モトローラがニューヨークで新製品発表会を開催


 米モトローラは6日(現地時間5日)、同社の新製品発表イベント「Motorola On Display」を米国・ニューヨークのゴッサムホールで開催した。アメリカ、オーストラリア、日本のメディア関係者やブロガーら約200人を招待し、新たにCEOに就任したDennis Woodside氏らのプレゼンテーションを交え、Googleの傘下となってから初となる3種類の新製品をお披露目した。また、本誌では担当者へのインタビュー取材も行った。


 

ベストなAndroid端末は、モトローラが提供することになる

 イベントの冒頭では、新製品発表に先立ち、Google会長のEric Schmidt氏が挨拶。2012年5月に傘下となったモトローラに対して「人材、頭脳、流通、基礎技術が備わった企業である」という賛辞を送りつつ、モトローラの新CEO、Dennis Woodside氏に場を引き継いだ。

 Dennis Woodside氏は初めに、「新しいモトローラが今日からスタートする」と力強く宣言。同社がこれまで歴史に残る数々の発明を行ってきたことを披露し、1969年、ニール・アームストロング船長が人類初の月面着陸を行ったときの映像のやりとりに使われたのがモトローラの通信機器だったことや、1973年に世界初の携帯電話を開発したことなどを紹介。「我々はいつの時代もエンジニアリングにおけるリーダーであり、現在もイノベーションを重ねている」と話し、今回のGoogleとの協力関係によって、よりすばらしい体験を提供できると語った。


Google 会長 Eric Schmidt氏モトローラ CEO Dennis Woodside氏

 

 さらに、新たに発表するスマートフォンのキーポイントとして、“スピード”、“パワーマネジメント”、“Androidへのフォーカス”の3つを挙げた。LTE対応による通信の高速化、バッテリー持続時間の向上、Webブラウザーなどのプリインストールアプリの高速化などを実現することにより、「ベストなAndroid端末を求めるなら、それはモトローラの端末になるだろう」と断言。デベロッパー向けにカスタマイズされた端末の提供や、迅速なAndroid 4.1への対応といった点も合わせてアピールした。


 

 その後、新端末3機種の詳細について、同社上級副社長のRick Osterloh氏が解説した。最後に米国の通信事業者、ベライゾンの最高マーケティング責任者Tami Erwin氏が、モトローラとのパートナーシップや米国内でのネットワーク利用状況などについて総括し、ステージイベントを締めくくった。


モトローラ 上級副社長 Rick Osterloh氏 
 ベライゾン 最高マーケティング責任者 Tami Erwin氏

 

Rick Osterloh氏とデザイン責任者Jim Wicks氏へのインタビュー

 製品発表イベント後、Rick Osterloh氏とデザイン責任者のJim Wicks氏にお話を伺う機会を得た。Rick Osterloh氏はモトローラの上級副社長であるが、新端末のプロダクトマネジメントも担当。同社のAndroid端末事業立ち上げ時に在籍していたが、いったん退職した後、再び2カ月前にモトローラに復帰した。一方のJim Wicks氏は、端末のユーザーインターフェイスデザインやプロダクトデザインを担当している。


モトローラ 上級副社長 Rick Osterloh氏モトローラ デザイン責任者 Jim Wicks氏

 

――最初に、改めて新機種の概要を教えてください。

Jim Wicks氏
 私は10年前にモトローラに入社しましたが、その前はソニーでデザインセンターのリーダーを任されていました。日本芸術大学で5年間学んでいたこともあります。話を戻すと、本日の発表会でDennisから話があったように、我々は“スピード”、“パワー”、“優れたAndroidのOEMであること”という3つのアウトラインにフォーカスしています。新しいDROID RAZRシリーズ3機種は、これらの要素を体現していると言えるでしょう。

 「DROID RAZR HD」は高速で、大画面でかつボディが最もコンパクトな、LTEスマートフォンです。「DROID RAZR MAXX HD」は、他にはない3300mAhという大容量のバッテリーを搭載し、21時間を超える連続通話時間を実現しています。また、「DROID RAZR M」は、我々は“フルスクリーンフォン”と呼んでいますが、本体の端まで広がる、(コンパクトな本体のサイズに対して)巨大な4.3インチのディスプレイとし、美しいデザインに仕上げました。

 いずれも3次元の複合パーツを用いており、2層構造のケブラー繊維素材を使うことで薄く、強くしたことから、例えば「DROID RAZR HD」では小さなボディサイズながら4.7インチのディスプレイを搭載できました。このケブラー繊維素材は、無線信号の障害になりにくいという利点もあります。モトローラでは、パフォーマンスを犠牲にしないようにデザインしているのです。

