ケータイ用語の基礎知識

第831回:OTAとは

 スマートフォンや携帯電話で「OTA」といえば、携帯電話回線などの無線通信を経由してデータを送受信をすることを意味するワードです。英語で「空の上から」を意味する“over the air”を略したものです。

 たとえば、スマートフォンのOSやアプリケーションの更新、住所録などのデータのバックアップ、音楽データや映像データの取り込みなども最近はOTAですることが多くなりました。最近では携帯電話の契約や携帯電話のSIMを有効化するなど、ショップなどでしかできなかった操作ですら、OTAで行われることがあります。

 今では当たり前のように感じるかもしれませんが、一昔前は、たとえスマートフォンでも、データのバックアップや契約関連の操作は、有線でパソコンや専用機器に繋いで操作することが多かったのです。

無線と有線には大きな差があった

 iモードなどのフィーチャーフォンが主流だった時代から、携帯電話は非常に小さなコンピューターの塊です。アプリケーションを動かすためだけでなく、電波を受けてそれを音声データに復元する、といった部分もハードとソフトが非常に複雑に組み合わされて実現しています。

 そんな携帯電話のソフトウェアに不具合が見つかったり、あるいは新しい機能を追加する必要が出たりすることがあります。

 そんなときは、パソコンや専用機器に繋いで携帯電話の中身を書き換える必要がありました。ユーザーは一時的にキャリアショップへ持ち込む、あるいは預けるといったこともありました。

 これは、かつて、携帯電話用のデータ通信速度が遅かったり、書き換え用データが欠けたりしないよう信頼性・安全性の面から、店頭での対応となっていたところがあります。携帯電話にケーブルを繋いで作業することが一番手っ取り早く、信頼性も高かったのです。

 しかし、モバイル通信の技術が進化したことで、現在、携帯電話の通信速度は十分速くなり、コストも下がりました。Wi-Fiも普及しました。そこで、OSやアプリの更新、ダウンロードは携帯電話の回線やWi-Fiが使われるようになったのです。

 AndroidやiOSは、現在、OTAで更新できるようになっているのが一般的です。システムのアップデートであろうと、アプリの更新であろうと、ごく一部のサービスを除いてはOTAで使用したデータ量は、携帯電話で利用した一般のデータと同じようにカウントされます。ただファイルサイズが大きい場合、Wi-Fiを経由することで通信料をかけずに更新することもできます。

 最近ではeSIMと呼ばれる、組み込み型のSIMも登場しています。ドライブレコーダーといった車載機器など、さまざまな機器に内蔵されることが想定されており、出荷の段階からSIMや通信モジュールが内蔵されています。現場で利用する際には、遠隔操作で回線をONにする(契約する、アクティベートする)わけですが、こうした場合も“OTA”と言えるわけです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)