近い。映像エンターテインメントを重視したいユーザー向けと言えそうだ。
■Optimus Vu L-06D(LGエレクトロニクス)
今年2月のMobile World Congress 2012で発表されたグローバル向けモデルをベースに、防水、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信を搭載し、NOTTVにも対応したXi対応スマートフォン。グローバル向けモデルの発表から3カ月で、ここまで日本仕様が盛り込まれているのは、かなり驚かされる。5インチのIPS液晶ディスプレイを搭載するが、画面比率が他のスマートフォンのような16:9ではなく、4:3となっているため、文書や電子書籍などを表示しやすいという特徴を持つ。上面左のワンタッチメモボタンを押すと、すぐにキャプチャを撮ることができ、同梱のタッチペンで文字やイラストを書き込むことができる。画面比率の関係上、ボディ幅が広いが、5インチのIPS液晶は非常に視認性が良好で、操作感も非常に快適だ。ちなみに、このモデルをベースに「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションした「L-06D JOJO」が1万5000台限定で販売されるが、外装や壁紙などをデザインするだけでなく、日本語入力の予測変換辞書もジョジョのセリフを織り交ぜるなど、ソフトウェア的な作り込みもされるという。発表会後の反響を見る限り、限定モデルは売り切れ必至と言えるかもしれない。
■ELUGA power P-07D(パナソニック)
今年2月にスペインで開催されたMobile World Congress 2012で、グローバル市場向けに発表されたモデルをベースに開発されたパナソニック初のXi対応スマートフォン。GALAXY Note、Optimus Vuに続き、5インチクラスのディスプレイを搭載するが、どちらかと言えば、通常のスマートフォンを大画面化したような印象。背面をラウンドさせ、狭額縁で仕上げているため、ディスプレイサイズの割にボディ幅は70mmとコンパクトにまとめられ、持ちやすい印象。デザイン的には春モデルとして登場した「P-05D」を継承しているが、背面に電源キーと音量キーが並んで装備されているため、間違えて押してしまうことが多く、慣れが必要だ。「ELUGA」はパナソニックのスマートフォンのブランドネームで、このモデルは急速充電に対応しているため、「ELUGA power」というネームが与えられている。今後、ELUGAの名前がどこまで浸透するのかによって、売れ行きも大きく左右されることになりそうだ。
■AQUOS PHONE sv SH-10D(シャープ)
「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」と並び、シャープ初のXi対応スマートフォン。多角形のテイストを活かしたボディデザインが個性的で、「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」よりも少し若いユーザー層を狙っている印象だ。ディスプレイサイズは4.5インチだが、こちらも狭額縁で仕上げられているため、幅は64mmに抑えられており、AQUOS PHONE SH-06Dに続き、NOTTVに対応する。
【withシリーズ】
■F-09D ANTEPRIMA(富士通)
フィーチャーフォンのF-02Cでも人気を得た「ANTEPRIMA」とのコラボレーションをスマートフォンで実現したモデル。F-02Cのときはカラーバリエーションの1色が“ANTEPRIMA GOLD”というコラボレーションだったが、今回はモデルとして、コラボレーションしており、富士通製スマートフォンに冠される「ARROWS」のネーミングも付けられていない。基本スペックは昨年11月発表の冬春モデルの「ARROWS Kiss F-03D」をベースにしているが、プラットフォームがAndroid 4.0を搭載していることもあり、RAMが1GB、ROMが2GBに拡張されている。ディスプレイサイズが3.7インチと小さめということもあり、ボディサイズもコンパクト。ホームキーは花をモチーフにしたり、アイコンにANTEPRIMAのワイヤーバッグをデザインするなど、内容的にもかなり凝った作りとなっている。
■AQUOS PHONE st SH-07D(シャープ)
今回発表された端末の中でもXperia SX SO-05Dと並び、もっともコンパクトなモデル。ディスプレイは3.4インチだが、幅は54mmしかなく、折りたたみやスライド式のフィーチャーフォンとほぼ代わらないサイズにまとめられている。ボディは本体左下角のストラップホールと周囲のメタリックフレームをアクセントにデザインされ、主張の感じられる個性的なデザインという印象だ。機能面では音楽再生が強化されているほか、シャープ製端末ではおなじみのエコ技などもサポートされている。ハイスペックではないが、三種の神器に防水もしっかりとサポートされており、コンパクトで高機能な端末を求めるエントリーユーザーには適したモデルと言えそうだ。
■Optimus it L-05D(LGエレクトロニクス)
