法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

新世代に進化を遂げた「Galaxy S8/S8+」ファーストインプレッション

Galaxy S8(左)とGalaxy S8+。ディスプレイサイズや内蔵バッテリーなどの容量は異なるが、基本的には共通仕様

 3月29日、サムスン電子は米・ニューヨークで、プライベートイベント「Unpacked 2017」を開催し、フラッグシップモデル「Galaxy S8」「Galaxy S8+」などを発表した。本誌ではすでに速報記事が掲載されているが、短い時間ながらも実機を試用することができたので、ファーストインプレッションをお伝えしよう。

大きさを感じさせないボディ

展示台に置いたGalaxy S8+。上部も下部もパーツ部分がかなり狭くなっていることがよくわかる

 今回発表されたGalaxy S8/S8+は、それぞれ約5.8インチ、約6.2インチのディスプレイを搭載し、従来のGalaxy S7 edge同様、両側面をラウンドさせたエッジディスプレイを採用する。そのため、写真では一見、あまり大きく変わっていないように見えてしまうかもしれないが、実機を手にすると、その印象は大きく異なる。

 まず、ボディは前面のエッジディスプレイ、背面のラウンドさせたボディが対称的なシンメトリーな形状で仕上げられている。そのため、いずれのモデルも手にしたときに大きさを感じさせないサイズ感で、手にフィットする印象がある。特に、背面側の側面の仕上げが変更されたことで、フィット感が大きく変わった印象だ。

 サイズ感の違いは実際のスペックでも裏付けられており、約5.5インチディスプレイを搭載したGalaxy S7 edgeの幅が72.6mmであるのに対し、約5.8インチディスプレイを搭載したGalaxy S8が68.1mm、約6.2インチディスプレイを搭載したGalaxy S8+が73.4mmに抑えられている。

機種Galaxy S7 edgeGalaxy S8Galaxy S8+
ディスプレイサイズ5.5インチ5.8インチ6.2インチ
横幅72.6mm68.1mm73.4mm

 つまり、Galaxy S8は、Galaxy S7 edgeよりもひと回り大きなディスプレイを搭載しながら4.5mmもスリムで、Galaxy S8+はGalaxy S7 edgeよりもわずか0.8mmしか大きくないボディに、約6.2インチというクラス最大のディスプレイを搭載している。いずれのモデルもディスプレイの大きさを感じさせないボディとして仕上げられている。

従来のGalaxy S7 edge(中央)と並べてみると、より大きなディスプレイを搭載しながら、Galaxy S8(左)がコンパクトにまとめられていることがよくわかる。Galaxy S8+(右)もわずかなサイズアップで、かなり大きなディスプレイを搭載する

 背面側の仕上げが従来モデルから変更されたことで、机などに置いた状態から持ち上げるときの取り上げやすさも変わり、ピックアップしやすくなった印象だ。ボディカラーは両機種ともMidnight Black、Orchid Gray、Arctic Silver、Maple Gold、Coral Blueの5色がラインアップされており、いずれも背面側とフレーム部分のみが違い、前面はいずれもブラックで仕上げられている。背面部分は光沢感のある仕上げだが、指紋などが残りにくい加工がされているようで、試用中にそれほど跡が気になるようなことは少なかった。

ボディカラーは5色をラインアップ。あまり指紋が付かない印象だ

 側面のボタン類のレイアウトは基本的に従来モデルと同様で、右側面に電源キー、左側面に音量キーを備え、音量キーの下側には新たに搭載されるインテリジェントサービス「Bixby」を起動するための専用キーを備える。底面の外部接続端子はUSB Type-Cに変更されたため、向きを気にせずにケーブル類を挿すことができる。3.5φのイヤホンマイク端子は従来モデル同様、底面側に備えられている。

左側面には音量キーとBixbyキーを備える
右側面には電源キーのみ
SIMカードは本体上部のスロットにトレイを挿すタイプを採用
外部接続端子はUSB Type-Cを採用。3.5φイヤホンマイク端子の位置は従来モデルと同様

縦横比『18.5:9』のInfinity Display

 Galaxy S8/S8+で特徴的なのは、Infinity Displayと呼ばれるSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)だ。現在、市場で販売されている多くのスマートフォンは、縦横比16:9のディスプレイを搭載しているが、Galaxy S8/S8+は縦横比18.5:9で、2960×1440ドット表示が可能な縦長(縦表示時)のディスプレイを搭載する。縦横比16:9のWQHDディスプレイの2560×1440ドット表示よりも400ドット分、多くの情報量を表示できる。

