みんなのケータイ

非常時ローミングで話題の“呼び返し”を自ら体験してしまった話

 コロナ禍の影響で3年近く帰省ができていない筆者。年末こそ帰省を……と考えていたのですが、冬が近づくにつれ新型コロナウイルスの感染が再び増えており、“第8波”との声も出てきたことから、年末まで待っているとまた帰省ができないと思い、11月に早めの帰省をすることにしました。

 その際ちょうど「AQUOS sense7」をお借りしていたことから、帰省のついでにAQUOS sense7の実力も検証してみようと思い立ちました。そこで充電器を持たずAQUOS sense7の本体だけを持参して、バッテリーの持ちやカメラの性能などを確認しようとしてみた訳です。

コロナ禍を考慮して実家がある福島県郡山市へ早めの帰省をすることに。そのついでに「AQUOS sense7」のテストをしようと思ったところ、それどころではない事態に

 結果的に言えば自宅に戻るまでのおよそ24時間は、フル活用してもバッテリーは半分くらい持つなど満足できる内容でした。久しぶりの帰省でなぜ滞在が24時間なのか? という点には疑問を抱く人もいるかもしれませんが、その理由は全く別のトラブルで帰宅を余儀なくされたからです。

 筆者の両親は高齢である上、新型コロナウイルスの感染者が増えている状況でもあったことから、万全を持して実家には泊まらずホテルで宿泊することにしたのですが、慣れない環境だったこともあって部屋の中で頭を強打して流血する事態に。同行していた妻がフロントに電話し、フロントから119番に通報がなされて救急搬送されることとなってしまったのです。

 そして救急車の到着を待っていた所、スマートフォンに非通知での着信があり、出てみるとそれは救急車からの電話でした。その内容は怪我や意識の具合、歩けるかどうかなど筆者の状況を確認するとともに、救急車が来るまでの対応などが伝えられました。チェックインする際、フロントに携帯電話番号を伝えていたことから、フロントから通報する際に筆者の電話番号が伝えられ“呼び返し”の電話がかかってきたようです。厳密に言えば、通報者に対する呼び返し機能ではないのでしょうが、体験としては、ほぼ同じ流れになったようです。

救急搬送が決まった数分後に非通知の電話がかかってきたが、出たところ“呼び返し”の電話であることが判明(当時は余裕がなかったのでこのスクリーンショットは後から撮影したもの)

 緊急通報をした相手に折り返し電話をかける「呼び返し」は、現在KDDIの大規模通信障害を受けて総務省で進められている、非常時ローミングの議論で話題となっているものですが、まさか身をもって呼び返しを経験することになるとは思いませんでした。幸いにして怪我の程度は軽く脳にも問題はなかったことから、傷を数針ほど縫われて再びホテルに戻ることができたのですが、怪我の影響もあり予定を短縮して早々に帰宅することとなってしまった訳です。

病院から戻った直後の筆者。幸いにして軽傷で済んだが、慣れない環境での生活には注意が必要だ

 一連の出来事で呼び返しの重要性はよく理解できましたし、親切に対応頂いた消防の方々や、治療頂いた医療機関の方々には大いに感謝するところです。しかしだからと言って、呼び返しなしの非常時ローミングが不要なのかと言えば決してそうではないと筆者は考えます。先のKDDIの通信障害のように、コアネットワークがダウンしてしまえばそもそもローミング自体ができなくなる訳で、その際は呼び返しのない一方通行であっても、緊急通報さえできる仕組みが存在することが命を救える唯一の手段となる可能性が高いからです。

 総務省での一連の議論では、実装に時間はかかるが、呼び返しだけでなく通常通りの通話や通信もできるようにする「フルローミング」を目指す方針が示され、早期に実現できる呼び返しなしのローミングは検討の対象から外れてしまいました。ですが呼び返しはできないものの、SIMを挿入しない状態で緊急通報のみ利用できる「SIMなし端末発信」は、「緊急通報の発信だけを可能とするローミング方式」として今後も検討が継続されるようですので、ぜひその実現に向け前向きな議論を進めてもらいたい所です。