インタビュー

「URBANO L01」「DIGNO R 202K」開発者インタビュー

「URBANO L01」「DIGNO R 202K」開発者インタビュー

上質感と軽さとともに独自の使いやすさを追求

 京セラは2013年夏モデルとして、auからは「URBANO」シリーズの最新モデルを、ソフトバンクからは「DIGNO R」の2機種をリリースしている。「URBANO」は、シックなデザインが特徴の端末で、“オトナ向けのスマートフォン”として、30~50代から支持されている。一方の「DIGNO R」は、ソフトバンク向けとしてはシリーズ初となる端末で、わずか94gというフィーチャーフォン並みの軽さが最大の特徴だ。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が盛んな現在、各メーカーが乗り換え層を狙ったさまざまな取り組みを行っているが、京セラが考える使いやすさも、また操作性として端末に反映されている。今回は、新端末の特徴とともに、使いやすさへのこだわりと、その具体的な取り組みを伺った。

フィーチャーフォンから気持ちよく乗り換えできるスマートフォンを

――まずはURBANOの開発コンセプトから教えてください。

大西氏
 「URBANO」は、使いやすさと上質感をコンセプトにしたKDDIブランドの商品で、2008年にフィーチャーフォンとして市場導入されてから、すでに5機種が発売されております。京セラとしては、昨年URBANOシリーズ初のAndroidスマートフォンモデルとなる「URBANO PROGRESSO」を開発しており、今回の「URBANO L01」が2モデル目となります。

 今回は、フィーチャーフォンからの乗り換えを想定し、抵抗なくスマートフォンに移行できるような工夫はできないかという点にポイントをおき、「URBANO PROGRESSO」の評価点を踏襲しながら、「デザイン」、「電池持ちのよさ」、「使いやすさ」の3つに重点をおいて開発を進めました。

――「URBANO」の利用者層はどのあたりになるのでしょうか。

大西氏
 スマートフォンの購入者自体が、現在30~40代が中心なので、このモデルも基本的にはその年代層になりますが、弊社の調べでは、50代の購入層も多いので、幅広くお使いいただいているという印象があります。

――「URBANO」をデザインする上で、他の端末と意識や方向性に違いはあるのでしょうか。

羽場氏
 ユーザビリティと、上質感を両立させることですね。上質感というのはテーマの1つになっているのですが、デザインや上質感だけが目立ってしまっては、携帯電話という道具としては受け入れられないのではないかと思いますので、使いやすさを追求しながらも、「URBANO」にしか出せない雰囲気を意識し、大人の感性をお持ちのお客様の琴線に触れるデザインとなるように気を配りました。今回の「URBANO」のコンセプト「Premium but Friendly.」に基づいてPremium(上質感)とFriendly(使いやすさ)を両立させるということに一番こだわってデザインしました。

大人の感性に訴えかける上質感をデザイン

――デザイン面では、具体的にはどんな特徴があるのでしょうか。

羽場氏
 まず形状についてですが、上質感と手に持ったときの心地よさ、使いやすさにこだわりました。全体にエッジの効いた形状を用い、背面の手に触れる部分にだけ滑らかな曲面を使って、持ちやすさを確保しています。前作の「URBANO PROGRESSO」でも採用していたハードキーを踏襲し、「確かなクリック感」というコンセプトを引き継いでいます。今回は、金属を削り出して作り、キーが本体を横断するように大胆にデザインしました。フロントのアンドロイドキー以外でも、随所にアルミの削りだしのキーやパーツを散りばめており、ふとした瞬間に目に留まるような高級感を演出しています。

――このハードキーはわりと柔らかくて、指の腹で押しやすいと感じたのですが、このあたりで配慮された点などはありますか。

羽場氏
 少し柔らかめというのは確かにそうですね。画面の大型化に伴ったキーの位置の変化に配慮し、設計部門と共に何パターンもの形状、押し込みの硬さを検討して、弱い力でも確実にクリックできるようにしています。

大西氏
 このキーのクリック感は、弊社で開発してきたフィーチャーフォンでの取り組みが生きていますね。

通信機器関連事業本部 デザインセンター 羽場友子氏

――端末のカラーごとに、塗装の仕方とかパーツの色の乗せ方などが違うようですね。

羽場氏
 今回は4色ご用意しました。

 まずグリーンは、「URBANO」の世界観を表す色と位置づけセンターカラーとしています。ゴールドの金属パーツを入れることで、少しクラシカルな雰囲気を出して、コーディネートを楽しめるようなデザインになっています。深いグリーンというのは、大人の感性をお持ちのお客様にも響くのではないかと期待しています。

