法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Xperia XZ2 Compact SO-05K」はフルHD+ディスプレイで進化を遂げる

 国内外でラインアップを展開するXperiaシリーズの中で、国内市場で根強い人気を保っているのがコンパクトなボディの「Xperia Compact」シリーズだ。

NTTドコモ/ソニーモバイル「Xperia XZ2 Compact SO-05K」、約135mm(高さ)×65mm(幅)×12.1mm(厚さ)、約168g(重量)、ホワイトシルバー(写真)、モスグリーン、コーラルピンク、ブラックをラインアップ

 上位モデルのXperia XZ2と同じように、縦横比18:9の縦長ディスプレイを搭載した「Xperia XZ2 Compact」が発売された。実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

根強い人気を保つコンパクトスマートフォン

 国内でスマートフォンが本格的に販売されるようになってから、すでに10年近くが経過した。この期間、各社のプラットフォームはバージョンアップを重ね、ハードウェアも大きく進化を遂げた。

 なかでも、特徴的なのがディスプレイのサイズだ。かつては3.5インチ~4インチクラスだったが、大画面化を求める声が増え、あっという間に5インチクラスが主流になった。その後、5インチ台が多くなったが、2017年あたりからは、縦横比18:9のディスプレイを採用するモデルが相次いで登場したことで、今や6インチ前後のディスプレイを搭載したモデルが中核を占めている。
 大画面化は、画面に表示できる情報量が増え、Webページやメール、SNSなどが見やすいというメリットがある半面、ボディが大きくなってしまい、持ち歩きにくくなってしまうというデメリットがある。

「AQUOS R Compact」(左)と「Xperia XZ2 Compact SO-05K」を並べてみると、ディスプレイの対角サイズは0.1インチの違いだが、デザインの方向性が違うことがわかる

 なかでもボディ幅はかつてのケータイがそうであったように、持ちやすさに大きく影響するため、こだわりを持つユーザーは多いと言われている。製品としてはボディの薄型化やボディ両側面のスリム化などによって、持ちやすさを確保し、ユーザーも徐々に少し大きなボディに慣れてきたという見方もあるが、それでもコンパクトなモデルを求める声は根強く存在する。

 たとえば、国内で半数近いシェアを持つiPhoneも国内向けファーストモデルのiPhone 3G以降、進化を重ね、昨年発表された最新モデルでは、4.7インチのディスプレイ搭載の「iPhone 8」、5.5インチのディスプレイ搭載の「iPhone 8 Plus」、5.8インチのディスプレイ搭載の「iPhone X」をラインアップしたが、それでもiPhone 5/5sのデザインを継承した4.0インチディスプレイ搭載のiPhone SEに根強い人気があり、後継モデルがいつ登場するのかと何度も話題になっている。

「Xperia XZ2 Compact SO-05K」(左)と「iPhone 8」を並べ、下部から見ると、厚みの違いがわかる。ただし、手に持った印象はiPhone 8が大きく感じるという声も

Xperiaシリーズの系譜

 今回発売された「Xperia XZ2 Compact SO-05K」は、Xperiaシリーズのコンパクトモデルに位置付けられる。Androidプラットフォームを採用したXperiaシリーズの元祖は、「Xperia X10」(国内ではNTTドコモのXperia SO-01Bとして登場)にさかのぼるが、ファーストモデル以降、「Xperia X10 Mini」(2010年)や「Xperia A SO-04E」(2013年)などのコンパクトモデルをラインアップに加えた後、2014年にははじめて「Compact」の名を冠した「Xperia Z1 Compact」を発表し、これが現在のXperia Compactシリーズへと続いている。ちなみに、この「Xperia Z1 Compact」は2013年12月に国内向けに「Xperia Z1 f SO-02F」として発売され、その後グローバル向けモデルとして、2014年1月のInternational CES 2014で発表されている。

