ケータイ用語の基礎知識

第692回:PowerIQとは

 PowerIQは、バッテリー、アダプターなどを開発、販売しているANKER社の開発した技術で、充電ポートに接続された機器を自動的に検知し、最適な電流を送る、というものです。PowerIQを搭載したAnkerのモバイルバッテリーや充電器を使うことで、機器の違いをユーザー側で意識することなく、最適な時間で充電できる、とされています。ちなみに同様の仕組みは、他社製品にもあります。

 スマートフォンやタブレットを充電する際、たとえばパソコンのUSBに繋いでも、充電に時間がかかることがあります。また、USB充電対応の汎用的なACアダプターに繋いでも、時間がかかるという経験をしたことがある人もいることでしょう。この充電時間の差は、電力供給元であるUSBコネクタの出力できる電流の差によるものです。

 ただし、流せる電流が大きければよいというものではありません。ACアダプターなど充電元の機器が、充電されるスマートフォンやタブレットに最適な量の電流を流せるかどうかも大きな要因となるのです。

 PowerIQは、充電ポートごとにこの「最適な電流量」を推測し、電流を流すという仕組みです。このような充電ポートのことを一般的には「スマートポート」などと呼ぶこともあります。

 同社の最近発売されたUSB充電機や、モバイルバッテリーには、このPowerIQが採用されていて、「雷マークにIQの文字」のPowerIQマークが描かれています。

USB接続で機器ごとに適した電流を

 一般的に、充電器やモバイルバッテリーは、コネクタによって、出力できる電流が決まっています。たとえば、「最大1A(アンペア)」「最大2.1A」というようにです。

 PowerIQを採用している機器では、各USBポートに接続された機器を自動的に検知し、最適な電流を流す、とされています。機器によって異なりますが、たとえば最大8Aなど、一般的に充電に使われる機器の最大充電容量より十分大きな値が最大量になっています。これによって、機器ごとに適した最大のスピードで急速充電を行えるとされています。

 なお、PowerIQは他のメーカーの、仕組みの異なる急速充電とは互換性はないので、機器によっては最大スピードで充電できない場合もあります。たとえば、ドコモの「急速充電2」は、「ACアダプタ05」によって9Vの電圧を流すことで急速充電を行いますが、PowerIQはUSBの本来の規格である5Vの電圧しか流せませんので、この急速充電には対応できません。PowerIQでは、5Vという電圧での最適な電流を探す形です。

 また、このUSBポートに接続されている機器の状態から流せる最大の電流を推測して流すという仕組みはANKERのPowerIQのみでなく、他のメーカーからもいくつか出てきています。たとえば「Smart USB System」という名称でサンワサプライからUSB充電器が販売開始されていますし、海外では「Super Charger Ports」などと呼んでいる同様の製品があります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)