 ブラックについては、フォーマルな存在感と持ち心地を追求し、背面にソフトフィールを施して、手の脂が目立ちにくく、グリップしやすい質感に仕上げています。持ったときに手に吸い付くような触り心地を感じられると思います

 ブルーは、シックな印象の中にも大人の色香の様なさらなる魅力を加えていきたいと考え、深いブルーの中に彩度・輝度を高める工夫をしています。こちらもブラック同様、ソフトフィール仕上げになっていて、手に吸い付くようなグリップ感が実現できていると思います。細かな色の話になってしまうのですが、ブルーのコーディネートでは、金属パーツに少し色みを入れて、モノトーンでまとめたブラックとは違なるダークカラーで特徴を出しています。

 ホワイトについては、女性のお客様にも受け入れていただけるような色を目指しています。ただのホワイトではなく、少し偏光気味の黄色く光るような仕上げをしているので、角度によって表情の変わる、パールに似たような上質な白を実現できていると思います。

――ロック画面のデザインも、カラーごとに違うんですが、どんなこだわりがあるんでしょうか。

大西氏
 今回はカラーごとにロック画面を変えています。「URBANO PROGRESSO」のときに、ロック画面はライブ壁紙にあわせた上で、印象的な時計を表示させていましたがお客様から、それぞれ自分にあったものを選択できるようにしたかった、という声を多くいただきました。デザイン自体はよかったけれども、もう少し選択肢があったらいいなという声を受け、今回のモデルでは選択できるようにしつつ、初期設定では各デザインにあうものを設定する形にしております。

使いやすさへのこだわり

通信機器関連事業本部 国内第1マーケティング部 大西克明氏

――機能面やハード面でのこだわりについても教えてください。

大西氏
 今回は、スマートフォンが初めての方でも快適にご利用いただけるよう、さまざまな工夫を行っています。その中で一番大きなところが「エントリーホーム」という独自のホームアプリケーションの搭載ですね。初期状態でホーム画面を表示すると、「エントリーホーム」というショートカットがありますので、こちらを選択していただければ簡単に切り替えられるようになっています。

 この「エントリーホーム」はフィーチャーフォンの概念を踏襲したホームアプリとなっており、例えばホーム画面はフィーチャーフォンでいういわゆる待受画面に見立てています。フィーチャーフォンは待受画面が1画面で、その中に必要な情報、お知らせがしっかり表示されるようになっています。電話やEメール、Cメールを受信したときに、必ず待受画面に表示されますから、起動して待受画面さえ見れば、すべてすぐ分かったのですが、スマートフォンですと、ロックを解除して、ホーム画面を表示したら通知画面を出さないと新着情報が分かりません。これが非常にわかりにくいという声をお客様からもいただきまして、今回搭載した「エントリーホーム」では、不在着信やメールの受信などをホーム画面上で表示させ、すぐに確認できるようになっています。

 さらに、ホーム画面で理解されづらいのが、左右にフリックするとページが切り替わり、ホーム画面が何枚もあるという概念です。これもフィーチャーフォンの考えを踏襲し、1枚固定で使っていただけるようにしました。

 ロック画面が、初期状態でオフになっているのも大きな特徴です。フィーチャーフォンを使われている方に、スマートフォンを触っていただくと、実は、一番戸惑われるところがロック画面でした。フィーチャーフォンでは最初に電源キーを押すと、待受画面がでてきて、そのまますぐ使えるというのが当たり前でした。ですから、ロック画面が出てくると、どうしていいか分からない、何をしていいか分からない、というのがありましたので、エントリーホームではロック画面を初期値オフにして、そのまますぐにホーム画面に移るようになっています。

 アプリ一覧というのも、フィーチャーフォンにはなかった概念といえます。アプリを自由に追加して、一覧で閲覧できるところがスマートフォンの使いやすさではあるのですが、初めての方からすると、その考え方も難しいだろうと考えました。そこで、完全にフィーチャーフォンのメニュー画面という形に置き換えまして、マトリクスタイプと、リストタイプのメニュー画面を搭載しています。これもお好みで切り替えられるようになっています。

