インタビュー
「AQUOS CRYSTAL X」開発者インタビュー
「AQUOS CRYSTAL X」開発者インタビュー
日本仕様を追加してハイエンドユーザーに訴求
(2014/12/25 11:38)
液晶をいきなり掴んでいるようなデザインで世間を驚かせた、フレームレス構造の「AQUOS CRYSTAL」に、第2弾「AQUOS CRYSTAL X」が登場した。日米共通モデルの「AQUOS CRYSTAL」に対して、日本独自仕様を盛り込んだハイエンドユーザー向けのモデルである。
ディスプレイは5インチから5.5インチに、ROMは8GBから16GBに、カメラは800万画素から1310万画素にアップし、全天球撮影も可能になった。音声通話はソフトバンクの端末で初めてVoLTEをサポート。また、「AQUOS CRYSTAL」では非対応だったワンセグ、おサイフケータイのほか、シャープ製端末おなじみの機能であるグリップマジックや、今年スタートした受動型AI機能「エモパー」もサポートしている。「AQUOS CRYSTAL」の先進性やデザインに惹かれながらも、日本独自仕様が手放せずに静観していたユーザー必見の端末だ。
そこで「AQUOS CRYSTAL」への反響や、「AQUOS CRYSTAL X」の魅力について、シャープ 通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第三商品企画室 室長 澤近京一郎氏、主事 楠田晃嗣氏、プロダクトビジネス戦略本部 デザインセンター UXデザイン室 シニアデザイナー 中田裕士氏、通信デザインセンター デザイナー 二神元氏に伺った。
AQUOS CRYSTALへの反響
――フレームレスということで、インパクトを与えた「AQUOS CRYSTAL」が発売されて約3カ月が経過しました。反響はいかがでしょうか。
澤近氏
8月に「AQUOS CRYSTAL」と「AQUOS CRYSTAL X」の両方発表させていただいて、まずは8月末に「AQUOS CRYSTAL」の販売を開始致しました。北米も追って発売されて、販売は好調に推移していると聞いており、順調に立ち上がっているという印象をもっています。
ユーザーさんの評価やアンケート調査などいろいろ見ている限りは、フレームレス構造によって驚きや感動を与えたいというコンセプトはしっかり評価いただいてるようです。今までの形態とは違って、新しいものだととらえられたと感じてます。
――そして続いて「AQUOS CRYSTAL X」が発売となりました。こちらは完全に日本市場を意識したモデルということですよね。
澤近氏
そうですね。「AQUOS CRYSTAL X」は国内向けで、30代男性を中心としたハイエンドユーザーに特化した商品になります。「AQUOS CRYSTAL」に比べて画面も大画面化しておりますし、日本仕様も入れており、これならと思っていただける製品なっていると思います。
――具体的にどんなところが違うのでしょうか。
楠田氏
まず大きな違いとしては、画面サイズですね。5インチだったのが5.5インチになってます。解像度もHDがフルHDになって、カメラも8メガが13メガと、よりハイスペックになっております。
それから先ほどあった日本仕様ですね。特に重要視されているのがFeliCa。首都圏で電車使われている方は昔からずっとFeliCaを使っておられて、これがないともう生活が成り立たないというユーザーさんが結構いらっしゃると調査でも分かりました。そこはやっぱり対応したほうがいいだろうということで、今回はNFC、FeliCaにも対応しております。あとはワンセグもサポートしています。
それから、弊社が今シーズン発表した「エモパー」と、弊社の端末ではおなじみのグリップセンサーによる「グリップマジック」も対応しています。ハイエンドのモデルなので、高級感や違いはきっちり出そうと思いました。
――こういうアグレッシブなことをやるとき、IGZOではないのはなぜでしょうか。
澤近氏
別にIGZOでこれができないというわけではないんですけど、タイミングの問題ですね。額縁を細くするという1点に関しては、今はIGZOよりCGシリコン液晶のほうが回路構成的にやりやすいんです。なので、まず商品化タイミングで、このフレームレスをいかにタイムリーに投入するかということを優先して選択しました。IGZOのほうも額縁がかなり細くなってきていますので、将来的には同じような感じでできるんじゃないかとは思うんですが、現時点においてはCGシリコン液晶のほうがやりやすかったと、その1点だけなんです。
CGシリコン液晶も省電力性に優れた液晶で、バッテリーも2600mAhで3日間は持つような省電力化の取り組みもやっておりますから、ユーザー体験としてはまったく損なうものはない状態で、フレームレスという驚きを提供できているんじゃないかと思っています。
