第505回:Skypeとは
「Skype」(スカイプ)は、Skype Technologiesという企業が開発・提供している、VoIP技術をベースにした、インターネット電話などの機能を持ったソフトウェアです。
このソフトウェアにはWindows用、Mac OS用、Linux用があるほか、携帯電話向けとiPhoneとAndroidケータイ向け、Symbian OS向けにも提供されています。2011年1月から日本国内のAndroidスマートフォンでも利用が可能になりました。
「Skype」がインストールされている、インターネット接続中の機器では、同じくSkypeを使っている人と通話できます。Skypeユーザー同士の通話は基本的に無料です。
通話だけではなく、無料でテキストメッセージのやりとりができるほか、有料のサービスとして、電話との通話、あるいは電話でSkypeからの発信を受ける機能、SMSの発信なども可能です。パソコンではビデオチャットや多人数でのビデオ通話なども利用できます。
スマートフォンの場合、もともと携帯電話ですから通話機能は備わっているわけですが、「Skype」アプリを使う通話であれば、パソコンユーザーが相手でも、Skype同士であれば無料(パケット通信料は必要)で通話できますし、国際通話でも、Skype同士であればやはり無料で通話でき、相手が電話機であっても比較的安価に通話できることなどから人気のあるサービスです。
au向けサービスである「Skype au」では、日本国内の電話へはSkypeでの発信が不可となっていますが、同じくauのAndroid搭載端末でも、国内への電話が可能なアプリ「Skype for Android」を利用することも可能です。
■名前の由来
「Skype」は、いわゆるVoIP技術を使ったサービスです。VoIPとは、英語で「声をIPネットワーク上で」という意味となる「Voice over Internet Protocol」の略語です。IPネットワーク、つまり、インターネットなどで使われているパケット通信網上でデジタル化した音声データをやりとりすることで通話を実現します。
一般的に、現在の3G携帯電話では通話は、VoIPではなく、回線交換方式を利用しています。回線を占有することで品質を維持する回線交換式と比べると、VoIPは効率よく回線を利用できるほか、専用設備ではなくインターネットを使う場合はその設備を流用できるといったなどの理由から、低コストで通話できるというメリットがあります。
ただし、VoIPでは、音声データを一定の大きさに区切ってやりとりするため、途中経路の処理の問題によって音声がプツプツと途切れたり、音声が遅れて相手に届いたりするといった、品質への影響が発生しやすいというデメリットもあります。
パケット通信でも十分スピードも速く回線品質が安定していれば、ある程度の品質は確保できますが、2011年現在、一般的にVoIPの音声品質は、遅延や途切れといった品質面で回線交換を使う通話ほど高品質ではなく、Skypeといえども例外ではありません。
ただ、Skypeは、これらのVoIPのデメリットを「ピアツーピア通信」を採用するなどの工夫によってこのような障害の回避しようとしています。そのため、インターネット回線を使ったVoIP電話としては、比較的遅延も少なく品質のよい音声通話を提供していることも確かです。
「Skype」という名称は、“Sky peer-to-peer”の略から来ています。Skyは英語で“空”という意味で、“peer-to-peer”はピアツーピア、「同僚から同僚へ」という意味です。ピアツーピア(P2P)通信とは、ネットワーク技術の1つで、サーバーを中継せずに端末から端末へ、データが直接やり取りやりとりされるタイプの通信です。
Skypeでは、一度、スーパーノードと呼ばれる、各ユーザーの特徴が書かれた電話帳のようなデータベースに接続し、相手を探して接続してからは、P2P通信で直接端末から端末へ通話データがやりとりされます。こうすることで、途中経路による遅延が少なく、結果として品質の良い通信が可能になったとされます。
ちなみに、auユーザー向けのサービスである「Skype au」は、回線交換を使っていますので、実は他の機器で使う「Skype」とは仕組みが異なります。
この方式は、VoIPソフトウェアの仕組みとしては、回線数が増えても設備投資にさほど投資が必要でなく、ひいてはユーザーへの負担が少なくできるというメリットがあります。Skypeの場合、電話回線との通話機能「Skype Out」への課金などで必要な収入を得る一方、コストのあまりかからないSkypeユーザー同士の通話は無料としています。
無料通話がSkypeの魅力の1つでしょう。従来の電話では非常に高額となる国際通話でさえもSkype同士であれば無料で通話できてしまうことは非常に大きな魅力です。
ちなみにP2Pの対極としては、中央集中型のネットワークというものがあり、これは全てのデータを一度中央のサーバーに集中させ、そこから通話先の端末へデータをさらに流します。この方式は、たとえば柔軟に帯域の制限をかけられたり、通話に関する記録をより詳細に取り易いなどのメリットがあり、企業内IP電話基盤として利用されているシステムなどでは、このタイプのものも多くあります。このタイプの通信をVoIPで採用すると、利用者が増えれば増えるだけ中央サーバーの性能を向上させなければなりません。サーバーが、増えた通信をさばけないと、通話の遅延、途切れと言った問題が発生します。
一般ユーザー向けでインターネット回線を使うSkypeでは、ユーザーが一時期爆発的に増えたこともありましたが、そんなときにもそれほど大きな障害などが起こらず、通話品質の低下なども起きなかったということも、現在までSkypeが有力なサービスとして存在している要因の1つでしょう。
2011/3/1 12:02