――できるだけフィーチャーフォンの画面と操作性に近づける配慮というわけですね。自分の電話番号の確認方法も相当難しくなると思うのですが、それはどうされたのでしょうか。

大西氏
 フィーチャーフォンですと、MENUの0を押したら、どの端末でも電話番号やプロフィールを確認できるものがありましたので、そういった使い方が浸透していましたが、今のAndroidの標準の仕様ですと、どうしても自分の電話番号を調べようとするとかなり奥までいかないと分からないですよね。電話帳アプリから調べられるようになっていたりと、各社工夫を凝らしている部分だと思います。「エントリーホーム」ではメニュー画面の中に配置することで、すぐに確認できるようにしています。

――ロック解除したあとのホーム画面の使いやすさにこだわっていますが、ロック画面を見る限り、ロック画面でも「すぐ文字」があったりと、すぐに機能を使えるようなこだわりがある印象です。

大西氏
 そうですね。実際に最初にでてくるのはロック画面ですから、そのままお使いいただく場合には、できるだけそこを玄関口としてしっかりと作りたいという思いがありますね。一方で、ホーム画面はお客様がカスタマイズして自由に使っていただける領域だと思いますので、極力不必要なものは置かずに、お客様がカスタム化しやすいような考え方で整理しています。

――その辺りの作り方というのは、今後のモデルでも取り入れていかれるのか、あくまでも「URBANO」だけという形になるのか、いかがでしょうか。

大西氏
 基本的には、今回の「URBANO」に向けて開発したものではありますが、エントリーホームなどの特徴的な機能については、フィーチャーフォンからの乗り換えで使っていただくホームアプリとしては、特に「URBANO」に限った話ではないと考えておりますので、今後のモデルでも展開していければと考えています。初期設定にするとなるとターゲットが絞られてしまうので、選択肢の1つとして提供することで、使いやすくなるのではないでしょうか。

――初期設定にするかどうかというのは悩まれるところですね。

大西氏
 今回の「URBANO」ではスマートフォンの全機能を楽しんでいただきたいという考えもありましたので、初期値は標準のホームアプリケーションとしています。最初に慣れていない方はこちらからスタートしていただいて、段階的に自由にカスタムできる標準のホームアプリケーションを使っていただくという考えで整理しています。

――そのほかに特徴的な機能があったら教えてください。

大西氏
 特徴的なところですと「でか文字フォント」というAndroid標準の文字サイズの1.75倍に大きく表示できるようなフォントも用意していますので、年配の方にも非常に見やすいと思います。

 それから、「URBANO PROGRESSO」でも搭載していた歩数計アプリ「デイリーステップ」がありますが、気圧センサーを搭載することで今までよりも非常に精度が高いものとなっています。持っているだけで自分が歩いているのか走っているのか、乗り物に乗っているのかを判別できるのに加えて、さらに気圧センサーによって高低差のログの取得やハイキングや山登りなどの坂道での、カロリー消費量もちゃんと計算してくれます。

――文字といえば、ハードキーの上の文字も珍しいですね。本来ですとアイコンなんですが、あえて文字にされたというのは、文字のほうが分かりやすいというような声が実際にあったということでしょうか。

大西氏
 フィーチャーフォンユーザーの方に対して調査をしたときの声なのですが、「文字のほうが分かりやすい」といった声をいただいています。スマートフォンを初めて持たれる方だと、メニューの記号にしても伝わりにくいところがありますので、こちらはあえて文字にしています。

――京セラの端末ですと、ディスプレイを振動させて、音と振動で相手の声を聞き取れる「スマートソニックレシーバー」が大きな特徴の1つかなと思うんですが、このモデルでは特別なチューニングなどは行っているのでしょうか。

大西氏
 「スマートソニックレシーバー」は、これまでも「URBANO PROGRESSO」や「DIGNO S」などのモデルで搭載していますが、今回も受け継いでおります。特にこだわったのは、聞こえやすい音域づくりですね。相手の声を聞き取るとき、聞こえやすい領域は人によってまちまちなので、聞こえ調整機能を搭載しています。メニューからの設定変更に加えて、通話時にディスプレイ上に表示されるので、自分ですぐに設定できる仕様になっています。

2.7Aの急速充電に対応したバッテリーを搭載

――今回のバッテリーは2700mAhですが、どういった基準で採用されたのでしょうか。

大西氏
 端末のサイズ感とディスプレイサイズ、バッテリー容量というのはかなり関係しています。前回の「URBANO PROGRESSO」は、端末の幅が64mmで1500mAh。しかし、乗り換えのお客様はバッテリーをかなり気にされますので、容量の大きなものを搭載しなければ、という考えはありました。

