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ミサイル発射時にスマホへ届く「Jアラート」、大手キャリアとMVNOの違いは?

 「米国が北朝鮮に軍事攻撃をする」――これまで意識してこなかった状況が、現実に起きる可能性があるとして関心が高まっている。そして北朝鮮に関する状況の変化で、日本にも何らかの影響があるとの懸念がある。

 もともと日本には地震や災害時の避難情報など、いざというときに携帯電話へ一斉同報で通知する仕組みが採り入れられている。そうした緊急速報で配信される情報のひとつに、ミサイルやテロなど、いわゆる武力攻撃が発生した場合などを含む「Jアラート(全国瞬時警報システム )」がある。万が一にも配信されるような状況は訪れてほしくはないが、緊急地震速報と比べ、これまで運用された例が少ないこともあり、あらためてご紹介しておきたい。

 内閣官房から配信されるJアラートは、消防庁を経由して、市町村や携帯電話会社に配信される。市町村に送られると自動的に防災無線で屋外にあるスピーカーで知らせる。一方、携帯電話会社に届けられると、「ETWS」という一斉同報の仕組みでユーザーの手元にある携帯電話、スマートフォンに通知が届く。ETWSとは、LTE方式の規格の1つで、その名は、「Earthquake and Tsunami Warning System」が由来。ちなみに情報の出元が気象庁の「緊急地震速報」も同じ流れで配信される。NTTドコモ、au、ソフトバンクでは、2014年4月から、Jアラートを携帯電話で受信できるようにしている。受信すると専用のアラート音とともに画面上に表示される、というものだ。

大手各社での受信時の表示内容。これは2014年に案内された際のものだ

 ではJアラートはMVNOの回線や、SIMロックフリースマートフォンでは、どうなるのだろうか。

 たとえばNTTコミュニケーションズ(OCN モバイル ONE)は「届く端末もあれば届かない端末もあり得る」とする。つまり受信するスマートフォン次第というわけ。それもどの機種で受信できるかどうかは、見極めがむずかしい。数多あるスマートフォンの全てを検証するのは難しく、MVNOの立場としては断言するのが難しいと見られる。ただ、一般的な考え方として、大手キャリアで販売されたスマートフォンであれば、ETWS方式で配信される情報への対応は済んでおり、回線がMVNOであっても問題なく表示できる、と期待できそう。ソフトバンクでも、動作保証はしていないが、「ソフトバンクの帯域を利用するMVNOで、SIMロックを解除したソフトバンク端末であれば、Jアラートは受信できる」としている。

 またIIJでは「これまでJアラートを受信したことがなく、エビデンスをもってどうなる、とは回答できないが、仕組み上、JアラートはETWSでMVNOユーザーにも届く。つまりSIMロックフリースマートフォンが、ハンドリングできるかどうか」と説明する。

 IIJの堂前清隆氏によれば、ETWSで配信される情報として、グローバルで共通なのは地震と津波だ。つまりはJアラートは日本のシステムであり、グローバルで提供されるSIMロックフリースマートフォンでは受信できるかどうか何とも言えない……ということのよう。IIJでは、基地局シミュレーターで、いくつかの機種での挙動をチェックはしているが、たとえばNTTドコモからどのIDでJアラートの情報が配信されるか開示されていないのだという。緊急地震速報など、過去に配信されたものは、その配信された情報をIIJが調べて対応している。ただ、その配信情報をどう表示させるかは、最終的には端末メーカー次第となる。ちなみにファーウェイでは2016年6月に発売した「P9」「P9 lite」において、ソフトウェア更新を通じてETWSへ対応している。

 まとめると、Jアラートの情報が届くかどうか「大手キャリアは届く」と表明し、MVNOの場合、特にSIMロックフリースマートフォンは「機種による」という回答だった。これは緊急地震速報も同じで、昨年9月には、IIJが、同社ブログでSIMロックフリースマートフォンにおける緊急地震速報の受信について調査した結果を発表しており、MVNOサービスが拡がる中でも依然として「機種による」という状況が続いているのだ。パケット通信を使ったスマートフォンアプリでもJアラートの情報を配信するものはあるが、何か大きな出来事があればパケット通信は混雑する可能性があり、仕組みとしては、ETWSのほうがより確実に通知を受けられる。メーカーの努力だけではなく、大手キャリア、MVNO、総務省といった関係各所が力をあわせて、ユーザーがより安心できる環境が整うことを期待したい。