法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」

 9月13日に米クパチーノで催されたSpecial Eventで発表され、国内でも9月22日からiPhone 8/8 Plusと同時に発売された「Apple Watch Series 3」。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 アップル「Apple Watch Series 3/GPS+Cellularモデル」アルミニウム/42mm、カラーはスペースグレイアルミニウム(写真)、シルバーアルミニウム、ゴールドアルミニウムの3色。この他に、ステンレスケース、セラミックケースもラインアップ
アップル「Apple Watch Series 3/GPS+Cellularモデル」アルミニウム/42mm、カラーはスペースグレイアルミニウム(写真)、シルバーアルミニウム、ゴールドアルミニウムの3色。この他に、ステンレスケース、セラミックケースもラインアップ

 2015年発売の初代モデルから数えて、その名の通り、三代目となるモデルだが、今回はLTEによる通信及び通話機能をサポートしたモデルをラインアップするなど、大きく内容が変更されている。筆者も実機を試すことができたので、その内容をレポートしよう。

スマートウォッチの方向性

 この10年のスマートフォンの流れを受け、ここ数年、ウェアラブルデバイスやスマートウォッチと呼ばれるジャンルの製品が注目を集めてきた。なかでも腕に装着する『時計型デバイス』は、既存の腕時計を置き換えることになるのかといった視点でも話題になってきた。ただ、数年前にソニーの平井一夫代表執行役兼CEOがインタビューにおいて、「ウェアラブルデバイスはメガネにしても時計にしても不動産で言えば、一等地を争うことになる。そう簡単には入り込んでいけない」と話していたように、市場へ浸透するスピードはスマートフォンに比べると、かなり鈍く、なかなか受け入れられていない印象もある。現に、スマートウォッチや活動量計を手がけてきたメーカーの中には、米Jawboneのように倒産したり、Pebbleのように同業のFitbitに買収されるなど、統廃合の動きが散見されるようになってきた。一部では「ウェアラブルのブームは終わった」と言い切るメディアも見かけるくらいだ。

 そんな中、アップルは2015年に初代Apple Watchを発表し、2016年にはApple Watch Series 2、今年9月に同社キャンパス内のスティーブ・ジョブズ・シアターで催されたSpecial Eventにおいて、iPhone 8/8 Plus、iPhone X、Apple TV4Kと共に、三代目モデルとなる「Apple Watch Series 3」を発表した。

 Apple Watchについては、初代モデルが発表される前、時計業界の関係者をスカウトしたことなどが伝えられ、「アップルが今までにないスマートウォッチを開発中」という情報が飛び交い、注目を集めていた。2014年に行なわれたSpecial EventでiPhone 6/6 Plusと共に発表され、2015年3月から初代モデルの販売が開始された。初代Apple Watchには「Apple Watch Sport」「Apple Watch」「Apple Watch Edition」という3つのモデルがラインアップされ、最上位モデルは218万円という高級ブランドの腕時計並みの価格が設定され、モバイル業界だけでなく、時計業界の関係者も驚かせた。

 ところが、この初代モデルはアップルの意気込みとは裏腹に、今ひとつ芳しい結果を得られなかった。なかでも高級路線のモデルは話題性から店頭に現物を見に来る人はいるものの、他のブランド時計に対抗するような存在にはならなかったという。もっとも他のブランド時計はこれまで積み上げてきたブランドとしてのストーリーや重みがあり、そこにiPhoneでスマートフォンを牽引してきたアップルが挑んだとしてもなかなか対抗できないのは当たり前という見方もできる。

 こうした状況を鑑みてか、昨年発表されたApple Watch Series 2では、GPSを内蔵し、防水防塵に対応することで、ランニングやウォーキングなど、スポーツでの利用に適しているという方向性を打ち出してきた。プールでの水泳の運動も計測できるようにするなど、これまでのスマートウォッチにはなかった運動への対応も訴求しはじめた。この路線変更が功を奏したのか、二代目モデルからは少しずつ堅実な反響が得られたようで、筆者の周りでもiPhoneのユーザーを中心に使い始める人が増えてきた。なかでも普段からジョギングなどを楽しんでいるユーザーからは、関心が高かった印象だ。