――「AQUOS CRYSTAL」といえば、大きなスピーカーが付属することでも話題になりましたね。
楠田氏
harman/kardonの音響技術のエンジンですね。そこは「AQUOS CRYSTAL X」でも対応しております。スピーカー同梱で結構好評いただいたという経緯もあるので、今回もスピーカー同梱です。
――こちらにもあの大きなスピーカーが付いてくるのですね。
楠田氏
はい。でっかい箱に入って(笑)。賛否両論ありますが、ショップ店員さんの声をきくと、あれがきっかけで買われるって方は意外と多いみたいです。それはそれでいいのかなと思っています。
――CPUですが、AQUOS CRYSTALがSnapdragonの400シリーズで、AQUOS CRYSTAL Xが800シリーズとグレード違ってます。その影響を受けている部分はありますか。
楠田氏
このチップセットを積んでいるからこれを入れたっていうのはないですね。ただ、カメラの連写のスピードですとか、その辺の処理でCPUの速度が効いていると思います。また、タッチパネルの追従性とか、あとは単純に重たいゲームをやったときのサクサク感とか、そういったところは当然変わってきてるかなとは思います。
――ところで素朴疑問なんですが、すでに三辺狭額のEDGESTデザインの端末をだされてるわけですよね。どちらもフレームの限界挑んでいるように見えるのですが、EDGESTとフレームレス、これはどういう関係になるんでしょうか?
澤近氏
最終的にどうなるか、というところは当然あるんですが、EDGESTはフレームが絶対ある前提で、三辺の額縁を極限まで細くしていこうという取り組みです。一方フレームレスはフレームそのものを極限まで見せないようにして、“レス”に近づけるための構造をとっていこうという取り組みです。
――ということは、シャープの中で2つの取り組みが同時に走ってるということですか?
楠田氏
両方あります。EDGESTの延長線上にCRYSTALがあるのではないということなんですね。縁がどんどん狭くなって、いずれフレームレスになりました、ではなくて、ある日突然未来から来たような、そういったものにしたいという、今のままでの正常進化ではないというところを見せたいっていうことで誕生したのがフレームレスです。だからデザイン的な見せ方も全然違うんですよね。周りをシルバーにしてというところも含めて、これまでなかったものを作りたいというところで、あえてEDGESTからは脱却して、フレームレスという別ものとして定義付けしています。
デザイン面のこだわり
――デザインのお話しがでたところで、デザインについてお伺いします。「AQUOS CRYSTAL」と「AQUOS CRYSTAL X」は、フレームレスということで統一されたデザインいうことでしょうか。
二神氏
「AQUOS CRYSTAL」と「AQUOS CRYSTAL X」で、フレームがなくなることで、送る人も受け取る人も、そこにいるような臨場感だったり、感動を共有できるような端末を目指したいな、というビジョンがあります。今年初めて「AQUOS CRYSTAL」を出したので、ファミリーデザインでしっかりとフレームレスのインパクトを出していきたいなということで、同じデザインを踏襲しています。
とはいっても日本仕様を入れ込んだことで差がついてくるので、そのグレード感だったり、品位感を出していこうということで、かなり細部ではあるんですけれども、今回はかなりこだわった部分があります。
――具体的にはどんな部分こだわられたんでしょうか。
二神氏
正面下の部分なんですけれども、画面が大きくなりながら、この幅が狭まっているんです。おかげでパッと見の画面占有率もアップしてます。まずそこに違いがあります。
また「AQUOS CRYSTAL」のときは正面をシルバーにしてフレームレス感をかなり訴求しました。それがある程度浸透したかなということ、加えてハイエンドユーザー層への訴求や、日本仕様ということで、カラーバリエーションをしっかり出していこうということで表にも色をつけています。
「AQUOS CRYSTAL」のときはまず表でキッとしたクリスタル感を出しつつ、背面ではディンプルの彫り込みなどを使って、反射のわずかな違いをキラキラと出していきました。その考え方を踏襲しながら、さらに背面は表面の印象を近づけたいなということで、もっと肌触りがよくて上質な感じを訴求するために素材感を訴求した仕上げにしています。
あとは小さなパーツですね。カメラリングや電源キーの部分にもアルミを使うなどして、しっかりとグレードの違いを出しています。
――背面で気になったのがFeliCaマークです。確かにあるんですが、これまでの印刷と違って角度をつけるとほとんど見えないんですが、これは出っ張らせたということですか?
