DATAで見るケータイ業界
端末流通の現状から、中古端末市場の現状を整理する
2021年7月25日 08:00
2020年10月に総務省が策定した「アクション・プラン」で、具体的取り組みの1つとして掲げられたのが「中古端末を含めた端末流通市場の活性化」だ。
政府の後押しや業界団体設立で進む、市場形成に向けた土台作り
通信と端末の完全分離に向け、中古(リユース)も含めて多様な端末流通を実現しようという文脈で推し進められてきたもので、リユース端末のSIMロック解除や、適切な修理部品の入手など、市場活性化に向けた具体的な諸課題の把握や対策が打ち出されている。
また、2017年にはリユース事業者らによって業界団体「リユースモバイル・ジャパン」(RMJ)が設立され(2020年に一般社団法人化)、事業者向けの業務ガイドライン策定や、事業者認証制度の導入など、安全・安心な市場形成に向けた土台作りが進められてきた。
新品市場先細りや端末サポートプログラムの本格稼働で懸念高まる使用済み端末の調達
このように環境が整備されつつあるが、課題も多い。最大のポイントは、市場拡大に欠かせない端末調達に対する懸念である。
リユース端末を販売するためには、使い終わった端末を利用者から直接下取りするか、海外含めた市場から調達する必要がある。
しかし、通信キャリア各社が導入した、使用済み端末の返却を条件に割賦残債を免除する「端末購入サポートプログラム」によって、キャリアに端末が回収され市場に出回らない可能性が高まっている。
特に、当初よりプログラム利用料を無料としていたNTTドコモの「スマホおかえしプログラム」が、提供開始(19年6月)から丸2年を迎えて本格的な回収段階を迎えている。
キャリアが下取りした端末は、これまで仲介業者経由で海外市場へ売却されてきた。仲介業者にとって、海外への売却は高値で買い取ってもらえる点や、大量でも一括でさばける点など多くのメリットがあり、あえて国内還流する必要性に乏しい。流れを変えるべく、キャリアや仲介業者との国内流通取引窓口の設置をRMJは要望している。
他方、端末値引き規制の影響で通信キャリアが低・中価格帯の端末ラインナップを強化したことで、ハイエンド端末の流通量がそもそも減少し、リユース市場で需要の高い人気端末が調達しにくい状況になりつつある。通信キャリア4社の直近の端末販売において、6万円以下の端末が全体の約55%を占める結果となっている。
また、20年度のスマートフォン売上単価平均は6万3円で、売上単価は低下傾向が鮮明となっている。新品市場の先細りは、リユース市場にも影を落としそうだ。
リユース市場もキャリアが総取り、果たして健全?
最後に、リユース端末市場の拡大それ自体を目的化してはならない点を指摘したい。端末の自由な流通を阻害する諸課題の解決は重要だが、どんな方法でも構わないから市場を活性化すればよいというものではない。
通信料金に対する度重なる値下げ圧力によって通信キャリアがオンライン専用プランを投入したが、これにより、競争活性化の旗振り役としてこれまで後押しされてきたMVNOが一気に梯子を外されたことは記憶に新しい。
リユース端末においても、既に一部キャリアが「キャリア認定リユーススマホ」の取り扱いを始めている。リユース市場は活性化したものの、蓋を開けてみたら結局キャリアが市場を総取り、といった状況は果たして健全な姿だろうか。新たな施策を投入する際には、慎重な舵取りを求めたい。