LGエレクトロニクスとしては、初めてワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水まで対応した全部入りXi対応スマートフォン。コンパクトで持ちやすいボディに、視認性に優れた4.0インチのIPS液晶を搭載。タッチパネルのレスポンスも非常によく、全体的にバランス良くまとまったハイスペックなスタンダードモデルと言えそうだ。ユニークなのは底面の外部接続端子で、端子がむき出しだが、内部で止水してあるため、キャップが装備されていなくても防水対応となっている。キャップの締め忘れなどによる水濡れの心配もなく、安心して使える。パッケージには電池パックが1つ余分に同梱されているが、これは電池の持ちが悪いからではなく、韓国などにおいて標準で電池パックが2個、同梱されているスタイルを継承したものだ。電池パックのみを充電できるバッテリーチャージャーが同梱されるのもうれしい点だ。カラーバリエーションも4色が揃っており、はじめてスマートフォンを持つユーザーにも選びやすい。
■MEDIAS X N-07D(NECカシオ)
NEC製フィーチャーフォンで常に高い人気を得ていたハイスペックスリム「μシリーズ」のコンセプトを継承するXi対応スマートフォン。7.8mmのスリムボディに、ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信、NOTTVを搭載し、防水も実現し、バッテリー容量も1800mAhと大容量で、付属のACアダプタを使い、約30分で50%まで充電できる急速充電に対応する。充電をし忘れた朝や外出時のちょっとした空き時間にもすぐに充電できるのもうれしい。タッチパネルもレスポンスが改善されているうえ、タッチしたときに反応が得られるハプティクス技術によるフォースフィードバックも実現している。今回発表されたモデルの中で、もっとも技術や機能の凝縮度の高さを感じさせるモデル。
■ELUGA V P-06D(パナソニック)
withシリーズでは最大となる4.6インチのHD液晶を搭載したモデル。NEXTシリーズの「ELUGA power P-07D」同様、パナソニックのスマートフォンのブランドネームが与えられたモデル。4.6インチの大画面ながら、狭額縁を採用することにより、ボディ幅は64mmと比較的スリムに仕上げられている。1320万画素カメラを搭載し、側面にシャッターボタンを備え、LUMIXなどでおなじみのおまかせiAを搭載するなど、カメラ機能も充実している。おくだけ充電対応のレコーダー「DIGA」にセットすると、録画済みの番組を転送できるなど、Audio&Visual機能が充実しているのも魅力だ。
■ARROWS Me F-11D(富士通)
フィーチャーフォンから乗り換える40代のユーザーをターゲットに、コンパクトで持ちやすいデザインにまとめられたモデル。ビギナーにもやさしいモデルであることはらくらくスマートフォンと同じだが、ARROWS Meはワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水、FMトランスミッターなど、フィーチャーフォンで標準的に利用してきた機能が搭載されており、より幅広いユーザーが利用できる。カラーバリエーションが2色しかなく、デザイン的にシンプル過ぎるのが気になるところだが、標準搭載のアプリも充実しており、買いやすい一台と言えるだろう。
■Xperia SX SO-05D(ソニーモバイル)
5月にXperia GXとともに、グローバル向けに発表された新製品の日本向けモデル。Xi対応スマートフォンとしては、最軽量にまとめられているが、ハードウェアのスペックは「Xperia GX SO-06D」に準じるレベルで、ワンセグやおサイフケータイなども搭載されており、他製品と比較してもミッドレンジ以上のポテンシャルを持つ。ボディはコンパクトにまとめられ、ボディ幅も「AQUOS PHONE st SH-07D」と並ぶ54mmしかなく、非常に持ちやすい。ソフトウェアは基本的に「Xperia GX SO-06D」と共通仕様となっており、音楽アプリの「WALKMAN」もプリセットされている。コンパクトなXi対応スマートフォンが欲しいユーザーには、もっとも気になる一台と言えそうだ。
【ドコモタブレット】
■ELUGA Live P-08D(パナソニック)
10.1インチのIPS液晶を搭載し、広い視野角で映像を楽しむことができるパナソニック初のタブレット。これまでのAndroidタブレットはビジネスユーザーを対象としているためか、黒を基調としたモデルが多かったが、パナソニック製端末ではおなじみのシャンパンゴールド(カラー名はノーブルシャンパン)系のカラーが採用され、背面側は少し目立つ印象だ。防水防塵にも対応し、NOTTVの受信もできる。ブルーレイレコーダー「DIGA」との連携により、録画した番組をDLNA&DTCP-IPで離れた部屋から視聴できるスタイルがもっとも魅力的だろう。FOMAハイスピードに対応し、テザリングも最大5台まで利用できるが、6560mAhもの大容量バッテリーを搭載していることを考えれば、Xi対応でも良かったような印象も残る。
【らくらくホン】
■らくらくスマートフォン F-12D(富士通)