時計で電話ができる面白さ

 そして、今回発売されたなるApple Watch Series 3は、すでに本誌の
Special Eventの記事でも説明されているように、Apple Watch Series 2の路線を継承しながら、新たにGPS+Cellularモデルをラインアップに加え、Apple Watch単体での通話も可能にしている。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 GPS+Cellularモデルはデジタルクラウンに赤いマークがあしらわれている
GPS+Cellularモデルはデジタルクラウンに赤いマークがあしらわれている
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 背面には心拍数センサーなどを搭載。バンドは従来モデルと共通で、バンド横のボタンを押し込んで、バンドをスライドさせて着脱する
背面には心拍数センサーなどを搭載。バンドは従来モデルと共通で、バンド横のボタンを押し込んで、バンドをスライドさせて着脱する

 仕組みとしてはApple Watch Series 3本体に、通信/通話が可能なモジュールを内蔵しディスプレイ部分をアンテナとして活用できるように設計し、eSIMに契約者情報を記録することで、電話の発着信やメッセージの送受信などを可能にしている。言わば、『小さな携帯電話』として、作り込まれているわけだ。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 ペアリングはiPhoneのBluetoothをオンにした状態で、初期状態のApple Watchを置くと、このような画面が表示される
ペアリングはiPhoneのBluetoothをオンにした状態で、初期状態のApple Watchを置くと、このような画面が表示される
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 カメラが起動するので、Apple Watchの文字盤に向けてると、自動的にペアリングが始まる
カメラが起動するので、Apple Watchの文字盤に向けてると、自動的にペアリングが始まる
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 無事にペアリングが完了。PINコードの入力なども必要なく、非常に簡単。
無事にペアリングが完了。PINコードの入力なども必要なく、非常に簡単。

 では、具体的に、どんなシーンに役立つのだろうか。たとえば、前述のランニングやウォーキングでは二代目モデルでGPSによる位置情報が把握できたものの、手元にiPhoneがなければ、地図を参照したり、情報を検索するといった使い方ができなかった。これに対し、Apple Watch Series 3ではApple Watchだけでランニングやウォーキングに出かけてもランニング中にかかってきた電話や通知に対応したり、現在地を地図で確認したり、音声入力で行き先を確認して、ナビゲーションを利用するといった使い方もできる。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 時計の文字盤は複数のパターンが用意され、パーツのレイアウトなどをカスタマイズ可能
時計の文字盤は複数のパターンが用意され、パーツのレイアウトなどをカスタマイズ可能
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 標準アプリの[ワークアウト]のメニューにはランニングやウォーキングをはじめ、さまざまな運動の項目が用意されている
標準アプリの[ワークアウト]のメニューにはランニングやウォーキングをはじめ、さまざまな運動の項目が用意されている
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 [ワークアウト]のアプリの各項目を開くと、どのように計測するのかを選べる。インドアバイクではフリー、カロリー、時間から設定可能
[ワークアウト]のアプリの各項目を開くと、どのように計測するのかを選べる。インドアバイクではフリー、カロリー、時間から設定可能

 また、Apple WatchはBluetoothヘッドセットをペアリングすれば、Apple Watchに保存された音楽を聴くことができるが、通信モジュールが内蔵されたことで、アップルが提供する定額音楽サービス「Apple Music」の音楽を4G/3Gのストリーミングで聴くことができる。もちろん、言うまでもなく、iPhoneが手元になくてもApple Watch Series 3のみで楽しむことが可能だ。