 こうして発売された「Xperia Z1 Compact」以降、Xperia Compactシリーズはフラッグシップとほとんど変わらないスペックを搭載しながら、ひと回りコンパクトなボディに仕上げたモデルとして、根強い人気を保ち続けている。特に、ボディ幅についてはXperia Aシリーズなども含め、ほぼ65mmに統一されており(Xperia A4 SO-04Gのみ66mm)、持ちやすさに対するソニーモバイルのこだわりを強く感じさせる。

ようやくフルHD+に

 ただ、ここ数年のモデルではカメラやチップセットのスペックが優れているものの、なぜかディスプレイの解像度だけがHD(1280×720ドット)に抑えられたままだった。ディスプレイサイズを抑えたまま、高解像度にすると、表示する文字サイズが小さくなって、視認性が良くないという判断もあったようだが、2017年あたりからは他社のミッドレンジモデルでもフルHD対応ディスプレイを搭載する機種が増え、スペック的にもやや見劣りがする感が否めなかった。

筆者の手には少し小さいが、手にフィットする持ちやすさはXperia Compactシリーズの魅力のひとつ

 一方、今回のXperia XZ2 Compact SO-05Kは、上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kと同じように、デザインを一新し、縦横比18:9の縦長ディスプレイを搭載している。ディスプレイの解像度もフルHD+となり、基本仕様はXperia XZ2 SO-03Kを継承し、搭載される新機能の多くが共通のプレミアムコンパクトモデルとして仕上げられている。

価格帯

 ちなみに、Xperia XZ2 Compact SO-05KはXperia XZ2やXperia XZ2 Premiumと違い、これまでのXperia Compactシリーズ同様、NTTドコモのみで取り扱われる。

 販売価格は一括払いで7万9056円(ドコモオンラインショップ)に設定されており、Xperia XZ2 SO-03Kよりも約1万5000円ほど高い。

 また、チップセットがXperia XZ2 Compactよりも1つ下のクラスになるが、同様のコンパクトモデルとしては、auとソフトバンクが扱う「AQUOS R Compact」が販売されており、価格はauが5万4000円、ソフトバンクが7万6320円に設定されている。チップセットも含め、上位モデルと変わらないスペックを実現しているのは、現時点でXperia XZ2 Compactくらいしかないのが実状だ。

厚み、重さがアップ

 まず、外観から確認してみよう。これまでXperia Compactシリーズは上位モデルと基本的に同じ方向性のデザインを採用してきた。

 今回の「Xperia XZ2 Compact SO-05K」も、同時発表の「Xperia XZ2 SO-03K」と同じように、背面を少しラウンドさせた新しいボディ形状を採用しており、今までと少し印象の異なる新しいデザインで仕上げられている。ボディの厚みが「Xperia XZ1 Compact SO-02Kの9.3mm」(最厚部9.5mm)から12.1mmに増えたことにより、どちらかと言えば、背面の丸みとも相まって、コロンとした形状になったという印象だ。同時に重量も従来モデルの143gから168gに増えており、「Xperia XZ2 SO-03K」同様、かなりの重量増になってしまった。

背面は丸みを帯びたデザインに変更され、中央上側には指紋センサーとカメラを内蔵する。従来モデルとはかなりイメージが異なる

 「Xperia XZ2 SO-03K」はもともと、ひと回り大きいボディのシリーズであるため、ある程度の重量増は理解されるかもしれないが、「Xperia XZ2 Compact SO-05K」はコンパクトで持ちやすいことをセールスポイントにしてきたモデルだけに、ユーザーの好みは分かれるところだろう。

 Xperia XZ2 SO-03Kで気になった背面の滑りやすい仕上げは、同じ仕上げながら、ボディそのものがコンパクトで、幅も従来通り、65mmに抑えられているため、ホールド感を含め、それほど気にならなかった。ただ、机の上に置いたときの安定感のなさなどを考慮すると、やはり、背面にアクセサリーで販売されているカバーなどを装着した方が安全と言えそうだ。

