ケータイ用語の基礎知識

第620回:Bluetooth SMART とは

 「Bluetooth SMART」は、Bluetooth 4.0に追加された低消費電力通信規格の「Bluetooth Low Energy」に対応する機器を総称するブランド名です。対応機器であるスマートウォッチやヘッドセットに表示できるロゴもあります。

 対応する周辺機器は「Bluetooth SMART」、その対応機器が繋がるスマートフォンなど“ハブ”になる機器は「Bluetooth SMART READY」と呼ばれています。

「Bluetooth SMART READY」のロゴが表示されたスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどは「Bluetooth」「Bluetooth SMART」が表示された機器両方に、「Bluetooth SMART」のロゴが貼られた端末デバイスは「Bluetooth SMART READY」の表示されたスマートフォンなどの機器に、それぞれ接続できるわけです。

 Bluetooth SMART」は、Bluetooth 4.0仕様で開発され、モード切替なしでも「低エネルギー無線」さえ搭載していれば準拠と見なされます。

 なお、「Bluetooth Low Energy」とは、「第511回:Bluetooth Low Energy とは」で解説したように、一般的なBluetoothと同様に、2.4GHz帯で免許不要の小電力な電波を使った無線通信です。非常に少ない電力で駆動することが特徴で、たとえばコイン電池、ボタン電池やエナジーハーベスト(環境発電)を使用して、利用することが前提となっています。

 Bluetooth Low Energy単体では、以前のバージョンである2.1や3.0との互換性はありませんが、その代わり、Bluetoothチップセットは、4.0に加えて3.0以前のモードを同時に利用できる両モード対応とすることを可能としています。

 また、「Bluetooth SMART」対応デバイスは、「アプセサリ」と呼ぶことがあります。これは「アクセサリー」と「アプリケーション」を合わせた造語で、アクセサリーとして比較的シンプルなデータの通信を行い、スマートフォン側のアプリでデータをさまざまに解析して活用するという特徴を持つことからこのように呼びます。

Bluetooth SMART READYに必要なもの

 「Bluetooth SMART READY」は、Bluetooth 4.0の仕様で開発されなければならないほか、Bluetooth 3.0以前のデバイスと通信するためデュアルモードに対応しなければならず、さらにユーザーの操作によって機器のプロファイルをインストールできるようになっていなければなりません。

 スマートフォン側が「Bluetooth SMART READY」となるにはいくつかの条件があります。Bluetoothの通信チップが、バージョン3.0以前のBluetoothと、4.0の超低消費電力の両方の通信が可能なデュアルモード構成であることや、ソフトウェア的にプロファイルをダウンロードし適用できる仕組みを用意することなどが挙げられています。

 このため、過去にパソコンやスマートフォンなどでBluetooth 4.0 Low Energyに対応したデバイスがあっても「Bluetooth SMART READY」と言えるとは限りません。「Bluetooth SMART READY」は、OS側の対応が必要だからです。

 現在、チップメーカーから出荷されているBluetooth 4.0対応のチップはほとんどが3.0以前のモードと4.0の両方に対応しているデュアルモード構成になっていますが、プロファイルのダウンロードに対応するには、ハードだけではなくOSの対応も必要となります。「Bluetooth SMART READY」を名乗るには、「Bluetooth 4.0対応のハードウェア」と「SMART READY対応のOS」というペアがそろっていなければならないのです。

 2013年7月現在、アップルでは「iPhone 4S」以降の端末でBluetooth 4.0を採用しており、「Bluetooth SMART READY」に対応しています。

 また、マイクロソフトの「Windows 8」、BlackBerry(旧RIM)の「BlackBerry 10は、既に「Bluetooth SMART READY」対応となっているので、これらもBluetooth Low Energy対応ハードウェアで使えば「Bluetooth SMART READY」となります。

 Androidに関しては、次期バージョンでBluetooth SMART READYおよびBluetooth SMARTをOSとしてサポートする予定にされています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)