 今回、持ちやすさに非常にこだわっているのですが、「URBANO PROGRESSO」も持ちやすさについては非常に高い評価をいただいておりました。今回もそこは維持する形で、どれだけバッテリーを積み上げられるかが課題でしたね。結果的に幅は1mmアップしているのですが、持ちやすさをキープした上で、バッテリー容量を増やすことができ、2700mAhとなりました。端末の厚みも同じ10.8mmで、重さも約140gくらいで、ほぼ同等をキープしています。

――かなりがんばって工夫されたということですよね。

大西氏
 はい。バッテリー容量が増えると重くなりますが、その分nanoSIMを採用したり、搭載部品などでもできるだけコンパクトになるものを採用して、このサイズを実現しています。

――nanoSIMというのはなかなか思い切った選択かもしれません。

大西氏
 そうですね。実際、KDDIさんとも話をしている中で、nanoSIM採用というのはやはり課題等があったのですが、「URBANO」の持ちやすさを実現するためにも、nanoSIMを採用したいという提案をさせていただきました。

――今回、卓上ホルダー同梱で、しかも2.7Aの急速充電対応というのはありがたいです。

大西氏
 「URBANO PROGRESSO」のときも卓上ホルダーを同梱したのですが、実際の利用率で見ると非常に高かったんです。特に年配の方になればなるほど使う率が高くなるので、それを考慮すると、基本的なスタイルとして卓上ホルダーは必要だなと思いました。また、今回は2700mAhとバッテリー容量も増えていますので、標準の充電速度では非常に時間がかかってしまいます。すぐ充電して出かけたいシーンもあると思うので、急速充電への対応は必須だろうと考えておりました。もちろんmicroUSBでも充電できるように、端子は用意しています。

――2.7Aというのはかつてない数字ですが、どの程度のスピードで充電できるものなのでしょうか。

大西氏
 2700mAhバッテリー満充電時では、丸2日使える電池持ちなのですが、30分で約半分の充電ができます。つまり、30分充電するだけでも1日使えますので、夜充電を忘れても、朝準備している30分だけ充電して持って行けば、おおよそ1日そのまま使えます。スマートフォンは電車の移動時にWebなどを見ることが多いと思いますので、スマートフォンの充電を忘れると、みなさん大変お困りだと思いますがこれなら安心してお使いいただけると思います。

――バッテリーでいうと、KDDIの端末では初めて無接点充電のQi(チー)に対応したモデルなわけですが、秋頃に「無接点充電 対応電池パック」と「専用電池フタ」を発売するという、後からの対応となりました。最初からQi対応にしなかったのはなぜでしょうか。

大西氏
 初期から対応させるという選択肢ももちろんありましたが、無接点充電にしますと、電池部分にコイルが貼り付きますので、どうしても厚みがアップしてしまうという課題がありました。このモデルは持ちやすさやサイズ感を重視しているので、KDDIさんとも相談させていただき、まずはそれを実現し、無接点充電に関してはオプションで対応しましょう、という結論に至りました。

94gという軽さを実現した「DIGNO R」の開発コンセプト

――次に「DIGNO R」ですが、ソフトバンク向けの初めての「DIGNO」になりますね。なにはさておき軽いというのが最大の特徴かと思うのですが、あらためて製品について教えてください。

川居氏
 ソフトバンクさん向けとしては初めてとなる「DIGNO」ブランドのモデルということで、どういったものにするか検討しました。今のスマートフォンのトレンドとしては、端末や電池の容量の大型化が挙げられます。それによりかなり重たくなってきているため、人によっては使いづらくなってきているのではないかと考えました。1999年頃でしょうか。フィーチャーフォンといいますか、いわゆる携帯電話の軽量化の競争が当時盛んだった頃に、京セラは世界最軽量モデルを作っていました。そういった考え方をスマートフォンに応用したらどうだろうか、という発想で今回企画がスタートし、世界最軽量防水モデルで、かつコンパクトで、持ちやすいスマートフォンという商品ができあがりました。

 今はフィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えもありますから、軽いフィーチャーフォンを使われていた方が、同じような重さやサイズ感のスマートフォンをお選びいただけたらという、そういった端末自体の重さからアプローチした目標や考え方もありましたね。