 実は、これまでの多くのスマートウォッチや活動量計は、通信機能がWi-FiやBluetoothに限られていたため、どうしても親機となるスマートフォンが必要で、結果的に腕やウエストに付けたポーチを入れて、出かけなければならなかった。ところが、Apple Watch Series 3はセルラー機能を搭載したことで、こうした親機の存在という束縛から逃れ、本体のみでさまざまな情報を受けたり、音楽を楽しんだり、活動量などを計測できるようになったわけだ。ちなみに、他のプラットフォームを含む製品では、Android Wear搭載などのスマートウォッチで、eSIM対応で通信モジュールを搭載したモデルが存在するが、国内では販売されていなかったため、実質的にはApple Watch Series 3が国内初の通信/通話対応スマートウォッチ(本体のみで利用)ということになる。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 Apple Watchのみで電話をかけることもできる。ダイヤラーはパスコード入力と同じ画面だが、従来よりも大きく表示され、操作しやすい
Apple Watchのみで電話をかけることもできる。ダイヤラーはパスコード入力と同じ画面だが、従来よりも大きく表示され、操作しやすい
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 発着信履歴も表示可能で、履歴をタップして、発信することもできる
発着信履歴も表示可能で、履歴をタップして、発信することもできる

 筆者も何度かApple Watchのみで出かけ、記録を取ってみたが、ランニングやジョギングでiPhoneを持ち歩かなくても済み、いざとなれば、電話をかけたり、地図を見たりといった使い方ができ、今までのスマートウォッチにはない面白さがあるという印象を得た。まだ、標準アプリなどで利用するのみで、どういうアプリがより便利なのかは判断できないが、今後の展開次第では、もっと新しい活用スタイルが見えてくるかもしれない。

Apple Watch Series 3の回線契約

 ところで、Apple Watch Series 3で通信や通話ができるということは、当然のことながら、各携帯電話会社との契約が必要になる。そこで、各社ではペアリングしたiPhone(iPhone 6/6 Plus以降、iPhone SEが対象)と同じ電話番号でApple Watchに着信する追加番号のサービスを提供している。NTTドコモは「ワンナンバーサービス」(月額500円)、auは「ナンバーシェア」(月額350円)、ソフトバンクは「Apple Watch モバイル通信サービス」(月額350円)として、それぞれが提供しており、欄旬までは加入後6カ月間、各社とも無料で利用できるキャンペーンを実施している。

 気になるデータ通信料や通話料については、ペアリングしているiPhoneで契約中のプランが適用され、データ通信量もiPhoneの回線から消費される。ただ、Apple Watch Series 3のデータ通信は、LTE Cat.1に対応したもので、iPhoneが近くにある場合などは適宜、最適な通信手段(モバイル、Wi-Fi、Bluetooth)を選んで通信をするため、Apple Watch Series 3の通信機能を契約したから、すぐに大容量のデータ通信量を消費してしまうということもない。

 Apple Watch Series 3の追加番号を利用したセルラー機能は、残念ながら、MVNO各社の回線で利用できない。これはMVNO各社の回線では、MNO各社の追加番号のメニューが利用できない(MVNO向けに提供されていない)ためで、海外でも同じような状況だと言われている。1つの電話番号で複数の端末に着信する方法は、モバイルネットワークの設備も対応が必要であることを考慮すると、現時点ではしかたないと言えるだろう。将来的に、Apple WatchとwatchOSの環境が整い、各携帯電話会社がMVNO向けのメニューに同等の機能を提供するようになれば、MVNO各社の回線でも利用できるかもしれないが、何世代か先の話になりそうだ。

