法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
フラッグシップモデルを「Rethink」したHUAWEI Mate30シリーズ
2019年9月24日 12:52
ファーウェイは9月19日、ドイツ・ミュンヘンにおいて、発表イベントを開催し。同社のフラッグシップモデル「HUAWEI Mate」シリーズの最新モデル「HUAWEI Mate30」「HUAWEI Mate30 Pro」「HUAWEI Mate30 RS」などを発表した。
本誌ではすでに現地から速報をお届けしているが、発表イベントの注目点と「HUAWEI Mate30」シリーズのファーストインプレッションをお届けしよう。
2つのフラッグシップモデル
国内外でスマートフォンを展開する各端末メーカーは、ユーザーのさまざまなニーズに対応するため、多彩なラインアップを揃えている。なかでも最先端の性能を凝縮したフラッグシップモデルは、各社の象徴的な存在で、ラインアップの顔となっている。
ファーウェイは現在、毎年春頃に発表される「HUAWEI P」シリーズ、秋頃に発表される「HUAWEI Mate」シリーズを展開しており、それぞれのシリーズの最上位モデルをフラッグシップモデルに位置付けている。「HUAWEI P」シリーズでは米中貿易摩擦の影響で国内向け発売が遅れたが、NTTドコモから「HUAWEI P30 Pro HW-02L」が発売されており、「HUAWEI Mate」シリーズでは昨年秋に発表後、昨年11月にSIMフリー版「HUAWEI Mate20 Pro」が発売され、今年1月にはソフトバンクからキャリア向けモデルとしても発売された。
ファーウェイのラインアップとしては、2つのフラッグシップが並び立つことになるが、シリーズとしては前者がコンパクトな持ちやすいサイズ感を意識しているのに対し、後者は大画面&大容量バッテリーのスマートフォンとしてこれまで展開されてきた。Mateシリーズの直接的なライバルとしては、サムスンのGalaxy NoteシリーズやアップルのiPhoneの大画面モデルなどが挙げられる。
大画面&大容量バッテリーをいち早く実現してきたHUAWEI Mateシリーズは、モデルを重ねるごとに、数多くの最新技術を導入してきたことでも知られる。たとえば、2018年のHUAWEI Mate20 Proではいち早くディスプレイ内指紋認証を搭載したり、2017年のHUAWEI Mate10 ProではAI対応プロセッサを他社に先駆けて搭載し、カメラのシーン認識など、スマートフォンのカメラの新しい方向性を示した。
また、ファーウェイ製端末と言えば、ドイツの老舗光学機器メーカー「Leica(ライカ)」との協業によるカメラ機能が各方面で高く評価され、人気の原動力となっているが、2017年6月に発売された「HUAWEI P9」でLeicaレンズが初搭載され、その後、同年12月発売の「HUAWEI Mate9」にも搭載。両シリーズのフラッグシップモデルに毎回、搭載されている。
なかでも初期のモデルはモノクロセンサーとカラーセンサーの情報を組み合わせることで、ダイナミックレンジの広い高品質な写真を撮影することを実現し、現在、各社が積極的に取り組んでいる暗所撮影の高性能化の先駆けにもなった。
今回、ファーウェイが発表したのは「HUAWEI Mate30」シリーズで、フラッグシップモデルの「HUAWEI Mate30 Pro」、ディスプレイなどの仕様が異なる標準モデルの「HUAWEI Mate30」、ポルシェデザインとのコラボによる「HUAWEI Mate30 RS」の3機種になる。この他に、スマートウォッチの「HUAWEI Watch GT2」も合わせて発表された。
キーワードは「Rethink」
今回の発表イベントはドイツ・ミュンヘンにある「Munich messe」で開催され、世界各国のメディアをはじめ、販社や各携帯電話会社などの関係各社を含め、約2000人が参加するイベントになった。発表イベントではファーウェイのビジネスコンシューマグループCEOのリチャード・ユー氏が登壇し、プレゼンテーションを担当した。
ファーウェイは従来からグローバル市場において、「Make It Possible」(それを可能にする)というキャッチコピーを使っていたが、今回は「Rethink Possibilities」(可能性を再考する)というキーワードを掲げ、「HUAWEI Mate30」シリーズの各機能についても「Rethink」というキーワードとともに解説していた。
