法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「docomo with」と充実のラインナップで攻めるNTTドコモ 2017年夏モデル

 NTTドコモは5月24日、「docomo 2017夏 新サービス・新商品発表会」を開催し、2017年夏商戦へ向けた新機種や新サービス、料金施策などを発表した。

 ドコモは今年4月、2020年をターゲットにした中期計画として「beyond宣言」を発表し、5G時代へ向けて、いよいよ動き出した。一方、現在のスマートフォンを中心とした市場が成熟する中で“格安スマホ”への注目が集まっている。「サブブランド」キャリアが攻勢を強めるなど、直近の市場競争への対応も求められる状況になっている。

 ドコモはこうした市場環境を踏まえ、端末や機能、サービス、料金施策など、それぞれの面でしっかりと対抗策を打ち出してきた印象だ。なかでも端末購入に紐付く料金施策「docomo with」は、発表直後から大きな注目を集めている。発表会の詳細については、本誌の速報記事をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方、それぞれの製品やサービスの印象などについて、解説しよう。

5Gへ向けて、「Challenge to~」で新しい取り組みを

 携帯電話の世界では主要な通信方式として、4つの世代を重ねてきた。自動車電話やショルダーホンなどが製品化された第一世代の「アナログ」、国内ではPDC方式などが中心に採用された第二世代「デジタル」、世界共通の通信方式を目指した第三世代の「3G(W-CDMA/CDMA 2000)」、そして高速・大容量・低遅延を実現した四世代目となる「LTE(4G)」へと、これまで進化を遂げてきた。

 今年のMWC 2017では、業界内の関係各社が揃ってプレスリリースを出したように、2020年をめどに、次なる世代となる「5G」「5G NR」が動き出そうとしている。

 国内の携帯電話キャリアも5G時代へ向けて動き出しており、実験免許によるトライアルなども各地で行なわれている。今回の発表会が行なわれる直前の5月22日には、NTTドコモと東武鉄道が東京スカイツリータウンに、5Gのモバイル向け通信方式をいち早く体験できる「5Gトライアルサイト」をオープンし、スカイツリーからの180度パノラマ映像や東武鉄道の新型特急車両「リバティ」での4K映像視聴のデモンストレーションなどが報道陣向けに公開されている。

 技術の面では次世代へ向けての期待が高まる一方、国内市場の現状を目を移すと、総務省の「携帯電話料金タスクフォース」を受けたガイドラインの影響もあり、一時期に比べると、各社のアグレッシブな販売競争が落ち着いたかに見えた。しかし、MVNO各社による「格安SIM」「格安スマホ」への注目が一段と拡がり、MNO各社の「サブブランド」キャリアが攻勢を強めるなど、これまでとは違った軸での競争が展開されている。

auのサブブランド「UQ mobile」は実店舗展開を急速に拡大している

 こうしたそれぞれの状況に対し、今回の発表会では、NTTドコモとしての解が示された格好だ。改めて説明するまでもなく、ドコモは国内最大手の携帯電話事業者だ。ドコモ自身だけでなく、ユーザーも含め、保守的な志向が強いと考えられがちだが、今回の発表会では「Challenge to~」というキーワードを掲げ、さまざまな新しい取り組みを取り上げていた。

 ちなみに、5月30日に発表会を開催したauも今年は「やってみよう!」をテーマとして掲げており、両社とも次の時代へ向けたチャレンジを示す(社内及び関係者向けに促す意味合いを含む)姿勢を見せている。

対象端末購入で、ずっと1500円引き「docomo with」

 新聞やテレビなど、一般メディアでは「横並び」と称されることが多い各社の料金施策だが、NTTドコモは現在の「カケホーダイ&パケあえる」を2014年6月に発表して以来、家族まとめての請求を活かした「シェアパック」に強みを発揮しており、ドコモ光やdカードGOLDなどの割引、更新時のdポイントの付与などと相まって、安定した評価を堅持している。

