ケータイ用語の基礎知識

第961回:PUレザーとは

 PUレザーとは、合成皮革の一種です。見かけ、手触りとも革製品に似ていながら均一の商品を大量生産することができるので、工業製品によく使われます。偽物の革という意味で「フェイクレザー」などと呼ばれることもありますね。

 スマートフォン用のケースなども合成皮革といえば、このPUレザーかPVCのものが多いのではないでしょうか。

布地や不織布をベースにポリウレタンを使った合成皮革「PUレザー」

 合成皮革とは、布地や不織布をベースにしその上に合成樹脂を塗り、表面層を天然の革に似せた人工素材のことをいいます。

 合成樹脂にはポリ塩化ビニールやポリウレタン樹脂を使っています。ポリウレタン(Polyurethane)を使うのがPUレザー、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)を使うのがPVCになります。これらの素材を布地に塗った後、革素材らしく型素材を押し付けてやれば、人工皮革の完成です。

安価な「PVCレザー」、高級感・本革に近い「PUレザー」

 PUとPVCそれぞれにメリットデメリットがあります。

 PVC製の合成皮革のメリットは、まず安価で、色加工が自在であるということです。スマートフォンの合革製フリップケースで、安価でカラフルな物やかわいい色合いのものがものがあったらPVCである可能性が高いです。革と言っても柔軟性が低く、閉じるときに、実際の革より固めだなぁ、と感じるようでしたらもう間違いないでしょう。

 本質的にはPVC皮革の触り心地はツルツルしているものなのですが、ここは加工で革っぽくザラザラにしている場合もあるのであまりアテにはなりませんね。

 PUは、PVCレザーに比べてぐっと本革に近い見た目と質感で、PVCに比べてソフトで本物の革に近い手触りがあります。

とあるPUレザー製品を分解してみた。不織布にポリウレタンを塗布してなめし皮のような合成皮革を作り出している。

 ちなみに、トリニティのスマートフォン「NuAns NEO」という機種のフリップケースは「クラリーノ」という不織布をベースにポリウレタンを使った人工皮革の一種です。

PUレザーの加水分解問題

 最近ではあまり聞かなくなりましたが、安価なPU製スマートフォンケースで、革部分がボロボロ、またはベタベタになる、という問題が話題になったことがありました。

 この現象のほとんどは加水分解と呼ばれる現象のためにおきます。文字通り、PUのポリウレタンが水分子のHとの化学反応により、「加水分解」と呼ばれる劣化を引き起こし、次第にPU樹脂を分解していくのです。なので、普通に使っていても空気中の水分で劣化しますし、濡れたぞうきんなどでふき掃除すると、さらに劣化を促進させてしまう、というようなこともあり得ます。

 残念ながら加水分解が始まってボロボロ、またはベタベタになってしまったPUレザーを元に戻す方法はありません。重曹などを使ってベタベタを剥がすことはできますが、加水分解が始まる前に対策を立てておくくらいしかできません。

 PUレザーの劣化を遅らせるためには、たとえば、事前に防水スプレーを吹きつけておくといったことが考えられます。不必要な水分との接触を防ぐわけです。

 また、加水分解する際に他のPCレザー製品と密着しているとそちらも巻き込んでいわゆる「色移り」が生じてしまう場合がありますで、しばらく使わないというような場合は一つひとつ、不織布などに包んでしまう方がいいでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)