ケータイ用語の基礎知識

第935回:Society 5.0とは

日本が提唱する、情報社会の次の「社会の姿」

 Society(ソサイエティー) 5.0 とは、内閣府が提唱した目指すべき「未来社会」の姿です。狩猟社会をSociety 1.0、農耕社会を2.0、工業社会を3.0、そして情報社会をSociety 4.0として、さらに次へ来る新たな社会を指す、としています。

Society 5.0とは

 Society 5.0はどんな社会かというと、内閣府の発表の言葉を借りるならば「サイバー空間(仮想空間)と、フィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」。ひとことでいえば「超スマート社会」です。

 現在の情報社会(Society 4.0)は、インターネットなどの「サイバー空間」に対して、「実世界」で暮らす私たちが情報を入力したり、検索したり、活用したりすることで成り立っています。

 次世代のSociety 5.0では、無数のセンサーが、実世界のあらゆるモノの動きを自動的にとらえて、サイバー空間に送ります。その膨大なデータをAIに分析させ、人がより快適に暮らせるように実世界にフィードバックしていく。そして、その反応はまたセンサーにより捕らえられ――とループしていくことで、人の暮らしを段階的に、よりよいものにしていきます。

Society 5.0ではどんな世界が実現するのか

 内閣府の資料によれば、Society 5.0で、社会が変わる具体例が示されています。

 「農業生産」では、AIやロボットによる徹底したスマート化・省力化が実現されるとしています。AIは、気象情報や市場動向といったデータを分析し、どの野菜をいつどれくらい生産して出荷するのが最良かといったアドバイスをします。

 また、農作業現場では、ロボットトラクターが農場を耕し、水田は、水位・水温・水質などを計測する環境センサーとAI、ドローンなどの連携で自動管理ができるようになるでしょう。

 「医療」や「介護」も、Society 5.0によって、劇的に改善されると考えられている分野です。各個人の健康状態に関する情報をいくつものセンサーによってリアルタイムに収集し、それをAIが即座に分析すれば、遠隔地にいる人の命をいつでも見守ることができます。医師による遠隔医療や遠隔診断のサポートもできるようになるかもしれません。

 あるいは、独居高齢者の自宅や介護の現場では、見守りロボットやAI制御の介護ロボットによって、高齢者の自律的なヘルスケアやセルフ介護、介護現場での人手不足の解消が可能になるだろうと期待されています。

 「交通」も、AIの恩恵を受ける典型かもしれません。既に自動運転や自動ブレーキシステムなど、実用化されている技術もあることからもわかるように、このようなシステムがさらにネットワーク化されることによって、Society 5.0では、「事故ゼロ」や「渋滞ゼロ」の社会の実現が期待されています。

 また、自動走行車のカーシェアリングと公共交通のサービスを組み合わせ、AIによって運行を最適化することで、高齢化による過疎化が進む地域でも人のスムーズな移動が実現されると期待されています。

Society 5.0を支える「回線」

 「交通」に関しては、実験は一部で行われています。たとえば、AIによる交通制御の試みは、NTTドコモが「AI運行バス」の実証実験を2018年から日本各地で行っています。

 2019年12月~2020年2月まで横須賀市で行われている実証実験では、横須賀共済病院、京急ストアと協力し、地域サービスとのシステム連携をテストしています。これは、電子カルテシステムとAI運行バスを連携させ、予約者へのリマインド通知を行う際に、合わせてAI運行バスの予約を可能にし、通院忘れの防止、通院時の利便性向上といった効果を見込んでいます。

 これらをどのように実装するのかを考えるとわかりますが、Society 5.0を実現するにはAIとインターネットへの回線、それにロボット技術が非常に重要になることがわかります。特に回線の高速化、大容量化、低遅延化はこの未来の命とも言える部分です。

 そのため、インターネットなどへの回線は有線も無線も、大容量にかつ高速化し、端末もこれまででは考えられないほど大量になり、計算機に必要な計算量も膨大なものになります。

 よって、Society 5.0を実現するためには、5Gやその次の6G(仮)に加えLPWAや各種の無線規格など、さらにビッグデータの活用から先進的なAI、高度なエッジAIの実用化も必要になってくるのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)