 また、Apple Watch Series 3の追加番号の契約は、本体に内蔵されたeSIMを利用するが、このeSIMはiPhoneや他のスマートフォンのような『SIMロック』がかけられていない。各携帯電話会社やアップルのいずれから購入したApple Watch Series 3も同じ対応になる。たとえば、NTTドコモのiPhoneとペアリングして、ワンナンバーサービスを利用したが、ワンナンバーサービスを解約して、iPhoneとのペアリングを解除したとする。Apple Watch Series 3がスマートフォンで言うところの『白ロム』のような状態になるが、この状態でauやソフトバンクのiPhoneとペアリングすれば、それぞれの追加番号サービスを申し込み、利用することができる。もちろん、セルラー機能を利用せず、実質的なGPSモデルとして、使い続けることも可能だ。

 Apple Watchは元々、普段から身に着けるものであり、そんなに頻繁にペアリングするiPhoneを変更することはないだろうが、契約する携帯電話会社の制約がないというのはメリットと言えるだろう。

 申し込みの手続きについては、ペアリングしたiPhoneの[Watch]アプリから各携帯電話会社に申し込みができるようになっており、iPhoneからの手続きのみで完了する。手続きそのものについては、画面の指示に従っていけば完了し、Apple Watch Series 3に必要な情報が書き込まれるため、特に難しいところはない。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 Apple Watch Series 3のセルラー機能を登録するには、iPhoneの[Watch]アプリから手続きをする
Apple Watch Series 3のセルラー機能を登録するには、iPhoneの[Watch]アプリから手続きをする
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 意外に手間がかかり、わかりにくかったauの「ナンバーシェアサービス」の申し込み。画面では手続き時間が「06:00-22:00」と表記されているが、現在は「09:00-21:00」に短縮されている
意外に手間がかかり、わかりにくかったauの「ナンバーシェアサービス」の申し込み。画面では手続き時間が「06:00-22:00」と表記されているが、現在は「09:00-21:00」に短縮されている

 ただ、NTTドコモのワンナンバーサービスがネットワーク暗証番号を入力するのみで、スムーズに登録ができるのに対し、auのナンバーシェアは申し込み時に正確な氏名や住所などを入力しなければならず、これらの情報が合致しないと、登録に失敗してしまう。たとえば、番地の登録が「○番□号」と登録されているのに、「○-□」と省略して入力すると、合致しないと判断され、登録ができない。今後、手続きのメニューが改善されるかもしれないが、auの場合は事前に[My au]のアプリで、自分の登録情報の住所などを正確に把握しておき、そのうえでナンバーシェアの手続きをはじめることをおすすめしたい。また、将来的に追加番号サービスを契約したApple Watch Series 3を手放すときは、同じように[Watch]アプリで追加番号サービスの契約を解除し、ペアリングを解除する必要がある。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 つまずきやすい「ご契約者情報の入力」の画面。なかでも現住所は登録通りに入力しないと、失敗する。事前に「My au」で、正確な情報を確認しておきたい
つまずきやすい「ご契約者情報の入力」の画面。なかでも現住所は登録通りに入力しないと、失敗する。事前に「My au」で、正確な情報を確認しておきたい
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 無事にモバイル通信の登録が完了。確実な動作のため、一度、再起動した方がベター
無事にモバイル通信の登録が完了。確実な動作のため、一度、再起動した方がベター

 最後に、Apple Watch Series 3で通信や通話を利用できるようになったことで、バッテリーの消費がどうなのかという点にも触れておこう。

 基本的にApple Watch Series 3は三世代目ということもあり、もともと、バッテリーの消費は比較的、緩やかというのが率直な印象だ。watchOSもバージョンアップしたため、一概に比較的できないが、初期の頃のように、一日、身に着けて外出したら、夜には残りバッテリー残量が20~30%というような事態にはなっていない。ただ、これは使用頻度にも大きく左右される、一日中、何度も音声で通話をすると、当然のことながら、バッテリーの消費量は増える。このあたりは実際に自分のライフスタイルに当てはめてみて、どういうペースで充電をすればいいのかをつかんでいくしかなさそうだ。ちなみに、筆者はほぼ毎日、帰宅後にApple Watchの充電スタンドに置いて、充電するクセをつけている。まれに忘れることもあるが、元々、バッテリー容量もそれほど大きくないので、数十分も充電すれば、何とか使える程度にバッテリー残量は回復できる。