 その一方で、前述のように、国内市場はMVNO各社が提供する「格安SIM」「格安スマホ」が注目を集めており、できるだけ出費を抑えたいという節約指向の強いユーザーに広がりを見せている。特に、最近はシニア世代のユーザーが乗り換えるケースも目立っている。

 NTTドコモにとって、MVNO各社はその多くが同社の回線を借り受けていることもあり、明確な競争相手というより、NTTドコモにとっての「顧客」であり、同じネットワークを利用する「パートナー」的な存在だとしている。そのため、これまではあからさまな対抗策を打ち出してこなかったが、Y!mobileやUQモバイルという「サブブランド」キャリアが攻勢を強めていることもあり、ここに対しての対抗策が待たれていた。

 こうした状況に答える形で、新しい料金施策「docomo with」が発表された。詳しい内容は本誌の解説記事を参照していただきたいが、これまでNTTドコモでの端末購入に際し、付与されてきた月々サポート割引をやめる代わりに、月々の利用料金から1500円を割り引くという内容だ。

 対象となる端末は、今回発表された「Galaxy Feel SC-04J」と「arrows Be F-05J」の2機種で、価格は「Galaxy Feel SC-04J」が3万6288円(税込)、「arrows Be F-05J」が2万8512円(税込)となっている。

 これまでの月々サポート割引は基本的に24回(2年間)で終了していたのに対し、docomo withの割引は対象外の機種へと機種変更しない限り、継続する点が大きく異なる。

 たとえば、基本プランはカケホーダイライト(月額1700円)、データパックはもっとも小容量の「データSパック(小容量)2GB」(月額3500円)を選んだ場合、インターネット接続サービスのspモード(月額300円)と合わせると、月額5500円となる。

 これをdocomo withに移行すると、月額4000円でずっと使い続けられる計算になるわけだ。これまであまり機種変更をせず、同じ機種を使い続けてきたユーザーにとっては、ある程度、魅力的なプランと言えるだろう。

 ただ、この1500円という割引額をどう見るかはちょっと判断が難しいところだ。というのも、月々サポートによる割引は多くの端末では月額2000円程度となっている。24回の割引を受けられるため、2年間使い続ければ、計算上は約5万円程度の割引が受けられる。

 同等の割引をdocomo withで受けるためには、34カ月以上、同じ機種を使い続けなければならない。もちろん、月々サポート割引の金額は機種によって異なり、今回の対象機種のようなミッドレンジ程度のモデルでは2000円を切ることも考えられるため、実質的には丸3年以上は同じ機種を使い続けないと、同程度の割引を受けたことにはならないという見方もできる。

 とはいえ、機種変更の周期は長期化する傾向にあり、同じ機種を2年以上使い続けるユーザーもかなりの割合でいることを考えると、docomo withのメリットを享受できるユーザーも確実に存在すると言えそうだ。

 約3年程度、同じ機種を使い続けるということになると、筆者や同業のライター諸氏、編集部スタッフのように、普段から数カ月で機種変更をくり返しているようなユーザーにはdocomo withが無関係かというと、そうでもない。

 実は、docomo withはNTTドコモの登録上、対象機種を使い続けていることが条件であり、その端末でしかNTTドコモのネットワークに接続できないわけではない。つまり、あまり褒められた方法ではないのかもしれないが、docomo with対象端末に機種変更し、SIMカードを抜き、SIMフリー端末などに挿しても使うことができるわけだ。

 極端な話を書いてしまえば、購入したdocomo with対象端末は手放してしまってもかまわない。さらに、NTTドコモと複数の回線を契約していたり、これから2回線目以降を契約するユーザーがシェアパックの子回線でdocomo withを選ぶと、基本プランの選び方によっては月額1000円を切る料金で利用できることになる。MVNO各社の回線と違い、速度も十分に担保されていることを考慮すると、これはヘビーユーザーも十分に検討する価値があるプランと言えそうだ。

 docomo withの1500円割引という施策は、他の機種を購入する、もしくは興味を持つユーザーにしてみれば、「特定の機種だけというのは不公平じゃないか」「総務省のガイドラインに違反しているのでは?」と言いたくなるかもしれない。しかし、前者の指摘には他の端末を購入するユーザーには月々サポートによる割引が適用されるため不公平ではないという解釈で、後者に対しては、総務省のガイドラインにもdocomo withは適用期間に期限がない割引施策(料金プラン)であるため、違反しないとのことだ。

