法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

PCとスマートフォンをシームレスにつなぐWindowsへ~Build 2017レポート

 マイクロソフトは5月10日~12日、米シアトルで開発者向けイベント「Build 2017」を開催し、Windowsをはじめ、同社の最新情報を開発者向けに公開した。

 昨年までと違い、今年は会期初日にクラウドサービスや開発環境の話題、2日目はWindowsプラットフォームとMR(Mixed Reality)の話題などを中心に講演が行われた。ここでは一般ユーザー向けのモバイル環境に関連する話題をお送りしよう。

マイクロソフトの開発者向けイベント「Build 2017」は米シアトルのWashington State Convention Centerで催された

今秋、「Windows 10 Fall Creators Update」を公開

 2015年7月にリリースされたWindows 10。それまでのWindowsで展開されてきた数年単位のメジャーバージョンアップをやめ、常に最新のWindowsを利用できる環境を提供する一方、2015年7月から約1年間、Windows XP/Vista/7などの従来環境から無償バージョンアップをできるようにするなど、強力に移行を進めてきた。2015年7月のWindows 10公開後も2015年11月に「Windows 10 November Update」、2016年8月に「Windows 10 Anniversary Update」、そして、今年4月には「Windows 10 Creators Update」を公開し、着実に進化を遂げてきた。モバイル環境については、昨年、国内市場において、パソコンと同じUWPアプリが動作するWindows 10 Mobileを搭載したデバイスが数機種、登場し、高い関心を集めた。

初日の基調講演にはCEOのサティア・ナデラ氏が登壇

 こうして順調に進化を遂げてきたWindows 10だが、Build 2017の基調講演の冒頭、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏から、Windows 10の月間アクティブデバイス数が5億台を超えていることが明らかにされた。ナデラ氏はCEO就任以来、「モバイルファースト、クラウドファースト」というキーワードを掲げ、「サービスとしてのWindows」を進化させてきたが、人とモノ、モノとモノがつながるIoTの時代を迎え、基調講演では新たに「Intelligent Cloud, Intelligent Edge」というキーワードが掲げられた。ユーザーはいくつものデバイスを使い、AIなどの支援を受けながら、シームレスにデジタルツールをさまざまなシーンで活用できることを目指すという。

「Intelligent Cloud, Intelligent Edge」ではさまざまなデバイスがいろいろな環境で連携しながら稼働する

 そして、今秋、次なるWindowsのメジャーアップデートとして、「Windows 10 Fall Creators Update」が公開されることが発表された。従来のアップデート同様、新しい機能追加やユーザビリティの向上、アプリの追加などが行われるが、その中にはスマートフォンとPCの関係性に大きく影響するものも含まれている。

今秋、Windows 10の新しいアップデートとなる「Windows 10 Fall Creators Update」を提供することが発表された
Windows 10 Creators Updateについて解説するマイクロソフトのWindows&Devices担当 エグゼクティブ バイスプレジデントのTerry Myerson

PCとスマートフォンをシームレスに

 今秋、公開されるWindows 10 Fall Creators Updateには、さまざまな新機能が搭載される。

アプリやファイル操作の履歴などをさかのぼることができる「Timeline」

 まず、ユニークな機能のひとつが「Windows Timeline」だ。ユーザーがそれまでに、どのようなアプリを使い、どんなファイルを開き、どのサイトを閲覧していたのかという情報をさかのぼって参照できるもので、必要に応じて、これまでに行ってきた作業にすぐに戻ることができる。そして、このTimelineはそのパソコン本体のみでなく、他の機器との連携に役立てることもできる。たとえば、書斎のパソコンで閲覧していたWebページを中断し、キッチンのタブレットで再開したり、作成中の文書を他のパソコンで継続して編集するといったことができる。Timeline対応アプリについては、サムネイルが表示された状態で表示されるため、視覚的にもわかりやすい。プレゼンテーションでは明確に謳われていないが、同じMicrosoftアカウントでサインインし、クラウド経由で連携できるようだ。