まず、デザインについての再考は、背面の4つのイメージセンサーを収めたカメラ部の円形が特徴的で、これはLeicaをはじめとするプロフェッショナルなカメラをモチーフとしている。
持ちやすさと背面のデザインの美しさにも配慮されているが、ボディ周りで印象的なのは「HUAWEI Horizon Display」と名付けられた6.53インチの有機ELディスプレイの側面への回り込みだ。ディスプレイの両側面は88度という角度で湾曲され、本体の真横に中心あたりまで回り込んでいる。側面へ回り込んだエッジディスプレイと言えば、ライバルメーカーの十八番だったが、今やそれを上回る形状を実現したことになる。
この側面への回り込みを活かす機能として、「サイドインタラクション」という機能が搭載される。側面をダブルタップすると、音量などを調節するスライドバーが表示され、カメラ起動時には側面部の長押しでシャッターが切れるという仕様を実現している。これにより、HUAWEI Mate30 Proの側面には音量ボタンがなく、右側面に電源キーのみを備える構造となっている。
一方、HUAWEI Mate30の方は前面がフラットな6.62インチの有機ELディスプレイを採用する。ディスプレイサイズはわずかに大きく、フラットな形状ながら、側面の額縁はわずか2.8mmしかなく、ボディ幅は76.1mmに抑えられている。ちなみに、同クラスのディスプレイを搭載するiPhone 11 Pro Maxは側面の額縁が4.5mm、ボディ幅は77.1mmとなっている。
ディスプレイ上部のノッチも従来モデルより小型化されており、幅は26.6mmと、極力、目立たなくしている。ノッチ部分にはセルフィーカメラや3D深度カメラ、ジェスチャーセンサーなどを内蔵するが、レシーバーはディスプレイに内蔵する「HUAWEI Acorustic Display」を採用する。
ワンチップの5G SoCを搭載
カメラが注目されるファーウェイ製端末だが、ファーウェイ自身は世界各国の携帯電話ネットワークを構築するベンダーでもあり、5Gへの取り組みも世界トップクラスと言われる。
その実力を活かし、HUAWEI Mate30シリーズ向けにはワンチップの5Gチップセット「Kirin 990 5G」が搭載される。すでに、IFA 2019の基調講演でも明らかにされていたが、SA/NSAのサポート、5G/4G/3G/2Gのネットワークサポート、デュアルコアNPUなど、ライバル製品をリードする仕様が実現される。
アンテナについても端末全体に搭載される21個のアンテナの内、14個を5G用として利用することができ、5Gネットワークのバンドについてもすでに5Gスマートフォンとして発売されているライバル製品より、多くのバンドをサポートできるという。このあたりはネットワーク機器ベンダーとしての強みが十分に活かされている印象だ。5Gでの利用環境についてもデュアルSIMスロットのどちらに5G対応SIMカードを装着しても動作する設計になっている。
バッテリーについてはHUAWEI Mate30 Proに4500mAhの大容量バッテリーを搭載し、有線では40W、ワイヤレスでは27Wの急速充電にも対応する。従来モデルから好評を得ているワイヤレスリバースチャージも継承されており、従来モデルに比べ、約3倍の速さでの充電にも対応する。
ちなみに、同じ技術を採用した外付けタイプの40Wバッテリー、シガーライターソケット用チャージャーもオプションで販売されるが、もっと面白いのはワイヤレスチャージ対応車載ホルダーだ。形状は一般的なスマートフォン用車載ホルダーで、ワイヤレス充電に対応しているが、端末をホルダーに近づけると、ホルダーの両サイドのアームが開き、端末を置くと、両サイドのアームを閉じて、端末をホールドするというしくみを採用している。今までありそうでなかった製品という印象で、アクセサリーでありながら、会場からも大きな歓声が上がった製品のひとつだった。
「Rethink」されたカメラ
さて、ファーウェイ製端末でもっとも注目されるカメラについてはどうだろうか。今年3月に発表されたHUAWEI P30 Proでは、イメージセンサーのメーカー(おそらくソニー)と共同で開発したRYYB配列のイメージセンサーを採用し、業界を驚かせたが、今回のHUAWEI Mate30シリーズではこれを継承し、さらに進化させたカメラを搭載している。
