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日本通信、ドコモ・ソフトバンク網に両対応で二重化した「2SIMルータ」

無線の専用線サービスを国内で本格展開へ

 日本通信は、主回線にNTTドコモの回線を使用し、副回線としてソフトバンク回線を利用できるデュアルSIMスロットの業務向けルーター「2SIMルータ」(トゥー・シム・ルータ)を発売した。日本通信から、金融機関やシステムインテグレーター向けに販売され、最終顧客は機器のリース料や通信料込みの月額の料金体系で利用できる。

「2SIMルータ」

 今回発売される「2SIMルータ」は、SIMスロットを2つ備えた、モバイル網に接続できるルーター。ISDNや専用線などの有線で運用されているシステムの置き換えを狙った製品で、日本通信から提供される無線の専用線サービスと2つのSIMカード、通信契約、通信状態の確認用APIなどがセットになっている。

 「2SIMルータ」のハードウェアは米Digi製で、回線の切り替えロジックを日本通信が開発した。主回線はNTTドコモの3G網を使い、副回線としてソフトバンク網の3G網を利用する。なお、ソフトバンク網はボーダフォンのSIMカードで利用する形。どちらの回線も日本通信がMVNOとして調達しているものが提供される。現在ソフトバンクとの間で進めているレイヤー2接続の契約が完了すれば、副回線はボーダフォンではなくソフトバンクのSIMカードに置き換わる見込み。

 「2SIMルータ」では、主回線のドコモ網に接続できない、通信できないなどの問題が発生した場合、予め設定した内容に従い、副回線のソフトバンク網に自動的に切り替わる。通信モジュールは1つで、切り替えには1分程度かかる。副回線から主回線への切り替え(復帰)は、主回線の状況を把握する必要があるため、基本的には自動で復帰せず、リモートによる手動操作になる。日本通信からは、こうした通信状況を確認するためのAPIも提供される予定。

回線切替デモの様子

一例は月額3900円、ISDN 2回線の半額以下を想定

 日本通信では、「2SIMルータ」を使用した場合の、ISDN回線の置き換えの場合の料金プランの例として、5年リースプランで月額3900円(税別)というプランを挙げている。これには、2SIMルータのリース料と、SIMカード2回線の利用料が含まれている。通信速度は最大150kbps。初期費用は3万円。

国内で490万回線の市場、今後はハードウェア共同開発の製品も投入

 同社は既存の市場として、ISDN回線が350万回線、専用線が140万回線としており、これらの置き換えを狙っていく。加えて、今後はセキュリティカメラ、POSやクレジットカードの決済端末、デジタルサイネージ、ATMなどに向けても展開していく予定。日本でも、米国での展開と同様にセキュリティ基準のPCI DSS認定を取得し、二重化したルーターと合わせて、セキュリティや信頼性が求められる金融関連の分野を中心に展開していく。

 同社はまた、通信モジュールを2つ搭載して2回線を常時接続し、主回線から副回線に瞬時に切り替えられる「2Moduleルータ」を開発中で、2016年春に提供する予定。さらに米子会社のアレクセオの技術を適用し、パケットの不安定な挙動を検知して、通信が遮断される前に切り替えを行う進化版「2Moduleルータ Advanced」を提供する予定。2Moduleルータはメーカーとハードウェアから共同開発しており、通信モジュールの通信規格はさまざまなバリエーションが考えられるとしている。

開発中の「2Moduleルータ」

金融系サービスの置き換えがターゲット

 12月1日に開催された発表会で、登壇した日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏は、MVNOのミッションと同義であるとする同社の創業の精神「携帯事業者ができない/やりたくない通信サービスを提供する」を紹介した上で、このミッションには低廉化と多様化の2つの方向があるとし、今回発表されたサービスは「多様化」を推進するものと位置付ける。

日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏

 同社はすでに米国にて、PCI DSS認定を受けて、主にATM向けとして無線専用線サービスを手がけている。福田氏によれば、米国のATMでは、回線に対する信頼性として、稼働率99%が求められるとのことだが、これは(売上に直結する)POSの99.99%といった要求からすると、比較的低く、既存の製品・サービスで対応している。一方、日本の金融機関では、ファイブナインと呼ばれる稼働率99.999%が要求されることがほとんどとし、前述の「2Moduleルータ Advanced」が稼働率99.999%を目指した製品になるとした。

 福田氏は、2つのキャリアに対応したルーターはMVNOならではとし、「金融系は有線でつながっている。これを無線に置き換えるサービスを日本でも展開したい。無線で置き換えるのは、設置コストの面で圧倒的に有利。置き換えが始まると、一気に進む可能性もある」と米国での実績などを元に自信を語っている。

太田 亮三