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au、MVNO対抗を明確に打ち出した「au ピタットプラン」発表会
2017年7月10日 18:03
KDDIは、「まったく新しい料金プラン」とうたう新プラン「au ピタットプラン」「au フラットプラン」を発表した。10日には都内で記者向けに発表会が開催され、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇し、新プランを解説した。なお料金プランのニュース記事は別に掲載している。
新プラン発表まで
KDDIが5月30日に開催した発表会にて、田中社長は囲み取材で「ガツンといく。もう少しお待ちを」と、料金関連の新たな発表が控えていることを示唆していた。5月末時点ですでに、NTTドコモが夏モデルに合わせて「シンプルプラン」「docomo with」などの新施策を打ち出していたほか、MVNOやY!mobileなどの“格安スマホ”の台頭とその対応策も課題になっている中での新料金プランの発表となった。
「料金レベルをMVNO並みにする必要がある」
発表会では、冒頭にauを取り巻く市場の変化に触れられた。「我々を取り巻く状況」として「稼働シェアの推計」が示され、ここでMNO 3社の稼働シェアと、格安スマホと呼ばれるMVNOの稼働シェアが比較された。グラフでは右肩上がりのMVNOにシェアを奪われている様子が明らかにされ、「これは我々にとっては刺激的」と危機感を隠さない。
田中氏は、これまで提供してきた料金プランを、通話とデータ通信の2つの組み合わせや、さまざまな容量からなる、既存のプランの大枠を紹介した上で、MNOのユーザーが格安スマホに興味を示す要因は大きく「月々の料金を安くしてほしい」「自分の使い方に“マッチ”した料金がない」という2つになると指摘する。
また、総務省のガイドラインに沿う形で、端末を安く購入できるという施策は打ち出しにくくなっており、MVNOに対抗していくには、毎月の料金を下げた「分離プラン」を導入する方針を明らかにする。なおこの分離プラン(毎月割を非適用とした新プラン)は、既存のプランに加えてラインナップし、ユーザーは選ぶことが可能。中長期的には新プランが一般的になると見込む。
田中氏は、「料金レベルをMVNO並みにする必要がある。それがauの認識」とした上で、現行のプランは「毎月割」などが組み込まれているため、「端末とネットワーク(サービス)を分離する」と基本構造が異なることを示し、「現行のプランに加えて、月々の料金が安くなる分離プランも導入する。両方のいいところを取っていく」とし、現行のプランは「端末を安く買いたいというユーザーがいるので、残す」とユーザーが選択できることを解説した。
変動する使用量、「月間5GB」などのプランとのギャップ
ユーザーが「“マッチ”していない」と感じる料金プランについても、ユーザーへの調査を元にしたデータを示し、契約しているプランの容量内で利用しているユーザーは約2割に留まり、2割強はデータ容量が足りず、さらに約5割はデータを余らせているという実態が示された。
加えて、一人のユーザーが利用するデータ量は、月により大きく変動することも示され、使わなかった月にも同じ金額を払っていることを無駄と感じ、「“マッチ”していない」と感じる原因になっているとした。
田中氏は、「月々の利用に合わせて自動で変更される新しい料金プランを作らなければいけない」とし、「ユーザーの声、ニーズに対して、少し遅れることがあっても、声を聞いていかないと、我々の将来はないと思っている。auが、新時代の新しい料金プランを作る。こう思っている」と課題への対応や意気込みを語り、ユーザーひとりひとりに合ったプランになることを語った。
新プランはMVNO対抗策
田中氏は質疑応答の時間にも、新プラン導入の背景を聞かれた。「ユーザーの要望に、MNOが応えられなくなってきているという認識にたっている。毎月割のある既存のプランが好みのユーザーもいる。それはそのまま残し、新しいプランを導入することで月額が安いことを望むユーザーにも、端末購入契機でなくてもできるようにした」と田中氏は背景を改めて説明し、「狙いは何か。MNO間の流動は毎月変わっていない。どちらかというと対MVNO、対格安スマホ。MNOはがんばっていかないとけない。auがこの新プランで応えたい。対MVNOとして、我々の弱いところをしっかりフォローしていく」と、MVNO対抗策であることを示した。
安価な端末の投入について質問されると、「通常、分離プランでは安い端末が(初期投資も少なく)お得ということになるが、安い端末ではなかなかプランが広がらないと見ている。iPhoneは当初対象外だが、Androidはフルラインナップで対応できるところまで踏み込んだ。既存のプランも併存させるので、どっちがお得が検討してもらえれば」とし、「現実的なケースでいえば、ほぼ新プランのほうがお得だと思う。よりデータを使わないユーザーがお得になる確率は高いが、20GB、30GBもかなり踏み込んでいる。ビッグニュースキャンペーンで、さらに踏み込んでいる。ぜひ検討してもらえれば」と案内している。
新プランをMVNO対抗策と位置付けたことで、グループ会社であるUQコミュニケーションズの「UQ mobile」とカニバリズム(食い合い)が発生するのではないか、UQ側でガツンとしたプランはあるのか? と聞かれると、田中氏は「我々が答える話ではない。UQと相談してプランを決めているわけではない。UQはUQでがんばって欲しい。連結会社の社長としては、お互い切磋琢磨して市場に応えていきたい」とコメントし、UQとは連携していない、あくまでauの施策であることを示した。
新プランは料金が全体的に下がるため、減収要因になる。田中氏は「ユーザー還元施策」と位置付け、今期で200億円規模を予測し、すでに業績には織り込み済みであるとしている。
「毎月割」を分離し、“通話もデータもコミコミ”とうたう一方、毎月割の期間が残っているユーザーは、期間が終わるまでは新プランに変更を行いにくい形にもなった。夏モデルとして最新モデルが発売されている中で、新プランが遅れて登場した理由は、システム開発の都合としている。
「au ピタットプラン」「au フラットプラン」の2種類が新プランとして用意されたことについては、「ユーザーは大きく2つに分かれる。毎月の使用量に最適なプランを求める人と、20GB、30GBとガンガン使う人。2極化が顕著で、2つに分けた」と回答。学生向けのプランで、ピタットプランに先駆ける形で段階性が導入されていたことについては、「その結果を踏まえて今回、機種限定や学割を外したという流れ。ポジティブな結果が出ていた」としている。