フィーチャーフォンでは、NTTドコモと富士通の定番シリーズである「らくらくホン」のコンセプトを継承したスマートフォンだ。シニア層のユーザーにもスマートフォンのニーズが高いと言われてきたが、それに応えるモデルとなる。ボディは丸みを帯びた、らくらくホンらしいテイストのデザインで、本体前面にホームキーのみを備えるシンプルな仕様となっている。プラットフォームはAndroidを採用しているが、Googleアカウントに対応しておらず、docomoアカウントのみで使うことになるため、アプリの追加はmicroSDメモリーカードを利用する。ユニークなのはタッチパネルのユーザーインターフェイスで、ハプティクス技術を採用し、画面にタッチしただけでは反応せず、少し長押しをすると、画面が振動してボタンを押せる(押し込める)ようになる。メニューもらくらくホンのテイストを受け継ぎ、大きなアプリボタンやワンタッチボタンなども用意されている。全体的に見て、らくらくホンのコンセプトを受け継いだスマートフォンであることは納得できるレベルの内容なのだが、Googleアカウントを設定しないなど、かなり思い切って制限した仕様を、想定されるユーザー層の人たちがどう受け取るのかが気になるところだ。
■選ぶのに迷うほど、充実したラインアップ
あらためて説明するまでもないが、現在、国内外の携帯電話事業者や端末メーカーは、今もっともスマートフォンに力を入れている。NTTドコモの計画では、今年度は1300万台ものスマートフォンを販売する計画を立てており、おそらく国内市場全体もスマートフォンの契約が4000万程度までは伸びるのではないかと言われている。発表会の席において、山田隆持代表取締役社長は「今やスマートフォンは国民的な関心事になりつつある」と話していたが、その言葉が決してハッタリではないと思えるほど、スマートフォンへの関心は拡大している。
こうした状況に対し、NTTドコモが発表した2012年夏モデルの内容は、選ぶのに迷ってしまうほど、非常に幅広いバリエーションのラインアップを取り揃えている。今月末にソフトバンクの2012年夏モデルの発表会を控えているため、まだ確定的なことは言えないが、おそらく今夏の段階ではNTTドコモのスマートフォンのラインアップは、他のどの携帯電話事業者よりも充実していることになるだろう。デザイン、サイズ、カラー、スペックなど、どの面を見ても多彩なラインアップが揃っている格好だ。
ただ、冒頭で紹介した業界関係者のコメントにもあるように、これまでスマートフォンを販売してきた1000万、2000万のユーザーに比べ、これから移行することが予想されるユーザーは、今まで以上にていねいな説明やガイドが必要になってくる。発表会のプレゼンテーションでは、「『スペック』で選ぶスマートフォンから『使い方』で選ぶスマートフォンへ」というコピーを掲げ、ユーザーのスマートフォンの選び方を変えることを提案していたが、どちらかと言えば、多彩なモデル数で幅広いユーザーのニーズに応えようとしているだけで、それぞれの製品に十分と言えるほどの個性や違いがアピールできていない印象も残った。
そして、それ以上に気になるのは、スマートフォンを「使う」ための提案があまり強調されていないことだ。今回の発表会ではドコモクラウドサービスの充実、dマーケットのサービス拡充、角川書店との提携によるスマートフォン向けアニメ配信サービス「ドコモ・アニメストア」が発表されたが、今夏以降、フィーチャーフォンからスマートフォンに移行するユーザーにとって、これらのサービスがわかりやすく、魅力的なものだろうか。もちろん、スマートフォンを使いはじめると、それぞれに魅力的なサービスであることは確かなのだろうが、スマートフォンをまったく使ったことがないユーザーにとっては、「クラウド」と言われてもピンと来ないだろうし、「アニメ配信」と言われても「またお金が掛かるのか……」というイメージを持たれてしまい、必ずしも十分な魅力として、ユーザーに響かないのではないように見える。前日の15日に発表会を行ったauは、アプリが取り放題になる「auスマートパス」、ブロードバンド回線との組み合わせで割引が受けられる「auスマートバリュー」が大変好調だが、NTTドコモも幅広いユーザー層にスマートフォンを拡大したいのであれば、アプリの取り放題なり、有料アプリやオリジナルアプリをはじめてのユーザーがもっと体験しやすい環境を作るべきではないだろうか。
今年6月に退任する山田隆持代表取締役社長は、就任以来、「顧客満足度の向上」を強く訴え、それを着実に実現してきたが、今以上に顧客満足度を向上させるには、端末ラインアップだけでなく、サービスや料金など、さまざまな面でもっと積極的かつ丁寧なアプローチが必要ではないだろうか。
さて、今回発表されたモデルは、6月から順次、販売が開始される予定だ。本稿で説明したように、今夏はベースバンドチップセットの供給状況の影響もあり、機種によっては発売時期が遅れたりすることもあるかもしれない。また、各機種は予約の受付が実施される見込みだが、はじめてスマートフォンを購入するユーザーは、十分に情報を集め、必ず実機を試したうえで購入することをおすすめしたい。今後、本誌に掲載される開発者インタビューやレビュー記事を参考にしながら、自分のための1台を見つけていただきたい。
2012/5/24 06:00