――確かにその頃のフィーチャーフォンは軽かったですね。

川居氏
 そうなんです。この「DIGNO R」はフィーチャーフォンと大体同じくらいの軽さですので、スマートフォンになったからといって、大きくて重たいと感じられないのではないでしょうか。

通信機器関連事業本部 国内第2マーケティング部 川居伸男氏

――「DIGNO R」のRとはどういう意味なんでしょうか。

川居氏
 ネーミングについてもいろいろ検討はしましたが、最終的にソフトバンクさん向けに初めて投入させていただくDIGNOブランドモデルということもあり“洗練されたDIGNO”という意味を込めて、「Refined」のRとしました。

――最軽量をイメージさせるようなのもあるかなと思ったんですが。

川居氏
 確かに「ライト」という案もあったのですが、それでは単純すぎるのではということから今回は軽いだけではない、洗練されたモデルという意味をこめて、このようにさせていただきました。端末のロゴなども、少し丸みを帯びたものにして、全体を端末の世界観にあわせたような形で作っております。そういった意味では、いい形にできあがっているかなと思いますね。

――この軽さで全部入りなわけですから、そう考えるとすごいです。

川居氏
 作っている我々ですら、最初のサンプルでは「電池入ってないのかな?」と思ってしまいました。電源入れたら「ちゃんと電源は入る!」と自分たちで驚いたくらいです。

――ターゲットとしては何歳くらいを想定されていますか?

川居氏
 ターゲットとしては30~40代ぐらいの、まだフィーチャーフォンを使っている女性をメインで考えていますが、今回はデザインについてもオーソドックスな形で仕上げておりますので、もう少し幅広いお客様も含めて展開できたらなと思います。カラーについても、ピンクやターコイズグリーンは、比較的女性的なカラーだと思いますが、男性の方にも似合うブラックやホワイトもご用意しています。

――ターコイズグリーンは珍しい色ですね。

東出氏
 軽さを演出しつつ、ターゲットユーザーである30~40代の方々に向けたカラーを考えました。黒と白という男女ともに受け入れられやすい色を採用しつつも、ピンクという女性に向けた定番色を加えました。さらに、端末のコンセプトを表す色として大人な上質感の中にも軽さを演出できるような色として、ターコイズグリーンを採用しました。

外側と内側で軽くするための工夫

――持つと中身がないんじゃないか、モックアップなんじゃないか、と思うほどの軽さなんですが、開発において重点を置いたのはどこでしょうか。

川居氏
 軽さの中でも持やすさにはこだわりたかったので、さまざまな調査を行い、検討いたしました。サイズについては、様々な大きさのモックアップを作って調べたのですが、幅60mmあたりが一番持ちやすい大きさであることが分かりましたので、このサイズをまず狙って幅を決めその中に入る最大サイズのディスプレイを検討して、狭額縁化の技術を使えばなんとか4.3インチくらいのサイズも入るであろうということになり、現在のサイズになっています。

――軽さの鍵になってるポイントというのは何でしょう。なぜここまで軽くできたのでしょうか。

川居氏
 ポイントは1つというわけではなくて、細かな努力の積み重ねだったりします。大きなところでは、まず表面のディスプレイを覆うガラスですね。このガラスに非常に薄いものを使っています。電池一体型の構造を採用し、イヤホン端子やmicroUSBの端子からキャップをなくしています。内部構造では、部品自体の軽量化や小型部品の選定も行っています。スマートフォンの部品数は相当多いのですが、それらの重さをすべてリスト化し、可能な限り重たい部品を軽い部品へ変えていくという地道な取り組みも行いました。実装に関しては効率的な部品配置を検討するとともに、狭ピッチ実装を行なっており、基板の体積自体を小さくするというところで軽量化を図っていますし、nanoSIMの採用も面積や体積、重さ含めてかなり小型化に貢献していると思います。

――重い部品とは何だったんですか。

川居氏
 例えば、内部のフレームです。重量としては比較的重たい部類に入るのですが、今回これを従来使っていたステンレスからマグネシウムの合金にして軽量化を図っています。

――部品やパーツが軽量化されたことで、着信音やバイブなどへの影響はないのでしょうか。

川居氏
 軽量化したからといって、結果的に音が聞こえにくい、バイブがわかりにくいというのでは電話として機能しないですので、そういった基準は当然ながら満たしています。