まず、最上位モデルのHUAWEI Mate30 Proは、RGGB配列の1/1.54インチの40MPイメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせた超広角カメラ(18mm)、RYYB配列の1/1.7インチの40MPイメージセンサーにF1.6のレンズを組み合わせた広角カメラ(27mm)、8MPのイメージセンサーにF2.4のレンズを組み合わせた望遠カメラ(80mm)で構成され、これに3D深度カメラが搭載される。
ちなみに、イメージセンサーのサイズはiPhone 11 Pro Maxをはじめ、ライバル製品が1/2.55インチを採用している状況を考えると、かなり大型のセンサーを搭載したことになる。プレゼンテーションで公開された作例も鮮やかで美しい写真ばかりだが、暗いところでの撮影についてはGalaxy Note10+ 5Gで真っ暗な状態のシーンでも明るく写真を撮れるなど、アドバンテージの大きさをアピールしていた。
また、今回は動画についても大きく進歩を遂げた。静止画同様、暗いところでの撮影強の強化をはじめ、最大7680fpsのフレームレートによるスーパースローモーション撮影、ボケ味の利いた動画撮影、4Kのタイムラプスなど、静止画にも負けない多彩な機能を搭載している。
さらに、この撮影機能を活かすため、スマートフォンを装着しての撮影で利用されることが多いOSMO MBILE 3との連携機能、スマートフォン向けのスタジオライト「Profoto C1&C1 Plus」のカメラキットなども発表された。今後、スマートフォンで動画撮影を重視するユーザーにはぜひ試して欲しい機能だ。
一方、HUAWEI Mate30のカメラについては、16MPのセンサーにF2.2のレンズを組み合わせた超広角カメラ(17mm)、RYYB配列の40MPイメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせた広角カメラ(27mm)、8MPのイメージセンサーにF2.4のレンズを組み合わせた望遠カメラ(80mm)で構成される。深度センサーはないが、レーザーフォーカスに対応する。両機種のカメラの違いとしては、3D深度センサー、超広角カメラのイメージセンサーなどが異なり、その他の仕様の多くは共通となっている。
Android 10/EMUI 10搭載だが……
プラットフォームについてはAndorid 10を採用し、ファーウェイのユーザーインターフェイスの最新版「EMUI 10」を搭載する。かつてのファーウェイ製端末はユーザーインターフェイスの独自性が強い印象だったが、EMUIのバージョンを重ねるにつれ、Androidプラットフォームを活かしつつ、ユーザビリティを向上させる方向で進化している。
今回のEMUI 10でも数々の『気の利いた』機能が搭載されている。まず、モバイル業界に限らず、パソコンなどを含む全体のトレンドにもなりつつあるが、EUMI 10では「Dark Mode(ダークモード)」が搭載される。Windowsやmac OS、iOSなどでもサポートされているが、スマートフォンの場合、自ら発光する有機ELの特性から、省電力性能に有利というメリットがあり、HUAWEI Mate30シリーズや従来のHUAWEI P30 Proなどには有用な機能だ。
また、操作面ではジェスチャーモードに対応する。かつて、国内のタブレットなどでもサポートされた事例があったが、ノッチ内にあるジェスチャーカメラで手のひらを認識させ、上下に手を動かすことでスクロールしたり、手を握ることでスクリーンショットが撮れるといった機能がサポートされている。
実用面ではもう少しチューニングが欲しいところだが、スクリーンショットは画面も本体もタッチせずに操作ができるので、筆者たちのようなライターや記者には便利な機能でもある
そして、気の利いた機能のひとつと言えるのが「AI Auto-Rotate」と呼ばれる機能だ。日本語で表現するなら「AI自動回転」とでも呼べばいいのだろうか。スマートフォンを使っていると、縦画面で見ているのに、ベッドやソファで横になると、画面が回転してしまったり、写真を横画面で見ているのに、端末の向きで画面が回転して、見えにくくなってしまうことがある。そこで、AIでユーザーの眼を認識し、眼の向きに合わせ、画面を追従して回転させるしくみを実現している。たとえば、端末を縦方向に持って使っているとき、ベッドに横になっても画面は回転せず、写真を表示した端末を机の上に置いた状態で、その周囲をユーザーが動けば、その向きに追従する形で、写真が自動回転する。
