ケータイ用語の基礎知識

第886回:au PAY とは

 「au PAY」は、KDDIが2019年4月より提供予定の決済サービスです。ユーザーが、スマートフォンにQRコードやバーコードを表示し、レジで読み取ってもらう、いわゆるコード決済です。

 スマートフォンでの決済サービスと言えば、FeliCaの仕組みを使った「おサイフケータイ」などを思い浮かべがちです。しかし、現在ではQRコードをはじめとするコード決済も増えてきています。海外、特に中国のWeChatPay(微信支付)、Alipay(支付宝)などが非常に有名です。日本国内では「LINE Pay」「PayPay」「d払い」といったサービスがコード決済サービスとして提供されています。

 コード決済サービスは、事業者側にとっては手持ちのスマートフォンやタブレットで処理できることから、決済用の新たな機器を導入する必要がないケースがほとんどです。そのため店舗側に費用がかからないか、もしくは比較的少額で済むので、導入しやすいというメリットがあります。

au PAYは来春

 au PAYは、auブランドの携帯電話サービスを手がけるKDDIが提供するコード決済サービスですが、その展開には楽天が協力します。

 楽天が提供する「楽天 Pay」加盟店は約120万店舗存在しており、2019年度には、au PAYと楽天Payのユーザーや加盟店は、相互に乗り入れる形で利用できるようになるとされています。

 ちなみに、KDDIと楽天は物流サービス分野でも協力します。KDDI運営のショッピングモール「Wowma!」に対し、2019年4月より楽天が物流サービスを提供することになっています。

KDDI・楽天の「協争」関係

 「au PAY」の構想は、2018年11月1日、KDDIの決算発表の中で触れられました。もともとKDDIでは、2018年春に「コード決済サービス」を提供する方針を明らかにしていましたが、その具体的な取り組みが、11月に発表されたことになります。

 KDDIと沖縄セルラー、そして楽天は、お互いの保有するリソースを利用しあい、決済分野、物流分野、そして楽天が新たに参入する携帯電話事業に向けた通信ネットワークインフラの分野で協力することになりました。

 楽天は2018年春、LTE用として1.7GHz帯の免許付与されてました。楽天の携帯電話サービスは2019年10月より提供される予定です。しかし、ゼロからサービスエリアを作っていくわけですから、当初から全てをカバーすることは難しいでしょう。そこで、KDDIから楽天に対して、エリアを貸し出す、つまりローミングするという形になります。

 これだけでは、auの良いところを楽天がうまく使う形になります。しかし、KDDI側が決済・物流という分野で、楽天の協力を得ることになりました。これは、KDDIが、ユーザーのさまざまな面でサービスを提供しようとする「ライフデザイン戦略」を進める上で、KDDIにとってメリットがあるためでしょう。つまり、お互い、自分の得意分野のリソースを提供しつつ、その一方で新たに進出する領域では力を借りて拡大を図る、という構図になっているのです。

 KDDIと楽天の両社は、上に挙げた決済・物流・通信のいずれの分野でも競争の関係にあります。しかし、持つモノは提供しつつ、相手の持つモノを借りる「協争」という新しい概念を打ち出しています。

 au PAYもまた、そうした「協争」のもとで来春、登場するコード決済サービスとなります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)