HDR対応のフルHD+「トリルミナスディスプレイ for mobile」

 本体前面にはXperia Compactシリーズ初の縦横比18:9で2160×1080ドット表示が可能な5.0インチフルHD+対応TFTカラー液晶ディスプレイを搭載する。前述のように、これまでのXperia Compactシリーズはチップセットやカメラが上位モデルとほぼ同等ながら、ディスプレイのみがHDクラスのものを採用し、ライバル機種に遅れを取っていた感があったが、今回のモデルでようやく戦える仕様になったと言える。

5インチフルHD対応の画面で、存分に映像コンテンツを楽しむことができる

 ディスプレイの高解像度化は表示する文字サイズが細かくなってしまうという指摘もあるが、dTVなどの動画配信サービスだけでなく、YouTubeなどでもフルHD対応コンテンツが増えてきている状況を鑑みると、「プレミアムコンパクト」を謳うモデルとしては、フルHDクラスのディスプレイは必須であり、正直なところ、採用が遅すぎた印象すらある。Xperiaシリーズでおなじみの「トリルミナスディスプレイ for mobile」により、色鮮やかな再現が可能で、HDRにも対応する。DAZN for docomoやYouTubeのコンテンツなど、一般的なSD画質のコンテンツをHDR相当の画質に自動変換する「HDRアップコンバート」機能も搭載される。

 ディスプレイのサイズについては従来のXperia XZ1 Compact SO-02Kが縦横比16:9の4.6インチから、今回のXperia XZ2 Compact SO-05Kが縦横比18:9の5インチに大型化され、本体前面にディスプレイが占める割合もグッと増えたが、それでも最近の他機種に比べると、上下のベゼルがまだ広く、どちらかと言えば、従来モデルから緩やかにワイド化(縦長化)が進んだようにも見える。

ホーム画面などのユーザーインターフェイスは一括設定が可能。
ホーム画面はおなじみの「Xperiaホーム」が利用できるが、NTTドコモの「docomo Live UX」もインストールされている
ホーム画面の切替アニメーションもカスタマイズできる
ホーム画面に表示するアイコンのグリッドもカスタマイズ可能。
アプリはホーム画面からボタンをタップすると、一覧画面が表示される。最上段でアプリ名を入力して、検索することもできる
画面最上部から表示した通知パネル。並べ替えなどのカスタマイズもできる

左右のボタン、インターフェイス

 ボディ右側面には上部側に音量キーと電源キー、下部側にシャッターキーを備える。シャッターキーは撮影時のシャッターに利用できるほか、長押しすることで画面オフの状態からカメラを起動できる。左側面にはmicroSDメモリーカードも装着可能なSIMカードトレイ、下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。従来モデルでは上部に備えられていた3.5mmステレオイヤホンマイク端子はなくなり、有線のイヤホンやヘッドフォンを利用するときは、同梱の「3.5mmイヤホン変換・テレビアンテナケーブルSO01」を接続する。

右側面には音量キー、電源キー、シャッターキーが並ぶ。シャッターキーの長押しで、待機状態からのカメラ起動も可能
下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。3.5mmステレオイヤホン端子は備えられていない
左側面にはmicroSDメモリーカードとnanoSIMカードが装着できるSIMトレイを装備。ピンなどは不要で、爪の先を引っかけるだけで取り出せる

サウンド

 このケーブルはワンセグ視聴時の外部アンテナとしても機能する。フルセグには対応していない。また、ソニーモバイルから販売されている「USB Type-C 2-in-1ケーブル(EC270)」を利用すれば、USBで充電しながら、有線のイヤホンでサウンドを楽しめるほか、Bluetoothヘッドフォンなどを利用することも可能だ。Bluetoothは一般的なSBCのほか、aptXやAAC、LDACに対応する。ハイレゾの音源など、高音質を追求するなら、aptXやLDAC対応ヘッドフォンと組み合わせて利用したい。

 ちなみに、サウンドについては本体を横向きに構えたとき、迫力ある大音量が楽しめるフロントステレオスピーカーを搭載しており、従来のXperia XZ1 Compact SO-02Kよりも音量が20%アップしているという。上位モデルに搭載されているダイナミックバイブレーションシステムは搭載されない。