また、スマートフォンを使っていると、画面上にメールやメッセージが届いたことを伝える通知が表示されるが、アプリによってはメッセージの内容も表示されることがあり、プライバシーが知られてしまうケースも散見される。そこで、「Message Display Control with Face Recognition(顔認識対応メッセージ表示機能)」と呼ばれる機能が搭載される。この機能ではロック画面などのメッセージの通知が表示され、内容の一部が見えているとき、他の誰かの顔が認識されると、通知の表示が「1 new message」に切り替わり、第三者にメッセージの内容などを見せないように設定できる。プレゼンテーションで流されたビデオでは男性に届いたメッセージを背後から女性がのぞこうとすると、通知の表示が切り替わるという内容で、会場から大きな笑いとこの日、最大の拍手が送られた。実用性も高く、なかなかウケのいい機能と言えそうだ。
さて、HUAWEI Mate30シリーズには前述のように、Android 10が搭載されている。しかし、発表会の記事でも触れているように、GMS(Google Mobile Service)が搭載されていない。GMSはGmailをはじめとしたGoogleが提供するアプリのセットで、アプリ配信サービスの「Google Playストア」も搭載されない。
その代わりの役を担うことになるのがファーウェイ自身が提供する「HMS(Huawei Mobile Service)」になる。簡単に言ってしまえば、GMSのファーウェイ版に相当するもので、出荷時にはブラウザなどのアプリがひと通り、インストールされている。アプリ配信サービスについてはファーウェイが従来から取り組んでいる「AppGallery」が拡充されることになる。ファーウェイではHMSを充実させるために、1000億円を投じることも明らかにされた。
存在感のあるデザイン
発表会終了後のタッチ&トライコーナーでは、HUAWEI Mate30シリーズを試すことができた。詳細な印象は別途、お届けする予定だが、ここでは初めて触った印象をお伝えしたい。
まず、ボディを手に取って驚くのは、HUAWEI Mate30 Proの両側面への画面の回り込みだ。いわゆるエッジスクリーンということになるが、元々、こうした構造は有機ELディスプレイをグループ内で製造するサムスンが取り組んできた手法だ。
ファーウェイのフラッグシップモデルとしてはHUAWEI P30 Proで初めて取り組み、これをあっさりと超え、これまでに見たことがないエッジスクリーンを実現している。
本体を握ったときの側面タッチの誤動作などもなく、側面をダブルタップしての音量キーの起動などのエッジスクリーンを活かす機能も搭載されている。本体カバーとの相性がどうなるかが気になるが、本体そのものの幅もコンパクトになり、かなり存在感のあるデザインに仕上がっている。側面の両端まで表示できるディスプレイは、本体を横向けに持ったときのゲームなどの環境にも適していると言えそうだ。
もうひとつの注目点であるカメラについては、明るいタッチ&トライのコーナーでは威力を発揮できなかったが、暗幕が貼られた暗室のようなコーナーで試したところ、ほぼ真っ暗の部屋の中に置かれた水槽に端末を向けると、筆者が持っているデジタルカメラでは何も見えないのに、HUAWEI Mate30 Proでは水槽内の魚の動きを捉えることができていた。ライバルメーカーもナイトモードをサポートしてきたが、HUAWEI Mate30 Proのカメラはさらに先を進んでいると言えそうだ。
Googleサービス非対応はターニングポイントかもしれない
HUAWEI Mate30シリーズで、もっとも気になるのがGoogleが提供するGMSを搭載せず、ファーウェイ独自のHMSを搭載し、HMSに含まれる各アプリがプリインストールされていることだろう。
HMSにはブラウザやアプリストアなどが用意され、会場内のデモ機でも試すことができたが、表示される内容の多くは中国語で、グローバル市場に提供するにもまだ十分に環境が整っていない印象を受けた。非常に高いハードウェアの完成度に比べ、アプリをはじめとするソフトウェアはまだグローバル向けには十分な完成度に達していないようだ。