 ひとつ注目しておきたいのは、今回の発表会のプレゼンテーション資料では、docomo withを選ぶことができる端末2機種の紹介に「docomo with対象端末(第1弾)」と明記されていたことだ。

 つまり、docomo with対象端末は、今後、第2弾、第3弾と発売される見込みで、反響次第によっては全体の「料金プラン」として、拡大していく可能性も十分に考えられる。端末の購入価格は割り引かれないため、ハイスペックなフラッグシップモデルの場合は負担が増えることになるが、分割払いも選べることを考えると、将来的な端末購入方法及び料金プランの主流になるかもしれない。

ユーザーの利用環境を後押しするサービスと便利機能

 同じ機種を使い続ける限り、1500円の割引が受けられるdocomo withは、使い方次第で、ヘビーユーザーにもメリットがありそうだが、ドコモにとっては、やり方を間違えると回線だけを提供する“土管屋”になってしまいかねない。

 しかし、NTTドコモはここ数年、拡充してきた「dTV」や「dマガジン」といったコンテンツサービスに加え、今年は「DAZN for docomo」もスタートさせ、スマートライフ領域の収益を確実に伸ばしている。

 少し脱線するが「DAZN」がサッカーのJリーグと10年間の放映権契約を結んだことで、これまでJリーグを放送してきたスカパーは、有料チャンネルの契約数が前年度比で16.2%も減少し、加入者累計は332万件に落ち込んでいる。つまり、全体の5%近くが有料チャンネルを解約した計算になる。

 また、今回の発表会では夏商戦向けの端末だけでなく、ドコモならではの新サービスや便利機能が発表されている。サービスではレジャーやスポーツ、グルメなどの5万件以上の優待が受けられる「dエンジョイパス」、求人情報を扱う「dジョブ」が発表された。

dエンジョイパス

 「dエンジョイパス」はどちらかといえば、シニア世代をターゲットにしたサービスだ。月額500円でさまざまな施設を特別価格で利用でき、年4回の会報誌も発行される。共通の趣味を持つ人たちと楽しめるSNS「趣味人倶楽部」(運営はDeNA)と提携し、イベントなども企画していきたいという。今後、提供されるサービス内容がユーザーに見えるようになり、明確なお得感を伝えられるかが課題になりそうだ。

dジョブ

 「dジョブ」は複数の求人サイトの仕事情報を集約し、約60万件の求人情報から検索できるというものだが、実はdジョブのサービスメニュー内にある「スマホワーク」もアレンジ次第で、今後が楽しみな取り組みだ。スマホワークでは特別なスキルを必要としないアンケートやライティング、データ入力といったネット完結型の仕事情報を展開していくという。正規の仕事でもアルバイトでもない、ごくライトな仕事(ちょっとした用事?)のニーズは十分にあると考えられ、うまく需要を掘り起こすことができれば、新しいビジネスが需給関係が生まれるかもしれない。

スグ電

 一方、便利機能では「スグ電」の新機能と「みえる留守電」が発表された。スグ電は2016年夏モデルの発表会でお披露目された機能で(※関連記事)、電話をかかってきたときに耳に当てれば、すぐに応答でき、端末を振って、耳に当てれば、あらかじめ登録しておいた相手にすぐに電話がかけられるという環境を実現している。

 今回スグ電に加わった新機能は、話した言葉と端末を耳から離す動作によって、終話の操作をタップレスで実現するもの。「またね」「バイビー」「おやすみなさい」「またね」「失礼いたします」といった言葉を終話ワードとして利用している。

