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日本通信、HLR/HSS開放でグローバル無線専用線サービスを年内開始へ

“黒子に徹する”戦略転換を発表

 日本通信は22日、都内で記者向けに事業戦略発表会を開催した。総務省のタスクフォースやそれに伴うMVNOの規制緩和が明確になったことを受け、これまで進めてきた事業戦略の変更が明示されたほか、事業形態を「MSEnabler」(Mobile Solution Enabler)と名付け、クライアント・パートナー企業の支援に黒子として徹していくという新戦略が明らかにされた。

日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏

 登壇した日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏が語った内容は、「日本通信の役割を再定義」し、事業戦略を転換するというもの。MVNOの“モデル事業者”としての役割を終え、今後は、MVNO企業やメーカー、金融機関などが、キャリア網に囚われないモバイルソリューションを実現するため、「MSEnabler」として黒子に徹していくという。

 この新戦略は、タスクフォースの結果として明らかになった、「HLR/HSS」の開放などを含む、MVNOの規制緩和策で可能になったとする。すでに発表されているように、自社で購入を決定した「HLR/HSS」などの設備や、独自にSIMを発行できる仕組みを整えることで、北米市場を含めたキャリア網に囚われないサービスを、クライアントやパートナー企業に提供していく。

 現在提供しているコンシューマ向けの格安SIM「b-mobile」については、引き続きサービスを提供していく方針で、内容も強化していくとするが、これらはMVNO事業自体が珍しかった時代に、見本として見せる「ショーケースだった」ともしており、事業戦略の転換が明確にされた。

 日本ではソフトバンク網への接続についても、HLR/HSSの開放などで協議を進めている最中。スマートフォンをターゲットにする顧客企業からは要望が多いという。「ソフトバンク向けの格安SIMも提供したい」とするが、これは「MSEnabler」としてで、「b-mobileではやらず、すべて卸す」としている。

HLR/HSS開放の協議「淡々と進めている」

 すでに計画しているサービスや、新戦略のほとんどに影響をするのが、独自SIMの発行や、複数のキャリア網を1枚のSIMで扱えるようになる、「HLR/HSS」(加入者管理機能)に関連した部分。福田氏によれば、これらの関連した設備投資は30億円規模になるという。

 一方、同社はこれまでの設備投資が10数億円規模になっているともしており、「今の10倍の投資、という感覚ではない」と語っている。

 HLR/HSSの開放という意味では、ドコモなどのMNO側にもネットワークの改修が必要になり、MVNO側の設備投資とは別にコストがかかるとされる。福田氏は、コスト負担を含めた事業者間での協議内容は明らかにできないとする一方、「(コストなどが)とんでもないボトルネックになっていれば、こうした発表はしない。(ドコモと)ずっと協議してきた内容で、淡々と進めている」と感触を語っている。

 HLR/HSSの開放のめどや、新戦略によるサービスの実現はいつになるのか? という問いには、福田氏は「年内にはもっていきたい。今日ここで、いつ始めるとは言えないが、これまでは合意から9カ月でサービスを開始したこともある。ただ、我々の準備もあるので、1年前後の期間をみている」と回答した。

 そのサービスについては、独自のSIM発行による、海外でも使える無線の専用線サービスが、最も自社の強みを発揮でき、また最も要望されているとのことで、「真っ先にやりたい。圧倒的ナンバーワンプライオリティ」としている。

 同社が新戦略としてラインナップを予定しているサービス群の中には、通話定額を実現する音声通話サービスなども含まれている。福田氏は、MVNOが今後拡大していくためには、メイン回線に求められるという通話定額が必要になるとする。またこれは、顧客となるMVNO事業者から要望の多いサービスであるとした。

 福田氏はタスクフォースやMVNOの規制緩和について「正直な言い方をすれば、私の想像していた以上に前向きな規制緩和。この機会を最大限に活用して、我々の役割を果たしていく」と意気込みを語っている。

HLR/HSSの開放はMVNO事業者にとって岐路

 日本通信は、MNVO規制緩和 第2弾を機にした新戦略により、MVNO事業者を支えるMVNE事業へのシフトを明確にした形。

 福田氏は、HLR/HSSの開放に代表される規制緩和が、MVNO事業者それぞれにとって岐路になるとみている。

 同氏によれば、格安を指向する現在のMVNO事業は、基本的に赤字で、ユーザー数の規模が大きくなればなるほど収益性が悪化するという。このことから、独自にHLR/HSS関連の設備投資ができるのは「数社ではないか」と予測。これら数十億円規模の投資を行えないMVNOに対し、日本通信が「MSEnabler」として独自SIMや複数キャリアの通信網といったソリューションを提供していくとした。

業績を大幅に下方修正、VAIO Phoneの在庫も重荷

 記者向けの発表会では一切触れられなかったが、日本通信は同日、業績の大幅な下方修正を発表している。

 従来の事業の柱であるMSP事業は大幅に売上予想を下方修正し、SIM事業も下方修正したことで、通期予想の売上は、25.2億円の下方修正で68.3億円から43.1億円に、営業利益は26億円の下方修正で、11億円の黒字から15億円の赤字に転落する。

 営業利益の26億円の下方修正の内訳は、評価性のものが10.9億円、MSP事業の売上予想の引き下げが13.1億円となっている。新戦略にともなう戦略転換により、有形無形の資産内容を見直しており、これには「VAIO Phoneを完売するのに必要な在庫評価減等」も含まれる。

太田 亮三