Galaxy S8+の前面。Galaxyシリーズでおなじみのハードウェアキーのホームボタンがなくなり、ソフトウェアでナビゲーションキーが表示される

 たとえば、映像コンテンツなどの場合、コンテンツの仕様にもよるが、映画などのワイド表示のコンテンツを表示するときは、何も表示されない黒い部分が狭くなり、映像そのものの迫力も大きく増す。縦方向で表示するWebページなどもより多くの情報が一度に表示されるため、かなり縦方向に長いWebページなどでもスクロールさせる回数が少なくなる。逆に、短い表示で次のページに切り替えるようなWebページは、今ひとつメリットを活かせないという見方もできる。

 2960×1440ドット表示の高解像度表示は、Android 7.0のマルチウィンドウ表示にも有効で、それぞれのアプリを一般的な16:9表示のディスプレイよりも広く、見やすく表示することができる。片方のアプリで文字入力などをするときもキーパッドが完全に隠れてしまうことも少ない。

ナビゲーションキーは配列を変更することが可能。他機種からの移行ユーザーにはうれしい機能

 また、外見にも関係する部分だが、今回のGalaxy S8/S8+はこれまでのGalaxyシリーズに搭載され、ひとつの特徴でもあったハードウェアによる物理ボタン(ホームボタン)を廃し、ソフトウェアによる表示に変更している。ハードウェアキーからソフトウェア表示に切り替えた場合、ユーザーがタッチしたかどうかを把握しにくいことも考慮し、ホームボタンが表示される位置に感圧センサーを内蔵し、ハプティック技術により、押したときの感覚を振動で伝えられるようにしている。短い時間の試用だったが、表示の切り替えなども非常にスムーズで、ほとんど違和感なく、使うことができた。ちなみに、Androidプラットフォームでは[ホーム]ボタンの他に、[戻る]ボタン、[アプリ履歴]ボタンを表示する必要があるが、Galaxyシリーズは他機種と配列順が異なっていたため、これまでは移行ユーザーが戸惑うという指摘もあった。今回のGalaxy S8/S8+ではナビゲーションキーがソフトウェア表示になったことで、これをカスタマイズできるようにしており、他機種から乗り換えやすくしている。

指紋/虹彩/顔認証による生体認証

 からハードウェアキーによるホームボタンがなくなったことで、本体前面はスッキリしたが、従来モデルでホームボタンに内蔵されていた指紋認証センサーは背面側に移動している。

 指紋認証によるロック解除などの操作は、基本的に従来モデルと変わらないが、少し気になったのはボディサイズとの関係だ。Galaxy S8/S8+の指紋認証センサーは、本体背面のカメラ部の右隣に備えられているが、端末を右手で持ち、人さし指の指紋を登録していた場合、カメラのレンズ部の向こう側まで指を伸ばさなければならない。

背面のカメラ部の横に移動した指紋認証センサー。手の大きさや指の長さによっては届きにくかったり、間違ってカメラのレンズ部を触ってしまいそうだ

 前述のように、両機種とも非常にスリムで持ちやすいボディに仕上げられているが、あまり手の大きくなかったり、指が長くない人がボディサイズがより大きいGalaxy S8+を持った場合、端末を持ち直さなければ、指紋認証センサーに指が届かないことも起きそうだ。同時に、慣れるまでは指紋認証センサーに指を当てようとして、カメラのレンズ部を触ってしまい、レンズが指紋などで汚れてしまうことも考えられる。ちなみに、カメラ起動時にはレンズの汚れを拭くことを促すアラート画面を表示するなどの対処も採られているが、慣れるまでは少し注意が必要な点と言えそうだ。

 Galaxy S8/S8+では昨年のGalaxy Note 7に続き、虹彩認証にも対応した。実際の設定や操作としては、昨年のGalaxy Note 7とほぼ同様で、国内で販売されている富士通製端末の虹彩認証とも変わらないレベルだ。画面ロック解除時に一度、画面をスワイプすると、虹彩認証の画面が画面の上部1/3のエリアに表示されるので、そこを登録した眼で見れば、ロックが解除される。認証動作も非常に速く、ストレスなく、使える印象だ。

虹彩認証は機能の内容を説明するチュートリアルが用意されている
虹彩認証の画面。下の部分にはPINを入力するためのテンキーが表示される

 さらに、もうひとつの生体認証として、顔認証にも対応した。顔を登録しておき、画面ロックの状態から一度、スワイプして、顔を認証できれば、ロックを解除できるというものだ。顔認証については顔の輪郭や眼の位置などを特徴点として利用しているようだ。

 これらの生体認証の内、虹彩認証と顔認証は排他利用になっているものの、指紋認証はどちらとも併用ができるため、虹彩認証と指紋認証、顔認証と指紋認証といった組み合わせで利用することもできる。

指紋認証と虹彩認証は併用が可能
虹彩認証と顔認証は排他利用なので、いずれかを選ぶ必要がある
従来モデルと違い、ホーム画面を上方向にフリックすると、アプリケーション一覧が表示される

