法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

リーズナブルにダブルレンズカメラが楽しめる「HUAWEI P20 lite HWV32」

 国内ではさまざまなスマートフォンが販売されているが、昨年、オープン市場を中心に好調な売れ行きを記録したのがファーウェイの「HUAWEI P10 lite」だ。その後継モデルとなる「HUAWEI P20 lite HWV32」がauの2018年夏モデルとして、発売されることになった。ひと足早く実機を試すことができたので、そのレポートをお送りしよう。

au/ファーウェイ「HUAWEI P20 lite」、約149mm(高さ)×71mm(幅)×7.4mm(厚さ)、約145g(重量)、クラインブルー(写真)、サクラピンク、ミッドナイトブラックをラインアップ

ベストセラーを記録したHUAWEI P10 lite

 ここ数年、SIMフリースマートフォンを中心に、存在感を増しているのがファーウェイだ。もともと各携帯電話事業者向けにモバイルWi-Fiルーターなど、データ通信端末を供給することで実績を積み上げてきたが、SIMフリー端末を扱うオープン市場にもグローバル向けに発表されたSIMフリースマートフォンやタブレットを相次いで投入することで、着実に国内市場に浸透してきた。

 ファーウェイが国内市場向けに販売するスマートフォンには、いくつかのモデルがあるが、軸となるのがグローバル市場向けでもフラッグシップに位置付けられている「HUAWEI P」シリーズと「Mate」シリーズになる。「Mate」シリーズが大画面、大容量バッテリーなどをセールスポイントとしているのに対し、「HUAWEI P」シリーズはコンパクトで持ちやすいサイズ感ながら、高いスペックを実現する方向性に位置付けられている。

 実は、ここ数年、ファーウェイのスマートフォンが国内市場に浸透するひとつのきっかけになったのは、グローバル向けに発表されていた「HUAWEI P8 lite」を2015年10月にワイモバイルが「LUMIERE」というネーミングで販売したことにある。当時はまだSIMフリースマートフォンも現在のような盛り上がりを見せていなかったが、Pocket WiFiなどで関係の深かったワイモバイルのラインアップに採用され、これが予想を大きく上回る販売数を記録した。

 これを受け、ファーウェイは2016年に後継機種「HUAWEI P9 lite」をオープン市場向けに投入し、昨年は2017年モデルの「HUAWEI P10 lite」を販売。「HUAWEI P10 lite」はオープン市場だけでなく、MVNO各社がSIMカードとセットで販売するモデルとしても人気を集め、さまざまな販売ランキングの上位に食い込むなど、SIMフリースマートフォンのベストセラーを記録することになった。

 今回、auから発売される「HUAWEI P20 lite HWV32」は、その後継モデルという位置付けになる。auはすでに今年1月、春商戦向けに「HUAWEI nova 2 HWV31」を販売しており、こちらの売れ行きも好調だったとのことで、連続での新機種投入になった。ファーウェイのラインアップ構成としては、novaシリーズが若い世代のユーザー向けという方向性であるのに対し、HUAWEI Pシリーズは前述のように、Mateシリーズと並ぶフラッグシップモデルであり、世代を問わずにおすすめできるシリーズという扱いだ。

 また、HUAWEI Pシリーズは従来からひとつの世代に複数のモデルがラインアップされてきた。たとえば、昨年の「HUAWEI P10」シリーズの世代では、5.1インチディスプレイ搭載の「HUAWEI P10」、5.5インチディスプレイ搭載「HUAWEI P10 Plus」の2機種がダブルレンズカメラを搭載した上位モデルとして販売されていたのに対し、「HUAWEI P10 lite」は「HUAWEI P10/P10 Plus」のコンセプトを受け継ぎながら、3万円前後という買いやすい価格帯を狙ったモデルだったため、コストパフォーマンスに優れているものの、ファーウェイの十八番とも言えるダブルレンズは搭載されていなかった。

 今回の「HUAWEI P20 lite HWV32」は、今年3月にグローバル向けに発表された「HUAWEI P20」シリーズの普及モデルという位置付けだが、ダブルレンズカメラが搭載されているほか、指紋センサーや顔認証など、上位モデルに迫る機能を搭載しながら、価格は3万2400円(auオンラインショップ/一括払い)に抑えられており、かなりコストパフォーマンスの高いモデルに仕上げられている。

縦横比19:9のフルHD+対応ディスプレイを搭載

 「HUAWEI P」シリーズは同社の「Mate」シリーズに比べ、コンパクトで持ちやすいことも魅力のひとつだが、その流れは今回の「HUAWEI P20 lite HWV32」にも引き継がれている。