 これだけでもなかなかユニークな機能だが、今回のスグ電の終話機能は方言にも対応するという。たとえば、北海道の「したっけ」、東北地方の「せばな」、中部地方の「ほなね」、関西地方の「ほなな」、中国地方の「ほいじゃぁの」、四国地方の「ほなの」、九州地方・沖縄の「ほいならな」など、方言だけで21ワードに対応している。実際に、方言のニュアンスがどの程度、通用するのかはわからないが、ドコモ社内でも各地の出身者が試しているとのことで、対応機種を購入したユーザーはちょっと試してみたい機能のひとつと言えそうだ。

みえる留守電

 「みえる留守電」についてはNTTドコモの留守番電話サービスをスマートフォンのアプリで操作できる「ドコモ留守電アプリ」に追加される機能で、留守番電話に録音されたメッセージをテキスト化し、画面に表示してくれるというものだ。

 留守番電話には音声のメッセージが録音されるが、会議中や交通機関の移動中など、音声通話が利用しづらい環境ではメッセージの内容を確認することが難しい。そこで、録音されたメッセージをドコモのサーバー上でテキスト化し、アプリ内に文字で表示することで、留守番電話センターに発信しなくても内容を確認できるようにするわけだ。

 LINEやFacebookメッセンジャーなど、メッセージサービスの普及で音声通話の利用は低下した印象もあるが、ビジネスシーンでは音声通話の利用も相変わらず多く、筆者自身もよく留守番電話メッセージを確認するために、静かな場所に移動したり、何度もメッセージを聞き直すといったことがある。

 そんなとき、この「みえる留守電」があれば、すぐにアプリでメッセージを確認できるわけだ。ひとつ注意が必要なのは、テキスト化されるメッセージは留守番電話センターに録音されたメッセージに限られており、端末の伝言メモに保存されたメッセージはテキスト化できない。実際に利用するときは、応答時間を変更したり、伝言メモを使わないようにするなどの工夫が求められる。

2017年夏モデル8機種をラインナップ

 さて、ここまでは料金施策、サービス、端末の便利機能について説明してきたが、やはり、注目度が高いのは端末ラインナップだろう。

 昨年の2016年夏モデルの発表では、それまでの半年に一度、各社のフラッグシップを揃えるという手法から、端末の発売を「年間サイクル」へ移行することを打ち出し、発売する端末も2016年夏モデルではスマートフォン5機種に抑えられた。

 2016年冬~2017年春モデルではスマートフォン8機種を発表したが、1年を通して振り返ってみると、市場の反応も全体的に穏やかだった印象で、年間サイクルへの移行はソフトランディングに成功したようだ。筆者自身もメインで利用しているNTTドコモの回線を以前は3~4カ月に一回のペースで機種変更していたが、この1年は珍しく同じ端末を利用していた。筆者だけでなく、周囲の業界関係者やライター諸氏も同じような状況だった人が多い。

 ただ、そうなってくると、そろそろ次の各社のフラッグシップを求める声も高まっており、今回はその期待に応えるラインナップが揃っている。すでに、「MWC 2017」や各メーカーの自社イベントなどで、先行して発表されたモデルが数機種あり、それらを中心にラインナップを構成した格好だが、前述のdocomo with対象端末の2機種をはじめ、NTTドコモのみで扱われるモデルもラインナップされており、ユーザーの注目度も高い。

 今回の2017年夏モデルはそれぞれに特長のあるスマートフォン及びタブレットがラインナップされているが、共通仕様として注目されるのは、国内最速となる受信時最大788Mbpsへの対応が挙げられる。エリアとしては東名阪の一部に限られるが、従来のキャリアアグリゲーションに加え、256QAMと呼ばれる変調多値化技術、4×4MIMOの拡張などを組み合わせることで、昨年の夏モデルで実現された受信時最大375Mbpsの2倍超の速度を達成する。対応は今年8月のソフトウェア更新以降になるが、今回発表された夏モデルの3機種、春モデルとして販売中のモバイルWi-Fiルーター1機種の合計4機種が対応することになる。

