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中古スマホの最新動向
中古スマホの最新動向
MVNOの格安SIMで中古スマホを活用
(2014/6/11 10:00)
大手キャリア(MNO)からネットワークを借り受けてサービスを提供するMVNOが最近、盛り上がっている。月間1GB使える月額1000円程度のデータ専用プランなど、大手キャリアに比べると格段に安いプランでMVNO各社が競争している。
しかし、そうは言っても、MVNOはまだそれほど広くは認知されておらず、身の回りでも使っている人が少ないため、利用するにはどうすればいいのか、どんなメリットやデメリットがあるのか、わからない人も多いことだろう。今回はそういった疑問にお答えするために、ドスパラで中古スマホを調達するところから、MVNO(楽天ブロードバンドLTE)の格安SIMを設定し、使い始めるまでの体験レビューをお届けする。
MVNOでは端末はどうするの?
MVNOでは端末を自分自身で準備する必要がある。MVNOは端末を販売していないことが多く、基本は「SIMフリーもしくは同ネットワークで使える端末を用意してください」というスタンスがほとんどだ。ドコモやau、ソフトバンクといった大手キャリアと異なり、MVNOは専用のソフト・ハードが必要なサービスを提供していないので、MVNOが端末を扱う必要がない。
一部のMVNOでは端末を販売しているが、それらの端末を使っても、ほかの端末を使っても、機能面に差はない。MVNOの販売している端末は種類も少なく、スペックが低めなので、ほかで端末を調達した方が選択肢も多く、ハイスペックな端末も使えるというメリットがある。
端末の調達方法としては、アップルのiPhoneやGoogleのNexus、ファーウェイのAscendなどのSIMフリー端末を購入するか、中古スマホを購入するのが手っ取り早い。とくにドコモ系のMVNOはドコモのスマホがそのまま使えるので、中古なら比較的ハイスペックなスマホも安く入手できるのが魅力だ。
中古スマホを買う
今回は秋葉原のドスパラ パーツ館で中古スマホを購入した。ドスパラの中古スマホについては、インタビュー記事も掲載しているので、興味のある方はそちらもご参照いただきたい。
ドスパラでは中古スマホの買い取りと販売の両方を行なっている。ドスパラというと、古くからパソコンパーツや中古パソコンなどを取り扱う老舗ともいえるショップチェーンだ(旧名:DOS/Vパラダイス)。秋葉原ではパーツ館とモバイル館の2店舗で中古スマホを取り扱っている。
中古パソコンなどに比べると商品自体が小さいため、店内の中古スマホの展示スペースも小さい。しかし在庫数が少ないわけではない。iPhoneは何台あるかわからないくらいの在庫があるし、Androidも複数台在庫のある機種も多かった。
中古スマホの在庫は箱の状態でケース内展示されており、店員にお願いすると、本体を見せてもらえる。中古という性質上、ホットモックを触り比べて機種を選ぶ、というものではないので、あらかじめスペックや機能について情報を収集し、機種の目星を付けておく方が良い。また、目当ての機種が店頭にない可能性もあるので、複数の候補を調べておくか、あらかじめ在庫確認をしておくのも良いだろう。
ここ2年ほどはAndroidスマホもスペック進化の速度が落ち着いているので、1年落ちくらいのモデルでも実用上困ることはほとんどない。ただし、最新OSへのアップデート対応は機種によってまちまちなので、このあたりが気になる人は、まず購入時点で提供されているアップデート情報を確認しておこう。
一方のiPhoneは、たとえば今秋公開予定のiOS 8は2011年発売のiPhone 4sでも利用可能と発表されているなど、だいたい発売から4年間にわたり3回のメジャーアップデートを含むアップデートが提供されている。このペースで考えると、いま一昨年モデルのiPhone 5を買えば、来年のiOS 9まではアップデート対応が期待できる。しかし、iPhoneは中古相場が高く、安い中古Androidを1年ごとに買った方が安上がりかもしれない。
また、ドコモのMVNOの場合、SIMフリー版かドコモ版のiPhoneしか使えないので、中古相場の高いiPhone 5s/5cしか選択肢がない。そしてiPhone 5s/5cだとMVNOではテザリングできないなどの制限が生じる可能性もあるので注意が必要だ。
