ケータイ用語の基礎知識

第866回:キャッシュレス推進協議会 とは

電子マネーやクレジットカードで「キャッシュレス」全体の4割へ

 「キャッシュレス推進協議会」とは、経済産業省を中心とした産学官の連携組織です。電子マネーやクレジットカードなど、物理的な現金を使わない決済手段の普及を目指して、2018年7月に設立されました。

 初期の会員として小売、物流、銀行など145社が加入しています。携帯電話会社も、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手事業者3社が会員です。

 世界では、キャッシュレス決済は、日本よりもかなり多く利用されています。たとえば2015年の動向を見ると、日本のキャッシュレス決済の割合は、全体の18.4%です。一方、韓国は89.1%、中国は60.0%、イギリスは54.9%など日本よりもかなり多く利用されている国がそれなりに存在しています。

日本のキャッシュレス決済の低さが際立っている(経産省の資料より)

 経産省が2018年4月に発表した文書「キャッシュレス・ビジョン」では、「世界的にキャッシュレスの流れが加速し、各国ではデジタル革命に伴う、通貨改革から生まれた『キャッシュレス文明』が興りつつある。(中略)日本だけが取り残されてよいのか」と記され、民間だけではなく政府としても、危機感を抱くべきではないか、という考えが紹介されています。そして2025年の大阪・関西万博に向けてキャッシュレス決済の比率を40%にすることを目指しています。

 そうした動きを踏まえて設立された「キャッシュレス推進協議会」では、「QRコード支払い普及への対応(標準化の取組)」「消費者・事業者向けのキャッシュレス啓発」「関連統計の整備」などが実施されます。

 2017年度は「QRコード決済の標準化」「自動販売機のキャッシュレス普及促進」「キャッシュレス支払時におけるペーパーレス化」「キャッシュレス関連統計の整備」など、あわせて7つのプロジェクトが推進される予定です。

海外ではQRコード決済が広がる

 キャッシュレス化の中でも、特にQRコードを使ったキャッシュレス支払いが、グローバルで大きくシェアを伸ばしています。その背景として中国の「WeChat Pay」「AliPay」は有名でしょう。日本のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも、両サービスへの対応をうたうマークを目にする機会もあるのではないでしょうか。

 WeChat PayやAliPayでは、ユーザーが自分のスマートフォンで、「支払用のQRコード」を表示し、店頭で読み取ってもらうことで支払えるようになっています。

 こうした手段が支持されているのは、単にQRコードだから受け入れられたわけではありません。確かに中国でのスマートフォンの普及時期にQRコードが爆発的に受け入れられるようになったのは確かなのですが、一方で、QRコードを使ったキャッシュレス決済には、既存の手段にはなかった利便性があったのです。

 たとえば、海外(特に中国)で利用される「WeChat Pay」「AliPay」の場合、いわゆる送金や支払いがとても簡単です。店舗だけではなく、個人へ送ることもできますし、自販機、シェアサイクルなどでも利用できます。しかも「送金・受取に手数料が不要」です。

 中国での現金利用は「現金がしわがあると自販機や店で受け取ってくれない」「にも関わらず、お釣りにクシャクシャの札を渡したがる」「一角(一元の1/10。日本円で約1.6円)から札があり扱いが面倒」といった点がデメリットと言われることがあります。キャッシュレス決済では、そうしたデメリットが解消され、さらにメリットも多く、一気に普及したと言われています。

 日本で、これからQRコードを使ったキャッシュレス決済が、普及するかどうかは、同じように、これまでの手段にはないメリットを提供できるかどうかにかかっているのではないでしょうか。QRコード決済に限らず、かねてより提供されているクレジットカードのような手段も、店舗にとっては手数料の高さや店舗スタッフにとっての取り扱いの難しさなどの理由が挙げられています。

 協議会が設立されたこともあり、業界を横断して、各社が連携してどういった取り組みが進められるか、注目される分野の1つと言えるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)