二神氏
FeliCaマークの突量ですよね。これ、0.05mmでっぱってます。土台の島を作って、そこに印刷でスタンプするみたいなやり方もあるんですが、印刷するとテクスチャーが崩れてしまってよくなくて。0.05mm飛び出させて、背面のテクスチャーの良さをそのままにしながら視認性を確保しています。0.1mm版も試作したんですが、ほんの少しの差が表情に大きく影響します。さらに細かく刻んで試してみたんですが、最終的に0.05mmに落ち着いています。
楠田氏
フェリカネットワークスさんも視認性には結構厳しいのですが、我々としてはなるべくデザインを壊さないようなものにしたいということで、実際に相談させていただきながら、ここで許容いただいきました。テクスチャーの良さを生かすために結構工夫しました。
――そのテクスチャーなんですが、AQUOS CRYSTALのときのディンプルもそうですが、こういうのは流行を反映したみたいな部分というのはあるんでしょうか。それとも御社独自デザインですか?
二神氏
確かに1~2年前から、世の中の流れ的にパターンを入れるというのが流行りましたね。ただ、我々が目指すところは、手に触れるものとしての手ざわり感を出したいということ。そこが物の価値につながっていくんじゃないかなという考えのもとで、今回独自でデザインしています。
――フレームレスってほとんどが画面なので、極めるほどデザインの自由度はなくなっていくと思うのですが、今後このシリーズを続けてくとなるとデザインはどうなっていくのでしょうか。
二神氏
画面下に残ったところどうするのとかいうのは出てくるんですけれども、そこに一番頭を悩ませてますし、今後の課題かなと思って模索しているところではあります。
澤近氏
おそらく、フレームレスを今後どう進化させていくかっていうところに全部紐付くものだと思っています。フレームレスというのは当然ここで終わりではなくて、これからも進化させる必要はあります。その進化の過程において、そのデザインっていうのは何が最適なのかというのは一緒に考えていく。そういった話はずっとしています。いつの日か、「こうなったか!」というようなものをお見せできればと思っています。
――サイズ感的にいうと、5インチから5.5インチにサイズアップをされました。容積的にはその分若干余裕ができたところもあるのかもしれないですが、それでも新たにいろんなものに対応して、むしろ増えたのではないでしょうか。このサイズに収めるにあたり、それ相応の苦労があるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
二神氏
そこはデザインというよりは機構開発グループや、回路グループ、実際に中身を設計しているチームの方のほうがかなり頭を悩ませたところですね。先に「AQUOS CRYSTAL」を出しているがゆえに、この印象に入れたいという前提がありました。外側ありきという一番うちが苦手としているところで(苦笑)、そこは普通の機種よりはかなりハードルが高かったかなと思います。
澤近氏
無線にはCA(キャリアアグリゲーション)が入っていたり、プラットフォームそのものがまず違ったりとかで、実は結構基板面積的にもキツイところがあります。もちろん電池容量も増えていますし。だから、最初は入らないんじゃないかというところから議論をスタートして、この部品はどうするかとか、レイアウトを組み替えたら全部入るんじゃないかとか、デザインでは背面の一番大事な側面の絞り形状の調整とか、全部工夫して、なんとか入れ込んだというところが実際です。
――側面のキラキラ感など含め、デザインの元になる発想というのはどこからきてるのでしょうか。
二神氏
このフレームレスを際立たせていくためというのと、テレビの進化の2つですね。フレームレスを際立たせるために必然的にできあがったものがシルバーで。鏡面調のものを外周に回して反射感を出すことで、ブラウン管テレビから液晶への進化への切り替わりみたいなものを表現しています。その2つを馴染ませた結果、こういうデザインなりました。
フレームレスだからこだわった機能
――フレームレスだからこだわった機能があったら教えてください。
中田氏