――先ほどガラスが薄くなったというお話がありましたが、衝撃に対して弱くなったりはしないのでしょうか。軽くなったことで犠牲になったものもありそうな気がします。

川居氏
 確かにガラスが薄くなったり、軽い材料を使ったりしているので、そのまま作ってしまうと耐衝撃性が低下することも考えられますが、全体の構造として強度を出せるように、綿密に調整を行い、従来と同じ基準の耐衝撃性を確保しつつ軽量化を図っておりますので、ご安心いただきたいです。

 あとは、バッテリー一体型の構造にしたこと、それから、今回SDカードスロットについては非対応となっています。メモリカードについては別途アダプターを準備しておりますので、バックアップについてはこちらを使って簡単に行っていただけます。

――アダプターを使うというのは、データの移し変えのために必要ということですよね。

川居氏
 はい。写真のデータや、アドレス帳のデータを移したいとか、これまで使っていた壁紙をスマートフォンでも使いたいといったニーズはあります。そこでパソコンを使うとできますよ、というのでは一方的なお話だと思いますので、アダプターと専用のアプリをご用意し、従来からのメモリカードからコピーができるようにしています。以前使っていた携帯電話のデータを移行するということに関しては、お客様にとっては非常に重要な問題ですので、そういったところはしっかりケアしていかないといけないと考えました。

――コンパクトにすればするだけ、どうしてもバッテリーが小さくなってしまうと思うんですが、そのバランス感というのはどのように評価されてるんでしょう。

川居氏
 重さやサイズを小さくするからといって、バッテリーを過度に少なくしていいのかというと、そういう話でもありませんので、このサイズの中に入る最大のバッテリーを検討しました。一体型の構造になっていますが、体積は抑えつつも、容量は1800mAhを確保しています。このサイズでしたら、しっかり使っていただける範囲かなと思います。

――「スマートソニックレシーバー」にはしっかり対応されています。

川居氏
 そこは京セラモデルとしては、独自機能として積極的に使っていくということで、搭載しております。ソフトバンクさん向けとしては初になります。

――小型端末というと、国内向けのモデルというよりも、海外向けにかなりコンパクトで安いものを出されてると思うのですが、今回の端末作りにその辺りのノウハウが生かされたことはありましたか。

川居氏
 確かに弊社は海外のスマートフォンも非常に多くあり、コアな部品は比較的近いものがありますので、そういった部品は、極力共有化を図りつつ開発しています。

デザインでも軽さを表現

通信機器関連事業本部 デザインセンター 東出和士氏

――これほどの軽さを追求する中でのデザインというのは、結構大変だったのではないでしょうか。

東出氏
 確かにデザインで一番意識したところは軽さです。同時にフィーチャーフォンからの乗り換えも強く意識していたので、初めてのスマートフォンとしてご利用いただく方にとって、手に馴染みやすい、柔らかい印象のデザインを考えました。そこで、なるべく丸みを帯びた形状にし、手に持ちやすく、ポケットにも入れやすい形を目指しました。そこで、側面の稜線をアーチ状にすることで、軽量感を演出しています。側面には質感を変えた表面処理を施しており、これらの処理を行うことで、薄さと軽さを感じるデザインに仕上がっています。

――確かに持った感触がふんわりしているので、余計軽く感じているかもしれません。

東出氏
 全体の構成としては、背面で柔らかくて軽い印象を与えつつ、フロント側ではカッチリとした印象を与えたいというところがありました。60㎜の幅に対して4.3インチの大きなディスプレイを搭載しており、非常に狭額縁な印象となっています。ターコイズグリーンとピンクでは、フロントガラスにドット柄をつけて、軽さを表したグラフィック表現を取り入れています。

――黒の背面だけ、青くグラデーションがかかっていてきれいです。なぜこれだけこの処理を行ったのですか?