 ユーザビリティに関する部分では、ホームアプリがかなり変わっている。Galaxyシリーズは従来から「TouchWiz」と呼ばれるホームアプリが採用されてきたが、Galaxy S8/S8+ではホーム画面から縦方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示され、アプリ一覧のグリッド表示も4×6と5×6が選ぶことが可能だ。従来のTouchWizと同じように、ホーム画面にアプリ一覧アイコンを表示する設定も選ぶことができる。全体的にホームアプリのデザインや使い勝手を大幅に見直し、最新のユーザビリティに実現しながら、カスタマイズ(パーソナライズ)で従来のユーザーインターフェイスにも対応できるようにしている。

従来モデルと同じように、ホーム画面にアプリ一覧を表示するためのアイコンをホーム画面に追加するユーザーインターフェイスも設定可能
アプリケーション一覧のグリッド表示もカスタマイズ可能

進化したカメラと期待のBixby

 Galaxyシリーズのカメラは従来のGalaxy S7 edgeにデュアルピクセルカメラを搭載し、暗いところでも人間の眼で見る以上に明るく撮影できるようにしていたが、今回のGalaxy S8/S8+もこの路線を受け継いでいる。メインカメラの基本スペックはほぼ同じだが、ブレずに鮮明な撮影をできるように、マルチフレームで撮影し、写真を合成する機能などを備える。今回は試用できるタッチ&トライのコーナーが外光がしっかりと入る環境だったため、あまり従来モデルとの差を試すことはできなかったが、それでも明暗差のある場所でもしっかりと撮影できており、従来モデル同様、カメラのクオリティは高いという印象を得た。

Galaxy S8+で撮影したサンプル。明暗もしっかりと再現されている。原寸はこちら(3.80MB)

 一方、インカメラについては8Mピクセルのイメージセンサーに、F1.7のレンズを組み合わせた新設計のものが搭載されている。オートフォーカスにも対応しており、セルフィーに対するニーズにしっかりと応えている。

カメラには人物の顔に合わせてグラフィックを表示して撮影する機能も用意される

 カメラの撮影機能で注目されるのは、人物撮影時の装飾機能だろう。国内でも自撮りアプリ「スノー(SNOW)」が人気だが、これと同じような機能を標準で搭載しており、自由に飾り付けをして、撮影ができる。筆者も説明員といっしょに何パターンかを撮影してみたが、インカメラが広角で撮影できるため、2人での撮影もそれほど手を伸ばすことなく、余裕を持って、撮影することができた。

 そして、今回のGalaxy S8/S8+に搭載される新機能のうち、もっとも注目されるのがインテリジェントサービス「Bixby」だ。マイクやカメラを使い、Bixbyに音声や映像を認識させると、それに関連する情報などを検索したり、音声でGalaxy S8/S8+のコントロールができるというものだ。残念ながら、現時点では日本語に対応していないため、カメラを使い、画像の認識などを試してみたが、取材用カメラを認識して、似たような画像を探してみたり、他のスマートフォンに表示させたワインのラベルを撮影して、ワインの銘柄を調べるなど、さまざまな使い方ができる。同様の機能は他の環境でも一部、実現されているが、今後、サムスン電子がこのプラットフォームをどのように進化をさせていくのかが注目されるところだ。

Bixbyを使い、他のスマートフォンの画面に表示した自由の女神像を検索すると、正しく検索結果が表示された
ワインのラベルも認識され、ワインの銘柄などの情報が表示される。

 また、スマートフォンを新たに拡張する機能として、「Samsung DeX」という機能も搭載される。専用クレードルにHDMIケーブルを接続し、ディスプレイに接続することで、Galaxy S8/S8+をパソコンのように利用できる機能になる。外部ディスプレイ上では対応アプリをマルチウィンドウで表示したり、ファイルをドラッグ&ドロップで移動できるなどの機能も利用できる。昨年、Windows 10 MobileのContinuum機能が注目を集めたが、ほぼ同等の機能をAndroidプラットフォームで実現できたような印象だ。デモを見た範囲だが、これまでのAndroidタブレットなどのデスクトップ化の機能に比べ、動作も軽快なうえ、視覚的にもわかりやすいため、今後の展開が期待される。

専用クレードルに接続すると、外部ディスプレイに出力して、アプリのウィンドウ表示が可能になる「Samsung DeX」。Windows 10 MobileのContinuumを彷彿させる機能だ

 さらに、今回のUnpacked 2017では360度カメラ「Gear 360」も発表された。従来モデルに比べ、グッとコンパクトになり、4K動画の撮影にも対応する。発表会で受け取った評価機を使い、街中でも撮影してみたが、開発中のモデルながら、非常に明るく撮影できる印象だ。撮影モードも動画や静止画だけでなく、タイプラプスなどにも対応しており、楽しく活用できる360度カメラとして、期待できる製品だ。

新しいGear360で撮影したサンプル。原寸はこちら(7.73MB)