【Mobile World Congress Shanghai 2016】

「au ID」で基盤を作りサービス広げる、KDDI田中氏が語るモバイルIDの重要性

 中国・上海で開催中のMobile World Congress Shanghai 2016で、6月29日、KDDIの代表取締役社長 田中孝司氏が基調講演を行った。同セッションはモバイルにおけるIDの重要性を説くことが目的。このテーマに沿い、田中氏は、「au ID」があることで実現した様々なサービスや、KDDIの最新戦略を語っている。

基調講演に登壇した“田中プロ”ことKDDIの田中社長
海外に向け、まずはKDDIの立ち位置や、収益の状況などを紹介した

 基調講演のテーマに応える形で、田中氏は講演の冒頭、「成長のポイントはau IDにある」と語る。決算で発表されているとおり、KDDIは増収増益を続けており、「世界的に見ても伸びており、これはKDDIの戦略によるもの」だという。その戦略とは、2015年度まで推進してきた「3M戦略」と、2016年度に打ち出した「ライフデザイン戦略」だ。

 KDDIはこれまで、3M戦略を掲げ、「グローバル企業として、顧客の基盤を固めてきた」。3M戦略の「M」は、「マルチユース」「マルチデバイス」「マルチネットワーク」の頭文字に由来しており、au IDは、これらを1つにつなげるものという位置づけだ。

2015年度まで続けてきた3M戦略を解説

 ユーザーは複数のデバイスを持ち、LTEやWi-Fiなど、様々なネットワークでインターネットにアクセスする。その際に、auのユーザーとして認証し、サービスを提供するためにはIDが必要となる。これがau IDの役割だったというわけだ。こうした状況を指し、田中氏は「サービスとデバイスを結びつけるもの」と語る。

 その一例として、田中氏は「auスマートパス」を挙げ、500以上のアプリがダウンロードし放題になったり、オンラインストレージを提供したりといった内容を解説。「auスマートパスによって、付加価値バリューが上がり、顧客接点が作れるようになった」といい、その前提となるau IDの効果を力説した。

auスマートパスの内容と、その成果が語られた

 また、「au WALLET」も、au IDの上に成り立っているサービス。「オンライン、オフラインがシームレスにつながるようにするためのもの」で、これによって「au経済圏を拡大することができた」。同時に、「ビッグデータの構築、蓄積もでき、購入履歴を蓄積することで、サービスに役立てることもできる」という。

au WALLETも、au IDの上に成り立つサービス

 au IDの上に、「オンラインでの顧客接点」だというauスマートパスを載せたほか、KDDIには、auショップや、傘下のショップチャンネルなど、テレビやリアルを通じての接点もある。これを利用して先に挙げたauの経済圏をさらに拡大するというのが、2016年以降の方針。5月には新たな中期経営計画を発表した。

オンラインだけでなく、オフラインの接点を持つのもキャリアの強みだという

 その新方針が「ライフデザイン戦略」で、電気や保険、金融といったサービスをすでに展開している。田中氏は「人間本位で、人生全体に対してサービスを提供できる」といい、その基盤となる「au IDは、お客様の日常生活のニーズにも応えられる」と自信をのぞかせた。

新たにライフデザイン戦略を打ち出し、サービスの多角化を進めている

 最後に田中氏は、モバイルキャリアの業界団体・GSMAの資料を引用しながら、「キャリアには4つの種類がある」と語る。縦軸がネットワーク、横軸が顧客接点となり、その両方に強みを持つキャリアだけが、「生活のプラットフォーム」になれるという。これこそが、「MNOのゴールで、私たちはその形を目指したい」としながら、講演を締めくくった。

生活プラットフォームになることが、MNOのゴールだとする田中氏