 また、HDRコンテンツの再生に4機種が対応する。HDRは「High Dynamic Rage」の略で、映像コンテンツで再現する輝度のレンジを拡げることで、より現実の世界に近いクリアな映像を再現しようというものだ。家庭用テレビでも昨年あたりから搭載モデルが店頭に並ぶようになり、インターネット経由のコンテンツ配信サービスもスタートし、今後の普及が期待されている。端末側のHDR再生への対応にあわせて、動画配信サービスのdTVやひかりTVは、HDR対応コンテンツの配信を開始する。

 端末メーカーとしては、サムスンが3機種ともっとも多く、ソニーモバイルが2機種、シャープと富士通が1機種ずつとなっている。タブレットはファーウェイ製の1機種のみだ。いずれも個性と方向性がハッキリしたモデルであり、ユーザーとしても選びやすいラインナップになったという印象だ。

 ここからは今回発表されたスマートフォン8機種、タブレット1機種について、個別に説明するが、各機種の詳しい内容については、本誌の速報記事を参照していただきたい。それぞれのモデルはすでに発売されているものも含め、発表会時点で試用した印象に基づいているもので、最終的な製品と差異があるかもしれないことはお断りしておく。

Xperia XZs SO-03J(ソニーモバイル)

 今年2月のMWC 2017で発表されたXperiaシリーズの最新モデル。昨年発売されたXperia XZをベースに、メモリ積層型イメージセンサーによる新開発のカメラ「Motion Eye」を搭載することで、最大960fpsのスーパースローモーションの撮影を可能にした。動きのある被写体を撮影するとき、シャッターチャンスを逃さず、4枚の写真を撮影して、ベストショットを選べる「先読み撮影」にも対応する。

 従来モデルでは充電時にバッテリーの寿命を長くする「いたわり充電」が搭載されていたが、今回はユーザーの生活パターンを学習し、アラームとの連動などにより、起床時に電池残量がちょうど100%になるように充電できる機能も加えられている。

 同じモデルはすでにソフトバンクとauからも発表されているが、背面のロゴデザインなどが異なる。ボディデザインは昨年のXperia XZとほぼ同じで、すでに見慣れてしまっていることもあってか、他機種に比べ、デザインに新鮮さや先進性が今ひとつ感じられない。従来モデルとカメラの仕様だけが異なるというアプローチをユーザーがどう受け取るのかはやや疑問が残るが、人気のXperiaシリーズだけに、買い換えのタイミングを迎えたユーザーには気になる存在と言えそうだ。

arrows Be F-05J(富士通)

 昨年の夏モデルで登場した「arrows SV F-03H」の後継に位置付けられ、今回の割引施策「docomo with」の対象端末となっている。arrows SV F-03Hをベースに開発されたとしているが、スペックはボディのサイズや重量、ベースバンドチップなども含め、ほぼ同じ仕様。現在、MVNO各社向けに供給され、SIMフリー端末として販売されている「arrows M03」ともほぼ共通のスペックとなっている。デザイン面ではボディの角の部分に少し丸みをつけ、手に持ったときになじむように仕上げられている。

 新しい要素としては、昨年の冬モデル「arrows NX F-01J」で実現していた高さ約1.5mからのコンクリートへ落下させる独自試験を実施。防水、防じん、耐衝撃に対応し、米国防総省が定めるMIL規格準拠の耐衝撃試験もクリアしている。

 ディスプレイの解像度がHDにとどまり、メモリーもRAM 2GB、ROM 16GBに抑えられているなど、スペックにはやや物足りなさもあるが、価格的には3万円を切っており、スマートフォンの使用頻度が少なく、安価に端末を選びたいユーザーにとって、検討する価値があるモデルと言えそうだ。