東出氏
 重厚になりがちな黒でも軽さを演出できないかと考えました。黒で軽さを表現するというのはなかなか難しいのですが、背面は艶消しでさらっとした手ざわりにし、青みのあるグラデーションをつけることで、単調な表情にならず、軽い印象を演出しています。

――重く見えない黒なわけですね。塗料によっても重さに差が出ると伺いました。この中で最軽量ってどれでしょうか。

東出氏
 最軽量の色は黒です。色によって、スプレーを塗る回数が違います。1回違うだけで、それぞれの重さに響いてくるくらい繊細な端末です。体感いただくのは難しいかもしれませんが、実は一番重いのが白です。白さを出すための塗り回数が多いんです。色1つ塗るにしても、設計者との密な連携が必要でした。

 そういう軽さの制約がある中でも、電源キーのような、よく使うパーツは質感にこだわりたかったので、金属キーを採用しています。赤外線や、カメラの周りにも少し光るような加飾を行い、上質感を演出しています。

スマートフォンビギナーに配慮した「オリジナルロック画面」

――ロック画面のデザインや動作が非常にユニークですね。

川居氏
 ロック画面の仕様を一新しています。従来のロック解除画面ですと、ロック解除用のアイコンが大きく表示されていたり少し暗くなっていたりして、壁紙が楽しめないという意見がありました。そこで、フィーチャーフォンからスマートフォンに変えたときでも、これまで使っていたフィーチャーフォンと同じように壁紙をしっかり楽しんでいただきたいと考えまして全画面でしっかり壁紙を見せられるような仕様にしました。

 通常ですと壁紙だけが見える状態なのですが、画面の好きな場所をタップすると、タップした場所に円形のアイコンが現れます。中央の鍵を上にフリックするとロックが解除されてホーム画面を表示しますが、左にフリックすると通話用の画面になって、右にフリックすると「すぐ文字」が起動します。下にフリックするとカメラが起動するので、すぐに写真を撮ることができます。

 「すぐ文字」は弊社オリジナルの機能なのですが、すぐに文字が入力できて、メールなどのさまざまなアプリに文字列を受け渡せるという機能です。思いついた時にすぐ検索したりといったような使い方もできますし、たとえばTwitterやFacebookみたいなSNSに投稿したりもできます。いろんなところで使えて便利ですよ。

――操作したいときだけ、アイコンが出るわけですね。左右と下にフリックしたときのメニューは変えられるんですか?

川居氏
 初期設定では、よく使う機能を配置していますが、変更は可能です。

――このロック画面の仕様は今後のモデルでも引き継がれるのでしょうか。

川居氏
 引き続き仕様に関しては継続検討をしていきますが、ひとまずこういう形でやってみて、いろんな反響を踏まえながら、検討していきたいなと思っております。

 ちなみに、先ほどの「URBANO」同様、「DIGNO R」でも30~40代の方で、フィーチャーフォンから移行される方に配慮して、エントリーホームを搭載しています。スマートフォン初心者の方にはまずはエントリーホームを使っていただき、スマートフォンに慣れていただきたいと考えていますが、こういった機能を用意することで、乗り換えに対する心理的な障壁をなくせる効果もあるのかなと思っています。

――常にフィーチャーフォンからの移行を念頭においているわけですよね。スマートフォンを開発しながら、みなさんフィーチャーフォンとにらめっこしてる感じなんですか?(笑)

川居氏
 実際、そうでした。みんなでにらめっこしていましたね。

――ここまで軽くできるとなると、今後の端末でも技術が引き継がれていくことを期待してしまいます。

川居氏
 そうですね。今回のモデルに関しては、かなり軽量というコンセプトを際立たせており、ある程度数字を求めた部分もありましたが、こういった軽くするテクノロジー自体は、当然他のモデルにもつなげていくことができます。例えば、同じデザインでも、普通であれば重たくなるところが、軽量化の技術が入っているので、従来よりも軽くできるとか、いろんな部分に貢献できる技術だと思いますので、今後も引き続き追求し続けることになると思います。

――「URBANO」と「DIGNO R」それぞれ読者向けに一言ずつお願い致します。

大西氏
 今回の「URBANO」は、持ちやすさや上質感のバランスが非常にいい、使いやすいモデルになっています。バッテリーの持ちもよく、長くお使いいただける商品となっていますので、ご期待いただければと思います。

羽場氏
 使いやすさはもちろん、大人の感性をお持ちのお客様に、感性的に響くモデルを目指していろいろな仕掛けを凝らしました。ぜひ手にとって感じていただければと思います。

川居氏
 ソフトバンクさん向けの初めての「DIGNO」ということで、軽量といった新しい切り口の非常に自信作となるモデルになっています。この軽さを、ぜひ皆さんの手でご体感いただきたいと思います。

東出氏
 見るよりも、直接手に持っていただいたほうが分かりやすい端末だと思います。軽さに貢献するためにデザインも工夫しています。持って、使って、体感していただきたいと思います。

――本日はありがとうございました。

すずまり