背面は光沢感のある仕上がり。au向けのモデルのため、背面の横向きの左下に「au」のロゴが表記されている
右側面には電源キーと音量キー。他のファーウェイ端末と同じレイアウトを踏襲している
底面にはUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える
上面にはノイズキャンセル用のマイクが内蔵されているのみ。カメラ部が突起しているのに対し、指紋センサー部は凹んでいる

 ボディは薄さ7.4mm、幅71mmと、薄くスリムで、ボディ側面をラウンドさせる仕上げにより、手にフィットし、片手でも持ちやすい形状に仕上げられている。サイズ感としてはiPhone 8とほぼ同じか、少し幅広になる程度に近い。背面も2.5Dガラスを組み合わせており、光沢が美しい高級感のあるデザインとなっている。これだけきれいに仕上げられていると、落としたときなどのキズなどが心配だが、パッケージには他のファーウェイ端末同様、クリアタイプの樹脂製カバー(試供品)が同梱されている。購入後、気に入るカバーが見つかるまでは、この同梱のカバーで保護しておくことができるので、安心だ。もちろん、クリアタイプなので、女性ユーザーはケースをデコレーションするときのベースに使うのも手だ。

ディスプレイ上部には切り欠き(ノッチ)があり、インカメラなどが収められている
設定を切り替えることで、ノッチ部分を隠すことも可能

 本体前面には2280×1080ドット表示が可能な5.8インチのフルHD+対応IPS液晶を搭載する。ディスプレイ上部には上位モデルの「HUAWEI P20」などと同じように、切り欠き(ノッチ)があり、本体前面のほとんどをディスプレイが覆い尽くす狭額縁仕上げとなっている。ノッチ部分にはアンテナピクトや通知、バッテリー残量などのアイコンが表示されるが、バックのホワイトの部分を隠す表示も設定可能だ。

 背面には後述するダブルレンズカメラ、指紋センサーが備えられている。指紋センサーは指紋認証によるロック解除に利用できるほか、カメラ起動時に長押しでシャッターを押す動作を割り当てたり、着信時に電話に出る機能なども利用できる。

左側面にはピンで取り出すタイプのSIMカードトレイが備えられている。au ICカードと最大256GBのmicroSDメモリーカードを装着できる
背面に備えられたダブルレンズカメラ。カメラ部はやや突起しているため、カバーなどを装着するのがおすすめ

 本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備えており、付属のACアダプタ「HUAWEI Quick Charger」を接続することにより、急速充電をできるようにしている。バッテリーは3000mAhと大容量のものが搭載されており、今回試用した範囲では同クラスの製品と比べ、バッテリー駆動時間は比較的ロングライフであるという印象を得た。auのカタログスペックでは連続通話が約1000時間、連続待受が約350時間となっている。

 チップセットは「HUAWEI nova 2 HWV31」やSIMフリー端末の「Mate 10 lite」と同じKirin 659オクタコア(2.36GHz×4、1.7GHz×4)を搭載し、メモリーはRAM 4GB、ROM 64GBという同じ構成になっている。このスペックであれば、アプリやコンテンツ、ゲームなどもストレスなく、楽しむことができそうだ。

 ネットワーク関係については、auの4G LTE及びWiMAX 2+に対応し、受信時最大225Mbps、送信時最大25Mbpsで利用可能だ。Wi-Fiについては「HUAWEI nova 2 HWV31」が2.4GHzのみだったのに対し、5GHzにも対応し、IEEE802.11a/b/g/n/ac準拠となっている。マンションなど、近隣に多くの世帯があるユーザーにとっては、5GHz対応はうれしい点だろう。

 ホームアプリは「HUAWEI nova 2 HWV31」やSIMフリー端末でもおなじみの「Huaweiホーム」のみが設定されており、今回試用した製品ではau独自のホームアプリがインストールされていなかった。Huaweiホームのカスタマイズは他のファーウェイ製スマートフォン同様で、「ホーム画面のスタイル」で「標準」と「ドロワー」を選べるようにしている。シニアユーザーなど、はじめてのユーザーが利用するときは設定画面で切り替えられる「簡易モード」が視覚的にもわかりやすく、おすすめだ。