フレームレスって、コンパクトに大画面という形からくる価値っていうのが多いんですが、それでも見た目だけでしょっていうネガティブな意見もでてきます。そこで、そうじゃないんだってことを体験として得られるような何かを示せたらいいなと考えて、キャッチーに見せられるような機能として「Clip Now(クリップナウ)」と「Swipe Pair(スワイプペア)」という2つを用意しました。
「Clip Now」は8月に発売した「AQUOS CRYSTAL」でもやっていたんですが、画面の上の辺をなぞることでスクリーンショットが撮れる機能です。なぞると表示されていた画面が切り取られる演出もあって、そのまま保存されます。Webページの場合はURLも一緒に保存できるし、同じ右から左になぞったらビューアが起動して、撮ったキャプチャーをすぐ見られます。
なぜスクリーンショットかというと、ユーザー調査をしたところ、我々が思っている以上にスクリーンショットが撮られていることがわかったんです。特に若い世代では毎日使ってるようです。ゲームでレアなアイテムやシーンにであったら、スクリーンショットとってTwitterやLINEで共有するといった使い方とか、乗換案内を画面メモ的に撮るとか、ショッピングのページを撮るとか。そういうメモ的な使い方がかなり多いとわかりました。
ただ、そのときに2つのボタンを長押ししたりするのはとてもやりづらいし、撮ったショットがすぐみられないという不満がありました。それを解消するために新たに「Clip Now」を入れました。画面を切り取る感じもあわせて、フレームレスだからこそといった部分が出せていると思います。
「Swipe Pair」は、ちょっとお遊び的な機能ではあるんですが、フレームレスな「AQUOS CRYSTAL X」でマルチスクリーンのような状態を作って、その中で静止画をドラッグ&ドロップでやりとりできるというものです。
EDGESTの頃から、端末を複数並べて1枚の写真を表示するというデモをやっていますが、これが結構ウケがよくて、実際にこれで何かできたら面白いんじゃないの、というところからスタートした機能になります。同じ画面を見ながら写真について語り合えるので、フレームレスを生かせる特徴になるのではないかと思います。
双方でアプリを起動すると、同じアプリを起動している相手を探しに行きます。見つかると端末の背景色が同じ色になって、Bluetoothでペアリングが成立します。つながった状態で横一文字になぞるとスタートします。自分で撮った写真を違う端末までドロップすると、1枚の画面のように繋がってみえます。つながった状態で、拡大縮小とか、位置の移動とかもできます。写真のやりとりなので、この時点でコピーもされています。送り終わったあと、一瞬コピーできましたと表示されます。
――2つあればその分表示面積も広くなるので、大きくして楽しみながら写真を交換できるわけですね。端末を並べるときのずれを心配しなくてもいいんでしょうか?
中田氏
そうです。若干ずれてるのも分かるし、自分がそもそも左にいるのか、右にいるのかということもドラッグ&ドロップで画面をまたぐ際に自動認識するようにしています。たとえば途中で並べ方変えたりしても、表示される写真はあうようになっています。フレームレスの魅力をもっとカジュアルに表現しながら、Bluetoothのペアリングみたいな難しい部分はまったく意識しなくてもいいような使い勝手を目指してUIを作りました。
――先発の「AQUOS CRYSTAL」でもできるんですか。
楠田氏
発売時点の8月ではできませんでしたが、12月に対応しました。Google Playからダウンロードしていただくと使えるようになります。「AQUOS CRYSTAL」と「AQUOS CRYSTAL X」を並べて利用することもできます。
――動画やOfficeドキュメントみたいなものは送れますか。
楠田氏
今は静止画だけですが、そこは広げていきたいなと思います。将来的にはこのつながった状態で動画が動いているというのも面白いと思います。ただ、Bluetoothで重たい動画をどうやって転送するんだという問題もありますので、転送の仕組みも含めて検討する必要があると思いますが。
――画面も3つ、4つと増やすんですか?
楠田氏
そういう構想もありますね。機種を広げていけば、対応機種をもって人が集まるシーンっていうのも今後増えると思うので。もっとこの仕組みを使って、何か面白いこともできるんじゃないかなと思っています。
――「スムーズチェンジモード」という機能も新搭載されてますが、これは?