今回は「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」をチョイスした。2013年5月発売の昨夏モデルだが、クアッドコア・フルHDディスプレイなど、最新モデルにも負けないスペックを持っている。IGZO液晶搭載なので、バッテリーの持ちも良好だ。
実は購入時、SH-06Eの在庫は2台あった。価格は2万7900円と2万6900円(いずれも税別)で、カラーはいずれもレッド、箱/付属品完備、微妙な傷ありとのことだった。傷ありと書かれてはいたものの、2台とも箱から出して見せてもらったが、言われてみると傷があるかな、という程度の傷だった。
おそらく前のオーナーはジャケットやケースで保護しながら使っていたか、もしくは新古品状態で持ち込んだと思われる。このくらいならば、どちらもほぼ新品と同じ感覚で使えそうだ。違いもほぼわからなかったので、今回は安い方をチョイスした。
価格や在庫の具合はそのときどきによって異なるし、もちろん店舗によっても異なる。今回はとくに下調べせずにお店に行ったが、なかなか良い品が買えたと思う。
MVNOの設定をしよう
さて、端末が用意できたら、装着するSIMカードの調達だ。MVNOのSIMカードは、こうした中古スマホの販売店や家電量販店で売っていることもあるが、たいていはネット通販で購入できる。
MVNOのSIMカードを入手するときは、そのサイズに注意しよう。現在、Android端末の多くはmicroSIMカードを採用しているが、nanoSIMカードや普通のSIMカードを採用している機種もある。また、iPhoneはiPhone 4sまでがmicroSIMカード、iPhone 5以降がnanoSIMカードとなっている。
ほとんどのMVNOでは通常サイズ、microサイズ、nanoサイズの3種類のSIMカードを用意しているので、使いたい端末に合わせたものを選ぼう。逆に言うと、使う端末が決まっていないとSIMカードを購入できないので、なるべく早い段階で端末を選ぶことをオススメしたい。
ちなみにドコモの場合、microSIMカードを「ドコモminiUIMカード」と呼称している。フィーチャーフォン時代から使われてきたサイズのSIMカードは、正式な規格の名称は「Mini-SIMカード」となる。なんとも紛らわしいが注意しよう。
今回は「楽天ブロードバンド LTE」のデータ専用SIMを利用することにした。楽天ブロードバンドは楽天のグループ会社、フュージョン・コミュニケーションズが提供するMVNOサービスで、ドコモのネットワーク回線を利用している。
選んだプランは「エントリープラスSMSプラン」。月額1040円(税別)で1GBまでの高速データ通信ができる。音声通話はできないが、SMSの送受信が可能なので、LINEなどのSMS認証が必要なサービスも利用できる。
また、音声通話できるスマートフォンで利用する場合、SMSが使えないデータ専用プランだとバッテリー消費が増える「セルスタンバイ問題」として知られる問題がある。iPhoneだとほぼ確実にセルスタンバイ問題の影響を受けるので、SMS対応プランがオススメだ。Androidでも機種によってはセルスタンバイ問題の影響を受けるので、確実な情報がない限り、SMS対応プランを利用するのがオススメだ。
MVNOの場合、SIMカードをスマホに挿すだけではサービスは利用できない。契約が対応していれば、音声通話とSMSだけは使えるが、たいていの場合はインターネットに接続するためのアクセスポイント、いわゆる「APN」の設定が必要となる。
APNの設定内容はMVNOや契約ごとに異なるが、今回の組み合わせでは、APN名(APNのアドレス)とユーザーID、パスワード、認証方法を手動設定する必要があった。APN名は公式Webページにも記載されているが、ユーザー名とパスワードは契約ごとに固有なので、契約時の書類などで確認する必要がある。
ちなみに今回の契約では、楽天ブロードバンドのWebページのユーザーIDとAPNのユーザーIDは別々だった。MVNOの場合、こういった細かいところが事業者によって異なるので注意が必要だ。
APNの設定が正しくなされると、LTE/3Gでデータ通信が可能になる。SH-06Eでは、アンテナアイコンがデータ通信できないとグレー、できるとブルーで表示される。ブルーで表示され、データ通信が確認できれば、MVNOの設定は完了だ。あとはGoogleアカウントの設定やアプリのインストールなど、普通のスマホの初期設定作業と変わらない。
MVNOの使い勝手ってどんな感じ?
