みんなのケータイ

 「HTC J butterfly」を使い始めてから、約1カ月が経過した。その間、旅行や出張もあり、カメラの出番は多かった。カメラ機能は、この端末の売りのひとつ。F値2.0の明るいレンズや、独自のエンジンを搭載し、暗い場所でもキレイに撮れるとうたわれている。HTCの開催した発表会では、KDDIの田中孝司社長も「イチオシは何かというとカメラ」と述べていたほどだ。そこで今回は、作例(というにはおこがましいスナップ写真)を見ながら、カメラ機能の実力をチェックしていきたい。

 まずは、明るいところで撮った写真を以下に2カット掲載した。スマートフォンのカメラとしては、仕上がりは申し分ない。欲を言えば、少々輪郭がクッキリ出すぎているような印象を受ける。青い空のノイズも気になるところだ。そう感じた場合は、設定でシャープネスを下げるようにしておくとよい。

屋外での写りは十分だが、右の写真はやや輪郭がクッキリしすぎているため、合成で建物を張りつけたようにも見える。違和感を感じる場合は、シャープネスを下げることをオススメしたい。ちなみに、撮影場所はともにCESの取材で訪れた米国・ラスベガス

 とはいえ、晴れた日の屋外はカメラにとっての条件がよく、機種による差が出にくい。スマートフォンの苦手とする、屋内ではどうか。次に見ていきたいのが、薄明りの飲食店で、料理を撮ったときのものだ。写真を見れば分かるように、ノイズも少なくまずまずといったところ。スマートフォンでここまで撮れていれば、合格点を与えられる。ただし、左の写真はポテトの境界線が少々あいまいになっている。

ノイズが少なく、屋内の写真としては合格点をつけられる。ただし、屋外の写真と比べると、ところどころ描写の甘いところも目につく。左はラスベガスの「FATBURGER」、右が「HOOTERS」で撮影したもの
連写で撮った写真は、ギャラリーで見た際にまとめて表示される。この中から、ベストな1枚を選択すればよい

 また、室内では手ブレが発生しやすいのが、気になった。写真のEXIF情報を見てみると、どちらもシャッター速度は1/30になっている。ISOは左が194、右が384だ。個人的にはもう少し感度を上げて、シャッター速度をかせいでももいいのではと感じた。もちろん、感度の手動設定も可能なため、手ブレが気になる場合はISOを固定してもよい。手動の場合、ISOは800まで上げることが可能だ。連写機能を活用して、後からブレの少ないベストな1枚を選択するのもいい。連写で撮った写真は、ギャラリーでもまとめて表示されるので確認がしやすい。

 より条件が厳しい、夜景も何度か撮影している。中から選んだのは、以下の2枚だ。

ライトアップされたホテルは比較的キレイに撮れている。手ブレもしづらかった。ISOを1267に上げ、露出時間を1/50までかせげているためだろう。一方で右の夜景は、さすがに細部の描写が厳しく、ノイズも多い。手ブレも多かったため、連写で撮影した中から1枚をピックアップした。ISOは1488で、シャッター速度は1/17。左はクリスマスのペニンシュラ、右は香港島の写真となる

 左の写真は比較的うまく撮れた1枚だ。拡大して見るとさすがに細部の甘さは目につくが、ノイズも少なく原寸では十分なクオリティだ。EXIFの数値を見ても、バランスがよいように感じる。ISO1200以上でここまで実用的な写真が撮れるのなら、上の料理を撮った際にももう少し感度を上げてほしかった。

 一方で、暗い部分が多くなると、ノイズが一気に目立ち始める。右の写真は海の描写はまあまあだが、空は光のノイズがかなり気になってしまう。ISOは1488、シャッター速度は1/17で、この辺りが限界なのかもしれない。

 少々気になったのが、フラッシュを使っての撮影だ。以下の2枚を見てほしい。左のように、被写体に寄っている場合は特に問題ないが、引きで撮ると、なぜか光がかぶり、下側が黄色くなってしまう。光量も十分ではなく、ノイズが多い印象だ。

寄りで撮った写真は光量も十分。色味がやや不自然なことを除けば、満足できる仕上がりだ。ISOは270で、シャッター速度は1/100。一方で、引きの写真を撮ると光が回り切らず、しかも写真の下側が黄色く写ってしまう。別の被写体で何度か試したが、結果はすべて同じだった。左は香港の「PRESS ROOM」というレストランで撮った料理。右は香港のスターロードにあるスターバックスの置物

 トータルで見ると、スマートフォンの中ではなかなかのカメラ性能だと言えるのではないだろうか。ただし、夜景などの明かりがほとんどない場所ではどうしてもノイズが多くなる。フラッシュ撮影時の色かぶりも気になるところだ。スマートフォンは限られたサイズにカメラを収めなければならず、センサーやレンズの大きさ、性能には限界がある。その制約を考えれば仕上がりは十分だが、厳しく評価すると、オート撮影の詰めが甘いような箇所も見受けられた。こうした部分は、もう少し改善してほしいというのが正直な感想だ。