楠田氏
Wi-Fiスポットの利用中に、電波が弱くてWi-Fiにつながってるんだけど、やけにネットが遅いということありますよね。そんなときわざわざ自分でWi-Fiを切ってる方も多いと思います。そんなとき、電波強度をしっかり監視しながら、端末側で賢く切り替えてあげるというモードが「スムーズチェンジモード」です。
ただ、ここはパケット通信量にも影響するところなので、ユーザーさんが意図しないタイミングで勝手にモバイル回線に接続してパケットを消費するというリスクがないとはいえません。慎重にやらないといけないかなということで、最初設定はオフにしてます。
実はフレームレスで苦労していたエモパー
――中の機能について、工夫されたところや苦労されたところがあったら教えてください。
楠田氏
今年デビューさせていただいた、シャープ全体として取り組んでいる「エモパー」ですね。「AQUOS CRYSTAL X」でも実現できているわけですが、これが大変苦労しました。
エモパーって、ユーザーさんが操作して問いかけなくても、エモパー側から最適なタイミングで状況をみて、画面や声で語りかけてくれる受動UXがポイントなんですが、従来よりはグリップセンサーとの紐付きが強い機能になっています。
ただ、ご覧になって分かる通り「AQUOS CRYSTAL X」はフレームレスですから、グリップセンサーは絶対必須なのに、グリップセンサーを置く場所が無い、という話になりました。「エモパーとフレームレスって両立しないんじゃない?」という話も出てきまして、開発開始時の一番の課題となりました。一時はフレームレスを諦めるのか、エモパーを諦めるのか二者択一みたいな状況にまで陥ったんですけど、そこはシャープとして両方とも特徴として強くやっていくものだということで、技術にがんばってもらった次第です。
――結果的にどういう対応になったのか気になります。
楠田氏
試行錯誤の結果、従来EDGESTで積み上げてきたグリップセンサーのノウハウを、1回すべてオールリセットしました。フレームレスに適応できるグリップセンサーっていうのを、またイチからこのモデルのために開発してます。ですので、構造とかパラメーターとか全く違うチューニングになりました。だから中を見ていただくと、全然違う構造になってるんです。
――そういう苦労があったんですね。エモパーそのものの機能は全キャリア共通ものなんですか?
楠田氏
今回はソフトバンクさん向けということで、従来のコンテンツに加えて、ヤフーさんのサービスにある「急上昇ワード」と「Yahoo!映画」と連携しています。
「急上昇ワード」との連携で、その時間帯もっとも注目されてる検索キーワードをエモパーがお知らせしてくれます。今日も、とあるタレントさんの名前を目にしました。普段は仕事してるのでワイドショーなどを見てませんよね。当然そういう情報は気づかないわけですが、ふとした瞬間にエモパーが教えてくれる。「なんでそれ?」と思ってつい見てしまうと。
「Yahoo!映画」との連携では、ユーザーさんに適用したタイミングで、公開予定の映画情報なんかをお知らせします。いつ映画情報が欲しいんだろうと考えたとき、やはり週末の予定を立てるときではないか、女性ならレディースデーにいきたいのではないか、などを考慮して条件を設計しています。「今週末こんな映画が公開されますよ」なんてお知らせした結果、じゃあ週末映画でも見に行こうかな、という行動につながったら嬉しいです。
エモパーのUIに関するこだわり
――エモパーもかなりセンセーショナルというか、注目を集めていると思いますが、すでに利用しているユーザーから意見や感想は集まってきているのでしょうか。
楠田氏
第1弾モデルが11月に発売されて1カ月が経ちますが、我々としてもそこはきっちりウォッチしないといけないと思っています。実際に弊社のSH SHOWや、Twitter、ネットの記事などを見ていますが、従来の商品よりは大きな反響をいただいていると感じてます。YouTubeの動画のアクセス数もこれまでより高いので、興味は持っていただいているのかなと。今後は調査やアンケートも行う予定でおります。
――かなり好意的に受け入れられてるのですね。
楠田氏
そうですね。我々が思っているよりは好意的かなという評価をしています。ただ、好き嫌いはある機能だと思っています。受け入れられる人には受け入れられるし、ちょっと嫌いな人は当然いるだろうなと。みんなにそれとなくふーんというような感想を持たれるのではなくて、響く人には響くっていうような狙いでやっているので、そこに対しても結構狙い通りかなと思っています。
――3つのキャラクターが設定されていますが、ビジュアルは特定のイメージに固定されているわけではありませんよね。
中田氏
その分、見せ方は実はかなり配慮しているところです。受動的なので、過度に目立ちすぎるとうざいし、文字になったときあっさりさせすぎると気づかれにくい。机に置いた瞬間に反応しますから、その距離感では、どれくらいの文字サイズで、何行表示が適切か、というところを作っては検証を繰り返しました。