複数のデバイス間でクラウドを経由することでクリップボードが利用できる

 モバイルユーザーにとって重要なのは、この連携できるデバイスがWindowsが動作するパソコンに限定されないことだ。たとえば、パソコンで閲覧中のWebページをスマートフォンで閲覧したり、スマートフォンでメモしていた内容をパソコン側で利用するといったことができる。なかでも興味深いのが「Cloud-powerd Clipboard」と呼ばれる機能で、Windowsパソコン、Androidスマートフォン、iOSデバイスの間で、クリップボードを使い、文章や写真、地図のリンクなどを受け渡すことができる。これまでパソコンで目的地などを検索したとき、地図のリンクを自分のスマートフォンにメールで送り、スマートフォンの地図アプリで参照するといった使い方をしていたが、Windows 10 Fall Creators Updateではそういった手間がなくなり、よりシームレスに情報をやり取りできるようになるわけだ。ちなみに、連携するためのスマートフォンについては、Windowsの設定画面で新たに「Phone」と題されたメニューが追加され、一定の手順を経て、登録できる。

連携するスマートフォンなどはWindowsの設定画面から登録が可能

 こうした複数のデバイス間で、シームレスに情報をやり取りできる環境を実現しているのが「Microsoft Graph」というしくみだ。クラウド経由で情報をやり取りするため、利用できるのは対応アプリのみということになるが、今回のBuild 2017では開発者に対し、Microsoft Graphへの対応を呼びかけており、「サービスとしてのWindows」を進化させていくうえで、重要なカギを握る技術と位置付けているようだ。

 スマートフォンを利用するモバイルユーザーにとって、もうひとつ関係があるのが「OneDrive Files On-Demand」だ。マイクロソフトのオンラインストレージサービス「OneDrive」はパソコンだけでなく、AndroidやiOSを搭載したデバイスでも広く利用されているが、スマートフォンの場合、すべてのファイルやフォルダを同期すると、端末側のストレージを圧迫してしまう。OneDrive Files On-Demandではクラウド上のすべてのファイルを同期するのではなく、特定のファイルのみを必要に応じて、オンデマンドで利用できるようにする。この機能は元々、Windows 8/8.1に搭載されており、Windows 10ではなくなっていたが、多くのユーザーからの要望により、再実装されたという。

 モバイルユーザーはどちらかと言えば、楽しむ側になるが、Windows 10 Fall Creators Upodateでは「Story Remix」というビデオ編集アプリも追加される。Windowsにはこれまでも標準でビデオ編集ソフトが提供されてきたことがあるが、今回のStory RemixではAIを活用し、編集するビデオの主役となる人(ペットやオブジェクト)に合わせて編集したり、エフェクトを加えたりといったことができる。今回はサッカーの試合のシーンを編集していたが、PKのシーンで蹴ったボールを火の玉のように表示したり、ゴールしたところで爆発させるなどのエフェクトを加え、会場内の笑いを誘っていた。

新しいビデオ編集アプリ「Story Remix」では、主役を変えて、ビデオを自動生成する機能などが提供される
3Dのオブジェクトを貼り付けて、動かすといったこともできる

ITをいかに活かすか

 Windows 10 Fall Creators Updateによって、Windowsが動作するパソコンとスマートフォン、クラウドサービスとスマートフォンが連携することで、これまでよりも快適かつ便利に利用できる環境が整うが、今回のBuild 2017の基調講演では、今までと違ったITの活かし方も紹介された。その内のいくつかをピックアップして、紹介しよう。

 まず、現在でも多くの環境にネットワークに接続されたカメラが設置され、人やモノの動き、状態を監視することに使われている。しかし、こうしたネットワークカメラはあくまでも映像を別の場所で見られるようにしているものがほとんどで、結局のところ、誰かがその映像を見ない限りは何も活かすことができない。そこで、マイクロソフトが以前から取り組んでいる対象物を認識するコグニティブ技術に、AIを組み合わせることで、ネットワークカメラで映し出している場所で何が起きているのかを認識させるデモが紹介された。

