携帯マルチメディア放送の名称は「モバキャス」に


 ISDB-T マルチメディアフォーラムは、「携帯端末向けマルチメディア放送」と呼ばれてきたサービスの総称を、「モバキャス」と命名した。7月14日には都内で記者向け発表会が開催され、名称が披露されるとともに、関係者からサービスイメージが解説された。

 「モバキャス」は、2012年4月からサービスを開始する予定。リアルタイムの放送のほか、蓄積型の放送、通信サービスとの連携、電子書籍やゲームなど動画以外のコンテンツの提供といった、次世代のモバイル端末向け放送となっている。モバキャス対応の携帯電話やスマートフォン、専用端末などが登場することで、サービスを利用できるようになる。地上デジタル放送への完全移行に伴い実現するサービスで、207.5MHz~222MHz帯を利用する。

 インフラを整備するハード事業者(基幹放送提供事業者)はジャパン・モバイルキャスティングに決定済みで、具体的な放送サービスを提供するソフト事業者(認定基幹放送事業者)は、今後、総務省より募集が行われる。mmbiはソフト事業者として参入する方針で、14日の発表会ではサービスイメージを披露した。なお、ソフト事業者は複数が参入でき、mmbiはそのうちの一つとなる。

 挨拶を行ったISDB-T マルチメディアフォーラム幹事長の岡村智之氏は、ISDB-T マルチメディアフォーラムの体制を解説した上で、会員企業として99社が参加していることを示し、「オールジャパンの形で参加してもらっている」とアピール。リアルタイムの映像に加えて、蓄積型放送が可能になっているといった特徴を紹介したほか、ハード事業者、ソフト事業者を分離することでより多くの事業者が参入可能であるとし、ここで「モバキャス」の名称を壇上で披露した。

「モバキャス」の名称を披露するISDB-T マルチメディアフォーラム幹事長の岡村智之氏ISDB-T マルチメディアフォーラムの会員企業は99社に

 

mmbiはソフト事業者として初年度100万契約を目指す

mmbi 常務取締役の小牧次郎氏
mmbi 代表取締役社長の二木治成氏

 ソフト事業者として参入するmmbiからは常務取締役の小牧次郎氏が登壇した。小牧氏はビデオで概要を説明。「mmbiだけでなく、多くの放送事業者の参入が実現すると願っている」とソフト事業者の拡大に期待を寄せた。

 mmbi 代表取締役社長の二木治成氏は、リアルタイム放送、蓄積型放送、モバイル端末という3つの軸が連携するという、提供サービスのイメージを披露。「テレビとインターネットが融合する取り組みの、モバイル版。世界で初めてで、チャレンジブルだが頑張っていきたい」と意気込みを語った。

 ビデオで具体的な利用イメージが披露され、ここでは、ワンセグの10倍の画質であることや、複数のスポーツ中継を一画面で見られる様子、蓄積型放送で好きな時に番組を見られ、中継番組では一画面内にTwitterをのタイムラインを表示、投稿しながら番組を楽しめる様子が利用イメージとして紹介されていた。

 二木氏は、「ビジネスがうまくいくためにはエリアが重要だが、リーズナブルな料金や、端末にチューナーが搭載されるなど、これらがうまくまわることでサービスが発展する」と語り、各要素が連動することが重要とした。

 なお、サービスの詳細はmmbiがソフト事業者として認定された後に行う予定だが、認定された場合の目標加入者数は、初年度で100万契約とした。また、エンドユーザー向けの料金は、「月額数百円という範囲を基本料という形にしたい。さらに、プレミアムコンテンツとして、価値の高いものも提供したい」とし、コンテンツの内容に応じて価格を設定していく方針を示している。


mmbiのサービスコンセプトは「モバイル・スマートTV」リアルタイムの放送と通信サービスを連携
蓄積型サービスは、放送途中の番組に対してもできるとした番組と連動したクーポン、アプリ付きの番組なども
災害時の役割エリア、料金、端末も普及の鍵とする
動画による利用イメージの紹介、写真は3つの中継番組と通信サービスの連携Wi-Fiでほかの端末に番組を転送
雑誌型コンテンツでは、動画をみたり、購入したりできる

 

サービス開始と同時に対応スマートフォンが登場予定

ジャパン・モバイルキャスティング 代表取締役社長の永松則行氏

 ハード事業者としてインフラを構築するジャパン・モバイルキャスティング 代表取締役社長の永松則行氏は、同社が入る東京・六本木のミッドタウンに放送系システムを設置することや、新設の東京スカイツリーでカバーする関東以外のエリアは既存の設備を活用してエリアを拡大していく方針が示された。なお、東京スカイツリーでは16面にアンテナを設置し、これを4段で構成。合計64面にアンテナが設置される。

 また、「モバキャス」では、日本全国に設置される送信所(アンテナ)とセンター局との間は中継衛星で結ばれる。このため、地上の災害の影響を受けにくく、臨時の送信所(アンテナ)などを設置することで、緊急時の情報伝達手段としての役割も期待できるとした。

 サービスエリアは、サービス開始1年目の2012年度で東名阪を中心に展開。年度末の世帯カバー率は約73%を目指す。3年目は全国の主要都市に展開し、世帯カバー率は約91%、5年目の2017年度には125局の送信局を設置し、日本全国の都市部をカバーする予定。

 端末は、ワンセグなどと同様に携帯電話・スマートフォンなどが対応することを見込んでおり、サービス開始5年目で5000万台の普及を目指す。永松氏は、「(2012年)4月のサービス開始に間に合うよう、スマートフォンに搭載される見込み」と、当初は対応スマートフォンが登場する見込みであることを明らかにした。

 ソフト事業者向けの設備利用料については、エリアが全国に拡大した5年目時点の目安として、ワンセグメントあたり4.5億円、そのほかの料金を含めて合計5億円程度になるとの見方を示した。エリア拡大中の初年度は8割引など、当初の料金は割引される見込み。


モバキャスにおけるハード・ソフト事業者の概要センター局と送信局(アンテナ)は衛星回線で接続される
エリア展開目標端末はワンセグ端末と同様の普及を目論む
今後、総務省からソフト事業者の認定が行われる
東京スカイツリーに設置されるアンテナ

 

 発表会ではこのほか、モバキャス応援サポーターとして、アイドルグループ「アイドリング!!!」から、3号 遠藤舞、19号 橘ゆりか、20号 大川藍、21号 橋本楓、23号 伊藤祐奈の5名がステージに登場。「モバキャス」の名称披露に華を添えた。

モバキャス応援サポーターとして、アイドリング!!!から5名が登場
3号 遠藤舞19号 橘ゆりか20号 大川藍
21号 橋本楓23号 伊藤祐奈

 




(太田 亮三)

2011/7/14 17:43