Galaxy S8 SC-02J/Galaxy S8+ SC-03J(サムスン)

 今年3月にグローバル向けに発表されたGalaxy S8/S8+の国内向けモデル。Galaxy S8は5.8インチ、Galaxy S8+は6.2インチのSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)を採用し、両機種とも解像度は1440×2960ドットでの表示に対応する。

 従来のGalaxy S7 edgeに続き、ボディの両サイドを湾曲させた構造を採用しているが、今回は上下の表示エリアも拡大。Galaxyシリーズの特長のひとつであったホームボタンもディスプレイに内蔵したことから、ディスプレイが筐体前面のほとんどを占める、今までにないデザインを実現している。

 背面側の両側面の仕上げも前面と同じ曲線で仕上げられ、前後面が対称的なボディで非常に持ちやすく、手にフィットする。5.8インチ、6.2インチというクラス最大級のディスプレイを搭載しながら、ボディ幅はGalaxy S8で68mm、Galaxy S8+で73mmと、他機種に比べ、かなりコンパクト。

 大画面ディスプレイというより、どちらかと言えば、縦長のディスプレイという印象だが、ブラウザやメール、アプリなど、多くの用途が縦スクロール中心で構成されていることから、実用性は高い。

 Galaxy S8とGalaxy S8+の違いはカラーバリエーションと受信時最大速度のみで、その他の機能は共通となっている。予約ユーザーにはもれなくGear VRがプレゼントされるなど、お買い得感は非常に高い。スペック的にもデザイン的にも話題性でもこの夏、もっとも気になるモデルと言って、差し支えないだろう。

Galaxy Feel SC-04J(サムスン)

 4.7インチでHD表示に対応したSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)を搭載したコンパクトなモデルで、今回の割引施策「docomo with」の対象端末となっている。

 グローバル向けに販売されている「Galaxy A3(2016)」をベースに開発されたモデルだが、内容は完全に日本仕様に作り込まれており、防水、防じんに対応し、ワンセグやおサイフケータイにも対応する。ボディはディスプレイが4.7インチということもあり、幅が約67mmに抑えられており、手が大きくない女性にも持ちやすい形状に仕上げられている。

 メタル素材の筐体に、2.5Dガラスを組み合わせた質感のいいボディで、背面のカメラ部の突起もない。Galaxyシリーズではおなじみのホームボタンの二度連打によるカメラ起動をはじめ、Galaxyシリーズならではのユーザビリティも継承されている。

 カメラはメインのアウトカメラが1600万画素、インカメラが500万画素だが、自分撮りを意識して、インカメラは標準で美顔機能が有効に設定されている。撮影した画像のコラージュ作成など、SNS受けをする写真を作成しやすい環境を整えるなど、女性ユーザーを強く意識した構成となっている。充実した機能と使い勝手の良さ、価格、スペックなどのバランスが取れた一台と言えそうだ。

Xperia XZ Premium SO-04J(ソニーモバイル)

 世界初の4K HDR対応ディスプレイを搭載したモデル。2015年冬春モデルとして発売されたXperia Z5 Premium以来の4K対応モデルになる。

 ボディはXperia XZのデザインを継承しているが、ディスプレイサイズが5.5インチと少し大きい(Xperia XZは5.2インチ)こともあり、ボディの高さが約10mm、幅も5mmほど大きくなっている。スーパースローモーションや先読み撮影などの機能が利用できる新開発の「Motion Eye」カメラ、いわたり充電を進化させた充電機能など、基本的な仕様はXperia XZsとまったく同じだが、4K HDRコンテンツの再生に対応している点が大きな違い。

 4K HDRコンテンツについてはdTVやひかりTVで配信されるが、DAZNやYouTubeなどのフルHD画質の映像も4K画質にアップスケーリングして、再生することができる。4K HDR対応ディスプレイをどう捉えるかが悩みどころだが、対応コンテンツなどを視聴することが考えられるユーザーであれば、検討する価値のあるモデルと言えそうだ。