指紋センサーは背面に

 外観で従来モデルと異なるのは、側面の電源キーに内蔵されていた指紋センサーが独立して、背面に搭載されたことだ。ボディの背面が丸みを帯びたデザインに変更され、側面のスペースが狭くなったこととも関係するのだろうが、上位モデルも含め、ここ数年のXperiaシリーズの標準的な装備だったため、操作に戸惑うユーザーがいるかもしれない。背面の指紋センサーの位置については、Xperia XZ2 SO-03Kほどではないものの、やはり、他機種に比べ、やや中央寄りに備えられている印象で、最初は指先で探してしまうことがあった。ただ、カメラ上部寄りに搭載されているため、Xperia XZ2 SO-03Kのように、間違ってタッチしてしまうようなことはなさそうだ。とは言え、もう少し指先の触感などに変化を付けて、「触った感じ」を演出して欲しいところだ。

バッテリー

 バッテリーは本体に2760mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、従来モデルに引き続き、Xperia独自のいたわり充電により、2年間使っても劣化しにくい仕様となっている。しくみとしては充電器を長く接続している時間帯を学習し、その情報に基づいて充電速度を調整し、バッテリーへの負荷を軽減する。アラームを設定しているときは、設定時刻を考慮して、満充電になるように調整する。生活パターンがある程度、決まっているユーザーにとっては有用な機能だが、あまり規則的ではない生活パターンのユーザーにとっては、逆になかなか満充電にならないような印象をもってしまいそうだ。画面内のガイドによれば、習慣を見つけられない場合や習慣から外れた充電のときは、いたわり充電が有効にならないとしている。

いたわり充電に対応。生活のリズムがある程度、決まっているユーザーにとっては便利
現在の利用状況から予測して、いつ頃、電池残量がなくなるのかを知ることができる。STAMINAモードでは機能を制限することで、さらに稼働時間を延ばせる

 また、Xperiaシリーズのバッテリーではおなじみの「STAMINAモード」に対応し、バッテリー残量が厳しいときはONに切り替えることで、機器の動作と一部の機能を制限することで、長時間の利用を可能にする。通常の利用でも現在のペースで利用していると、いつ頃、バッテリー残量がなくなるのかを視覚的に確認できるため、わかりやすい。次の充電まで、十分な電池残量がないと予想されたとき、ユーザーにバッテリーギレを予測して通知する「スマートSTAMINA通知」も搭載される。

 充電は下面に備えられたUSB Type-C外部接続端子に別売のACアダプタを接続して充電する。QuickCharge3.0に対応しており、急速充電が可能だ。上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kが対応するワイヤレス充電には対応していない。

CPU、メモリなど主な仕様

 チップセットは上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kと同じスペックで、クアルコム製SDM(Snapdragon)845を採用し、4GBのRAMと64GBのROMを搭載する。こうしたコンパクトモデルではもっともハイスペックであり、今回試用した限り、動画再生なども含め、ストレスなく、快適に使うことができた。IPX5/8の防水、IP6Xの防塵にも対応しており、画面が濡れた状態でのタッチ操作もできるように仕上げられている。下面のUSB Type-C外部接続端子もキャップレス防水になっており、安心して利用できる。

下り最大644Mbps

 コンパクトなボディに、上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kとほぼ同じスペックを凝縮したXperia XZ2 Compact SO-05Kだが、ひとつ仕様面で差があるのがネットワークの対応だ。Xperia XZ2 SO-03KがNTTドコモのPREMIUM 4Gの受信時最大速度が988Mbpsであるのに対し、Xperia XZ2 SO-05Kは受信時最大速度は644Mbpsとなっている。チップセットが同じであれば、受信時の最大速度は変わらないと考えられがちだが、アンテナのレイアウトなどが異なるため、こうした差ができてしまうようだ。ボディがコンパクトな分、アンテナを実装する場所も限られ、受信時の最大速度が抑えられてしまうわけだが、数百Mbpsを超える通信速度になれば、実際に大きな差が体感できるほどでもないので、実用上はそれほど大きな差にはならないと考えていいだろう。

