LG冬春モデルインタビュー

LTE~スマートフォンまでラインナップ


 2010年冬~2011年春にNTTドコモ向け端末として、LG製端末が4機種登場する。そのラインナップは、従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)だけではなく、Android搭載のスマートフォン、LTE対応のUSBデータ通信端末まで、幅広いジャンルで展開する。

 「L-01C」は、スタンダードな仕上がりで防水に対応したフィーチャーフォンで、「L-02C」はLTE/W-CDMA/GSM対応のUSB接続型データ通信端末、「L-03C」はフィーチャーフォンながらスマートフォンライクな操作方法を取り入れ、さらに沈胴式レンズなどデジタルカメラとしての特徴を押し出す。そして「Optimus chatL-04C」はAndroid 2.2搭載で、独自の味付けも施されたスマートフォンとなる。

 それぞれの特徴について、LG Electronics Japanマーケティンググループの尾花圭介氏に聞いた。

沈胴式レンズを採用した「L-03C」

 「L-03C」は、沈胴式レンズや、コンパクトデジタルカメラ風の外観など、“デジカメにケータイを組み合わせた”と、従来とは逆の発想を採用したとも言える機種だ。

 LGの技術力や企画力をアピールする機種とする尾花氏によれば、LG社内では、開発中のL-03Cを「リアルディカ」と呼んでいたという。韓国ではデジタルカメラを「Digital Camera」の略称として、“Di”と“Ca”を組み合わせ“ディカ”と呼ぶとのことで、デジカメそっくりな外観を採用する「L-03C」が“まさにデジタルカメラ”、という意味で用いられた呼称なのだろう。

L-03C

 それだけにカメラとしての性能、カメラセンサーの画素数(L-03Cは1210万画素)だけでなく、沈胴機構を採用し、レンズにもこだわった。高輝度LEDでは十分な明るさが得られないとし判断してキセノンフラッシュを搭載することになった。特にセンサーやレンズは、デジタルカメラ事業を持たないLGだからこそ、外部企業に協力を仰いだのだという。ターゲット層は、たとえば携帯電話とデジタルカメラを常に携帯するような人。カメラが携帯電話の標準機能となる中で、デジタルカメラを持ち歩く人は、携帯のカメラ機能に満足できない、あるいはより簡単に撮影したいという人が多いだろう。そこへ訴求するというのは、それなりに高いハードルであり、だからこそカメラ機能へこだわった開発が行われた。

 一方、製品化に際しては、携帯電話ならではのテストなどをクリアする必要があったり、サイズ面での制約もあった。

 「たとえばストラップホールは、現在位置する場所ではなくボディの反対側に配置したいと考えたが携帯電話のアンテナの都合上、現在の場所になった。(三脚などを装着するための)雲台用ねじ穴の装備も見送った。サイズ感も、片手で持てることを意識した横幅50mmにした。(薄さについても)企画段階ではもう少し厚かった」(尾花氏)

 デジタルカメラならば、ユーザーに許されるサイズであったとしても、携帯電話だからこその制約が発生する。“カメラにケータイが付いた”ような製品とはいえ、そこまで自由にはできなかったようだ。

 携帯電話としては、テンキーを備えない、フルタッチ型端末となる。LGではこれまで、PRADA PhoneやL-06Aなど、タッチ操作の携帯電話を開発しているが、「L-03C」でもその流れを受け継ぐ一方、メインメニューは12分割アイコンの「ベーシックスタイル」に加え、スマートフォンのように画面全体を左右にスクロールさせる「エリアスクロール」のほか、新たなユーザーインターフェイスとして、「ラインスクロール」が利用できるようになった。多くのスマートフォンでは「エリアスクロール」のように、画面全体を左右へ切り替える形だが、「ラインスクロール」は、12分割アイコンのうち、横1列ごとにスクロールさせる。上から2段目のアイコン横列を指で触れて左右に動かせば、その他のアイコンは動かず、2段目の横列だけスクロールする。