 また、これからApple Watchを使い始めるユーザーのうち、もし、出張や旅行に出かけることが多いユーザーは、同梱されている充電ケーブルの他に、もうひとつ充電ケーブルを「出張用充電キット」などに入れておくことをおすすめしたい。さすがに、スマートフォンの充電ケーブルは入手しやすいが、Apple Watch磁気充電ケーブルは家電量販店やAppleストアなど、入手できる場所が限られているからだ。現に、筆者自身も海外出張に持っていくのを忘れ、すでに2本ほど、余分にApple Watch磁気充電ケーブルを所有するはめになってしまった(笑)。

iPhoneの出番が減るかも? セルラー機能搭載Apple Watch Series 3は試す価値あり

 今回発表されたApple Watch Series 3について、セルラー機能の話題を中心に説明してきた。冒頭でも触れたように、ウェアラブル端末のうち、腕時計型デバイスについては、元々、腕時計に対するこだわりを持つ人が多かったり、そもそも腕時計を身に着けないという人も居て、なかなか使ってみよう、トライしてみようという気にならないと言われることが多い。実は、筆者自身は結構な時計好きで、当初はApple Watchの路線に疑問を感じていたのだが、気が付いてみれば、この2年半、初代モデルからApple Watchを購入し、普段から使い続けるようになってしまった。その理由が何かと聞かれることがあり、いつも「特に理由はないけど……」と答えているのだが、強いて挙げるなら、メールやSNSなどの通知を見逃さないということが挙げられる。そんなに通知に縛られなくてもという気もするが、仕事の連絡も含め、何度か見逃してしまうことがあったものをApple Watchを使い始めて以来、随分と見逃す頻度を下げることができた気がする。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 地図アプリでは位置情報で現在地の地図を表示したり、特定の場所の地図を検索することも可能
地図アプリでは位置情報で現在地の地図を表示したり、特定の場所の地図を検索することも可能
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 検索は音声入力が利用可能。六本木ヒルズと話すと、現在地からの時間などが表示される
検索は音声入力が利用可能。六本木ヒルズと話すと、現在地からの時間などが表示される
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 小さいながらも地図が表示される。デジタルクラウンを回すと、拡大/縮小が可能
小さいながらも地図が表示される。デジタルクラウンを回すと、拡大/縮小が可能

 また、スポーツについては、普段、それほど運動をしているわけではないが、歩数をカウントしたり、ウォーキングの記録を見たりと、楽しむきっかけになっていたり、人によってはモチベーションアップにもつながっているという。もっとも筆者の場合、仕事や締切に追われていて、モチベーションをアップしてもそもそも運動する時間が取れないというジレンマがあるが……。

 今回は対応するスポーツなどは詳しく説明しなかったが、Apple Watch Series 3の[ワークアウト]のアプリには、ランニングやウォーキング、水泳など以外にもサイクリング、室内バイク、ローイングなど、数多くのスポーツのメニューが提供されている。Apple Watch対応アプリも2年半をかけて、充実してきた印象だ。特に、アプリについては、Apple Watch Series 3とwatchOS 4の環境で、従来に比べ、全体的に動作が快適になった印象で、以前の環境のように、途中でアプリの反応が極端に遅くなったり、データを取れずに終了してしまうといったことは起きにくくなった。安定度が増したApple Watch Series 3だからこそ、購入にはいいタイミングという解釈もできる。