MVNOのSIMでの通信速度は、基本的に回線の提供元であるMNOと違いはない。今回使っている楽天ブロードバンドであれば、ドコモのXi(LTE)と同等となる。最高速度はエリアと利用端末に依存し、実速度はその場所の混雑具合などによる。
「エントリープラスSMSプラン」では月間1GBまでは高速通信が利用できるが、それ以降は300kbpsの速度制限がかかる。1カ月で1GBは、Wi-Fi下で過ごすことの多いユーザーには十分な量と言える。しかし、日常的にWi-Fi圏外で動画を見たり、アプリをたくさんダウンロードするようなヘビーユーザーだと、1カ月以内に消費してしまうかもしれない。ただ、速度制限がかかったら、24時間/400円(税別)で解除できる。
また、「エントリープラスSMSプラン」は、名前の通りSMSの送受信が可能だ。SMSはとくに設定せずに利用できる。普段SMSを使っていなくても、LINEや各種二段階認証など、SMSが必要なサービス・機能も使えるのはありがたい。
ドコモメールなどドコモの回線契約(spモード経由での接続)を必要とするサービスは利用できない。しかし、意外と回線契約と関係なしに利用できるサービスも多い。
たとえば、dマーケットは、専用アプリ起動時に「契約状況を確認できない」などのエラーが表示されるが、コンテンツサービスなどはdocomo IDを入力することで利用できる。このあたりは他キャリアから利用するときと同じだ。今回は中古のドコモスマホを使っているため、プリインストールされている「しゃべってコンシェル」も一部は利用可能だった(iコンシェルに関連する機能は利用不可)。
SH-06Eはドコモのスマホなので、ドコモのアプリがプリインストールされているが、それらのうちいくつかは利用できない。機種によってはアプリを消したり、無効にしたりできるので、完全に使えないアプリは削除か無効にしておいても良いだろう。
「エントリープラスSMSプラン」はデータ通信+SMSのプランなので、音声通話はできない。ここは楽天ブロードバンドと同じくフュージョンが提供している「IP-Phone SMART」などの050番号のあるIP電話サービスを使うことで、ある程度の機能を補完できる。ただし、110番などの緊急通報に使えないなどの制限があるので、この点は注意が必要だ。
中古+MVNOは安さが魅力
MVNOと中古スマホの組み合わせの最大の魅力は、やはり価格だ。今回の組み合わせだと、端末代金は2万6900円、MVNOは初期費用は0円(キャンペーン期間中 通常は3000円)で月額料金は1040円がかかる。データ容量の追加や機種の買い換えがなければ、1年間で合計3万9380円、2年間で合計5万1860円となる。
月々サポートの合計額と端末代金が同じ、いわゆる「実質0円」の端末を買ったとしても、たとえばドコモの「データプラン」(SMSなしのデータ専用契約)と「データSパック」(月間2GBまで)では月額5500円となり、2年間で合計13万2000円となる(2年使わないと月々サポートによる割引がフルに受けられない)。MVNOと中古スマホを使った場合に比べると倍以上の金額だ(以上の価格はすべて税別)。
月間1GBという容量制限は、使い方次第ではちょっと物足りないというユーザーに対しては、たとえば楽天ブロードバンドの場合、月間3GBまでの「ライトプラスSMSプラン」を月額1817円(税別)といった風に容量に応じたプランを提供しているので、自分の使い方に合ったプランをすればいい。大手キャリアとの価格的な差が小さくなるが、それでも安いことには変わらない。
MVNOは2台持ちの2台目にはかなりオススメなサービスと言える。大手キャリアは2台持ち向けの料金プランも用意しているが、たいていの場合はそれよりも安い。キャリアのメールアドレスが使えないなどの制限はあるものの、2台持ちの想定なら問題はない。
スマホ時代になって、キャリア独自のサービスに以前ほど魅力を感じないというユーザーも多くなってきた。大手キャリアと契約しなくても、プッシュ受信できるメールはあるし、さまざまなコンテンツ配信サービスを利用できるし、少額のコンテンツ購入も可能だ。大手キャリアにはサポートを受けやすいキャリアショップが全国にあるなどのメリットもあるが、そういった至れり尽くせりなサービスも不要と考えるならば、メイン回線を含め、MVNOの利用を検討しても良さそうだ。