ホーム画面は下段のDock部分のみ、固定表示
ホーム画面のスタイルは「標準」と「ドロワー」から選ぶことができる
タイル表示の「簡単モード」も用意される

 Androidプラットフォームのナビゲーションキーはカスタマイズが可能で、[戻る]キー、[ホーム]キー、[履歴]キーの配置が2種類から選べるほか、通知パネルを表示するキーを追加することもできる。また、画面内に白い円形のアイコンを表示しておき、このアイコンをタップしたり、長押ししたりすることで、Androidプラットフォームのナビゲーションキーの役割を設定できる「ナビゲーションメニュー」も利用できる。画面をより広く使いたいユーザーには有用だろう。日本語入力は従来の「HUAWEI P10」シリーズでも採用されていたオムロンソフトウェア製「iWnn」が搭載される。かな入力、英字入力でキーボードの配列を切り替えたり、キーボードのデザインを変更できるようにするなど、カスタマイズしやすい仕様となっている。

表示モードを切り替えると、文字だけでなく、画像なども拡大・縮小される。テキストチャットのようなプレビュー画面で確認しながら設定が可能
ナビゲーションキーは4種類から設定ができる。ナビゲーションキー(ナビゲーションバー)の表示も通常非表示にしておき、下からスワイプして表示する設定が可能
白い円状のアイコンを表示しておき、それを操作しながら使うナビゲーションメニューも利用できる

 実用面での便利機能としては、着信音が鳴っているとき、本体を伏せて着信音を消したり、端末を持ち上げると自動的に画面がオンに切り替わるなど、モーションセンサーで動作を設定できる「モーションコントロール」、片手で操作しやすいように、画面を縮小表示したり、キーボードを左右に動かせる「ワンハンドUI」、三本指で画面をスワイプして撮れる「スクリーンショット」などが用意されている。

背面の指紋センサーを使い、指紋を登録し、ロック解除などに利用できる。サイズが大きいため、認証時の認識も早い印象
指紋センサーをカメラのシャッターとして利用できるほか、着信の応答やアラームの停止などの操作も可能
日本語入力は「iWnn」が設定されている。細かい部分のカスタマイズもできる
キーボードは入力モードごとに設定が可能
ホーム画面に表示された「HINT」アプリは端末を使うためのTipsなどが数多く掲載されている。ビギナーならずとも便利

 セキュリティについては、前述の指紋センサーによる指紋認証のほかに、顔認証が利用できる。顔認証はあらかじめ顔を登録しておくことで、画面を見るだけで、ロック解除できるもので、モーションコントロールの[持ち上げる]-[端末起動]をオンにしておくと、端末を手に取り、顔の前に持ってくれば、すぐにロックが解除される。ただし、ファーウェイによれば、「顔の情報を三次元的に捉えているわけではないため、写真で解除できる可能性がある」とのことだ。企業利用など、ビジネスレベルのセキュリティには厳しいが、個人の利用であれば、十分に実用的と見ていいだろう。寝ている間に指先を当てられるかもしれない指紋センサーに比べれば、安心という見方もできる(笑)。

インカメラを使い、顔認証のために顔を登録することができる
画面内に表示されたガイダンスに従って、顔を登録する
顔認証を利用するとき、通知などを表示するかどうかなども設定ができる

1600万画素+200万画素のダブルレンズカメラを搭載

 国内市場において、ファーウェイ製スマートフォンが着実に浸透してきた背景には、やはり、ダブルレンズカメラに積極的に取り組んできたことが挙げられる。国内向けには楽天モバイル向けに供給した「honor6 Plus」で初搭載したのを皮切りに、Leicaとの協業によるカメラを搭載した「HUAWEI P9」や「HUAWEI P10」、「HUAWEI P10 Plus」、「HUAWEI Mate 10 Pro」などに搭載するほか、最近では「HUAWEI nova 2 HWV31」やSIMフリー端末の「HUAWEI nova lite 2」など、3万円を切るモデルにも搭載し、ファーウェイ製端末の十八番になりつつある。

カメラを起動し、ファインダー画面を右にスワイプすると、撮影モードが設定できる
カメラを起動し、ファインダー画面を左にスワイプすると、カメラの機能を設定できる

 こうした複数のカメラを搭載したマルチカメラの特徴としては、被写界深度の違いを利用し、ボケ味の利いた写真を撮影できることが挙げられる。ただ、マルチカメラは機種によって、さまざまな手法がある。たとえば、Leicaとの協業で開発した「HUAWEI P10」や「HUAWEI Mate 10 Plus」ではモノクロイメージセンサーとカラーイメージセンサーを組み合わせ、幅広いダイナミックレンジの写真を撮影できるようにしているが、アップルの「iPhone 8 Plus」や「iPhone X」では標準と望遠のカメラを組み合わせている。