――確かにエモパーというとしゃべるイメージばっかりなんですけど、画面のテキスト表示も結構意識されたわけですね。
中田氏
そうですね。音声がキャッチーなのでそこがポイントになるとは思うんですけど、お勤めしてる方の場合は家の外に出てる時間が長いと思うので、テキスト表示でのおつきあいのほうが長くなると思うんですね。でも、置いたタイミングや、充電するときだったり、必ずしも画面をしっかり見てくれてるとは限りません。パッと置いてすぐ離れてもある程度視認できて、かつ何が書いてあるか分かるようにかなり気を遣いました。目立たせてはいけないけど見える、という加減が難しかったです。
もちろん音声部分でも、画面では非常に気を遣っています。自宅でしゃべり始めたとき、そもそも画面がついているべきなのかどうかという議論を皮切りに、どういう表示が適切かを検討しました。最終的には画面を点灯させて、「なんかこいつが語りかけてきてくれてる?」っていうのが分かるような波形を出すという表現になりました。
――擬人化するという方法もありそうですが、それもまた好みが出るところですしね。
中田氏
波みたいな表現はよくあるので、何かキャラクターを出すとか、顔みたいなものを表示するとか、イコライザーはどうかとか、ナイトライダーみたいな案など、いろんな案がでましたね。最終的には1周して波形に帰ってきました(笑)。みんなが思っているエモパーとは何か、みたいなところをよくよく話したところ、そこに集約されていきました。波形にもいろんな表現がありますが、今のデザインに落ち着いています。
カメラ機能の進化点
――カメラ機能では、画素数以外に変わったところはありますか。
楠田氏
前衛モデルのAQUOS Xxからは大幅に進化しています。機能的なところではじっくり撮影するための「HQモード」という新しいモードを搭載しました。これまでも、暗いシーンで数枚の写真を撮って、明るい部分と暗い部分を合成して綺麗に見せるという「NightCatch II」という機能がありますが、これはその逆で、明るいシーンでも同じように複数枚写真を撮って合成して、微妙なノイズをキャンセリングして、綺麗にするというものです。合成するといっても、通常の撮影とそれほど変わらないスピードで撮影を楽しんでいただけます。
また、最近では自撮り棒が流行ったりしてますが、インカメラでセルフタイマーが使えるようになりまししたし、ワイドに撮れる「インカメラワイド撮影」も新たに搭載しています。フレーミングアドバイザーも改善して、料理がより正しく撮れるようにしました。
――他キャリア向けになりますが、御社にはGR認証を取得して画質をウリにしているモデルもあります。カメラモジュール的には別なんですか?
楠田氏
そうですね。モジュール的には別ですが、こちらの画質も十分綺麗なものになっていると思います。
ストラップホールと防水性能のゆくえは
――無理を承知でいえば、ストラップホールがあったらいいなと思います。フレームレスなのであると安心できそうですが、やはり難しいでしょうか。
澤近氏
このデザインでのストラップホールの付け方って難しいんですよね。背面カバーを取り外せる構造にしてるので、裏にもつけられませんし。つけられるとしたら、今、下額縁のところしかスペースがない。ほかの三辺が何も置けないかわりに、そこに部品が集約しているんです。だから、なかなか厳しいですね。
ストラップホールをなくしたのはこの機種が初めてじゃなくて、その前の304SHから実はないんです。確かにつけたほうがいいという声はすごいいただくんですけど、ないからどうしようもないっていう意見は逆にないんですよね。ストラップホール付きのカバーを使われる方もいらっしゃるように、解決策としては別にあるということで、まだどうしようもない事態にはなってないのかなと思ってます。
――もう1点は防水性能です。これもやはり相当難しいのでしょうか。ずっと防水で来られたので、やはり防水だと安心なんですが。
澤近氏
要望が多いところと言うのは認識しています。非防水なのは、フレームレスにすることで、防水に必要な止水構造がとれなかったというのが第一の理由です。特にパネル周りのところで……。第1弾としては、まずはフレームレス最重視でこういう形で商品化してますが、将来に渡って防水を諦めてるわけではないので、今後も取り組みは続けてまいります。
――最後ひとことお願いします。
楠田氏
8月に発売させていただいたAQUOS CRYSTALのスペックに満足いただけなくて、買い控えされてるお客さんもいると思います。今回の「AQUOS CRYSTAL X」はFeliCaにも対応しましたし、画面サイズも5.5インチにして、フルHDにして大きく、さらにカメラのスペックも13メガまでアップして、そういった方々にも響く商品になったと思います。エモパーもしっかり対応してますので、ぜひ店頭で手にとっていただきお試しいただき、ご購入いただければなと思います。
――本日はどうもありがとうございました。