DATAで見るケータイ業界

市区町村の約半数は、キャリアショップがまったくない「空白地域」

 本誌既報のとおり、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は今年8月以降、宮崎県えびの市に臨時の携帯ショップを開設することが明らかになった。

 同市には携帯電話の販売代理店がないため、3社が持ち回りで1カ月に2日間ずつ臨時出店し、契約手続きや相談などを受け付けるという。

市区町村の約半数は、キャリアショップがまったくない「空白地域」

 宮崎県えびの市のように、携帯ショップがまったくない「空白地域」となっている市区町村はどの程度存在するのだろうか。

 そこで今回、弊社が実施しているキャリアショップ調査の直近データ(2021年2月時点)をもとに、その状況を探ってみた。

 集計は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクそれぞれのメインブランド店舗に対象を絞って実施した。そのため3社のサブブランド店舗や楽天モバイルの店舗は含まれていない。また、あくまでキャリアショップ(ドコモショップなど)を対象としており、量販店や併売店における販売窓口は考慮していない点はあらかじめご理解頂きたい。

 上記枠組みで集計を行った結果、全国1896市区町村のうち、3社いずれもが出店している市区町村は777で、全体の41.0%だった。

 一方、キャリアショップがまったくない市区町村は937で、全体の49.4%を占めている。市区町村のうち、人口(2020年国勢調査の人口速報より。以下同)が1万人に満たないものが28.0%もあるため、経済合理性からやむを得ない面が大きいが、半数近くの市区町村にキャリアショップがない実態は衝撃的だ。

人口10万を超える市の一部でも「出店していないキャリアがある」状況

 今回の集計で興味深いのは、人口の多寡と出店状況が必ずしも一致しない点である。

 出店していないキャリアがある市区町村を人口の多い順位に並べたところ、1位は神奈川県横浜市保土ケ谷区(人口20.8万人)だった。同区には、KDDIとソフトバンクのショップはあるものの、ドコモショップは出店されていない。横浜市の中核的存在である横浜駅を有する西区に隣接していることなどが背景と考えられるが、同区については近隣ドコモショップからの出張販売会などでカバーしているもようだ。

 区部を除いた市町村でみると、大阪府羽曳野市(同10.9万人)や静岡県三島市(同10.8万人)、大阪府泉佐野市(同10.0万人)など、人口が10万人超の市であっても、出店していないキャリアがある地域が存在している。

 一方、臨時携帯ショップの取り組みを開始した宮崎県えびの市の人口は約1.8万人だった。同じ1.8万人の人口を抱える佐賀県多久市や岩手県陸前高田市、また1.7万人の北海道士別市や三重県鳥羽市には、1社ないし2社がキャリアショップを出店している。さらに、今回の調査では、人口が4000人台の村にキャリアショップが出店されているケースも見受けられた。

 携帯キャリア各社は全国的なエリア展開を行っており、とりわけ楽天モバイルが新規参入してからは、自社のエリアカバー率の高さをより一層アピールしている。その一方で、契約手続きの重要拠点であるキャリアショップは大きく偏在していることが明確になった。今回の宮崎県えびの市の事例も含め、空白地域に対する支援の取り組みに期待したい。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/