インタビュー

キーパーソン・インタビュー

シェア拡大のために機種を絞るファーウェイの狙い(前編)

中国・深センのファーウェイ本社

 日本国内でSIMフリースマホを積極的に展開するファーウェイ。最近ではGoogleから「Nexus 6P」の開発を依頼されるなど、競争の激しい市場の中で着実に力を付けて来ている。

 その勢いの源となる中国・深センにあるファーウェイの本社で、ファーウェイ・コンシューマー・ビジネス・グループ PRディレクターのエイダ・シュウ氏と、グローバル・プロダクト・マーケティング ヴァイス・プレジデントのクライメント・ウォン氏にグループインタビューの形でお話を伺った。

 今回は前編として、エイダ・シュウ氏が行ったプレゼンテーションの内容をお伝えする。

スマホ世界3位、目指すはAndroidでNo.1

ファーウェイ・コンシューマー・ビジネス・グループ PRディレクターのエイダ・シュウ氏

 “Building a Better Connected World”を目標に掲げるファーウェイだが、端末部門(コンシューマー・ビジネス・グループ)のミッションは“To make the best mobile devices”だと説明するシュウ氏。同氏は「AndroidでNo.1を目指している」と語る。

 こうした自信の背景には、グローバル市場での急速な成長があり、同社が2009年に初めてのスマートフォンを出荷し、2010年以降、売上は年間22%の勢いで成長しているという。2015年の目標は200億USドルとされる。出荷台数についても、2014年の7500万台から、2015年には1億台を超える見込みで、このうち30%がミッドハイクラスの製品となる。

 グローバルでのシェアではサムスン、アップルに次ぐ3位のポジションだが、とりわけ中国市場でのプレゼンスは高く、ファーウェイ、アップル、サムスンとトップ3の順位が逆転する(2015年9月のGfKの調査)。

 フラッグシップのスマートフォンの出荷実績としては、Mate7が700万台、P7が800万台、P8が400万台。「ミッドハイが市場に受け入れられている」とするシュウ氏は、ヨーロッパ市場で400~500ユーロの端末のシェアが高いことを紹介。日本市場には、エントリークラスからミドルクラス、ハイエンドクラスと3つのラインナップ構成でアプローチしている。

ラインナップを絞り込んで個々の端末に愛を注ぐ「プレミアム・スマートフォン・ストラテジー」

 シュウ氏によれば、シェアの拡大とともにブランド認知も進んでおり、さまざまなブランド調査において中国企業として初めてランクインするなどしている。同氏は、こうしたブランド力を維持し、さらに事業を発展させていくためにも、重要なのは数量よりも品質だと語る。

 そこで同社が打ち出したのが、「プレミアム・スマートフォン・ストラテジー」という戦略だ。1年間に発売されるスマートフォンの種類を絞り込むことで、個々の製品の品質を高め、魅力となる個性に磨きをかけようというもので、実際に2011年に75モデルだった同社のラインナップは、2015年には20モデルにまで減少している。今後はさらに絞り込んいくという。

 同氏は、この戦略を「一家に100人も子供がいたら全員の面倒をみきれないが、5人しかいなければ、きちんと資源と時間を費やして、きちんと育て上げることができる」と表現する。こうした意識もあって、ファーウェイの端末ラインナップは、パフォーマンスに重きを置いた「Mateシリーズ」、ファッション性を意識した「Pシリーズ」、大衆向けの「Gシリーズ」、Eコマースを主戦場とする「Honorシリーズ」の4つのシリーズに整理されている。

目指すは長距離ランナー

 同社は、将来に向けたR&Dへの投資にも積極的に取り組んでいる。世界16カ所にR&Dセンターを設置し、毎年売上の10%以上をR&Dに投資している。その投資額は、コンシューマー・ビジネス・グループだけで12億USドルに上る。同ビジネス・グループの従業員1万4000人のうち70%がR&Dのスタッフで、各地の強みを生かす形で研究開発が進められているという。

 中でも「2012ラボ」と呼ばれる中央研究所では、クラウド、AI、AR/VRなど、未来の技術に関する研究が行われている。同ラボでは、数年では商用化が難しいようなことも研究しているという。

 技術面での投資に加え、イギリスにデザインセンターを設置。スマートフォンではなく、化粧品やファッションのデザイナーが多く採用されているとのこと。シュウ氏は「ファッション性が今後重要になると考えている」と語る。

 同氏はまた、「A Better Connected Worldという目標を達成するために、全て1社でやるのではなく、オープンにエコシステムを作り出すことに力を入れている」と述べ、他社との協業を進めていく同社の姿勢を強調。「長距離ランナーとして業界に貢献していきたい」(シュウ氏)という。

湯野 康隆