ケータイ用語の基礎知識
第962回:アラミド繊維とは
2020年8月4日 06:00
鉄の重量5分の1、引っ張り強度7倍の「スーパー繊維」
アラミド繊維は、1960年代に開発され1967年に初めて市場に登場した、スーパー繊維です。スーパー繊維とは、普通の衣料品等に使用されている繊維よりも、強度・弾性率・耐熱性・難燃性等がきわめて高い繊維のことを言います。強度20g/d以上、弾性率500g/d以上の優れた強度・弾力性を持ち、通常の衣料用合成繊維とは区別されています。
代表的なスーパー繊維としては、このアラミド繊維やポリアリレート、炭素繊維、アルミナ繊維などが挙げられます。
アラミド繊維の商品名としては、デュポンの「Kevlar」、帝人の「Technola」などが挙げられます。
「アラミド」は、化学構造的には、よく知られた合成繊維「ナイロン」と同じポリアミド(アミド結合によってできたポリマー)でもあります。ただ、脂肪族骨格を含むポリアミドを「ナイロン」と呼びますが、芳香族骨格のみで構成されるポリアミドを「アラミド」と呼びます。これを繊維としたのがアラミド繊維です。
なお、このアラミド繊維は、さらに大別すると「メタ系アラミド繊維」と「パラ系アラミド繊維」の二種類に分かれます。
メタ系アラミド繊維は、耐熱性が高く400℃を超える温度でも溶けたり、分解したりしません。また空気中では燃えない、という素材で、仮に燃えても毒性のガスなどは出しません。耐熱性、難燃性の性能がきわめて高い材料で、防火服、バグフィルター、OA用クリーナー、電気配線の絶縁材料などに使われています。
パラ系アラミド繊維は、こちらは、スーパー繊維の代表格とも言える素材で、鋼材と比較し、同じ容積であれば重量は約5分の1であるにも関わらず、ひっぱり強度は約7倍の強さがあるという、強靱な素材です。
また、物体には物体に力をかけ続けると、時間の経過とともに歪みが増大する「クリープ現象」が起きますが、パラ系アラミド繊維は、それが起きにくいことでも知られています。加えて、耐切創性(切り傷に強い)、非導電・非磁性(電気を通さず、磁化しない)、電波透過性といった特徴も持っています。
電波はそのまま透過しますので、スマートフォンのケースなどに使用しても悪い影響を与えないわけです。
アラミド繊維を使った製品例……軽さ強靱さを武器に
アラミド繊維を使った製品は、その軽さ、強靱さを取り入れるために採用されているようです。
2019年ソフトバンク冬ラインナップ機種「AQUOS zero」の背面パネルにアラミド繊維を使ったパネルが採用されたのはその良い例でしょう。
弊誌に掲載された「AQUOS zero」開発者インタビューによれば、“世界最軽量”約146gの端末を目指すに当たって、背面パネルはアラミド繊維(Technola)を採用したことで29%軽くなったことが記されています。
あるいは、2019年6月から販売されているベルキンのLightning/Type-C接続のケーブル「DuraTek Plus USB-C to ライトニングケーブル」などもアラミド繊維を取り入れた例のひとつとして挙げられます。
この「DuraTek Plus」ケーブルは、内部配線がアラミド繊維で補強され、外被に耐摩耗ナイロンを採用するなど、摩擦によるダメージを抑え、充電ケーブルの耐久性を強化したというケーブルです。
一般的なスマートフォンの充電ケーブルの絶縁・外皮在材料にはクロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)が使われており、ねじりや摩擦で切れやすくなりますが、アラミド繊維を使うことでこれを防いでいるわけです。