カメラ使用時に着信があると、レンズは自動的に格納されるラインスクロール

 またユニークな機能としては、パソコンとL-03CをBluetoothで接続し、パソコン専用ソフトからL-03Cを操作できる「On Screen Phone」も利用できる。カメラ機能は遠隔操作できず、携帯電話の機能のみ利用できる形とのことだが、パソコン操作中に携帯宛にメールが届いた場合も、パソコンからメールの閲覧・返信ができるし、L-03Cとファイルのやり取りもできる。スマートフォンというトレンドがあるなかで、市場の大勢を占めるフィーチャーフォンにおいて、同社のチャレンジを示す機種と位置付けられている。

 

独自の味付けを施したAndroid 2.2搭載「Optimus chat L-04C」

Optimus chat L-04C
LGの尾花氏

 来年2月発売予定の「Optimus chat L-04C」は、Android 2.2搭載のスマートフォンだ。日本メーカーがワンセグ、おサイフケータイなど、日本でニーズが高いとされる機能を取り入れたスマートフォンを投入する中、比較的、Androidそのままに近いと思われた「Optimus chat L-04C」だが、ユーザーインターフェイスや搭載アプリなど、LGならではの取り組みを反映したモデルだ。

 ハードウェア面での特徴は、QWERTY配列のフルキーボードだ。スライド機構を採用し、一見するとフルタッチ型だが、スライドすることでキーボードが利用できる。ソフトウェア面では、フィーチャーフォン風のメニューでジャンルごとにメニューアイコンをまとめた「ドコモメニュー」、あるいは同機種オリジナルの「Optimus UI」、L-03Cと同様にパソコンから操作できるようにする「On Screen Phone」などが用意されるほか、オリジナルのTwitterクライアントアプリなどもプリセットされる。

 尾花氏は「Androidユーザーのなかには、ハードキーを求める声もあり、Optimus chat L-04CではQWERTYキーを用意することにした。ある程度プリインストールアプリを用意することで、『何をしていいのかわからない』といったユーザーもサポートできる」と、独自の取り組みによって、スマートフォンでもLGブランドを定着させたいと意気込む。

 

防水対応のL-01C、デザイン性も備えたL-02C

 かねてよりLGでは、使いやすさに配慮したシンプル志向の携帯電話を提供してきた。その路線を継承する「L-01C」では、新たに防水機能(IPX5/7)をサポートし、風呂や台所といった場所でも気兼ねなく利用できるスタイルを実現した。

 日本市場向けの機種を提供するLGだが、「グローバルで防水対応はしておらず、日本だけ」(尾花氏)とのこと。また50mmという横幅、キートップの印字など、持ちやすさ、見やすさにも配慮した。機能面では、よくやり取りする相手のアドレス帳データをすぐ呼び出せる「Myコンタクト」、よく利用する機能へすぐアクセスできる「Myファンクション」が用意される。

 こうした機能面は、現在の国内市場ではスタンダードな仕上げと言える。買い替えまでの期間が長期化する昨今のトレンドにあわせ、シンプルで飽きの来ない機能・デザインにしつつ、ニーズの高い防水機能をサポートすることで、より幅広い層に向けた機種と位置付けられている。

L-01CL-02C

 USB接続型の「L-02C」は、LTE対応のデータ通信端末だ。パソコンユーザーに向けた製品で、2色のカラーバリエーションを用意するのは、データ通信端末ではユニークな取り組みだ。外観も「LTEのスピード感を表現したいと考えた。近未来的で新しさを打ち出したい」とのことで、データ通信端末にありがちな、無骨なイメージは避けたようだ。

 LGとしては海外でもLTE対応端末を手がけているが、海外に「L-02C」の同一モデルがなく、日本向けに開発されたモデル。尾花氏は「グローバルで1つのものを作る良さもあれば、ローカライズすることで得られるものもあり、バランスで考えている」と述べる。全てにローカライズが必要、あるいは全てをグローバルにあわせる、という偏った考え方ではなく、個々の事例にあわせて「メーカーとしての柔軟性を持ち続ける」(尾花氏)ことの重要性を示しているようだ。

 



(関口 聖)

2010/12/1 06:00