プラットフォームそのものはAndroid 10であり、基本的なユーザビリティはこれまでもAndroidプラットフォーム&EMUIの環境と変わりなく、同じように操作できるものの、如何せん、肝心のアプリが揃っていないため、検索から文字入力まで、さまざまな機能を試すうえで、戸惑ってしまう印象だ。これらの課題は本当にファーウェイがHMS搭載で出荷するのであれば、それぞれの国と地域に合わせ、きちんとローカライズされることが予想されるため、その段階であらためて評価するしかないだろう。
そうなると、このHMS搭載という仕様をどう考えるかが重要になってくる。
発表会後に同社のコンシューマビジネスグループで、ハンドセットビジネスのプレジデントを務めるケビン・ホー(Kevin Ho)氏が取材に応じたが、そこで話された内容などから推察する限り、ファーウェイとして、積極的にGMS搭載を止めて、HMSへ移行しようとしたのではなく、米中貿易摩擦の影響でGoogleのサービスが利用できなくなり、ユーザーに迷惑をかけてしまうかもしれないため、HMSに切り替えざるを得なかったというのが本音のようだ。言わば、苦渋の決断として、グローバル向けモデルにHMSを搭載した状態で発表したわけだ。
ただ、少し気になるのはHUAWEI Mate30シリーズ発表のタイミングだ。というのもファーウェイは毎年10月半ば頃にHUAWEI Mateシリーズを発表しているのに、今回はそれを1カ月も前倒し、発表したことになる。
HUAWEI Mate30シリーズはHMS搭載を謳っているが、ベースはおそらくGoogleサービスの利用が制限されている中国国内向けモデルであり、それを部分的にグローバル向けにカスタマイズしたような印象を受ける。
これは推測の域を出ないが、もしかすると、今年7月下旬、米国商務省のエンティティリストによる制裁期限が延期になった時期、ファーウェイとしては制裁の解除を期待していたものの、それが実現されなかったため、何らかの意図をもって、HUAWEI Mate30シリーズのHMS搭載モデルをグローバル向けにも連年より早く発表する方向に動いたのかもしれない。
また、HUAWEI Mate30シリーズにGMSが搭載されないことは、「ファーウェイはピンチに陥った」と捉えられがちだが、実はGMSを提供するGoogleにとっても非常に好ましくない状況になったとも言える。
ファーウェイは昨年一年間で約2億台のスマートフォンを出荷しており、その内、およそ半分にGMSを搭載してグローバル市場(日本を含む)に、残り半分をGMSを搭載せずに中国向けに出荷している。
そのため、仮にファーウェイが今後、すべてのスマートフォンをGMSからHMSに切り替えることになると、Googleとしては昨年の出荷実績ベースで、約1億台を失う計算になる。スマートフォン全体の出荷台数は1年間で約14億台で、その内、iPhoneが約2億台と言われているため、単純計算で約8%強の市場が失われてしまうわけだ。さらに、邪推をすれば、ファーウェイと他の中国メーカーがアプリ配信サービスやモバイルサービスで連動するようなシナリオでも成り立ってしまうと、さらに多くの市場を失い兼ねないわけだ。
また、開発側の視点から見ても悩める要素は多い。今後、HMSのアプリ配信サービスがグローバル向けにも本格的に展開されることになれば、ソフトウェアベンダーやサービスプロバイダーはGooglePlayストアに加え、HMSのAppGalleryにもアプリの配信や管理を検討しなければならず、結果として、開発の効率を落とすことになってしまう。
おそらく、ファーウェイとしては、今回発表されたHUAWEI Mate30シリーズも含め、今まで通り、グローバル向けのモデルにはAndroidプラットフォームとGMSを搭載し、端末を販売していきたかったと推察される。しかし、米中貿易摩擦の影響が続き、一般ユーザーの利用にも影響が出るのであれば、これを機にモバイルサービスのプラットフォームの在り方を「Rethink」し、新しい方向性を模索しているのかもしれない。それは単純にファーウェイ1社の方向性だけでなく、グローバルなモバイル業界の動向を大きく変えるきっかけになる可能性もある。今回のHUAWEI Mate30シリーズのHMS搭載は、各社、各国の複雑な思惑が生み出した仕様でもあり、今後の動向をしっかりと注視していく必要がありそうだ。