ケータイ用語の基礎知識

第830回:Face ID とは

iPhone Xに搭載された顔認証機能

 Face IDは、アップルのiPhoneシリーズ最上位機種「iPhone X」に搭載された顔認証機能です。正当なユーザーがカメラに向かっていること、そしてユーザーが(注意知覚機能が初期設定の「ON」になっていた場合)目を開いて端末を見ていることを確認して、ロックを解除します。

第830回:Face ID とは

 これまでのiPhoneやiPadには、生体認証として、ホームボタンに接触した指の指紋を使う「Touch ID」がありました。App Storeでのアプリの購入、iTunes Storeでのコンテンツの購入の際に、正しいユーザーがダウンロードや購入の了解していることをTouch IDで証明できました。

 iPhone XではホームボタンがなくなりTouch IDもなくなったわけですが、生体認証の手段として、このFace IDが搭載されており、同じことをFace IDですることができます。

深度情報、イメージ情報から数学的モデルを作成

 Face IDは、簡単に言えば、iPhone Xのインカメラなどを使った顔認証システムです。

 ただし、iPhoneXのディスプレイ側上部にはインカメラと照明だけでなく、ドットプロジェクター、環境光センサー、近接センサー、赤外線カメラなど一連の機構が組み込まれています。アップルではこれらをまとめて「True Depth」システムと呼んでいます。

 Face IDを使うには、まず、自分の顔を登録する必要があります。このときは、顔を体操のように、ゆっくりを円を描くように頭を動かしてさまざまな角度から顔を撮影させる必要があります。

 この初期登録が終われば、利用は非常に簡単で、25〜50cmほど離したiPhone Xのカメラを、目を開けて見るだけです。角度は正面でも斜めでも、正しいユーザーが見たところをTrue Depthカメラが捕らえられれば、ほぼ一瞬でそれが正当なユーザーの顔であると認識します。

第830回:Face ID とは
第830回:Face ID とは

 True Depthのドットプロジェクターは、不可視波長の光線で、3万以上のドットを顔の上に投射して、顔の深度マップを作成します。

 同時に顔の赤外線イメージも取り込みます。赤外線で撮影したイメージのマッピングと先ほどの深度マップを結びつけて数学的モデルに変換します。

 ごくごく判りやすくいうと、顔の中に特徴的な部分、たとえば、目の部分のくぼみと眉骨・頬骨の高さや大きさの比などを式化したものと、iPhone Xに事前に登録されているものと、どの程度近いかを判定し、ある一定以上近似していれば、登録されているユーザーの顔であると判定するわけです。

 ちなみに、この深度マップ・イメージマップからの数学的モデル変換はiPhone X内の「A11 Bionic」チップ内で行われ、インターネットやクラウド上へは送信されません。

 この仕組みであれば、たとえば、ユーザーの顔が正対していなくても、また、メガネやサングラスをかけていたりいなかったりしていても、本人であると認識できます。また、利用者の顔写真でお面を作って被っても、Face IDは反応しないというわけです。

 なお、アップルの説明によれば、メイクを変えたり、スカーフを巻いたり、帽子を被っているなど程度の違いは、本人であることを問題なく認識できるとしています。

 また、深度マップの作成、イメージの撮影いずれも赤外線プロジェクターを利用しており、屋内外を問わず、たとえ真っ暗な中でも利用が可能であるとしています。

 逆にFace IDが利用できない場合もあります。たとえば、顔いっぱいに生えていた髭を剃ったなど、外見が大幅に変わった場合がそれに該当します。これは、顔表面、特に下半分の正当なユーザーと認識できる閾値を超えて、深度マッピング、表面マッピングいずれも特徴も変わってしまうためでしょう。

 また、13歳未満の子供については顔の特徴も成長途上にあるため、Face IDが認識できる確率が変わってしまう場合があるとしています。

 しかしながら、アップルの説明によれば、無作為に選ばれた他人がiPhone Xを見て、Face IDで本体のロックを解除できてしまう確率は、およそ100万分の1にすぎず、Touch IDの5万分の1よりはるかに安全である、とされています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)