Motion Eyeカメラ搭載

 Xperiaシリーズが支持されてきた要素のひとつに、カメラ機能が挙げられる。ソニーのデジタルカメラで培われてきたノウハウを活かして開発されたカメラは、スマートフォンの初期の段階から各方面で評価されてきた。しかし、Xperia XZ2 SO-03Kのレビュー記事でも触れたように、近年はデジタルカメラとしての性能ではなく、スマートフォンとしてのカメラの可能性を追求するメーカーが増え、ボケ味のある写真を手軽に撮影できるデュアルカメラなどの新機軸も登場した一方で、Xperiaシリーズのカメラが、やや最新トレンドに乗り遅れている印象は否めない。

背面上部に内蔵された「Motion Eyeカメラ」。指紋センサーとは位置が離れている

 それでもカメラとしての性能は従来から高い評価を受けてきた中で、今回のXperia XZ2 Compact SO-05Kも上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kと同じ仕様の「Motion Eye」と呼ばれるカメラモジュールが搭載されている。

 背面に搭載されたMotion Eyeカメラは、1920万画素の裏面照射積層型CMOSイメージセンサー Exmor RS for mobileに、F2.0のソニー製Gレンズを組み合わせており、画像処理エンジンはBIONZ for mobileを採用し、電子式手ぶれ補正を搭載する。基本的に、従来モデルのXperia XZ1 Compact SO-02Kと同じ仕様のカメラが搭載されているが、画像処理エンジンなどのソフトウェアは更新されているという。

 カメラの最新機能としては、世界初となる「4K HDR動画撮影」が挙げられる。従来モデルのXperia XZ1 Compact SO-02Kも4K動画の撮影には対応していたが、明暗をしっかりと記録できるHDRにも対応したことで、夕暮れの風景やイルミネーションがある夜景などで効果を発揮する。旅先などでの撮影には効果的だが、撮影した映像をフルスペックで撮影するには、当然のことながら、4K HDRの映像コンテンツ再生に対応した家庭用テレビやディスプレイなどが必要になる。

 インカメラについては、従来のXperia XZ1 Compact SO-02Kが800万画素だったのに対し、Xperia XZ2 Compact SO-05Kでは500万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサー Exmor R for mobileが採用され、F2.2のレンズと組み合わせられている。仕様上はスペックダウンしたが、この点は上位モデルのXperia XZ2 SO-03Kと同じであり、そのままXperia XZ2 Compact SO-05Kに継承されたことになる。機能面では従来モデルに搭載されていた3Dクリエイターがインカメラでも撮影できるようになった。自分のアバターなども作ることができ、ARで楽しんだり、SNSでシェアすることができるが、ユーザーによって、少し好みが分かれるという指摘もある。

スーパースロー動画を撮影

【スーパースロー撮影のサンプル】
スーパースローモーションで撮影し、端末内で切り出してみた。操作は簡単だが、決定的な瞬間に出会うことがむずかしい

 また、動画については従来モデルに引き続き、最大960fpsのスーパースローモーションの撮影に対応したが、今回はスローモーションで記録する時間を変更することで、フルHD画質でのスーパースローモーションの撮影を可能にしている。撮影方法も従来同様で、スーパースローモーションが撮影可能なモードで撮影を開始し、決定的な瞬間に画面をタップして、スーパースローモーションを撮影するという流れになる。

 たとえば、ゴルフや野球のスイングなど、スローで記録したいタイミングがわかる被写体は撮影できるが、常に動いているような被写体のスローを撮影するのは、なかなか難しい。ライバル機種ではファインダー内の特定のエリアに動く被写体が差し掛かると、スーパースローに切り替わるような撮影方法を採用しており、もう少し撮影方法のユーザーインターフェイスにも工夫が必要な印象を受けた。動画撮影時の画角がタイト(被写体に寄りすぎている)で、被写体から離れて撮影しなければならない点など、Xperia XZ2 SO-03Kで感じた不満点も共通となっており、撮影には少し慣れが必要な印象だ。