工場内で起きたトラブルはカメラが内容を認識して、関係者の間ですぐに共有が可能

 デモでは工場内のネットワークカメラで、保管されているドラム缶が倒れたことをカメラが認識し、各担当部門に連絡が届いたり、修復されたときにも映像と共に通知が送られていた。もうひとつのデモでは作業場内の工具を限られた人のみが利用できるように定義しておき、権限のない人が使おうとしたときには警告が通知される様子が紹介された。これらはいずれも単純にネットワークカメラで離れた場所を映し出すのではなく、その場所に誰が居るのか、何が起きているのか、何をしているといったことをクラウドサービスとAIによって認識させ、その対応を決めているわけだ。映し出された映像では、対象となる人やモノに名前と共に枠が表示され、ちょっとした近未来SFドラマのような様子だったが、それが未来のものではなく、すぐに手が届くところまで近づいていることをうかがわせた。

カメラで写し出された現場内で働く人、置かれている機材などを認識し、正しく作業が行われていることを確認。事故やトラブルが起きれば、すぐに通知される

 また、昨年のBuild 2016では視覚に障害を持つ人のために、カメラで映し出された人やモノを認識させ、音声で状況を伝える取り組みが紹介されたが、今年はパーキンソン病によって、文字や図が描けなくなってしまった人に対する取り組みが紹介された。

パーキンソン病で手が震えて、文字や図が書けない人に対し、腕に装着するデバイスで振動を制御する取り組み。手製の基板や回路から開発をスタート

 パーキンソン病では手が震えてしまうため、ペンでまっすぐな線を引いたり、文字や図を描くことが難しくなるが、手にいくつものセンサーを取り付け、筋肉の動きを検出し、その動きをAIで予測させることで、正しく文字や図を書けるようにするというないようだったが、試作をくり返し、完成したブレスレットのようなデバイスを被験者に装着すると、見事に震えのほとんどない手で線を描くことができていた。しかもデバイスには、被験者の名前にちなみ、「EMMA」という名前が付けられたことから、会場内では大きな拍手が沸き起こった。この様子はYouTubeでも紹介されているので、興味のある人はぜひご覧いただきたい。

 同じくAIを活用した事例として、「Intelligent Meeting」も紹介された。マイクロソフトではWindowsをはじめ、各プラットフォーム向けにインテリジェントなパーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」を提供しているが、ビジネスのミーティングを設定する際、コルタナに話しかけると、AIによって、参加予定の人の空き時間が調べられ、それぞれのスケジュールにミーティングが設定される。そして、ミーティングに向かう際、コルタナが交通情報を調べ、渋滞などで遅れそうになると、ユーザーに対し、「遅れそうだから、電話をかけるか?」という提案を行い、電話で遅れる旨を伝えるという内容のデモだった。こうした作業や操作は、現在でもユーザー自身が手動で行うことができるが、関係者のスケジュールや渋滞情報といった外的な要因を確認しつつ、ユーザーに適切な提案をするという「AIらしい」動作ができるというわけだ。ちなみに、このときのデモにはコルタナを搭載したスマートスピーカーが使われていたが、すでに発表済みのharman kardonのほかに、HPやIntelも対応を表明しており、Amazon Alexaなどと並び、今年はスマートスピーカーが注目製品のひとつになりそうだ。

 注目という点では、今後、国内でも話題になりそうなのがMicrosoft Translatorだ。国内では4月にSkypeと連携させたリアルタイム翻訳が公開されたが、今回のBuild 2017ではPowerPointと連携する翻訳プラグインが公開された。デモでは講演者がスペイン語で話すと、プレゼンテーションのスクリーンにはリアルタイムで翻訳された英語が表示されるという内容だったが、これまでの対話型の翻訳と違い、リアルタイムで画面に表示されるため、話す側も訳された内容を見る側もスムーズに理解できる。今後、マイクロソフトがイベントを催すときにも活用されるシーンが見られるようになるかもしれない。

マイクロソフトが新たに発表したデザイン言語「Microsoft Fluent Design System」はWindows 10 Fall Creators Updateに組み込まれる