AQUOS R SH-03J(シャープ)

 主要3社向けのフラッグシップモデルを統一したAQUOS RシリーズのNTTドコモ向けモデル。昨年のAQUOS ZETA SH-04Hからデザインを一新し、背面をラウンドさせ、丸みを帯びたボディデザインで仕上げられている。

 背面は光沢のある仕上げに見えるが、多層着蒸着によるコーティングが施されており、見る角度によって、少しずつ色味が変わる独特のデザインで仕上げられている。ボディ側面部分はわずかに突起しており、机の上に置いたときなどに持ち上げやすい形状となっている。

 ディスプレイはシャープならではの5.3インチのIGZO液晶を採用するが、スマートフォンAQUOSとしては初のWQHD(2560×1440ドット)対応となり、応答速度も従来モデルの約1.5倍までチューニングされている。

 チップセットやメモリなども今回発表されたモデルの中でもトップクラスの仕様となっており、最新かつ最強のモデルが欲しいというユーザーなら、一度は体験してみたい一台と言えそうだ。

dtab Compact d-01J(ファーウェイ)

 昨年1月に発売された「dtab Compact d-02H」の後継モデルに位置付けられるモデル。8.4インチのWQXGA(2K)対応ディスプレイを搭載したモデルで、ファーウェイがグローバル向けに販売する「MediaPad M3」とほぼ同等の仕様。従来モデルに比べ、前面には指紋認証センサーが搭載され、チップセットにKirin 950、メモリーも1GBから3GBに変更されるなど、全体的にスペックアップしている。

 新しいものとしてはeSIMに対応しており、本体を購入すれば、オンラインサインアップのような形で開通させることができる。ただし、それ以外の実用面では明確なメリットがあるわけではなく、できれば、もうひと工夫、欲しかったところ。

 ベースモデルのMediaPad M3はオープン市場でも安定した評価を得ており、タブレットを手軽にはじめたいユーザーに、安心しておすすめできるモデルだ。

docomo withをどう捉えるかが夏商戦のカギ

 ここ数年、国内の携帯電話市場はさまざまな動きがあり、大きく変革する時期を迎えたと言われている。各社のキャッシュバックによるMNP獲得競争の激化、これに対する「携帯電話料金タスクフォース」と総務省が示したガイドライン、光回線とのセット割引、MVNO各社の「格安SIM」「格安スマホ」の普及、「サブブランド」キャリアによる攻勢など、技術面よりも販売面での話題が多かったような印象だ。

 こうした状況に対し、NTTドコモはどちらかといえば、あまり事を荒立てず、静観するようなスタンスで、粛々と対応してきた。

 しかし、今回発表された「docomo with」は各社の料金施策や販売方法に一石を投じるインパクトのある手法と言えそうだ。本稿でも説明したように、3年程度は同じ端末を利用しなければ、元を取れないという見方もできるが、同じ機種を長く使いたいユーザーには魅力的なプランであり、対象端末もミッドレンジの十分なスペックのモデルを選ぶことができる。

 しかもNTTドコモとして、端末そのものの利用まで縛っているわけではなく、ユーザーがSIMフリー端末にSIMカードを差し替えることも許容しており、意外に自由度は高い。単なる顧客流出防止策という見方があるかもしれないが、既存のNTTドコモのユーザーにとっては機種変更のプランとして選べるだけでなく、シェアパックの子回線として新規に契約し、SIMフリー端末を利用するSIMカードとして、活用することも可能だ。

 つまり、docomo withをどのように捉えるかが夏商戦のひとつのカギになりそうな印象だ。

 今回発表された夏モデルはすでに一部のモデルの販売が開始されており、今後、7月へ向けて、順次、店頭に並ぶ予定だ。すでにデモ機などが展示されているものもあるので、ぜひ一度、店頭に出向き、実機を手にして、自分だけのお気に入りの一台を見つけていただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。