みんなのケータイ

ドコモの「iD」はどこに行く

 後払いタイプの電子マネーとして、FeliCaを使ったiDとQUICPayがあります。フィーチャーフォンのおサイフケータイ時代からあるサービスで、クレジットカードを登録して携帯電話でタッチ決済ができるという、時代を先取りしたサービスでした。

物理カードでもスマートフォンでもタッチ決済ができるiD。今のクレジットカードのタッチ決済の先駆けでした

 今も使われていますし、私も愛用しているのですが、NFCを使ったクレジットカードのタッチ決済が伸びていることもあって、iDの位置づけが難しくなっているのも確かです。

スマートフォンのiDアプリ。普段起動することはないアプリです

 iDとQUICPayは、Android端末であればGoogle Pay、iOSならApple Payでも利用可能です。クレジットカードを読み取って必要事項を入力し、SMSなどの認証を行えば登録できます。

これはちょっと懐かしい写真。2018年1月の、d払い発表会で使われたスライドです。iDがスタートしたのは2005年というのが分かります。「クレジットカードのタッチ決済」ができるiDとQUICPayは、当時は世界の先端でした

 フィーチャーフォン時代やAndroidのiDアプリを使った場合、従来通りの申し込みと書面送付を待ってようやく登録できるのに比べればはるかに簡単。対応カードも増えており、実用的なレベルで使えるようになっています。

多くのカードが登録できるようになっているGoogle Pay
こちらもたくさんのカードが登録できるApple Pay

 最近、iDアプリに登録していた三井住友カードiDの更新手続きの案内が書面で送付されてきて、改めて従来のiDの問題を思い出したのですが、Apple PayやGoogle Pay上のiDだと、有効期限とセキュリティコードを変更すればよく、書面送付しての更新作業は不要なので、三井住友カードiDを継続することはないでしょう。

 そう考えると、やはりiDは早すぎた技術でしたが、便利だったのも確かです。今後は、サービスとしてのiDはともかく、iDアプリは終息の方向でもしょうがないという気がします。

 ただ、Apple / Google Payにすべてを任せるのも不安があります。Google Payが日本でスマートウォッチになかなか対応しない動きの遅さ、Appleユーザーしか使えないApple Pay。Apple PayのようなUIと機能、トークナイゼーションを含めたセキュリティなどを搭載して、決済ネットワークとしての競争力を高めて、日本の製品への決済機能組み込みで威力を発揮できれば、iDも存在感を保てるという気はします。

 というわけで、iDでの決済では、すでにメイン端末のGoogle Payに移行しているのですが、最後の問題として立ちはだかっているのがdカードです。

 このカード、いまだにGoogle Payに非対応なのです。実は、au PAYカードもPayPayカードもGoogle Payに非対応と、携帯事業者系列のカードが揃ってこのていたらくという状況(楽天カードはQUICPayで対応)なのですが、dカードだけは「iD」の登録が可能です。iDはドコモが関連しているため、対応自体は当然のこととして、なぜかGoogle Payには対応しておらず、iDアプリを使わなければなりません。

携帯事業者系のクレジットカードをApple Payで並べてみました。そういえば、なぜかデビットカードでは、auじぶん銀行がApple PayとGoogle Pay対応、PayPay銀行がGoogle Pay(+Garmin / fitbit Pay)のみの対応。楽天銀行はどれも対応していないようです
Google Payは、オンライン決済用にカードを登録できますが、オフラインで利用することができないカードが結構あります。3キャリアのカードを筆頭に大物が残っているという感じです

 現在はdカードを「wena 3」に登録しています。腕時計のバンド部にウェアラブル機器を内蔵した「wena 3」はiDに対応。iOSからしか登録できないという制約があり、おサイフリンクアプリを使用して設定しますが、これは旧来のiDアプリを使うのと同じ方法で登録を行うため、dカードが登録できるというわけです。一度登録してしまえば、「wena 3」をAndroidに接続してもそのままiDは利用できます。

 しかし、dカードiDも更新手続きが必要になった場合、またiPhoneに「wena 3」を繋ぎ直して設定する必要があるのでしょうか。まあ、「wena 3」はQUICPayも旧式でサービス終了のため、更新が来たらそのまま利用終了になるかもしれません。

「wena 3」でタッチ決済

 ところで、Google Payに対応しないdカードもau PAYカードもPayPayカードも、いずれもApple Payには登録できます。dカードは、そこでも問題が発生しました。

 Apple Payへのカード登録で、最後の端末認証において、「ドコモ回線経由でない場合は音声電話を発信しなければならない」という制限です。iPhoneはau回線で使っているため、dカードアプリ経由の認証ができず、電話発信しか手段がないのです。発信先がフリーダイヤルでもあったので仕方がなく音声電話をかけたのですが、オペレーター対応が必要らしく、保留が長かったので諦めてしまいました。

Apple Payに登録したところ、アプリか電話発信での認証が要求されました
アプリを使ってみると、残念ながらドコモ回線でないと認証できないようです

 最終的には、他の端末で使っていたドコモのSIMカードをiPhoneに入れ替えて、Wi-Fiをオフにしてドコモ回線で認証をして、その後SIMカードを元に戻しました。ここまでくるともはや意味が分かりません。

 せめてドコモ回線を使う端末にSMSなりアプリ通知なりで認証してくれればいいのですが、今回はSIM差し替えで対処しました。ドコモ回線がない場合は、やはり発信をするしかないようです。

 ドコモ回線がないのにdカードを使う意味はあまりないということかもしれません。dポイントやd払いの存在を考えると、異なるキャリアでもdカードを使うパターンもあってよさそうですが、あまりそういったスタンスではないのでしょうか。

 この設計は2019年に変更されたものですが、よほど攻撃が多かったということなのでしょう。利便性よりも攻撃への対処を優先しているというでしょうが、不自由になるのは困りものです。

 最終的にはiDと言うよりもdカードへの愚痴ですが、iDに関してどのような戦略を描いているのか、今後さらに見ていていきたいと思います。