ケータイ用語の基礎知識

第865回:MNO とは

 「MNO」とは、「移動体通信事業者」を意味する英語“Mobile Network Operator”の略です。携帯電話やスマートフォンなどで使われる通信網を、自社で設置・運用し、通信サービスを提供する事業者のことを指す言葉として用いられます。

 以前より、MNOと同じ意味で「通信キャリア」というワードも用いられています。これは、自身の回線、通信網を使ってデータを“運ぶ”というところから由来している、とされています。

 2018年7月現在、日本における携帯電話での主なMNOは、NTTドコモ、au、ソフトバンクになります。さらに2019年10月には楽天がMNOとしてサービスを開始する予定です。

 モバイルブロードバンド(BWA)ではUQコミュニケーションズやWireless City Planning(WCP)もMNOと言えます。

 なお、MNOから回線を借りて、自社で鉄塔などのネットワーク設備は設置せずとも、携帯電話サービスを提供する事業者を「MVNO(仮想移動体通信事業者、Mobile Virtual Network Operator)と呼びます。さらには、MVNOを支援する「MVNE」(Mobile Virtual Network Enabler)という形態もあります。

 最近では、MNOだからといってMNOだけのサービスを提供していると単純に割り切れなくなっています。たとえば、UQコミュニケーションズは、MNOとしてWiMAX事業を提供する一方、auからLTEネットワークを借り受けて、「UQ mobile」ブランドのMVNOサービスを提供しているケースもあります。

MNOへの新規参入はできるか

 日本におけるMNOは、現在、ドコモ、au、ソフトバンクの3社ですが、時代によってその数は変化してきました。たとえば少し前までは、そこにイー・モバイルもいましたが、ソフトバンクに吸収されました。携帯電話が登場した初期には、地域ごとに携帯電話会社が存在したこともありました。

 これまでMNOが減る一方で、なかなか増えないのには、いくつかの理由があります。

 MNOには、まずはいわゆる「電波」(周波数帯)がなければ、サービスが成り立たない、というのが理由の1つです。使える電波がなければ、携帯電話もまた使えません。しかし、電波が有限の資源である以上、新たな割り当てがなければ、新規事業者として参入する余地がないわけです。

 また参入したとしても、既存の大手MNOと同等レベルの通信品質(エリアの広さ、通信容量など)まで投資していくのも時間がかかりますし、費用を回収できるかどうかという判断も難しいでしょう。

 そうした中、久しぶりのMNOの新規参入として、楽天が2019年秋からサービスを提供し、“第4の携帯電話”として活動を開始する予定です。楽天はこれまで、MVNO事業者としてもサービスを提供してきました。

 2017年、総務省は、他の用途に使われていた1.7GHz帯と3.4GHz帯を整理し、主にLTE向けに割り当てることに決定しました。そこにドコモ、KDDI、ソフトバンクだけでなく楽天も名乗りを上げたわけです。ただし、総務省は、楽天へのMNO参入の条件として「当初はローミングでエリア展開を補完するとしても、いずれは独自展開が原理原則」「基地局の設置場所について構築に一層務めること」「技術要員を確保して、信頼性の担保に努めること」「資金の確保や財務の健全性に務めること」としています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)