石川温の「スマホ業界 Watch」

エンタメ事業から顧客獲得へ、NTTドコモとKDDIがコンテンツ消費に注力する訳とは

 ここ最近、NTTドコモがエンタメ事業に注力している。

 2025年1月27日~2月2日、東京ドームシティで開催される、LAPONEエンタテインメント主催の大型音楽イベント「LAPOSTA 2025 Supported by docomo」にはその名の通り、トップパートーナーとして名を連ねている。

 そもそも、NTTドコモでは映像配信サービス「Lemino」でJO1のオリジナル番組を配信してきたが、イベントではdカードGOLD会員向けの先行抽選販売やドコモショップを活用した施策の展開などを行っていくという。

 NTTドコモではスポーツに関しても「Lemino」でボクシングの井上尚弥選手の試合を中継する一方、国立競技場の共同運営に参画。映像配信のみならず、スタジアムの運営自身にも乗り出すなど積極的だ。

 NTTドコモがエンタメやスポーツ事業に積極的なのは、顧客接点を増やすという点が大きい。単に映像配信サービスを契約してもらうだけでなく、チケットを販売する際にはキャリア決済が利用されるし、電子チケットを持ち、スタジアムに行けば、飲食などでd払いが使われるようになる。サッカーやライブなどが開催される数万人が集まるようなスタジアム周辺にある飲食店でも、d払いが使われる機会が増える。

 単に決済手段としてd払いが使われるだけでなく、店舗とユーザーを結ぶことで、店舗側も顧客接点が増えるようになる。

 アーティストやチームなどを起点にチケットや決済手段を使ってもらいつつ、NTTドコモの回線も契約してもらえれば御の字というわけだ。

 NTTドコモのスマートライフカンパニー、櫻井稚子エンターテイメントプラットフォーム部長は「アーティスト起点でどんなに集客しても、それだけで離れてしまえば、再びコストを負担する必要が出てくる。NTTドコモを気に入って長く使ってられるようしていきたい」と語る。

櫻井氏

 NTTドコモではデータマーケティングに注力し、dアカウントを軸に、どんなユーザーがどのようなエンタメを好み、どういった行動を起こすのかをデータ化することで、新たな提案をユーザーに行っていくようにするという。

KDDIが注力する「Pontaパス」

 NTTドコモがエンタメに注力する中、「うちも黙っていない」とばかりに新たなエンタメネタを仕込みつつあるのがKDDIだ。

 同社は三菱商事と共にコンビニ大手「ローソン」の共同経営体制に移行する中、10月2日には「auスマートパス」を「Pontaパス」へのリニューアルを行った。

左からポンタ、ロイヤリティ マーケティング 高木朋行専務執行役COO、KDDI パーソナル事業本部 サービス商品本部 繁田光平副本部長、ローソン 勝田暁常務執行役員、三菱商事 S.L.C.グループ リテイル本部 アライアンス推進部 佐藤隆史部長

 Pontaパスでは「KPOPライブをアップデート」として、K-POP授賞式「2024 MAAM AWARDS」を日本独占でライブ配信するという。

 KDDIのパーソナル事業本部 サービス・商品本部、繁田光平副本部長は「(ローソンの関連会社には)ローソンエンタテインメントがいて、ローソンチケットを手がけている。高橋社長を始め、何よりもエンタメに注力してきている。Pontaパスでは単にお得を提供するだけでなく、いままでエンタメコンテンツに触れてこなかった人がデビューするきっかけを提供し、将来的に生活の一部になるまでにしていけるようチャレンジしてきたい。

 前身のauスマートパスは、スマートフォン向けのコンテンツサービスの起点となる位置づけを目指した経緯もあるが、そのコンセプトはいまも変わっていない」という。

 ちなみに、過去のジブリ映画を見ていると、エンドロールに社長である高橋誠氏の名前が出てきたりと、KDDIはスタジオジブリと仲良く、エンタメにはこれまでも注力してきた経緯がある。

 重田副本部長は「高橋は(音楽配信サービス)LISMOを立ち上げた男でもある。リテラシーの高い人だけでなく、コンテンツを見るためにどうしたらいいのだろうという後押しをすることが大事。ローソンという顧客接点、Pontaパスという会員サービスでいろんな人がコンテンツデビューするための裾野として広げていきたい」と語る。

 ユーザーがコンテンツに触れることで、結果として、新しいコンテンツサービスを契約し、さらにデータ通信を使ってもらえるようになる。

 NTTドコモとKDDIはスタジアムやコンビニというリアルの顧客接点から、ユーザーのコンテンツ消費、さらには様々なサービスの利用促進につなげていく狙いのようだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。