 さらに、本体前面の面積に対するディスプレイの占有率は、他社の多くが60%程度であるのに対して、「DROID RAZR M」は72%です。誰もが画面のフレームを見たいのではなく、映像を見たいと思っていることを我々は知っています。「DROID RAZR M」の本体の幅は約60mmで、手にぴったり収まるサイズ。もちろん女性や日本人の手にもフィットします。日本にいたことがあるので、日本人の手のサイズも理解していますから(笑)。消費者が望んでいる大画面と携帯性を両立したのが、この「DROID RAZR M」というわけです。(※「DROID RAZR M」は日本市場にも投入される予定)

――今回の新しい端末は、どちらかというと“革新的”と言うほどではないように思えるのですが、どのようなコンセプトで開発したのでしょうか。

Rick Osterloh氏
 最初のDROID RAZRシリーズは実に革新的な製品で、面白さ、美しいデザイン、LTE搭載、高いパフォーマンスなど、新しい要素がたくさんありました。ただ、実際に多くの消費者が望んでいたのは、完全に作り直した端末ではないようでした。そのため、既存の端末がすでに備えている優位点をさらに強化する形で、「DROID RAZR HD」と「DROID RAZR MAXX HD」の2端末を用意しました。また、手に収まりやすいコンパクトサイズで、かつ大画面であってほしいという需要があったため、「DROID RAZR M」も開発したわけです。

Jim Wicks氏
 ちなみに、我々がデザインを行うときは、“目的主導(Purpose driven)”と呼ばれる合理的なデザイン開発の手法があって、優れた部分はそのまま残し、強化すべきところは強化する、という考え方で開発している、というのがあります。

Rick Osterloh氏
 もう一つの重要な点は、モトローラのブランドと伝統です。(端末を購入するというのは)一晩限りの付き合いではなく、いわば結婚に例えられます。1年、2年たっても同じように機能するか、同じようなバッテリーライフを維持できるか、というのが製品開発での重要なポイントでもあるのです。

――モトローラのデザインにおける基本コンセプトがあれば教えてください。

Jim Wicks氏
 我々は常に素材の進化を継承しています。さきほど申し上げたように、金属素材を使うのは無線信号に影響するため、シリーズを通じてケブラー繊維素材を採用していますし、薄さも追求し続けています。わかりにくいところかもしれませんが、四隅のコーナーのラウンド形状もシリーズで統一している部分です。これが競合他社と異なっているところで、広告などで目にしたときも、このシルエットを見ればDROID RAZRシリーズだということがわかるはずです。

――「DROID RAZR HD」は背面に微妙に傾斜がついていますが、これはどういった理由によるものですか?

Jim Wicks氏
 端末の上部にはカメラモジュール、ライト、LTEのアンテナ、スピーカーが位置しているため、やや厚くなっています。下部から中央付近にかけてはバッテリーがありますが、この薄い部分から上部の厚い部分にかけて徐々に傾斜をつけることで、強度的にも有利になる構造です。「DROID RAZR MAXX HD」の背面は(バッテリーサイズが大きいため)ほぼまっすぐですが。

――「DROID RAZR HD」と「DROID RAZR MAXX HD」には明確な差がないように思うのですが、どういったターゲットの違いがあるのでしょうか。

Rick Osterloh氏
 消費者が望んでいるのは、より大きなストレージとバッテリーでしょう。そういう意味では、「DROID RAZR MAXX HD」は“ノンストップ”で使いたいパワーユーザー向けだと考えています。一方の「DROID RAZR HD」は、低価格で、ストレージは少ないが、パフォーマンスはそれでもすばらしい。ほとんどの人はこの「DROID RAZR HD」で十分に満足できるのではないかと思います。

――ケブラー繊維素材により限りなく薄くなったとのことですが、熱がこもりやすいといった問題はないのでしょうか。

Jim Wicks氏
 可能性はありますが、「DROID RAZR」にはそういった問題はありません。ケブラーの面白いところは、熱を分散するということです。熱で変形することもなく、(ケブラーは防弾チョッキに採用されていることもあって)銃弾も通らない(笑)。

――今後もモトローラとしてこのケブラー繊維素材はずっと使い続けていくのでしょうか。

Jim Wicks氏
 ケブラー繊維素材自体はすでに2年間使っているわけですが、このケブラーは、たとえば最高峰のレーシングバイクやマウンテンバイクなどで使用されていることもあって、消費者の中では“ハイパフォーマンス”を連想させるものとなっています。我々はケブラー繊維素材の独占使用契約を結んでいることもあり、DROID RAZRシリーズでは今後も使い続けるつもりです。

――最後に日本のユーザーにメッセージをいただけますか。

Rick Osterloh氏
 いち早くLTEを実現した先駆者であること、高機能の製品を提供し、優れたバッテリーライフを実現していることなど、最高のAndroid端末を開発している企業であることを知っていてほしいと思います。

――本日はありがとうございました。

 




(日沼諭史)

2012/9/7 12:50