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「メインの銀行やカードを変えれば携帯料金が安くなる」と言われても……

 去る2025年11月17日、KDDIが「au」ブランドの新しい“マネ活”プラン、「auバリューリンク マネ活2」などを発表しました。その内容は既報の通りでご存じの方も多いかと思いますが、「auじぶん銀行」「au PAYカード」「au PAY」などを用いて通信料金を支払ったり、決済したりすることで、通信料が安くなるプランになります。

KDDIが2025年11月17日に発表した「auバリューリンク マネ活2」。「auじぶん銀行」との連携が強化されるなど、金融・決済サービスとの連携を強化した料金プランだ(出所:KDDI)

 同種のプランは競合他社も既に投入していますし、最近ではメインブランドだけでなくサブブランドでも、系列のクレジットカードを使って料金を支払うと割引される仕組みの導入が多くなっています。

 そして、それらサービスを利用してもらう口説き文句として用いられることが多いのが、「メインのクレジットカードや銀行を変えるだけで携帯料金が安くなりますよ」というものです。

 確かに、対象のプランに加入し、メインの銀行やクレジットカードをその携帯電話会社系列のものに変えてしまえば、何も考える必要なく割引が利いてお得ではあります。

 そして筆者も、実は携帯各社傘下の銀行やクレジットカードを結構保有しているのですが、それにもかかわらず現在もなお、携帯電話会社系列ではない銀行やクレジットカードをメインに使用しており、割引を一切適用できない状況が続いています。

筆者も携帯各社系列の銀行口座やクレジットカードはいくつか保有しており、2025年にNTTドコモ傘下となった「住信SBIネット銀行」の口座も、実は開業当初から保有していたりする

 なぜかといいますと、銀行やクレジットカードの使い方によっては乗り換えのハードルが非常に大きいからです。銀行の場合、とりわけ大きなハードルになるのが住宅ローンです。

 筆者は携帯各社が金融連携プランを提供するよりはるか前に、携帯電話会社とは無関係の銀行で住宅ローンを組んでいることから、必然的にそちらがメインの銀行口座となっています。

 そして携帯料金が割り引かれるからといって、携帯各社系列の銀行に乗り換えるには住宅ローンの借り換えが必要ですし、そのためには大きな手間と手数料がかかってしまうので現実的ではありません。

auじぶん銀行は現在、住宅ローンに力を入れ人気となっているが、既に他行でローンを組んでいる人が乗り換えるとなると、それなりにハードルがある

 クレジットカードは銀行より乗り換えのハードルは低いですが、個人事業主である筆者の場合、ハードルとなっているのが会計ソフトです。

 モバイル通信は仕事にも用いるので、料金を支払っているクレジットカードと会計ソフトを連携させ、自動でクレジットカードの支払い明細を取り込むようにしているのですが、実は携帯各社系列のクレジットカードは、その会計ソフトとの連携がうまくできなかったり、制約が生じたりするものが意外と多かったりします。

 一例として、会計ソフトで有名な「弥生」の口座自動連係に対応したクレジットカードを確認しますと、携帯4社系列のクレジットカードのうち、条件なしで対応しているのは「楽天カード」のみ。

 「au PAYカード」「dカード」は明細の自動取得ができないという条件が付いていますし、「PayPayカード」は「PayPay」のアプリで入会したクレジットカードには非対応となっています。

「弥生」のWebサイトから口座自動連係に対応するクレジットカードを確認したところ。「dカード」は、対応自体はしているが明細の自動取得には対応していない
「au PAYカード」を確認したところ。dカード同様対応はしているが、明細の自動取得には対応していない
「PayPayカード」を確認したところ。こちらも対応はしているが、「PayPay」アプリから入会したクレジットカードには非対応だという

 それらの事情から、メインの銀行やクレジットカードを携帯各社の系列のものに移すのが困難で、割引も適用できないことからお得にならない状況が続いている……というのが正直な所。

 お得な特典に力を入れるのはいいのですが、それ以前に各社には、系列の金融・決済サービスに乗り換えやすくする周辺環境を整備すべきでは? とも思ってしまいます。