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クアルコム、5Gモデム内蔵Snapdragonのロードマップを披露

楽天との取り組みやCPEリファレンスデザインも発表

 クアルコムは、「MWC19 Barcelona」の会期初日にあたる2月25日(現地時間)にプレスカンファレンスを開催。5Gモデムを統合した新Snapdragonのロードマップを披露するとともに、イベントに先立って発表された5Gモデムの「Snapdragon X55」を改めて紹介した。

また、PC向けプラットフォームの「Snapdragon 8cx 5G」や、楽天に採用されたスモールセル基地局向けのプラットフォームもこのプレスカンファレンスで発表している。

プレスカンファレンスに登壇したクリスティアーノ・アモンCEO

 プレスカンファレンスには、クアルコムのCEO、クリスティアーノ・アモン社長が登壇。会の冒頭では、4G(LTE)の立ち上がった約10年前を振り返りながら、当時と今の状況を比較した。アモン氏によると、4G開始時は、初年度の導入キャリアが4社、メーカーが3社という状況だったのに対し、5Gの導入予定キャリアは20社を超え、20以上のメーカーが端末を開発しているとしながら、「5Gへの移行は3Gから4Gへのときより、速く進むと確信している」と語った。

採用キャリア、メーカーともに、4Gのときより数が多く、移行がスムーズに進んでいることが強調された

 実際、MWC会期直前に米サンフランシスコで開催された「UNPACKED」では、サムスン電子が「Galaxy S10 5G」を発表。MWCでも、OPPO、Xiaomi、LGエレクトロニクス、ソニー、ZTEなどが、5G対応の商用モデルや試作機を出展している。クアルコムのプレスカンファレンスは25日午前中だったが、アモン氏によると、「会の終わりまでにはもっとたくさんの端末が発表される」という。

 ファーウェイをのぞくと、そのほとんどがクアルコムの「Snapdragon 855」と5Gモデム「Snapdragon X50」を組み合わせて利用しており、CESで発表されたとおり、30以上の端末での採用を勝ち取っている状況だ。

すでに30以上の5G端末で、Snapdragon 855を採用されることが決まっている

 5Gに対応することで、端末のバッテリー消費量が上がる懸念もあるが、これを払しょくする「5G PowerSave」を紹介。3GPPで標準化された省電力技術のC-DRXをベースにクアルコムが独自に改良を加えたもので、先に挙げたSnapdragon X50やX55が対応している。

「5G PowerSave」を搭載していることをアピール

 こうした背景や市場動向を解説したあと、アモン氏が発表したのが5Gモデム統合型のSnapdragonだ。冒頭で挙げたとおり、現状では端末を5Gに対応させるためには、Snapdragon 855を採用したうえで、モデムのSnapdragon X50を別途搭載する必要がある。これをワンチップ化するというのが発表の趣旨。型番やスペックなどの詳細は明かされなかったが、アモン氏によると、サンプル出荷は2019年第2四半期に開始、採用した製品は2020年に登場する見込みだ。

5Gモデムが内蔵されたSnapdragonが、2019年第2四半期から出荷される。プレミアム端末向けだという

 これを受け、サムスン電子の技術戦略部門SVPのジュン・ヒー・リー氏がゲストとして登壇。「近い将来、このプラットフォーム上で動くデバイスを紹介できることを楽しみにしている」と語った。2020年に登場するGalaxyには、このチップが搭載される可能性もありそうだ。

サムスン電子の幹部も登壇。ワンチップ型の新Snapdragonに期待を寄せた

 続けてアモン氏は、楽天モバイルネットワークとの取り組みを紹介。楽天モバイルネットワークのスモールセル基地局には、同社の「FSM small cell platforms」の「FSM9016」が採用されていることを明かした。敷設時は4Gに対応したものだが、5Gへのアップグレードが可能で、楽天が売りにするクラウドネイティブなネットワークをサポートする。さらに、5Gのネットワークには「FSM100xx」を採用するという。

楽天モバイルネットワークのスモールセル基地局にクアルコム製のプラットフォームが採用された

 また、クアルコムはPC向けのSnapdragonとして、基本性能を高めた「Snapdragon 8cx」を2018年12月に披露していたが、この5G対応版にあたる「Snapdragon 8cx 5G」も発表された。このチップセットに、Snapdragon X55を組み合わせることでPCの5G対応も可能。

PC向けの5Gプラットフォームも発表

 クアルコムは、スマートフォンのリファレンスデザインを用意し、メーカーが最小限のカスタマイズを加えて出荷できる体制を構築しているが、この取り組みをCPE(宅内機器)にも拡大。5Gに対応した据え置き型ルーターのベースになるもので、モデムにはSnapdragon X55を採用。sub-6、ミリ波に両対応し、5Gを単独で使うSA(スタンドアローン)と、4Gを組み合わせるNSA(ノンスタンドアローン)のどちらもサポートする。

CPEのリファレンスデザインも開発した

 ほかにも、クアルコムは自動車向けの「Snapdragon Automotive 4G・5G Platform」や、ロボティクス向けのプラットフォームなどを発表。スマートフォンやPCだけでなく、ポストスマートフォン時代をにらみつつ、ソリューションのラインナップを拡大している様子がうかがえた。