進化を続けるWindows

 マイクロソフトが展開するビジネスにおいて、昨年来、急速に注目を集めているのがMR(Mixed Reality/複合現実)を実現する「Hololens」だ。昨年のBuild 2016では開発者向けキットの発売が話題になったが、国内でもJALが採用するなど、さまざまな企業での活用が進んでいるという。

ステージの上ではHololensを装着した登壇者が話をしているが、ステージ上には何もない。ちなみに、画面内のカメラマンが持つカメラにはHololensが直接、装着され、その様子が会場内のスクリーンに映し出された
Hololensを通して見ると、ステージ上には舞台の装飾や演者が表示され、全体の様子を知ることができる

 今回はひとつの活用例として、「CIRQUE DU SOLEIL」のスタッフが登壇し、Hololensを使った舞台装置の制作のデモが行われた。スタッフがHololensをかけ、ステージに登壇し、どこにどのような装置を設置し、その位置で役者が演じると、どのように見えるのかといったことをHololensによる映像を見ながら打ち合わせるという内容だった。当然のことながら、実際のステージ上には何も存在しないが、Hololensによる映像では舞台装置を拡大したり、色を付けたりといった効果が加えられるようになっており、非常にわかりやすい内容だった。将来的に、住宅などの建築分野などへの応用が実現すれば、今までと違った世界が開けてくるかもしれない。ちなみに、今回のBuild 2017ではHololensに対応したモーションコントローラーも合わせて、発表されている。

acerからHololens対応MRヘッドセットが発表された。左のコントローラーはマイクロソフトから発表されたHololens向けのもの。MRヘッドセットとコントローラーのセットが399ドルで販売される

 また、これまでは昨年、マイクロソフトが開発者向けに発売したHololensのみが提供されてきたが、今年のホリデーシーズンにはサードパーティ製MRヘッドセットが販売されることも発表された。Acerの製品についてはMRヘッドセットとモーションコントローラーをセットにしたものが399ドルで販売されるという。開発者向けの予約が開始されているが、このペースで進めば、来年には個人ユーザーが手軽にHololens対応のMRコンテンツを楽しめる環境が整うことになるかもしれない。

 ところで、こうした仮想空間を活かすものとしては、一般的に「VR(Virtual Reality/仮想現実)」が広く知られており、ここ数年で各社から多彩なコンテンツが提供されるようになり、ビジネスへの応用も増えてきている。一方、スマートフォンのカメラなどを通して見える映像に、デジタルなグラフィックを重ね合わせて表示する「AR(Augmented Reality/拡張現実)」もゲームの「Pokemon GO」をはじめ、さまざまなシーンに応用されている。マイクロソフトがHoloLensで実現するMRは、一見、ARと同じようなものと捉えられそうだが、実はカメラ(もしくは人間の視覚)を通じて見えている現実空間の対象物の状態(高さ、大きさ、位置など)も認識して、その上に仮想空間が描かれている。そのため、現実空間に存在する椅子に、仮想空間でモノを置くことができるが、椅子を動かせば、仮想空間で置いたモノは床に落ちてしまうことになる。このあたりの違いを意識したうえで、それぞれの動向を見ていくようにしたい。

Hololensを活用する事例として、JALの活用例も解説ムービーの中で紹介された

 さて、WindowsについてはBuild 2017の前週に開催された「Microsoft EDU」で、「Surface Laptop」と共に、教育機関向けの「Windows 10 S」が発表されている。Windows 10 Sは教育の現場で利用することを想定し、いくつかの機能が制限されているが、なかでもアプリケーションについてはWindowsストアアプリのみに制限されており、ブラウザもMicrosoft Edge以外に切り替えることができない。これは教育の現場で利用するうえで、ユーザー(児童や生徒、学生)のセキュリティを考慮し、自由に使うことを制限したいという意図が関係している。Surface LaptopはこのWindows 10 Sが搭載されたモデルが販売されるが、Windows 10 Sを搭載したPCはその他にもAcerやDELL、HPなどからも発売されるとのことで、その価格は189ドルからという、かなりインパクトのある価格設定になるという。こうした戦略を採ってきた背景には、米国市場において、Chrome OSを搭載したChromebookが教育市場などを中心に高いシェアを得ており、マイクロソフトとして、ここに挑んでいくという姿勢がうかがえる。