はじめてスーパースローの撮影をしようとすると、チュートリアルが表示される

静止画撮影

 静止画の撮影機能についても従来モデル同様、笑顔や動きを検知したとき、画像を一時的に保存して、最大4枚の写真を記録できる「先読み撮影」がサポートされる。子どもやペットの写真を撮るときなどに便利な機能のひとつだ。動きのある被写体の撮影については、被写体の動きを予測して、フォーカスを合わせ続け、1秒間に最大10枚の連写を可能にするオートフォーカス連写も搭載される。

ビルに囲まれた施設の中庭のようなところで撮影。夕方だったが、きれいに撮影できている

 実際の撮影については、写真を見てもわかるように、暗いところでも十分に明るく撮影できるうえ、建物なども大きな歪みなく、撮影できている。デュアルカメラなどの最新のトピックはサポートされていないが、撮影できる写真の画質は非常に自然で、クオリティの高いものと言えるだろう。ただ、敢えて注文を付けるとするなら、多彩なカメラ機能を搭載し、さまざまなシーンに対応できる撮影ができるものの、ユーザー自身がそれをきちんと選んで撮影できるかどうかという点には疑問が残った。

いつもの薄暗いバーで、カクテルを撮影してみた。背景のぼけ具合がいい感じにまとまっている

 機能的には便利そうなのだが、ユーザーがそれを活かすことができなければ、機能を搭載する意味は半減してしまう。逆に、ライバル機種などでは面倒な設定をせずに、とにかくシャッターを切れば、ユーザーが満足感を得られる写真や動画を次々と撮影できるようにしている。このことを鑑みると、Xperiaシリーズもカメラ性能を追求するだけでなく、ユーザーインターフェイスやユーザビリティの部分も含め、もう少し進化を期待したいところだ。

屋外の建物と青空を撮ってみた。建物も歪みがほとんどなく、青空も不自然さがないきれいな仕上がり

新世代のプレミアムコンパクト

 スマートフォンに限らず、ユーザーの好みはさまざまだ。クルマにしても大きいサイズを好む人がいれば、扱いやすいコンパクトカーがいいという人もいる。スマートフォンにでも同じことが言えるが、これまでのコンパクトなスマートフォンはどちらかと言えば、普及モデルという位置付けで、性能的には上位モデルに一歩も二歩も譲るモデルが多かったのも事実だ。

設定画面内から利用できる「Xperiaアクション」はさまざまなシチュエーションに応じた設定ができる
通勤中の端末の動作を設定できる。会社に行く日時が固定化されているのであれば、おすすめできる
チャット形式でさまざまな機能を知ることができる「Xperiaアシスト」。チャット形式のような表示だが、実際には項目を選んで、答えを表示する仕様
Xperiaの特徴的な機能がまとめられた設定アプリの画面。ここからSTAMINAモードなども設定できる
フォントサイズは実際の例を見ながら、4段階で表示できる
フォントそのものも自由に変更することが可能

 その点、Xperia Compactシリーズは上位モデルと変わらない性能をコンパクトなボディに凝縮し、着実にユーザーの人気を得てきた。従来モデルはディスプレイなど、やや他機種に遅れを取っていた部分もあったが、今回のXperia XZ2 Compact SO-05Kはその部分をしっかりとカバーし、ライバル機種にもひけをとらず、ミッドレンジの他機種にもしっかりと水をあけられるだけの性能を持つモデルに仕上げられている。

 これだけのスペックを幅65mmというコンパクトサイズに凝縮したモデルは、ライバルメーカーにもなく、独特の位置付けを確保したモデルという印象だ。ユーザビリティなどについてはそろそろ新しい世代への進化を期待したいところだが、音楽や映像、カメラなど、エンターテインメントについても一日の長があり、コンパクトなボディで最高の性能を求めるユーザーにとっては非常に魅力的なモデルと言えそうだ。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。