いつもの暗いバーで撮影。残念ながら、この環境では明るい部分に引っ張られてしまい、明るく撮ることが難しい
バーの室内を撮ってみると、意外に雰囲気のある写真を撮ることができた。もう少し暗いところも明るく写せるとベターだが……
陽射しの強い屋外で撮影。花はきれいに撮れている。右上の部分が少し歪んでいるような印象もあるが、全体的にきれいに撮影できている
屋外で撮影。空の青さも不自然さはなく、きれいに撮影できている

 今回の「HUAWEI P20 lite HWV32」のメインカメラは、1600万画素と200万画素のイメージセンサーを組み合わせたダブルレンズカメラとなっている。基本的には1600万画素のカメラで撮影し、200万画素のイメージセンサーは被写界深度を測るために利用されている。上位モデルとは異なるアプローチのダブルレンズカメラだが、同じようにボケ味の利いた写真を撮ることができるうえ、ワイドアパーチャ機能を使い、一眼レフで撮影したように、撮影後に写真のピントが合う位置を調整することもできる。いつもの筆者が撮影しているバーのように、暗い室内については、さすがにモノクロ/カラーイメージセンサーを組み合わせる上位機種のような写真を撮れないが、一般的な明るさの室内であれば、自然な印象で撮影することができる。カメラの撮影モードは「夜間」や「HDR」、「スロー」などが多彩なものが用意されているが、実用面ではホワイトボードや文書の撮影に適した「文書スキャン」が便利だ。

ワイドアパーチャで奥側のボトルにピントを合わせてみた
ワイドアパーチャで手前側のパッケージにピントを合わせてみた。撮影後に調整ができるのはなかなか便利だ

 ファーウェイ製スマートフォンのもうひとつの強みであるインカメラについては、1600万画素のイメージセンサーが採用されている。インカメラとしてはかなり高画素のイメージセンサーになるが、4つのピクセルを1つの大きなピクセルとしてまとめ、受光感度を4倍に高める「4in1ライトフュージョン」という機能が搭載されており、あまり明るくない夜間や室内でも自然な明るさの写真を撮ることができる。もちろん、従来のファーウェイ製スマートフォンで好評を得ているビューティーモードやポートレートなどもサポートされており、アプリなどを追加することなく、自然に『盛った』写真を撮影できるようにしている。さらに盛りたいときは、モードに用意されている「ARレンズ」がおすすめだ。カメラエフェクトアプリのように、うさぎやネコの耳を付けたり、背景を変更して、かなり遊んだ写真を撮ることができる。なかでも背景の変更は人物を切り抜いて、合成するのだが、シーンによってはちょっと雑な切り抜きになってしまうところもあって、逆にその味わいが面白く感じられた。

 また、自分撮りについては、前述の指紋センサーの長押しによるシャッターに加え、ジェスチャーセルフィーも利用できる。インカメラを起動した状態で、手のひらをカメラに向けると、カウントダウンが始まり、シャッターを切ることができる。暗いところでの撮影では、指紋センサーの長押しよりも手ぶれをするリスクが少ないため、おすすめだ。

「HUAWEI P20 lite HWV32」は再びベストセラーを期待させる仕上がり

 スマートフォンに求める要素は、使う人によってさまざまだが、十分な品質と実用的な機能、手の届く納得できる価格のバランスを求めるユーザーは多い。今回、取り上げた「HUAWEI P20 lite HWV32」は、昨年、ファーウェイ躍進の原動力となったベストセラーモデル「HUAWEI P10 lite」の後継モデルに位置付けられるが、従来モデルのいいところを受け継ぎながら、最新の2018年仕様のトレンドを着実に取り込むことで、さらにコストパフォーマンスに優れた製品に仕上げている。再びベストセラーを記録できる仕上がりと言えるだろう。

ベストセラーを記録した「HUAWEI P10 lite」の後継モデルとなる「HUAWEI P20 lite HWV32」。約3万円で購入できるコストパフォーマンスの高さは魅力

 スリムで持ちやすいボディに、大画面ディスプレイを搭載し、数多くの実用的な機能を搭載しており、はじめてのユーザーはもちろん、ある程度、スマートフォンを利用してきたユーザーが機種変更で手頃なモデルを求める対象にも適している。カメラについてはインパクトが強すぎる上位モデルほどの写真が撮れるわけではないが、ボケ味の利いた写真やポートレート写真をはじめ、ARレンズによる遊びゴコロのある写真など、楽しく写真を撮影できる機能がサポートされている。これだけの要素を持ちながら、3万円前後で購入できるのは、かなりお買い得と言えるだろう。手軽にダブルレンズカメラを楽しみたいユーザー、お手頃価格で実用性の高いモデルを選びたいユーザーにおすすめの一台と言えるだろう。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。