 もうひとつ「Apple Watchを試してみてもいいのでは?」と考える理由として、価格も挙げられる。Apple Watchは初代モデルの「EDITION」の最上位モデルが218万円という価格設定だったため、一般的に「高い」と捉えられていることが多い。しかし、今回のApple Watch Series 3は、もっとも安価なアルミニウムケースのモデルが3万6800円、GPS+Cellularモデルが4万5800円から用意されており、ステンレススチールケースのGPS+Cellularモデルも6万4800円という価格が設定されている。これを高いと見るか、安いと見るかは人によって差があるだろうが、心拍センサーを搭載し、GPSに対応した活動量計が2万円台で販売されており、これに大きなディスプレイ、アプリによる拡張、セルラー機能などが追加されることを考えれば、4万円台半ばのGPS+Cellularモデルはそれほど高くないという見方もできるだろう。Bluetooth LEなどを使い、スマートフォンの通知を受けられる腕時計も安いもので3万円前後ということを考慮すれば、多機能なApple Watchにはかなりのアドバンテージがあるとも言えそうだ。

 最後に、気になる点を少し挙げておこう。Apple Watch Series 3は[ワークアウト]のアプリで、さまざまな運動の負荷を測定できるが、一般的な活動量計では睡眠の状態を記録するものが多い。ところが、Apple Watchの標準アプリには睡眠を記録するものがないようで(筆者が見つけられていないだけ?)、結局、サードパーティのアプリに頼らざるを得ない状況になっている。iPhoneの[ヘルスケア]のアプリには[睡眠]という項目が用意されているのだが、Apple Watchを身に着けただけでは記録されないようだ。スマートウォッチや活動量計で記録する睡眠の情報がどこまで正確で、どれだけ役に立つのかは、それぞれのユーザーが判断することになるが、活動量計で睡眠記録の機能を求めるユーザーが多いことを考えると、今後、Apple Watchの標準アプリとして、何らかのサポートを期待したいところだ。

セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 天気予報などのアプリも従来に引き続き、提供されている
天気予報などのアプリも従来に引き続き、提供されている
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 従来に引き続き、シアターモードもサポートされる。映画好きな筆者にとって、欠かせない機能
従来に引き続き、シアターモードもサポートされる。映画好きな筆者にとって、欠かせない機能
セルラー機能搭載で楽しくなった「Apple Watch Series 3」 シアターモードが有効になると、腕の動きで画面が表示されなくなり、音もサイレントになる
シアターモードが有効になると、腕の動きで画面が表示されなくなり、音もサイレントになる

 また、Apple Watchは初代モデル以来、腕を傾けると、文字盤を表示するしくみを採用している。慣れてしまえば、これはこれで便利なのだが、以前は予期せぬタイミングで光ってしまうことがあり、特に映画館などではポップコーンや飲み物に手を伸ばすと、Apple Watchが反応してしまうという問題を抱えていた。現在は文字盤の画面から上方向にスワイプしたときに表示されるコントロールセンターで、[シアターモード]をオンにすれば、手の動きにかかわらず、画面が表示されないように設定できる。ただ、当然のことながら、マナーモードと同じように、シアターモードを解除しない限り、映画を見終わった帰り道でも時刻が表示されない。このあたりは使い勝手とマナーのバランスになるのだろうが、Apple WatchがディスプレイにOLED(有機ELディスプレイ)を採用しているのであれば、一部のスマートフォンのように、うっすらと常時、時刻などを表示をする「Always on Display」のような機能をサポートしてみてはどうだろうか。最近のOLEDはかつてのように、焼き付きが起きにくくなったと言われているが、画面表示にもひと工夫が欲しいところだ。

 今回、アップルが発表した製品群では、やはり、iPhone Xの注目度が高く、iPhone 8/8 Plusがこれに続いているが、GPS+Cellularモデルがラインアップに加わったApple Watch Series 3は、iPhone SEを含むiPhone 6/6 Plus以降のユーザーが利用できるモデルであり、Apple Watchのみで通話や通信ができるという楽しみが増えている。ケースやバンドをカスタマイズする楽しみもあり、iPhoneユーザーなら、ぜひ一度、店頭で手に取って、試してみて欲しい製品と言えるだろう。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。