長期休暇から復帰したマイクロソフトのCorporate Vice President in the Operating Systems GroupのJoe Belfiore氏も登壇

 Windows 10 Sを搭載したPCは、主に教育市場が主戦場になるが、個人向けにも販売され、Windows 10 SからWindows 10 Proへの有償アップグレードも提供される見込みで、Windowsストアアプリも拡充が図られる。今回のBuild 2017では「Spotify」「iTunes」という人気アプリがWindowsストア対応のUWPアプリとして、リリースされることも発表された。これらのUWPアプリは基本的にWindows 10搭載PCだけでなく、タブレットなどでも動作することになるはずだが、Windows 10 Mobile搭載端末などのモバイル端末がどういう扱いになるのかはわからない。ただ、いずれにせよ、マイクロソフトとして、Windowsストアアプリの拡充にはかなり積極的に取り組んでいることは確かで、今後もどのようなアプリが提供されるのかが注目される。

さまざまな角度でプラットフォームを展開するマイクロソフト

 今回のBuild 2017を振り返ってみて、非常に印象的だったのがプレゼンテーションで掲げられた「Windows PCs love All Your Devices」というキーワードだ。これまでデジタルライフをサポートするツールとして、PCがあり、ケータイがあり、近年はスマートフォンが普及し、時代を追うごとに、ユーザーが利用する環境も大きく変化してきた。

 マイクロソフトはその流れの中で、かつてはパソコン向けのWindowsを提供する「ソフトウェアベンダー」というポジションでビジネスを展開していたが、ここ数年、特にサティア・ナデラ氏がCEOに就任して以来、その方向性を大きく変えようとしている。もちろん、現在でもWindowsやOfficeといったソフトウェアを開発し、PCメーカーに供給しているが、その一方で、Office365やAzureといったクラウドサービスを広く展開することで、さまざまな角度でプラットフォームを展開する企業へと変貌している。

 モバイルユーザーにとって、マイクロソフトと言えば、「あ、Windowsの会社ね」「仕事でExcelは使ってるよ」「Windows Phone? いや、iPhoneでしょ」といった反応しか返ってこないかもしれない。しかし、そういった捉え方はもはや古い見方でしかない。今回のBuild 2017のさまざまなプレゼンテーションでも展開された内容からもわかるように、マイクロソフトはクラウドサービスやAIなどを駆使しながら、さまざまなデジタル環境を大きく進化させることを目指しているようだ。サティア・ナデラCEOはマイクロソフトのステートメントとして、

「Our mission is to empower every person and every organization on the planet to achieve more. 」
「私たちマイクロソフトは、地球上のすべての人、すべての組織に関わる人たちが、より多くのことを達成する力になることを企業ミッションとして、世界各国で様々な活動を推進しています。」

 という文章を掲げているが、まさにスマートフォンやパソコンといった形、それぞれのデバイスで動作するOSなどを横断しながら連携させることで、新しい時代のプラットフォームを構築しようとしているわけだ。

マイクロソフトのステートメントはサティア・ナデラCEOがプレゼンテーションなどでよく説明している。Build 2017はまさにこの文言を目指して、マイクロソフトが動いていることを理解できる内容だった

 では、モバイルユーザーにとって、何が利用できるのかというと、オンラインストレージサービスの「OneDrive」をはじめ、各プラットフォーム向けに展開される「Office」アプリ、インテリジェントなパーソナルアシスタントの「Cortana(コルタナ)」、さまざまなアプリとの連携で今後の展開が期待される「Microsoft Translator」などが提供されており、これらを駆使することで、今までと違った新しいモバイル環境を体験することができる。
 マイクロソフトとしては、パソコンに続き、スマートフォンが成熟し、便利に活用できる環境が整ってきた今だからこそ、パソコンとのシームレスな関係、インテリジェントなクラウドサービスとの連携により、新しいデジタル環境を構築しようとしている。今後の同社の取り組みに期待したい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。